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第三話 終章
終幕
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「…おそらく『恒威の儀』にはそもそもそんな欠陥があったんだろうねぇ」
戦闘が終わり『創世神』の【領域】へと帰還した大和。
一連の出来事を報告した際、その場に居合わせたヒミコはそう分析した。
「いくら常人より強靭な【星】と言えど、この世界のエネルギーを全て取り込めるわけなんてない。必ずロスする…否、しなければとてもじゃあないが耐えれる筈がない。赤子の姿へと変じたという事は、奴は有する『時を操る』能力に最終的に自身も呑まれてしまったという訳だね」
「つまりは端からこの計画は破綻する運命だったと…」
「ああ、成し遂げた者はいないと言ったけれど、おそらく最終的にはその欠陥で自滅するからというのもあったんだろうね…まったく、私も含め振り回された連中には迷惑な話だよ」
「ふむ、そうですね……」
ヒミコの言葉に何も言わない睦美。確かにその言葉通りであり何も口出しできない。
赤子の姿となったトワは生じた時空の亀裂の中を漂うのだろう。何も出来ない幼い姿で成長することなくいつ終わるかわからない永遠を…地獄に近しいその末路は散々苦しめられた敵とはいえ軽く同情する。
しかし睦美的には評価すべき点もあった。最終的に破綻したとはいえ彼女は世界を欺き自らの計画の成就を実質達成したのだ。参謀としてその計画や手筈の順当さには敵とはいえ勉強させられたのは確かだからだ。
「教訓だけにしておきなよ」
そう釘を刺してきたヒミコ。流石に読みやすかったのかそれとも歳の功か読まれていたようだ、こういう部分もいずれは出し抜きたいと睦美は思った。
「まあ、コレで一段落だしこの話はこれで終いにしようかね………それより悪童共のあの様子は何だい?」
話を変えある方向を指さしたヒミコ。指さした先、そこには大和と晴菜が並んで座っている。
「ああ、あれですか…色々とありまして……」
「ふぅん」
曖昧な返事の睦美。彼女のその反応にヒミコは察しそれ以上は何も言わなかった。
「…………………………」
「…………………………」
そんなヒミコに言われた大和と晴菜。
隣に座りながら何も話さず、互いに横目でチラチラと相手の姿を見る。
これまでとは違う光景。
何故そんなことになっているのか。その理由は簡単、一時のテンションに身を任せすぎたからだ。
告白をしOKを貰えたのは良かった。だがその後にすぐに激戦。芽生えた愛に接する時間もなかった。
その為、告白は成功したがどうやって接すればよいのかが完全に迷子になったわけである。
(……き、気まずい~ッ)
無言の時間に思わず大和は内心で叫んだ。
恋人の関係になったのだがその扱い。さらに友人や仲間の時間が長すぎて、その関係からのランクアップに話もどう始めてよいのか全くわからない。
洒落たこと一つも言えないどころか、今は呼び方すら曖昧な状態であった。
(この世に生を受けて早二十幾年。これまで恋愛というモノと無縁な生活を送っていたからなァ……)
しみじみと呟き、自らの女っ気のなさに思わず心の奥底で涙する大和。
しかし本当、ある程度の【星】との戦闘よりも難しい問題であった。
(でもこうも言ってられんのが現実!兎にも角にも行動だ!)
当たって砕けろの精神でぎこちなく手を差し出そうとした大和。
とそこで同時に晴菜の手に触れる。どうも向こうも同時に手を差し出したようだ。
(ひゃぁあああああああ!?)
