プライベート・スペクタル

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第四話 一章

第三節

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『アトランティス』
それ自体が【星団】の名前であり、彼等が運営する施設の屋号。
所属する構成員全てが【星】であると共に一流のエンターテイナーやスタッフであり、自由解放した自らの座標の【領域】に【星】や『東京変革』後には一般人も招き入れその磨かれた腕を存分に振るいお客様にサービスをしている。
その行き届いたおもてなし精神に今やテレビでの放送もされ大人気となっているリゾート施設である。

「あまりにも大人気すぎて通常入場チケットだけでも、今やプレミアが付く程の価格でネット取引されているって噂だヨ!それよりも更に上、最高グレードの各種特典付きの超豪華版なんてェ~!!?」
「説明とご大層な反応リアクション感謝するよ御堂・エルマ。中々に危険人物だと伺っていたけれど、割と話せる奴じゃないかい」
「えっへん♪」
ヒミコに褒められ、エルマは心理的にも物理的にも鼻を高くした。
「成程な、そんな貴重な物をわざわざ俺達にくれるという訳か……」
「婆さんやるじゃん!見直したぜ!!」
「コレでようやく分かったかい悪童共…」
「「それで何の見返りを?」」
「やっぱり可愛げの欠片も無いねアンタ達……いやこれは私の責任かぃ?」
好意を素直に受け取れない捻くれた若人やまと達を見てそう呟くヒミコ。
そんな薄汚れた二人に晴菜は爆撃を叩き込んだ。
「全く……珍しく好意なんだろうし、病気じゃないんだから貰っておきなさいよ」
「少々棘のある言い方をするけれど、晴菜の言う通りさね…」
「そりゃあそうだよな婆さん。その好意ありがたく貰っておくぜ!」
少しばかり捻くれていたと反省した大和。ヒミコからチケットを受け取る。
「……という事は?」
「ええ、超豪華バカンスという訳ですね」
「イヤッフーゥ♪♪」
睦美の言葉に小躍りするエルマ。
そうして大和達『創世神』の面々は療養を含めたバカンスの運びと相成ったのであった。

そうして準備し迎えた当日。
『無間回廊』を用いて大和達は『アトランティス』へと向かった。
閉鎖空間だとは決して感じさせない、突き抜ける程に青い空に輝く青い海。
入った【領域】はそれらに囲まれたまるで一つの島のようであり、陸地部分にはホテルや様々なアクティビティを体験できる施設になっている。
【領域】の至る所で人々が楽しむ声が聞こえてきた。
「おいおいオイオイ、良いじゃあない、良いじゃあないのォ~」
その南国の楽園の様な開放的な【領域】に思わずそう口から洩れる大和。他の仲間も同じように目を輝かせている。
近くの真っ白い砂のビーチでは遊泳を楽しむ人や沖ではヨットやパラセーリング、様々なアクティビティで楽しむ人の姿が見えた。
「ぬぅおおオオオオ、チェックイン前にまずは海までぇぇえィ♪門司きゅん覚悟はい~いワガハイは出来ているゥ♪♪」
「はやるな馬鹿女」
「グゥエっ!?…もういけずゥ!!」
辛抱堪らずといった感じで、興奮し走り出そうとするエルマの首を掴む門司。そのまま嫌がる犬を散歩するかのようにズリズリと引き摺って行く。
お楽しみは後だと睦美や晴菜達もそんな門司達の後に続いた。
「しっかし、人も多いなァ…」
周りの人を見て呟く大和。とんでもない大人気とは聞いてはいたが、予想した以上の人の多さである。あくまで他人事だが運営している【星団】『アトランティス』といったか、自分達の拠点となる【領域】を改造してまで他者をもてなすその酔狂さには少々驚く。
ドン…ッ。
「あ、すんません……」
とそこで突っ立っていたからか、他の通行人とぶつかったようである。責は置いておいて大和はその人に謝る。
ぶつかってしまったのは一人の人間の少女であった。
白いワンピースに白い帽子を被っている。歳は見たところエイプリル達と変わらない十代程度、金髪碧眼からどうやら外国人のようである。
少女の方も大和の方を見てぺこりと頭を下げる。
「いえ、コチラも前を見ていませんでしたので……」
「では、失礼いたします」続けてそう言って再び頭を下げた少女。そそくさと足は屋にその場を立ち去った。
その少し後、開放的なこの場には似つかわしくない黒いスーツを着た男たちが続けて通り過ぎる。
「おい、こっちだ!」
「急げッ!」
そんな言葉を漏らしながら、男たちは少女の走って行った方向へと向かって行った。
「なんだありゃ?」
「どうしたんです師匠~?早く向かいましょう」
「あ、ああ…」
その後ろ姿に剣呑そうな雰囲気を感じた大和であったが、エイプリルに呼ばれたので、気を取り直してホテルの方へと向かう事にした。

そうして。
「「「「キャッホウーっ!!」」」」
チェックインを済ませた大和達は準備を整える。水着にその身を包みこみ、いざビーチへと飛び出した。
早速海へと飛び込んだ大和、エイプリル、ミコ、エルマの四名。日差しにより熱く火照った身体が海水により冷やされ。その爽快な心地よさが全身を駆け巡った。
「全く、こういう所はガキなんだから…」
一足遅れて残りのメンバーもやって来る。同じく全員が水着姿だ。
大和の行動に晴菜はやれやれと軽い溜息を吐く。
「まあまあ、ご主人もたまには羽根を思いっきり伸ばしたいという事ですよぉ」
「年がら年中伸ばしまくっていると思うのは気のせいかしら」
素早くパラソルやビーチベッドを広げ、休憩場所の準備をしながらのチェルシーに晴菜はそう返した。
一方睦美もチェルシーから手渡された飲み物を傾けながら門司に問いかける。
「そう言えば一号、貴方は行かなかったのですね。てっきり同類だから行くものだと…」
「俺を何だと思っていやがる鉄面皮。兄弟には悪いが冷静な俺はああいう風な先走りは…」
「本音は?」
「行きたいのは行きたいが、エルマの奴がいるからな…俺が同じようにすればアイツが余計な暴走をしかねん」
「…ふむ、貴方も中々に厄介なことになっているのですね」
心底煩わしそうにそう返した門司に睦美は心底同情するのであった。

「うふふ、エイプリルちゃん…それッ!」
「うわっぷ!?」
そんな後発組のやり取りなぞいざ知らず、こういう波打ち際で行う定番、水のかけ合いを始めたエルマ。エイプリルの顔に水をかける。
防御していなかったエイプリルは顔面へもろに浴びた。
「…しょっぱい!?しょっぱいですよ師匠ッ!?コレが海水なのですね!!」
「おッ、本当だ…」
驚くエイプリルに言われ水を口に運んだ大和。海水独特の塩辛さが口に残る。
【領域】内での疑似的な海の筈だが、どうやら本物と同じ海水のようである。海に入って海水の味がするというのは字面的には奇妙ではあるのだが…。
「こういう部分もこだわって作っているって事か…」
「いえいえ、それだけでは御座いませんよお客様」
軽く感心する大和へそんな声と共にビーチから一人の【星】現れる。
日焼けした小麦色の肌の上にアロハシャツを身に纏い麦わら帽とビーチサンダルを履いた恰幅の良い壮年男性の【星】である。
そしてこの男こそがこのリゾートを運営している【星団】『アトランティス』のリーダーにして総支配人ウィルソン・ポセイドンである。
先程のホテルチェックインの際に大和達も挨拶をしており施設の案内を買って出てくれたのだ。
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