プライベート・スペクタル

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第二話 幕間2

幕間2

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誰しもが知るMがつくハンバーガーショップ。その一店舗に妙な客が流れ込んできた。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
「このビックバーガーって、イうのを貰うゼ。4つナ」
「お外でお召し上がりになりますか?それともこちらで…?」
「コチラだ」

「ヘェイ、店員あいつら俺達を追い出そうとしていやがったゼ」
注文品運搬用の立札をテーブルの上に置きながらジャックはメンバー達に愚痴る。
「金を払えば誰だって客ダロ?あんな目で見られる覚えはネェゼ」
「ごご…ごろす?……ごろそう!いま殺ろヴ!すぐ殺ろヴ!!」
「ん、ん~それはあまりお勧めしませんぞタンドラ殿。まだ料理を楽しんでもいないのに殺してしまえば、せっかく得た金の払い損ではありませんか」
「ヴ……じゃあちょっど待づ」
スォーに窘められて矛を下げるタンドラ。尤も彼らの得た金というのは、一等地の豪邸にいた金持ち宅に侵入し、家主を含めて惨殺して得た金銭ではあるのだが…。
「………………」
「ん、ん~H殿?一体どうしたのです?何もしゃべらずに怖い顔をして…」
「いや…何か少し腹立たしいことが起こったような気がした…」
「ん、ん~?よくわからないことを仰る」
そう断じるスォー。まあ元H3050も詳しくはわからないので何とも言えない。
「それよりも……まだ名前で呼ばないんだな……」
「ん、ん~当然ですぞH殿。貴方の賜った【銘】。それを聞いてしまった以上、なれなれしく名を呼ぶなんて畏れ多くてとてもとても……」
「ヴん!アンダは合衆国が主な【星】なら誰じもそう思っで然るべぎの格だがらな」
謙遜をするスォーとタンドラ。
本来ならまだ番号呼びをしている時点で殺してやろうと思うが、謙遜に偽りがないことを理解できるので目をつぶる。
「ヘェイ!それよりもお前等これからドウする!?」
全員に問いかけるジャック。これからというのは勿論、包囲網の件である。
「この島国の連中。着実に収容者連中を狩っていやがルゼ!このわずかな時間で相当な数の連中が捕縛されたラシイからナァ!!」
包囲網設置から一週間程度。そのわずかな期間で多くの収容者が捕縛された。打算で作り上げた収容者同士の情報網でも捕縛情報は続々と入ってきている。
もう全体の半数以上は捕縛された状態であった。
「ん、ん~『フツノミタマかれら』がこの国を統括出来る程巨大な勢力であることは理解できていましたが、正直ここまでとは予想外でしたな…包囲網の制度も驚愕ですがまさか一般構成員がここまでデキる…とは思いもよりませんでしたぞ」
先の大戦で完膚なきまでに敗北しそこから我らが合衆国に牙を抜かれ、平和ボケにさせられたと思っていた。
それ故に大したことは無いと踏んでいた収容者達。
だが、結果は全くの逆、戦闘慣れ殺し慣れしている自分達が一方的にやられていた。

「………………………」
「ん?『それに関しては協力関係にある手練れ連中に後ろに控えてもらってピンチになったら手助けしているから』ダッテ?ヘェイ!!そんなことはわかっているぜ!!」
何か言ったのかドロップに対して噛みつくジャック。それを考慮していてもこの結果なのが問題なのである。
それに…。
「ん、ん~。しかも我々を部下の方々の戦闘経験を稼ぐ為の試金石にされているとは思いもよりませんな」
向こうはまだ支援があるが、それでも斃し斃され双方命を張っているのは事実である。その状況でそういう成果も得ようだなんて……おおよそまともな考え方ではない。
あの愛国狂にはこの国の国民以外の存在は等しく利用する存在なのであろう。幼子のナリでそんな思考に至ることに驚愕や怒りよりも先におぞましさを感じずにはいられなかった。
「ああ、そういう部分を経て最初に戻ルゼ。この包囲網一体どうする?」