少女の様な悲鳴を思わず内心で上げてしまう大和。だが直ぐにその感情は収まる。
ぐるぐるに包帯を厚く巻かれた痛ましい晴菜の手を見たからだ。
左腕意外の全てを欠損するほどの大ダメージを受けた晴菜。
エルマの【演目】により右腕は直ぐに再生させることが出来た。だが未だに脚の方は治っていない。
「うーん…傷の具合があまりにも酷かったから、治るのにはかなり時間がかかりそう。完全には戻せると思うのだけれど……」
エルマからもそう言われており、つまるところ暫く車椅子生活という訳なのだ。
「…………もう二度とそんな目には遭わせないからな…」
一度は死んだ自分を助けるために負った怪我。その為大和は固く固く誓う。
とそこでクイクイと頭を近づけるようジェスチャーをする晴菜。
言われた通りに大和は頭を近づける。
瞬間、問答無用で爆破された。
「!?」
「あ~もうッ!?うざったい!!?」
少し怒りを込めた表情で晴菜は叫んだ。
「馬鹿大和、アンタまたこの怪我で責任を抱え込もうとしたわね!!」
「ッ!?」
「図星って訳ね、全く………そんな気持ちになるな馬鹿!」
そこで晴菜は軽く面食らっている大和に顔を近づける。
「良い!?この怪我も!今無くなっている足も!覚悟の上でアタシは負ったの!一度死んだアンタを生き返らせたい助けたいという思いだけれど、どれもこれも全てアタシの単なるエゴそれだけよ!!だからそこでアンタが責任とかを感じんな!!」
「晴菜…」
「だから今後そういう何でも抱え込むのは禁止!あと接し方もこれまで通りの馬鹿の馬鹿丸出しの馬鹿で行くこと!OK!?」
「……流石に馬鹿3連はひどくね?」
「あぁん?」
「いえ何でも無いっス」
田舎の不良みたいな目つきで凄む晴菜に大和は何も言えなくなった。
とそこで晴菜も明後日の方向を向き聞こえないようにポツリ。
「抱え込みたいならアタシに言いなさいよ…一緒に背負ってあげるからさ」
「晴菜、テンプレみたいなツンデレ。ご馳走様です」
「そこは数多の先人達の様に難聴で行きなさいよ!」
合掌すると再び晴菜に爆破された大和。いつも通りに戻った事とやはり告白して良かったと思うのであった。
「おっとぉ~良い『愛』の匂いがするぞヨ」
とそこでエルマが部屋に入って来る。
入って来て早々大和と晴菜の姿を見た瞬間、ニタ~と笑い手を合わせる。
「おおぅ、匂いの元はここじゃったか……素晴らしきモノ、ごちそうさまです」
「なにアンタも合掌しているのよ、流行ってんのかソレ」
大和と同じように手を合わせたエルマに晴菜は思わずそうツッコんだ。
「ところで何かあったかぃエルマ?「部屋をワガハイ好みに染めてやる~」とか言って自室に引きこもっていたけどよ……」
正式にエルマは『創世神』の構成員となった。とは言っても基本は自由にするようで、自分の好きな時に大和達と行動をするらしい。
一応協力者のダイヤと同じ遊撃的なポジションで良いと大和達も了承をしたのだった。
「何かって決まっているじゃん大将、こんな長い長い戦いを終えた我々がやることは一つ…ズバリ終わりの宴会に決まっておりますぞ!」
「あぁ宴か!」
エルマの言葉でその存在を思い出した大和。確かにこれまでひと騒動終えたらやっていた。
今回は色々と長く濃かったせいか完全に頭から抜け落ちていた。
その単語が聞こえた瞬間、睦美が直ぐに間に入る
「エルマ、コチラとしてもやりたいのは山々ですが…今回は如何せん怪我の度合いが高過ぎます」
「ええ~良いジャン。エイプリルちゃん達の話を聞いて楽しみにしていたんだよワガハイはぁ~」
