プライベート・スペクタル

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第四話 一章

第四節

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「この【領域】を満たす水は実際の海と同様の塩分濃度で作成されただけでなく、我が構成員の【演目】により浄化と改造が施されている特別製。透明性の高い実際の海と同じように感じていただきたいというのもありますが、海水を用いたさる健康法でリフレッシュして欲しいという目的としても存在しております」
「さる健康法?」
「ふむ、おそらくタラソテラピーと言うやつですね」
ミネラル等の海水の栄養素を皮膚から直接取り入れる事で、身体によい影響を与える健康法である。
睦美の答えにウィルソンは「その通りイグザクトリー」と返した。
「この海に浸かっていただくだけで、通常のタラソテラピー以上の様々な効果が期待できます。様々なマリンアクティビティも併設し、楽しくリフレッシュが出来るので是非満喫していってください」
「一石二鳥ってことだな、そいじゃ遠慮なく楽しませてもらうぜ」
そう言って大和は遊んでいるエイプリル達の中に戻っていった。
続いてウィルソンは晴菜の方を見る。
「………何か?」
「貴方様のその足の欠損のこと、ヒミコ様より伺っております。先の戦いにて多くの国の為に余程の無茶をされたようですね…」
「そういう訳じゃあ…けどええ、まあ……」
今日会ったばかりの者に余計な事を…内心ではそう思いつつ晴菜はウィルソンにそう返す。
「ですがお任せください。我らが『アトランティス』のホスピタリティは世界一だと自負しております。医療やそれらに関する【演目】も多く、貴方様やここに居る皆様の身体も魂も見事に癒すことを約束いたします」
そうウィルソンはニカっと快活そうに笑った。
「差し当たってはお客様の御見足。そちらの方を何とかする為の者に声をかけましょう」
「あ~ッ!駄目だよォ、晴菜ちゃんの足はワガハイの担当だぞよ~!!」
「だったら、余計な段階も無く早く治しなさいよ…」
遊びつつもこちらの会話を盗み聞きしてそう口を挟んで来たエルマに晴菜はそう溢した。
「おやそうでしたか、先約がいるなら仕方がありませんな……でしたらそれ以外は如何でしょうか?タウンエリアにて我らのメンバーが『マッサージ処』を営業しております。そちらで日々の疲れを全身余すところなく癒すというのは?」
「あら、それは良いわね」
「はいはーい!俺、俺も一緒に付き合うぜ晴菜!!」
「なにアンタも聞いているのよ、折角来たんだからちゃんと元取れるぐらい遊んでおきなさい」
「お母さんか!?」
そんな事がありつつ一通りのマリンアクティビティを存分に楽しんだ後、大和と晴菜の二人はウィルソンの言っていた『マッサージ処』に向かった。

そして4話冒頭シーンを挟み…。
マッサージを終えた大和と晴菜が出て来た。
「ハァ~ッ~」
「気持ちよかった~」
熱した寒天の様な蕩けた表情の二人。施術された体力全快揉み解しデラックスコースオプション全部乗せ!90分のフルコースはこれまで溜まっていた疲れや身体の色々と余計なモノを全て消し去ってしまう程の効力。
二人は今、生まれ落ちた直後の様に全てが浄化された清々しい気分であった。
「心が…こころがせんたくされたようだ……」
「わね~」
そんなホコホコの気分のままエイプリル達と合流しに向かう二人。晴菜の車椅子を押しながら【領域】内を歩く。
(嗚呼、しがらみ全てを忘れさせてくれる非日常、『アトランティスここ』が人気になる理由が心の底から理解出来た……)
僅かな時でそう思った大和。そんなもの全く知らない、文字通りの無知だった過去の自分に飛び蹴りをかましつつ、また来ようリピートだと確定した。
だが、そんな気分も次の瞬間で一気に現実に引き戻されることになる。
ドンッ!
「―ッ!!?」
「おっと!?」
突如何者かが衝突する。
「何だ何だ、いったい?」
「どうしたの大和?」
「いやちょっと他人にぶつかって……今日で二度目だな」
結構な勢いであった。幸いにも超人的な【星】の体幹であり晴菜の車椅子も押していたので一切バランスを崩れる事が無かった大和であったが、その衝撃の方向を見る。
そこにいたのはこの【領域】に来た時、同じように大和にぶつかってきた少女であった。
「すみま……ッ、貴方は!?」
「おいおいオイオイ、またお嬢ちゃんかよ」
向こうもぶつかった相手が二度目だと知ったようで驚いた表情で大和の方を見た。
「大和、知り合い?」
「いや、ここに来た時にも同じようにぶつかってだな……」
「おい、こっちだッ!」
「―ッ!?」
説明途中におそらく追手であろう遠くから聞こえた声で身体を強張らせた少女。急いで立ち上がった。
「あの…何度もすみませんでした…ではッ!?」
「待ちな」
また急いで立ち去ろうとした少女を呼び止めた大和。鋭い声にビクリとしながらも少女は動きを止める。
「えっと、スミマセン。急いでいるのですが…」
「ああ、あの追手からだろ?お嬢ちゃんも色々と大変そうだな…」
「…ッ、そうなのですよ。では…」
「だから待てって…事情はどうか分からんが、ここでこうするのも何かの縁だ…」
「アンタ…まさか」
「だぜ晴菜、お嬢ちゃん俺達にもその件一丁噛ませな!」
そう少女に申し上げた大和。「やっぱり…」と晴菜は溜息を吐く。
一方の少女はとても驚いた表情をした。
「な、何を言っているのですか!?」
「こんなみんなが楽し気な場で、ただ一人大層穏やかじゃあない様子。こうも縁あって鉢合わせているのに知らんぷりじゃあ寝覚めが悪くて悪夢を見ちまいそうだ。だからこそ俺にも一つお嬢ちゃんの問題を手伝わせな!」
「だ、駄目です!無関係の方々にそんな危険な目を……それにこの【領域】に居るという事は休暇・観光中では!?」
「そうよバカ。アンタここに来た意味わかってる?療養のために来たのよ、それを見ず知らずの事情に勝手に首を突っ込もうとして…快復してからにしなさい」
「そうです。連れの方も良く言ってやってください!!」
「でも、アンタはどうしてもやりたいのね?」
「YES」
「はぁ…わかったわよ…本当にバカねアンタは…」
「恩にきるぜ晴菜!」
「ええぇぇエ~!?」
ため息交じりの晴菜の了承。予想外の展開に少女は驚く。
「考え直してください、貴方がたが思う以上に本当に危険なんですッ!?」
とそこで追手であろう黒服も少女に追いついた。
「ようやく追い詰めたぜ」
「さあ観念しな……」
五名程度で懐より警棒やスタンガンを取り出した黒服。ジリジリとこちらに迫る。
「追手の一人一人が超人【星】なんです!今からでも考え直してくださいッ!!」
「諦めなさい。こうなったコイツには何を言っても無駄よ…全くお節介焼きなんだから…」
「―ッ」
「でも、ある意味ツイているわよ。アタシ達も【星】だしそれに……この馬鹿に関わられた以上、アンタのハッピーエンドは確定したってことよ」
初めはその意味が解らなかった少女。
だが北斗がその連中を一瞬で叩きのめしたのを見て即座に理解した。

※次回更新予定は11月29日(土)となります。
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