前にも述べたように、包囲網を突破するには構築した土台勢力の壊滅が絶対である。
そのためには個人ではほぼ不可能。そのために彼らは戦力の向上の為に打算的にでも連合となっているのである。
連合を組んだ当初はこれだけの戦力なら『フツノミタマ』など歯牙にもなく、助っ人の『龍王』や『鬼神』等の手練れ相手でも余程でない限り遅れは取らないと思っていた。
だが、『フツノミタマ』の想定外の戦力の高さにこの目論見は難しいものだと感じた。
戦力が想定以上ならそれに拮抗するようにこちらも他の収容者と協力を図るというのが最善なのだろう。
だが、収容者は想定以上の速度で捕縛されて数を減らしている。今から奔走しても遅いのだけは間違いないだろう。
戦力増強は難しく。さらに追手はどんどんと迫ってくる。真綿で首を締めるような状況であった。
「ん、ん~。八方塞がりですなぁ…このまま大人しく投降でも致しますか?」
反対はんだいッ!まだ俺だちは満足に殺じでいないッ!!」
「ヘェイ!タンドラの言うとおりダゼ!何日和って寝ぼけたこと言ってんダ殺すゼ!!」
「ん、ん~。冗談でございますよう、本気にしないでくれますかな?それに再び捕まったら次に出てこれる希望も望み薄でそうですしなぁ」
以前と違い【星】の存在が公になった世界である。以前のようなザルだけは決してない。必ず対【星】の施された厳重な牢獄に送られるであろう。
「ん、ん~ですが我々の取れる方法もほぼありませんぞ」
「確カニ…ウーン………」
「………………………………」
「ヘェイ、ドロップ!!それが出来たら………こんな悩みなんザ…」
頭を捻るジャックに途中で聞こえたドロップの言葉。
途中で言葉を失ったジャック「続けテクレ」とドロップに意見を促した。
「………………………………………」
「…ヘイヘイヘイへーイ!イイじゃあねぇカ!名案だゼ!!」
ドロップの意見に思わず叫ぶジャック。立ち上がり椅子を倒す。
「ん、ん~?何を仰られたのです?」
「お、俺だちにも教えろ!!」
「現状を打破する為の計画プランだぜ!しかも俺達好みの最高なモノだ!!」
「「ッツ!?」」
ジャックの言葉に思わず表情を強張らせるスォーとタンドラ。詳しく聞く為にドロップへと耳を傾ける。
「……………………………………………」
「ん、ん~?これは中々によい案ですな」
「ヴんッ!それも俺の大きなやり方だッ!!」
「だろう?」
乗ったスォーとタンドラ。ジャックも笑みを浮かべる。
だが、これまで傍観に徹していた元H3050は口を開く。
「だが、この案じゃあ少なくとも数名は犠牲にしなければいけない案だ。それは良いのか?」
「………………………………………………………」
「…それは本当か?」
顔色が変わり問いかけた元H3050。ドロップはサムズアップで応じる。
「わかった。それなら良いだろう」
「決まりダナ!」
満足が出来そうな形で話が纏まり楽しそうな笑みを浮かべたジャック。
とそこに店員が商品を持ってきた。
「お待たせいたしました。こちらがビックバーガーセットです…ッピ!?」
商品をテーブルに置くと同時に店員を剣で突き刺したジャック。脊髄を巻き込む形で胸部を貫かれた店員は力無く崩れ落ちる。
「ヒャア!それじゃア、前祝いと行こうゼ!!俺達の生き様というものをきちんと知ってもらおウ!!」
「ん、ん~それは良いですな、パァっと盛り上げるために私も一肌脱ぎましょうぞ!」
そう言って近くの客に手をかざしたスォー。客の首がポトリとおち血が噴水のように噴き上がる。
事ここに至り悲鳴が至る所から上がりパニックになった店内。店員も客も一目散に逃げようとするが、出入口は全て凍らされ数センチも開かなかった。
「やっど良いんだ!よし殺ぞう!!」
待ってましたと言わんばかりに楽しそうな表情を浮かべたタンドラ。
こうして見境なく殺しまくるメンバーを見て、ため息を吐きハンバーガーの包みを開けた元H3050噛り付く。
阿鼻叫喚の悲鳴をBGMにしつつ、故郷よりも量が少ないなと思いつつ口の中に広がるケチャップの味を楽しんでいた。
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