「ですから、宴会はみんなの怪我が完治し終えた後日という事で…」
「折角、愛しの門司きゅんも呼んで楽しもうと思ったのに…」
「……うぅ…っ」
「いや本当何やっているんです貴方は!?」
とそこでボロボロの門司を担いできたことに気づいた睦美。未だ負傷が癒えておらず目を閉じた状況で苦痛の呻き声を上げていた。
「ええ~門司きゅんなら大丈夫だよぅ……ほら今でも言ってるじゃん。「…ああ大丈夫だよ愛しのエルマ。問題ない…やろうぜ宴」ってね♡」
「どんな耳と目をしているんですか、未だ鮮魚コーナーの傷みかけの魚みたいなデロッデロッの状態にしかどうしても見えませんけれど!?」
「ふッ…それはまだ門司きゅん力が足りていないからですヨ軍師さん」
全く持って取り付くシマがない。困った睦美は大和に助けを求める。
「ちょっとこの狂人に何とか言って下さい馬鹿二号。彼女がいなければ貴方も含め詰んでいたとはいえ、一存で問題児を引き入れたのでしょ?リーダーの片割れとしてガツンと……」
「あっ、そうだリーダーは大和ちゃんだったね……ねぇお願~い♡生き返らせた恩義と思ってさァ~」
「冷静に考えて下さいよ、晴菜や門司はこんな怪我で貴方も一度は死んでいたんです。宴は逃げないんですから、後の楽しみに思いっきりやった方が……」
「ああそうだぜ睦美の言ったとおりだ」
「そうですそうです」
「だから今からやるか宴会ッ!」
「この二号ッ!」
そう言った大和に睦美は思わず詰め寄る。
「貴方もマジモンですか!?いえマジモンでしたね!?狂人ポイントが最近少なくなってきているんですからここで補填しなくても良いでしょうに!?」
「いや睦美の言う通りなのは確か正論も正論よ……だけどよぅ、怪我が完治した時にはこの勝利の熱は冷めているかもしれん。だったら心臓抉られて間もなくでも怪我でボロボロでも楽しく騒いだ方がいいんじゃあないかぃアネゴ?」
「宵越しの金は持たない短絡思考!さては思い出したからやりたいだけですね!
「まあ一回死んで人生のありがたみも感じたっていう得難い教訓の共有さ……という訳で宴の準備を頼むぜチェルシー!」
「かしこまりましたぁ~」
「ええぃ起きなさい一号。リーダーの片割れが狂っているんですからこんな時に正さないといけないというのに何を今も寝ているのです」
「睦美ちゃんも結構ひどくない?」
エルマのツッコみを他所に狂い始めた場を治める為睦美は門司を起こそうと頬を強く叩く。
「そうだった門司にも聞くのを忘れてたぜ。良いだろ門司?」
「………(グっ!)」
「この一号ッ!」
未だにぐったりしながらも薄っすら笑みを浮かべ親指を立てた門司に睦美はそう叫ぶ。
もはや止めるモノはない。
あっという間に豪勢な料理や飲み物が並び宴の準備は出来上がった。
「良い感じじゃあねぇの、これなら他の奴も呼ぶか…おーい婆さん」
「なにがだい悪童。でもその申し出は悪くないね…ならお言葉に甘えてウチの連中も呼ばせてもらおうかね」
「ああ呼べ呼べ~…というか、いっそのこと今回の全員呼んでみるか!」
「さんせ~い♪」
そんなノリで今回供に戦った全員を呼んだ大和。様々な伝手で直ぐに広まり。
あっという間に今回共に戦った全員が揃った。
「そいじゃあ乾杯~!」
「「「「「「「「「「かんぱ~い!!!!」」」」」」」」」」
こうして大和の音頭と共にとんとん拍子で宴は始まったのだった。
「はぁ…どうしようもない奴等ですね……」
あちらこちらでワイワイガヤガヤ騒ぎ始めた【領域】内を見て睦美は溜息を吐く。
「ほんとそうよね」
