プライベート・スペクタル

点一

文字の大きさ
164 / 170
第四話 一章

第五節

しおりを挟む
「―ッ!!??」
「なんだァ!?全然大したことないなァ?」
「アンタ、これまで相対してきた連中を思い出しなさいよ」
手応えを感じないようであった大和にそう返した晴菜。『旧支配者』、『巨神』、『時極の魔女』、これまで数多の強力な【星】や【銘付き】と相対してきた彼等にとってこの程度の敵は物の数でも無かったのだ。
「す、【星】ッ!?護衛に【星】なんていたのか!!?」
「そもそも護衛なんて……聞いていないッ!」
「しかも、コイツ等…もしかして」
想定外の助っ人に黒服たちも狼狽した様子を見せた。
「緊急事態だ!緊急事態ッ!アレだ!例のアレを出せ!!」
「わ、わかったッ!!」
仲間に言われ一人の黒服は何かの小型装置を取り出す。
リモコン型のそれのスイッチを押すとさらに約数十名の黒服が姿を現した。
「大和、コレって…」
「ああ、【天使】が使っていた道具。そいつに似ているな…」
一般人を移動させたりする【天使】の道具。それと非常に酷似していた。
「さらにだァ!」
次いでズボンに巻かれたベルトのバックルを一斉に押した黒服。するとベルトが増幅増殖し、彼等の全身を包み込む。
あっという間に数十体のベルトづくめの異形の群体が出来上がった。
「―ッ!?」
「んで、こっちは【星具】か…纏った連中の気配が強くなって行って事は、単純な基礎能力向上って具合かな?勘だけど……」
「叩きのめせッ!!」
一斉に殺到する元黒服の異形の集団。大和の分析と直感は当たっていたようで先に比べると明らかに速く力も強い。
だがそれでも大和達の敵では無かった。軽くいなし躱し反撃の打撃を撃ち込む。十二分の余力を持って対応する。
あっという間にベルトの塊で山が出来た。
「な、なんだよこの男の強さ……」
「は、半端ねぇ…」
「コイツは一体……ッ」
その大和の余りの強さに倒れながら呻く黒服達。
「つ、強い……」
少女も思わずそう漏らした。
「わ、わかったぞ!コイツ等『創世神』そのツートップの一人『龍王』だ!!以前の『時極の魔女』騒動の際に活躍していたッ!」
「『龍王』ッ!?じゃあその後ろに控えるおっかなそうな女は『爆炎』かァ!?」
「「おっかなそう」って何よッ!?「おっかなそう」って!?」
とそこで黒服達は大和の正体に気づいたようであった。そんな晴菜の言葉を無視する程にザワっと動揺している
とそこで…。
ピィ―!!ピピィー!!
遠くから聞こえる警笛の音。どうやら治安維持をする『アトランティス』の警備メンバーがこっちに向かって来ているようだ。
「ちぃ!騒ぎ過ぎたかッ!」
「一度退くぞ!」
憎らし気に呟いた黒服。舌打ち混じりに機器を取り出すとスイッチを押す。
すると足元に影の様な黒い丸が生まれ、黒服たちは吸い込まれるようにしてその中へと消えた。
「退いたか…」
黒丸と共に気配も遠くへと離れていくのを感じそう判断した大和。少女の方を見る。
「良かったな、連中退いたみたいだぜ」
「え、ええ……それより強かったんですね…」
「ああ大した自慢じゃあないけどな…」
これで連中も大和達が付いているという事で無理に手を出し難くなったに違いない。来るにしても次は考えてだろう。
そこで警笛の音がすぐそこまで迫る。
「そいじゃあ、とりあえず警備の人に保護してもらうか。心配せずとも俺も付き合ってやるからよ」
「はあ…コレでバカンスも終りね……まあ仕方が無いか……」
警備に会ったら事情聴取等色々されるだろう。バカンスはご破算だが、他のメンバーは楽しめているから問題は無かった。
「さっき誘いに来たエイプリルだけにゃあ謝らないと…」
そう言った瞬間…。
「………………………」
裾を掴まれた感触を感じた大和。見ると少女が俯き握りしめている。
何かを訴えかける目。それを見て大和は…。
「と、言いたいところだけどよぅ……こっちも折角のバカンスをお釈迦にするのは嫌だな…そういう訳で逃げるんだよォ!」
少女を連れてその場から逃亡することを決めた。
「えッ、えッ!?」
「公には何か頼り難い背景があるんだろ?だったら良いじゃあねぇか逃げようぜ!」
警護の人に事情を話し匿ってもらえばいい筈なのに、しないという事は何か事情があるのだろう。それがあの黒服連中の所為か少女の都合かそれはまだわからない。
戸惑う少女を引っ張り駆け出した大和。
晴菜はそんな大和に軽く溜息を吐きつつ、後を追いかけた。
「あ、そういや自己紹介がまだだったな…俺は呉成・大和。んで、車椅子に乗っているのが早乙女・晴菜。こう言っちゃあなんだがどちらも【星】だ…お嬢ちゃんは?」
「セラ……セラ・ジュピターと言います」
「なんか…どこかで聞いた事のあるような、無いような…イヤ駄目だなウン。セラか良い名じゃねぇか!」
「そう思ってます?」
「思っているよちゃんと!…」
「……ふふッ…」
漏れ出かけた言葉に戒めつつ笑みを浮かべた大和。
そんな大和の茶目っ気ある対応に少女、セラは薄すらながら初めて微笑みを浮かべのであった。

