プライベート・スペクタル

点一

文字の大きさ
14 / 167
第二章

第四節

しおりを挟む
「どうやらたった今、チェルシーさんの方は決着がついたようです」
「そうかい。そいつはお早いこって……」
睦美からの通信にそう返した大和。
チェルシーが勝利したものだと確信し、吹き飛ばした目の前のAへと視線を戻す。
「向こうでやっていたお仲間の戦闘。どうやら終わったみたいだぜ【天使】様……結果を教えてやろうか?」
「不要だ…どうやら敗北したみたいだな……それも殺されることなく生かされたまま」
「そりゃ当然。オタク等、殺しちゃあ世界からの刷新により強くなって面倒だからな……【天使オタク等】は殺すな…【ウチ等】の定石だぜ」
「その言い方…先程のお返しって訳か……」
Aの言葉に大和は「バレた?」と笑みを浮かべる。
「まあそういうわけだから俺もオタクを殺すなんてことはしないから安心してくれぃ…それよりも足の具合はもういいかい?」
「問題ない。たった今、完治した」
自らの回復力と世界からの支援の賜物なのだろう会った時のキレイな状態に戻っていたAの足。
大和も「だろうな」と呟く。
そんな大和を無表情で見据えながらある物を懐から取り出すA。
取り出した物……それは大型の自動拳銃と筒状の何かであった。
「へぇ…オタクはBさっきのと違って武器を使うんだ」
「先程の反撃で貴様に素手は危険だと認識しただけだ…」
「成程ね…それにしちゃあ装備が貧弱すぎやしねーかぃ?拳銃ハジキはまだわかるがその筒状の奴は何?懐中電灯?」
…ブゥン!
「……遠い昔遥か彼方の銀河系でって奴ね…」
大和の問いに答える様に筒状の何かを振るうA。先端から発せられた青白い光の剣により電柱を両断する。
「回復まで待つ愚策とその嘗めた口ぶり……きっちりと後悔させてやる」
「そりゃ是非とも……行くぜッ!!」
スッと重心を落とし先程とは逆、今度は仕掛ける大和。
地面をヒビ割る程の踏み込みで身体を加速し高々速度で接近する。
初手で痛感したからか、バックステップの形で大和から距離を取ろうとするA。跳びながら大和に照準を合わせ拳銃の引き金を引き絞る。
Aの変わりに大和に向かって行く銃弾。
直感と経験でこれは【星】にも通じる弾丸だと即座に悟る大和。身を捻り躱す。
そして次の踏み込みからサイドステップと緩急を加えたジグザグ軌道に変化させる。
「フッ!」
手首のスナップにより放つ光剣の一薙ぎ。大和の首を捉える。
だが首にあたる直前、大和は姿を掻き消す様に動き即座に右の死角へと回りこむ。
と同時に鞭のようなしなりの蹴りを撃ち込んだ。
それを肘で打つように迎撃するA。
大和も弾かれた反動を利用する形で回し蹴りへと続ける。
光剣で受け止めようとするA。即座に足を引っ込める。
再びバックステップで距離を取ろうとするA。だがそれを許さないと合わせる形で大和は接近戦を仕掛けた。
無機質な機械の様に的確に拳銃と光剣を振るい命を狩ろうとするA。功夫のような洗練された体術で踊る様に光剣と銃弾を躱し受けながら的確に痛打を浴びせる大和。
まるで一つの作品のような攻防一体のやり取り。放っておけば永遠に続きそうな応酬。
だがその終焉はあまりにも早く唐突に訪れる。
攻防戦で生まれたわずかな隙…それを突いて光剣の柄を叩き落とした大和。
ほぼ同時に弾倉が空になった拳銃を捨てるA。付近で戦うBのようなボクシングスタイルの構えをとる。

【演目】『天使・戦技 天使アッパー』

衝撃波により地面が砕ける程の威力を持つ渾身のアッパーカットを放つA。
だが、大和はそれを軽々と躱すと、合わせるように腹部へと掌底を撃ち込んだ。
「ぐぶッ…!」
口から血を噴き出すA。
吹き飛ばされるような外部への派手な一撃でなく内部にジワリと染み込むような打撃。それによって内臓がしっちゃかめっちゃかにシェイクされたが為である。
【天使】特有の痛覚の鈍化ゆえにあまり感じることは無いが、第三者が判断できるなら今の打撃で内臓の2つか3つは駄目になっていた。
「…これが、【演目】『龍王りゅうおう』か……大した威力だ…」
「『龍王』じゃあなくて『龍桜りゅうおう』だぜ【天使】さま。アンタおそらく今、キングの方で呼んだろ?桜だぜ?」
「そうか…改めよう……」
主となる世界の有する情報から聞いてはいたが、実際に受けるとそれ以上に恐ろしいものだと痛感するA。
だが大和は……。
「あと一つ勘違いしているみたいだけれどよ……俺はさっきの攻防で一切【演目】を使っちゃあいねぇよ」
「………何だと?」
大和の言葉に【天使】としては珍しいとされる驚愕の表情を見せるA。
「アレは…『龍桜』ではないのか…?」
「ありゃただの体術だよ。いうならば基本的な体捌きって奴だ……『龍桜』も同じく体術が基礎となる【演目】だから困惑するだろうけれどな……」
大和から告げられた事実に一瞬足元がグラつくA。何とか耐えようと踏ん張る。
と同時にある疑問が生まれた。
「だったら【演目】を何故使わない?【演目】を使用する方が早く決着がついたはずだ?」
「……?オタクはなに言ってんだぃ?」

「オタク相手に『龍桜』をっちまったら掠っただけで殺しちまうだろが!俺ァおたくを刷新させるのは御免だぜ」

「……な………」
「だろ?」と笑みを浮かべながらそう返した大和に思わず絶句するA。
銘に違うことは無い。まるで龍が如く強さに王の如き傲慢さ…だが、否定できない。
先の戦闘で十二分に強さが証明されているから…。
(糞ッ……次は……必ず……)
そこで身体内部破壊による肉体の限界を悟るA。
「次はこの憎たらしい【星】は必ず潰す…」そう誓いながら、意識の接続が途切れたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

女神の白刃

玉椿 沢
ファンタジー
 どこかの世界の、いつかの時代。  その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。  女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。  剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。  大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。  魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。  *表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*

時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。 なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。 銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。 時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。 【概要】 主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。 現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

合成師

盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

現代ダンジョン奮闘記

だっち
ファンタジー
15年前に突如としてダンジョンが登場した現代の地球。 誰が何のために。 未だに解明されていないが、モンスターが落とす魔石はすべてのエネルギー源を代替できる物質だった。 しかも、ダンジョンでは痛みがあるが死なない。 金も稼げる危険な遊び場。それが一般市民が持っているダンジョンの認識だ。 そんな世界でバイトの代わりに何となくダンジョンに潜る一人の少年。 探索者人口4億人と言われているこの時代で、何を成していくのか。 少年の物語が始まる。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

処理中です...