隣でそう肯定した晴菜。だけどその声色はとても嬉しそうである。
その様子にこれ以上は何も言わない事に決めた睦美。「全く…」とだけ笑みと共に零しグラスを傾けるだけにした。
第三話 完
※ネタ固めのため次回更新は9月20日(土)更新予定です。
戦闘が終わり『創世神』の【領域】へと帰還した大和。
一連の出来事を報告した際、その場に居合わせたヒミコはそう分析した。
「いくら常人より強靭な【星】と言えど、この世界のエネルギーを全て取り込めるわけなんてない。必ずロスする…否、しなければとてもじゃあないが耐えれる筈がない。赤子の姿へと変じたという事は、奴は有する『時を操る』能力に最終的に自身も呑まれてしまったという訳だね」
「つまりは端からこの計画は破綻する運命だったと…」
「ああ、成し遂げた者はいないと言ったけれど、おそらく最終的にはその欠陥で自滅するからというのもあったんだろうね…まったく、私も含め振り回された連中には迷惑な話だよ」
「ふむ、そうですね……」
ヒミコの言葉に何も言わない睦美。確かにその言葉通りであり何も口出しできない。
赤子の姿となったトワは生じた時空の亀裂の中を漂うのだろう。何も出来ない幼い姿で成長することなくいつ終わるかわからない永遠を…地獄に近しいその末路は散々苦しめられた敵とはいえ軽く同情する。
しかし睦美的には評価すべき点もあった。最終的に破綻したとはいえ彼女は世界を欺き自らの計画の成就を実質達成したのだ。参謀としてその計画や手筈の順当さには敵とはいえ勉強させられたのは確かだからだ。
「教訓だけにしておきなよ」
そう釘を刺してきたヒミコ。流石に読みやすかったのかそれとも歳の功か読まれていたようだ、こういう部分もいずれは出し抜きたいと睦美は思った。
「まあ、コレで一段落だしこの話はこれで終いにしようかね………それより悪童共のあの様子は何だい?」
話を変えある方向を指さしたヒミコ。指さした先、そこには大和と晴菜が並んで座っている。
「ああ、あれですか…色々とありまして……」
「ふぅん」
曖昧な返事の睦美。彼女のその反応にヒミコは察しそれ以上は何も言わなかった。
「…………………………」
「…………………………」
そんなヒミコに言われた大和と晴菜。
隣に座りながら何も話さず、互いに横目でチラチラと相手の姿を見る。
これまでとは違う光景。
何故そんなことになっているのか。その理由は簡単、一時のテンションに身を任せすぎたからだ。
告白をしOKを貰えたのは良かった。だがその後にすぐに激戦。芽生えた愛に接する時間もなかった。
その為、告白は成功したがどうやって接すればよいのかが完全に迷子になったわけである。
(……き、気まずい~ッ)
無言の時間に思わず大和は内心で叫んだ。
恋人の関係になったのだがその扱い。さらに友人や仲間の時間が長すぎて、その関係からのランクアップに話もどう始めてよいのか全くわからない。
洒落たこと一つも言えないどころか、今は呼び方すら曖昧な状態であった。
(この世に生を受けて早二十幾年。これまで恋愛というモノと無縁な生活を送っていたからなァ……)
しみじみと呟き、自らの女っ気のなさに思わず心の奥底で涙する大和。
しかし本当、ある程度の【星】との戦闘よりも難しい問題であった。
(でもこうも言ってられんのが現実!兎にも角にも行動だ!)
当たって砕けろの精神でぎこちなく手を差し出そうとした大和。
とそこで同時に晴菜の手に触れる。どうも向こうも同時に手を差し出したようだ。
(ひゃぁあああああああ!?)
