プライベート・スペクタル

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第三話 終章

第十一節

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「正真正銘、今度こそ終わりだぜ」
一直線に吹き飛び再び壁に叩きつけられたトワ。大きな爆発が巻き起こる。
舞い上がる土煙の中【演目】を終えた大和はそう呟いた。
(……ッ!!?)
ふと胸の奥、心臓辺りから何やら得体の知れない感触が流れ込む。
まるで暴れ狂う力そのものの様な強い感覚が大和の全身に流れ広がる。
「殺せ壊せ」とまるで全てを憎んでいるようなそんな怨嗟である。
(うるせぇなァ、黙ってろ!)
その奔流を抑え込む大和。エルマが言っていた『龍の心臓』というモノの副作用なのだろう。
軽度だったのかすぐに治まった。
(……そいつよりもトワだ!)
気持ちを切り替えた大和。トワの方を見る。
「決着、決着」と今回は何度もフラグの様になってしまっていた。
だが今回の確信に似た感触は間違いないと思う。今度こそトワを倒すことが出来たと大和は確信する。
そしてその確信は間違いで無かった。
「嘘、嘘です…そんなはずはない……私は『時極の魔女』ですよ……そんな私が…嘘…うそ…うそうそ……」
土埃が収まり姿を現したトワ。だが起き上がることなく、ただひたすらにうわ言のように「嘘…」と繰り返している。
演技を警戒して何度かわざと隙を見せたがトワはそれに反応することはない。
今や誰よりも若い姿なのに、その様子は末期の老人のようにも見えた。
どうするかと考えた大和。トワに近づく。
とその時…。
「………うぐッ!?」
「!?」
身体に異変が起こったのか苦しみ始めたトワ。
いきなり身体をのたうち回した。
「うがぁぁぁああああああアアアアアアアアアアアァァァアアアアアアアア!!」
雄叫びを上げ苦しみを外へ表すトワ。叫びと共に身体が大きく脈打つ。
そしてひときわ大きな叫び声と共に身体が光始めた。
「アアアアアアアアアアアアアアアァァァアァツアアアアアアア!!」
増々光が増していくトワ。それに合わせ周囲の空間も異変が生じる。
火山火口付近の筈なのに植物が咲き枯れる循環を繰り返し、雷光が瞬くとそのまままるでストップモーションのように止まり、そして上空には空間のヒビの様なモノが走り始める。
まるでこの世の終焉の様な光景であった。
「……フフフフフっ、素晴らしい」
とそこで苦痛が無くなったのか今度は急に笑い始めたトワ。何事も無かった様にむくりと起き上がる。
「身体の奥底どころか万物より力が取り入れ溢れて止まらない。やはりこうでないといけませんね…」
未だ光を放つ自分に頓着せずそう言った。それに傷どころか服の汚れまで完全に消失していた。
「それでは早速この力を使わせていただきましょうかッ!!」
完全に逆転した形勢に叫ぶ。襲いかかろう大和に飛びかかる。
身構える大和。
だがすぐにその構えを解いた。
何故ならそう言っただけでトワは全く大和に近づいていなかったからだ。

「…?」
不思議に思ったトワ。今度は確実に踏み出そうと一歩を慎重に前へと踏み出そうとする。
だがその場で足踏みしただけで一歩も前に進んでいなかった。
大和自身も実は奇妙に思っている。だが何か直感で確信している部分もある。
これ以上の戦闘は無い。
何故なら先程までの極厚の威圧感や気配というモノが全くと言って良い程感じなかったからだ。
「コレは一体…ッ!?」
明らかな異変に自分の身体を見たトワ。そこでさらなる異変に気付く。
何と身体が縮んでいるのだ。
「うッ、なんです!?何なんですコレェ!?」
縮小していく様に短くなってゆく四肢。否、四肢のみではない胴の部分も同じように縮んでいる。さらに身に着けている衣服はどんどんと丈が余っていき、縮んでいく身体には丸みを帯び始めていく。
「こんにゃのまりゅで赤子…ッ!?」
舌足らずとなった言葉。自身の言うようにトワは赤子の様な姿となっていた。
それと同時にヒビの入っていた空間が完全に破れる。
破れ亀裂の入った空間はトワのみを吸い込み始めた。
「ひぃッ、どこにちゅれて行く気でしゅか……」
身体が浮き上がったトワ。ゆっくりゆっくりと亀裂へと引き寄せられる。
「そんにゃ、このわたちが……『じごくのまぢょ』のわたちが…こんにゃこんにゃ……」
なんとか逃れようとしているようだが、赤子の肉体では短い手足をじたばたするのみでなす術もない。
「オンギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
そしてトワは赤子の様な悲鳴と共に亀裂に飲み込まれていった。
役目を終えたかのように閉じた亀裂。大和の目の前には彼女が被っていた装飾が付いた魔女帽子が舞い降りる。
パサリと落ちたその静かな音が、意外にもこの長かった一連の騒動の終焉の音色となったのであった。
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