プライベート・スペクタル

点一

文字の大きさ
91 / 170
第三話 第一章

第七節

しおりを挟む
何も見えない。白の空間。その中を漂う大和。
ふと声が響く。
「気がついた?」
波のような音に混じって聞こえた声。返答かえそうとしたが身体が消えてしまったように輪郭がぼやけ声を出すことも出来ない。
「心配しなくてもいいよ、ここは死後の世界じゃあない。君の意識と無意識の間、夢と現の境界みたいなものだ…そこに私がお邪魔しただけだよ」
「何の為だ」と疑問を浮かべた大和。その疑問を見透かしたように声は応える。
「いやぁねぇ、ただ単純な動機さ…見たかったんだよ、私に会おうと考えている大馬鹿君は一体どんなのだろうって?」
「……………!?」
「答えなくても良いさ…それに君はもうすぐ目覚めるから……」
何か言いたげな大和にそう返す声。
意識が覚醒に近づいていくのを感じ始める。
「そろそろ最後だね、だったら一つだけ……この戦い君達が勝てば目的に大きく近づくことが出来る。踏ん張ってね…」
「じゃあまたね…」その言葉を最後に大和の意識は現実の水面へと浮上していった。

「待てよ!もうチョイ話そうぜ!!」
そう叫びながら飛び起きた大和。
辺りを見回すと『創世神』の拠点【領域】内。そこに作り上げておいた医務室のベッドの上であった。
「おやおやぁ、お目覚めですかぁご主人」
大和の声を聞いたからか医療品を抱えながら医務室に入って来たチェルシー。どうやら看病をしてくれたようである。
「医務室を作られたは良いのですがぁ、皆様丈夫過ぎて開店休業状態…ですがようやく日の目を見られましたねぇ」
「何日眠ってた?」
「凡そ3日程度。ボロボロの状態で海に浮かんでいたご主人を地元漁師の方々が見つけましてねぇ。『フツノミタマ』がそれを保護し私の元に届けたのが2日前、それ以降ずっと眠っていて今に至るというわけですねぇ」
「傷の度合いは?」
「見立てでは完治はまだですが動くには問題ないかとぉ……胸の刺し傷も心臓にまで達しているほど深いようでしたがぁ命に別状はありませんしぃ」
「そうか…」
「『時極の魔女』の一件は余すとこなく聞きましたよぉご主人。どうもかなりこっ酷くやられたご様子……これ程までの状態は高校時代、紛争地域に向かわれた時以来でしょうかぁ?ですがその時もここまではならなかったですねぇ」
「それより他はどうなった?門司は?エイプリルは?」
「大丈夫だ兄弟。全員いるぞ…」
「うぃ」
大和の言葉に応じる様に開け放たれる仕切りのカーテン。
そこには門司達全員が同じようにベッドの上にいた。
「無事だったのか!?良かった!」
「ああ、負けた俺達だったが…あの後トドメを刺される事無くなぜか全員解放されてな式典会場まで戻されたんだ……連中は消えて俺達は『フツノミタマ』に保護され兄弟より一足先にベッドの上ってわけだ…」
「ふむ、貴方が来たのは我々の1日後ぐらいです。地味に貴方が一番の重傷でしたからね…舞台を躊躇なく破壊するなんてイカレた行為はどうかと思いましたよ、あのまま異空間の狭間に永遠に漂流なんていうのも最悪ありますから…」
「全くよ、どうなるかと思ったわ……グスっ」
小言を言う睦美にべそをかいている晴菜。負傷の大小はあれどそれぞれ元気そうな姿を見て大和は安心した。
とちょうどその時、三日も何も食べていなかったからか腹が大きく鳴った。
「おやおやぁ、他は兎も角お腹だけは元気なご様子…ひとまず無事も兼ねて皆様お食事にいたしましょうかぁ」
「ああ頼むぜ」
大和の言葉を待っていたかのように「かしこまりましたぁ」とチェルシーは恭しくお辞儀をした。

「しかし負けたな…」
ベッドの上の食事会。事実を噛みしめるように門司は告げる。
敗北。戦いに生きる上で必ず起こる宿命ではあるが、その言葉にエイプリルとミコは顔が曇る。
「これまでの戦いその中での連戦連勝…俺達は知らず知らずのうちに自惚れていたのかもしれない…」
「かもしれないわね…『旧支配者』に『巨神』辛勝ながらも格上から勝利を奪ってきたから、そう思ってしまっていたわね…」
「俺達はこのまま【星具】を何の障害も無く集め続けるモノだと思っていた。だが違った…今のこの段階、コレが俺達の今の実力って事だ」
「ふむ、チェルシーに頼み込んで機材を持ち込んでもらい少々調べ物をしました……あの外交会談、秘密裡で行われていましたが彼女達が市井へ公にしたのでしょう。宣言も含め会談内容の全てが有名動画サイトやSNSに上がり拡散されておりますね……日本、合衆国双方はその対応と説明で追われているようです…それとこのような動画も……」
睦美が掲げたタブレットに映った動画。
そこにはトワが映っていた。
『御機嫌よう全世界の皆々様。御法川・トワと申します』
「アイツ何のつもりだ?」
『先程にアップしました動画、ご覧になりましたでしょうか?アレは作り物でもなんでもございません全てが真実です。私達【星団】『魔女の旅団』は宣言通り世界における領土の一部割譲を求めております…』
言葉と共に現れた世界地図、所々赤く塗られている。おそらくここが求めている土地であろう。
『もし断ればどのような行動をとるか…それは先の動画にて確認いただいた通りです。アレは要人のみを狙ったモノ、それに一部妨害が入りました。その妨害も倒れ、狙う矛先を無作為な一般人に変えればどうなるか聡明な方ならお判りでしょう』
「………………」
『それに我々にはこのような秘密兵器も御座います』
「ッツ!!?」
「持っていやがるのかよッ!?」
世界地図と交代する様に取り出したモノ。それは『無にして全』であった。
全部で3つ、贋作でないことは発する雰囲気で理解る。
『一般人には馴染みは無いかもしれませんがこれは【星具】と呼ばれるモノ。我々【星】と同じく超常の力を持っております。コレを利用すればより多くの被害が出るでしょうね』
画面が切り替わり一つの巨大な建造物が映し出される。彼女が【星具】をかざすと建造物は宙へと浮かび上がり…。
そして一瞬で粉砕された。
『10日後、我々はコレを携え今現在指定した地域への侵攻を開始いたします。止められる方は歓迎いたしますよ…』
『では楽しみにしております』。そう言ってトワの動画は終わりを迎えた。
「コイツは名指しで喧嘩売られたのと同じだな……」
「ふむ、それに10日という猶予。コレはつまるところ……」
「上等じゃん、なら望み通り鍛えてやるよ…手前等がその発言を後悔するようにな…」
トワ達の意図をそう汲み。大和達は決意の光と共に食事を口へと運んだ。

※来週は休筆致します。次回更新は4/29予定です。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ
ファンタジー
 ハートとお気に入り登録、ぜひぜひお願いいたします!  ↓簡単なあらすじは''もっと見る''へ!↓  ここは、剣と魔法の異世界グリム。  ……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。  近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。  そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。  無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?  チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!  努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ! (この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

処理中です...