プライベート・スペクタル

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第四話 一章

第二節

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「ぬぉおおおお!?気持ち悪ッ!?」
「ここ、怖いです師匠ォ!?」
右肩口に頭、腹部に右足、そしてその右足の本来ある部分に左手が付いている。
ホラーゲームのクリーチャーもかくやの悍ましい姿に思わずドン引く大和。エイプリルも思わず背に隠れるほどだ。
だがエルマはどこ吹く風で挨拶をした。
「ん?大和ちゃんにエイプリルちゃん、おはようさ~ん♡…んふ♡早速だけれどその美しくも良い師弟『愛』見させてもらいました♡」
「おいおいオイオイ門司。まさかお前がこんな設計図を一切見ないド素人の工作みたいにしたのか?」
大和の問いかけ、門司は軽く溜息を吐く。
「……違う、と言いたいんだがな兄弟。寝こけて鈍った勘を取り戻そうと朝の鍛錬をしていたら現れてな………全く他人の邪魔ばかり困ったものだ」
「何を言っとるんだぃ門司きゅん。剣ばかり振るうだけじゃあ飽きると思ってワガハイが一つ胸を貸してやったというのニィ♡」
「振るった斬撃にわざわざ飛び込むのは胸を貸してやるとは言わん。自殺志願って言うんだよ」
溜息混じりにそう返す門司。だがエルマは「いやん♡」と蠢くのみで一切懲りていない。
「…良いからさっさと戻れ、エイプリルが気持ち悪がっているだろ」
「ええ~折角の門司きゅんとワガハイの『愛』の作品なのにィ~」
「早くしろ」
「ちぇ~ッ」
有無を言わさぬ門司の言葉に流石に従ったエルマ。どこからともなく木槌を取り出すと自らを叩く。身体がバラバラになるのも一瞬、即座にパーツがくっつき元のエルマの姿に戻った。
「ふぃ~やっぱりこれダネ」
「すまなかったなエイプリル。怖がらせてしまって」
「い、いえッ!お気になさらず!!」
我が道のエルマに代わっての門司の謝罪にそう返したエイプリル。見た目も歳も隔てているのに反対の対応、これではどっちが大人かわからなかった。
それのついでにエルマが騒ぎ出したので、門司は刀の柄で小突いて黙らせておく。
と、そうこうしている内に3番目がやって来た。
「ふわぁ~~アふっ……朝っぱらから騒がしいわねぇ」
「睦美さん。晴菜さんを連れて来ましたよ」
車椅子に乗った晴菜とそれを押すミコであった。大きな欠伸をし眠たそうな目で晴菜はそう言う。
「おはようございます晴菜。ミコも連れて来てありがとうございます」
「いえいえ、早朝の自主練のついででしたので…」
実はエイプリルより早く起きていたミコ。睦美の頼みで晴菜を呼びに行っていたのだ。
「なんだよ晴菜。俺に言ってくれりゃあ迎えに行ったのにィ」
「ついさっきまで爆睡していたアンタが何言ってんのよ…ミコより早く起きてからそんな寝言叩きなさい」
チリチリな大和を見て、また布団が吹っ飛んだのだと察した晴菜。自分で察してあれだが下らないギャグのようだなと額を抑える。
それに……。
「同性の方が色々と頼みやすいしね…」
そう足を見た晴菜。その両の足は太ももから先が未だ存在い状態なのである。
先の戦いで左手以外の四肢が吹き飛ぶ程の重傷を負った晴菜。右手は直ぐにエルマの【演目】で何とか元に戻すことが出来た。だが足は未だである。
その為、現在の生活は介助が必要な程に難儀している状況なのであった。
「なんだよぉ~そんなの気にせず俺を使えって、二つ返事でするぜお嬢様。パシリから「キャッ♡」とすることまで何でもござれだ」
「あらそぅ、でしたら後ろ向いて下さる」
「あいよ!!仰せの通りに~ぃ!!」
ヘラヘラ顔のまま後ろを向いた大和を爆破した晴菜。
成りたてとはいえ恋人にそんな姿を見せたくない乙女心ぐらい理解してほしいモノであった。

そんな様子を眺めつつ門司は睦美に本題を尋ねた。
「…それで、何で今日に限って全員を健康優良児みたいに早起きさせたんだ鉄面皮」
いつもならこんな規律のとれた感じでなくもっと自由の筈だ。何かしらの理由がある筈でありそれを聞く。
睦美は特に勿体ぶる事も無く直ぐに答えた。
「そんなの簡単です『創世神わたしたち』に対しての客が来ているからですよ」
「客?」
「ええ、そして私たち全員での客と言えば…」
「私だ~よッ、悪童ども!」
そう言って扉が開け放たれ、入って来たのはヒミコであった。
「ばばあ、何だいきなり」
「何だ…とはいきなりな挨拶だね『鬼神』。寝ぼけ眼を擦って起きてこられたようで何より『フツノミタマうち』の医療班の手厚い看護も少しは役に立ったようだね…」
「おかげ様でな…その件についてだけは助かった」
「だけって…相変わらず口の減らない男だね…」
「それで、本当に何の用だぃ婆さん?」
話を本筋に戻し尋ねた大和。彼女が来たという事は何か用事があってのことなのだろう。
「だけどちょいと前にも言ったが、俺達は今療養中で休業中だぜ……頼み事なら悪ぃが他所をあたってくれや」
「何だい何だい、アンタも結構な挨拶じゃあないか『龍王』。私が来たらまるで厄介事が降りかかってくるようなそんな態度じゃあないかい」
と言いつつも、これまでの自分を鑑みて「まあ…そう思うのも仕方が無いのも認めるけれど…」と一人で呟いて続ける。
「そんなんじゃあないよ悪童ども、今回会いに来たのは、近頃私の頼みをよく聞いてくれるアンタ等を労う為さ!」
そう言って何かを懐より取り出すヒミコ。取り出したのはチケットの様な紙きれであった。
「コレはかのリゾート『アトランティス』の入場チケット、各種特典の付いた超々豪華版さ!アンタ等の療養の手伝い。このヒミコも一肌脱いでやろうじゃないかい!」
「―ッ!!?な、何だってェ~!!?」
「「「「「「……………………」」」」」」
大仰ともいえる程に大層な反応のエルマ。一方の大和達の反応は薄いモノであった。
「おやおや、何だいその気持ちいいぐらいのノーリアクションは?腹立つねぇ…」
「いや悪い、そういうつもりは全く無かったんだけれどよ…」
「ぶっちゃけれどよ………何だそれ?」
「えええ~ッ!?門司きゅん達知らないのォ!?あの『アトランティス』だよ『アトランティス』!」
「いや、そんな風に言われても知らんがな」
驚いた様子のエルマ。そこで親切に説明をしてくれる。
「い~い?『アトランティス』は【星】による超大型総合リゾート施設だよ☆」
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