「という事があって、少々行動を共にすることになったんだよ」
「…よ、よろしくお願いします。セラ・ジュピターと申します」
その後、エイプリル達と合流した大和達。
事の流れを聞きエイプリル達は流石に驚いたような表情を見せる。
それ故、直ぐに大和に尋ねた。
「えっと…師匠」
「どしたよエイプリル?」
「師匠がセラ…さんとどのように知り合ったかは理解りました」
「そりゃ良かった」
「ですが本当に二度ぶつかったというだけなのですか?それだけで助太刀を?」
「ああ、そうだけれど?」
「…えっと、うぃ……そうですか……」
何とも言えない表情のエイプリル。
それへの助け船の様に次は睦美だ。
「おい馬鹿二号、今回ここに来た目的はわかっています?」
「当然、戦いで負った傷の療養だぜ」
「理解ってますね、でしたら……」
「何故そんなことをってか?……やりたくなったからだ!理屈や合理なんてない!」
もうすでに晴菜には言った事だが、改めて大和は言う。
「………ですが…」
「逆に目の前で困っている知り合いがいて、自分は助けれる力を持っているのに…「少々問題があるから無理です」って断るのか?」
「―ッ、それは…」
「悪いが俺ァ、そいつは自分で自分が許せなくなる。だからこそ俺は助ける。困っているセラをな…」
とても単純シンプルそれ故とても強い理由。
「なァに「協力しろ」とか「手伝え」じゃなく。チョイと都合でオレはバタバタするとただ一声かけておいただけだぜ。兎に角にもだ、俺は困っているセラを手伝ってやろうと思う」
だが、だからこそ大和だと思う。何故なら晴菜もエイプリルも、ここに居る全員が多かれ少なかれこういう大和のお節介焼きに救われてきたからだ。
「師匠…わ、私も師匠のお手伝いをさせて下さいッ!!」
大和の想いを聞いて協力を快諾したエイプリル。晴菜はモチロンであるが、門司やミコ、エルマの他のメンバーも笑みを浮かべたという事はそういう事なんだろう。
「……全く…」
仲間のお人好しさに軽くボヤいた睦美。だがその表情に嫌悪の表情はない。その理由を聞けば彼女も同じだからだった。
「…と言いつつもこのバカンスを諦めるつもりは一切ないぜ俺ァ。折角のこの機会、骨の髄まで楽しみながら連中を返り討ちにしてやるつもりだ」
「合間に少々刺激的な催しをするみたいなことか?成程…その方が俺達らしい」
「だろぅ?」
頷く門司にそう返す大和。
とそこで、ウィルソンがやって来た。
人員が増えた理由について不思議に思われない、何か良い口実カバーストーリーを考える必要があるなと大和は思考を巡らせることにした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ
ファンタジー
 ハートとお気に入り登録、ぜひぜひお願いいたします!  ↓簡単なあらすじは''もっと見る''へ!↓  ここは、剣と魔法の異世界グリム。  ……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。  近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。  そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。  無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?  チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!  努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ! (この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

処理中です...