少女の様な悲鳴を思わず内心で上げてしまう大和。だが直ぐにその感情は収まる。
ぐるぐるに包帯を厚く巻かれた痛ましい晴菜の手を見たからだ。
左腕意外の全てを欠損するほどの大ダメージを受けた晴菜。
エルマの【演目】により右腕は直ぐに再生させることが出来た。だが未だに脚の方は治っていない。
「うーん…傷の具合があまりにも酷かったから、治るのにはかなり時間がかかりそう。完全には戻せると思うのだけれど……」
エルマからもそう言われており、つまるところ暫く車椅子生活という訳なのだ。
「…………もう二度とそんな目には遭わせないからな…」
一度は死んだ自分を助けるために負った怪我。その為大和は固く固く誓う。
とそこでクイクイと頭を近づけるようジェスチャーをする晴菜。
言われた通りに大和は頭を近づける。
瞬間、問答無用で爆破された。
「!?」
「あ~もうッ!?うざったい!!?」
少し怒りを込めた表情で晴菜は叫んだ。
「馬鹿大和、アンタまたこの怪我で責任を抱え込もうとしたわね!!」
「ッ!?」
「図星って訳ね、全く………そんな気持ちになるな馬鹿!」
そこで晴菜は軽く面食らっている大和に顔を近づける。
「良い!?この怪我も!今無くなっている足も!覚悟の上でアタシは負ったの!一度死んだアンタを生き返らせたい助けたいという思いだけれど、どれもこれも全てアタシの単なるエゴそれだけよ!!だからそこでアンタが責任とかを感じんな!!」
「晴菜…」
「だから今後そういう何でも抱え込むのは禁止!あと接し方もこれまで通りの馬鹿の馬鹿丸出しの馬鹿で行くこと!OK!?」
「……流石に馬鹿3連はひどくね?」
「あぁん?」
「いえ何でも無いっス」
田舎の不良みたいな目つきで凄む晴菜に大和は何も言えなくなった。
とそこで晴菜も明後日の方向を向き聞こえないようにポツリ。
「抱え込みたいならアタシに言いなさいよ…一緒に背負ってあげるからさ」
「晴菜、テンプレみたいなツンデレ。ご馳走様です」
「そこは数多の先人達の様に難聴で行きなさいよ!」
合掌すると再び晴菜に爆破された大和。いつも通りに戻った事とやはり告白して良かったと思うのであった。
「おっとぉ~良い『愛』の匂いがするぞヨ」
とそこでエルマが部屋に入って来る。
入って来て早々大和と晴菜の姿を見た瞬間、ニタ~と笑い手を合わせる。
「おおぅ、匂いの元はここじゃったか……素晴らしきモノ、ごちそうさまです」
「なにアンタも合掌しているのよ、流行ってんのかソレ」
大和と同じように手を合わせたエルマに晴菜は思わずそうツッコんだ。
「ところで何かあったかぃエルマ?「部屋をワガハイ好みに染めてやる~」とか言って自室に引きこもっていたけどよ……」
正式にエルマは『創世神』の構成員となった。とは言っても基本は自由にするようで、自分の好きな時に大和達と行動をするらしい。
一応協力者のダイヤと同じ遊撃的なポジションで良いと大和達も了承をしたのだった。
「何かって決まっているじゃん大将、こんな長い長い戦いを終えた我々がやることは一つ…ズバリ終わりの宴会に決まっておりますぞ!」
「あぁ宴か!」
エルマの言葉でその存在を思い出した大和。確かにこれまでひと騒動終えたらやっていた。
今回は色々と長く濃かったせいか完全に頭から抜け落ちていた。
その単語が聞こえた瞬間、睦美が直ぐに間に入る
「エルマ、コチラとしてもやりたいのは山々ですが…今回は如何せん怪我の度合いが高過ぎます」
「ええ~良いジャン。エイプリルちゃん達の話を聞いて楽しみにしていたんだよワガハイはぁ~」
「ですから、宴会はみんなの怪我が完治し終えた後日という事で…」
「折角、愛しの門司きゅんも呼んで楽しもうと思ったのに…」
