プライベート・スペクタル

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第二章

第八節

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「はあ……」
大きく溜息を吐くエイプリル。
【領域】を飛び出した彼女は今、とある夜の繁華街を歩いていた。
ただその足取りは重い…。
「一体、どのようにすれば……」
呟くエイプリル。その言葉の理由は明白、先の戦闘についてである。
大和に役不足であると【領域】へと引っ込められたエイプリル。その後は彼の言葉通り睦美と共に大和とチェルシーの戦いを観ていた。
門司と伽藍の戦いとは違う。初めての【天使】及び【銘付き】との戦い。そこで得たのは多くの戦いの経験と、役不足だと言われるに足る理由であった。
踊る様に繰り広げられる高速の身体捌き、互いに魅せる様に繰り出される【演目】。一瞬の隙を生み出させ、そこを上手く攻め込む戦略眼に勝負勘。
まるで戦い自体が劇の中の一つの出し物のような観客を魅了する何かがあった。
それを見てエイプリル自身……。
(足りないものが多すぎます)
自分は【星】。名はエイプリル。
そう認識したのが最近、それ故の実戦経験の乏しさは如何ともしがたいのはわかっている。
超常の技術【演目】はどうかはわからないが、その経験は場数を経て身についていくのであろう。
だからこそ長い時間がかかることは明白であった。
「師匠達は、焦るなと言って下さるのでしょうね…」
まだ彼らの仲間として長い時間は過ごしてはいないが、彼らがそう言ってくれることだけは確信できる。
「ゆっくりで良い」その言葉は救いではあるのはあるが…エイプリル本人は認めることが出来ない。
これまで共にした行動、自分は守られてばかりで彼らに対してまだ何も報いていないのである。
自他共に若輩の身は重々に承知している。だからこそ甘えるだけでなく彼らと肩を並べ共に戦いたいのであった。

『大丈夫だよ将軍…アンタは必ず強くなるさ……』
「………ッ!?」
ふと聞こえたそんな声。エイプリルは辺りを見回すが聞こえるのは夜の繁華街特有の喧騒のみである。
「ただの聞き間違い…ですか……」
そう断じるエイプリル。
よくよく考えれば、聞こえた声は相手を「将軍」と呼んでいた。これまでエイプリルはそんな名で呼ばれたことは無い。
(おそらく…この繁華街でそのようなあだ名の方がいるのでしょう…そうに違いありません)
違いない…違いない………のだが、先程の声はなにかなつかしさのようなものが感じられた…。
「いけません……そんなことよりも早く皆さんのお役に立てる方法…」
声を振り払い本題へと戻るエイプリル。強くなれる方法を考える。
とそこで何かにぶつかった。
「…きゃっ!?」
可愛らしい悲鳴と共に尻もちをついたエイプリル。
「す、すみませんッ!よそ見をしておりました!!」
考えすぎたことで前すらも見ておらず、それにより通行人とぶつかったようである。自身の不手際からエイプリルは兎にも角にも謝罪をする。
「いえいえ、大丈夫ですよ……」
そんなエイプリルの謝罪を笑みで応じてくれた男性。「立てますか?」と手を差し伸べてくれる。
折角の好意を無にしては駄目だとエイプリルは手を取り立ち上がった。
「あ…ありがとうございます…ぶつかったのはこちらなのに……」
「いえいえ気にしないで下さい。躱せなかったこちらにも問題がありますから」
そう応じる男性。
白のワイシャツと茶のズボン。トレッキングブーツに灰の外套を身に纏い。適度に伸びたざんばら髪と無精髭を蓄えた牧歌的な雰囲気の男性であった。
「では…失礼いたします」
これ以上通行人の時間を煩わせては駄目だと軽く会釈をしそのまま横を通り過ぎようとするエイプリル。
が、丁度その時。エイプリルの腹が可愛らしく鳴った。
「…………………」
「……えっと、お腹が空いているようですね…」
「…………うぃ…」
恥ずかしさから赤面した表情で消え入りそうな声で頷くエイプリル。
そういえば食事をしたのは大和との買い出しの際のコロッケが最後であった。
「では……」
ここにこれ以上いるのは恥ずかしく想い。小走りでその場を去ろうとするエイプリル。
「ちょっと待って下さい」
そんな彼女を男性は呼び止める。
「何で…御座いましょう?」
「いえいえ、ここでぶつかったのも何かの縁…よろしければ一緒にご飯でもどうでしょう?ご馳走しますよ」
「のぅ、私は……」
そこで二度目の腹の虫の声。
先程よりも大きなその音に流石のエイプリルも「でしたら…はぃ……」と消え入りそうな声で頷いた。
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