プライベート・スペクタル

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第二話 第一章

第四節

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小高い丘を基盤に和の意匠を盛り込みながら最新鋭の和風家屋が建ち並び、所々に存在する寺社仏閣や門のように建つ鳥居が自らの存在感を主張する。
古都のような風光明媚さがありながらも現代の技術も映える景色。和モダンというものを都市の街並みに落とし込めばこうなるのであろう。そのような景色であった。

「へぇ…【星】に覚醒っても来る機会が無かったけれど…結構いい【領域】じゃない」
「ああ同感だ…俺は何度か来たことがあるが、やはりここは何かが良いな……心の奥底に良さを感じさせる何かがある」
「それは、貴方がた日本出身の者達の魂に語りかけるように創り上げておりますから…」
とそこで声をかけられた大和達。
声の主、それは妙齢の男性の【星】であった。大和達には見覚えがある。彼はヒミコの従者の一名である。
その証拠に身を包むフォーマルな衣装の所々、そしてオールバックの髪型で見える額の一部には『フツノミタマ』の紋章である桜の花に勾玉と剣が刻まれていた。
「こちらの景色は素晴らしき我が国日本の理想を表しているからです。最新と最古をともに包容し新しき世を作り上げる目標を表しているからです。故にこの【領域】に愛着を得るのです。出身国が理想郷というのは誰しもそう感じるでしょう?」
「理想郷かはアレとして、貴方が案内の者ってわけかい?」
「いかにもで御座います『龍王』殿。我らが女主人ヒミコの命を請け参上仕った次第です」
「そうか、んじゃさっさと連れて行ってくれねぇかい?此処でこの【領域】の講釈を聞くのも悪くねぇが…あの婆さんも待っているんだろ?」
「元よりそのつもりで御座います…ささ此方へ…」
そう言って先導する従者。大和達も後ろに付いて行く。
「……ふむ、それにしても賑わっておりますね…我々の【領域】とは大違いです」
道中、【領域】内の活気を見て呟いた睦美。【星】であるのは共通だが、老いも若きも様々な者達が忙しなく動いており、さながら町のようであった。
「【領域】の在り方自体が異なるからですよ軍師殿。多くの【星団】は仲間やその構成員のみが利用するモノですが、此処は日本に存在する全ての【星】に広く門戸を開けております。故に様々な出自の者達が集まりこの活気となっているのです」
「一種の『無間回廊』のようなモノですか…防犯面の意味では多重座標を設定するなどの手段は必要ですが、利は大きそうです」
「お考えの通り一長一短ですよ軍師殿。集まるが故に問題も多数起こるのが実情です…ですが、大規模故にアチラの様なことも可能となるわけです」
従者の紹介の先。そこには多数の【星】が広場のような場所で格闘訓練を行っていた。
「我々の中で戦闘を担っている者達です。多くは自衛隊や警察等の関係に表向きは従事しており有事に備えております。昨今では我々が公になったという事で一般人の部隊と連携を取れるような仕組みを作り上げております」
「ふむ、運用できる人員が多い故の考えですね…我々のような少数とは形自体が異なると…」
思うことがあるのか従者とそんなやり取りをする睦美。
そうこうしているうちに目的地となる【領域】最奥の邸宅『フツノミタマ』本部のヒミコの部屋に辿り着いた。
「失礼いたしますヒミコ様。『創世神』一行を連れて参りました」
『入りな』
中からのヒミコの声に部屋に入る大和達。
木張りの壁と床。修練場を感じさせるような静謐の空間。
その奥にヒミコはいた。
「よく来たね悪童ども」
「へへッ…相変わらずだな婆さん」
「残念なほどに元気そうで何よりだ…」
禅を組むような姿勢でそう言ったヒミコに返す大和と門司。互いに笑みを浮かべる。
「減らず口が多い連中だよ全く……こっちに来な、お前はもういいよ」
「かしこまりました、失礼いたします」
従者を下がらせ大和達を招いたヒミコ。置かれてあった座布団にそれぞれ腰を掛ける。
「元気しているようだね悪童ども。聞いたよ、最近依頼を引き換えで【星具】を集めまくっているそうじゃあないかい」
「まぁな、廃品回収の一環みてーなもんさ…そっちも御上に協力や口出しして随分とこの国の毒抜きデトックスに勤しんでいるらしいじゃあねぇの。汚いことしていた官僚や政治家連中を随分と炙り出して排除したみたいで…」
「断捨離ってやつさね…これからの時代、余分のモノ蓄えて渡れるほど甘くないからね……まあお互いに手前の目的に邁進しているようで何よりさ…」
「それで…俺達を呼び出して一体何のようだ?…事前に聞いたが、件の集団脱獄の件じゃあないだろうな?」
「話が早くて助かるね。そうさ…その件についてアンタ等に一つ頼みごとをしたくてね」
「想定通りか…何だ?俺達にかの国との良好な関係の為に一肌脱げと…?」
「そんなのじゃあないさ…あの傲慢を捏ねて形にしたような国なんてどうでもいいからね……アンタ等は脱獄した連中がどこに行ったか知っているかい?」
「さぁな…自分の故郷にでも帰ったんじゃあないの?」
「それならどんなに良かったことか…脱獄した連中。その多くがこの国に入りこんだんだよ」
「アレまぁ…人気じゃあねぇかい。しかしどうしてまた?」
「ふむ…このタイミングで脱獄し散らばることなくやって来る…理由は『東京変革』ですか…」
「正解。【わたし】らの関係での大きな事案はそれ位だからね…連中はそれに興味を持って脱獄したんだろうね…」
「ヒミコ様。そんな近所を散歩するみたいに脱走なんてできるものなのです?」
「可能だろうね…収容したとした側は思い込んでいたんだろうけれど、元々あそこは娑婆で悪事をやり尽くして燃え尽きた連中が収容されてやっていたような状態だったからね…鎮圧するセキュリティも対【星】のモノを入れているが人員や練度を見てもお粗末なものさ…やる気になった連中からしてみれば紙切れの如しだろうね…」
「新しい展開になった世の中に興味を持ちやる気に連中が脱獄してまでやるのはそうなった記念すべき聖地への巡礼ってわけか?案外可愛らしいことするじゃあねぇの」
「連中にそんなもの求めて欲しくないさね……何よりも問題なのはそんな危険存在がダース単位でこの国に入り込んだという事実さ」
「んで、その連中を俺らに鎮圧捕縛してほしい為に呼んだってわけか?…どうにも人使いが荒いこって」
「いやアンタ等には…『フツノミタマうち』の捕縛部隊の援護を任せたいのさ」
「ん?」
予想とは異なる答えに大和は思わず首を傾げた。

※GWにもう一節上げます。5/4予定です。
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