「……うぅ…っ」
「いや本当何やっているんです貴方は!?」
とそこでボロボロの門司を担いできたことに気づいた睦美。未だ負傷が癒えておらず目を閉じた状況で苦痛の呻き声を上げていた。
「ええ~門司きゅんなら大丈夫だよぅ……ほら今でも言ってるじゃん。「…ああ大丈夫だよ愛しのエルマ。問題ない…やろうぜ宴」ってね♡」
「どんな耳と目をしているんですか、未だ鮮魚コーナーの傷みかけの魚みたいなデロッデロッの状態にしかどうしても見えませんけれど!?」
「ふッ…それはまだ門司きゅん力が足りていないからですヨ軍師さん」
全く持って取り付くシマがない。困った睦美は大和に助けを求める。
「ちょっとこの狂人に何とか言って下さい馬鹿二号。彼女がいなければ貴方も含め詰んでいたとはいえ、一存で問題児を引き入れたのでしょ?リーダーの片割れとしてガツンと……」
「あっ、そうだリーダーは大和ちゃんだったね……ねぇお願~い♡生き返らせた恩義と思ってさァ~」
「冷静に考えて下さいよ、晴菜や門司はこんな怪我で貴方も一度は死んでいたんです。宴は逃げないんですから、後の楽しみに思いっきりやった方が……」
「ああそうだぜ睦美の言ったとおりだ」
「そうですそうです」
「だから今からやるか宴会ッ!」
「この二号ッ!」
そう言った大和に睦美は思わず詰め寄る。
「貴方もマジモンですか!?いえマジモンでしたね!?狂人ポイントが最近少なくなってきているんですからここで補填しなくても良いでしょうに!?」
「いや睦美の言う通りなのは確か正論も正論よ……だけどよぅ、怪我が完治した時にはこの勝利の熱は冷めているかもしれん。だったら心臓抉られて間もなくでも怪我でボロボロでも楽しく騒いだ方がいいんじゃあないかぃアネゴ?」
「宵越しの金は持たない短絡思考!さては思い出したからやりたいだけですね!
「まあ一回死んで人生のありがたみも感じたっていう得難い教訓の共有さ……という訳で宴の準備を頼むぜチェルシー!」
「かしこまりましたぁ~」
「ええぃ起きなさい一号。リーダーの片割れが狂っているんですからこんな時に正さないといけないというのに何を今も寝ているのです」
「睦美ちゃんも結構ひどくない?」
エルマのツッコみを他所に狂い始めた場を治める為睦美は門司を起こそうと頬を強く叩く。
「そうだった門司にも聞くのを忘れてたぜ。良いだろ門司?」
「………(グっ!)」
「この一号ッ!」
未だにぐったりしながらも薄っすら笑みを浮かべ親指を立てた門司に睦美はそう叫ぶ。
もはや止めるモノはない。
あっという間に豪勢な料理や飲み物が並び宴の準備は出来上がった。
「良い感じじゃあねぇの、これなら他の奴も呼ぶか…おーい婆さん」
「なにがだい悪童。でもその申し出は悪くないね…ならお言葉に甘えてウチの連中も呼ばせてもらおうかね」
「ああ呼べ呼べ~…というか、いっそのこと今回の全員呼んでみるか!」
「さんせ~い♪」
そんなノリで今回供に戦った全員を呼んだ大和。様々な伝手で直ぐに広まり。
あっという間に今回共に戦った全員が揃った。
「そいじゃあ乾杯~!」
「「「「「「「「「「かんぱ~い!!!!」」」」」」」」」」
こうして大和の音頭と共にとんとん拍子で宴は始まったのだった。
「はぁ…どうしようもない奴等ですね……」
あちらこちらでワイワイガヤガヤ騒ぎ始めた【領域】内を見て睦美は溜息を吐く。
「ほんとそうよね」
隣でそう肯定した晴菜。だけどその声色はとても嬉しそうである。
その様子にこれ以上は何も言わない事に決めた睦美。「全く…」とだけ笑みと共に零しグラスを傾けるだけにした。
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