プライベート・スペクタル

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第三話 第三章

第十一節

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巨体を駆け上がる白雪とダイヤ。
「まずは第一段階だ!待ってなァ!!」
巨体の上を動き回りながら鎚を振り下ろしていくダイヤ。振り回す運動エネルギーをエコーの様に使いながら内部に潜むタークスの位置を探る。
白雪も一撃の為の呼吸を整えつつ、ダイヤが動きやすくなるようかく乱と牽制する。
しばらくするとダイヤが叫んだ。
「右肩部だ嬢ちゃん!叩き出すぜ!!」

【演目】『正義への疑問符 アースパイル』

『正義への疑問符』を演じたダイヤ。充填された運動エネルギーは十分な量であり、右肩部を中心に粉砕した。
粉砕した粉砕した部位からタークスが現れる。
「ッツ!!?」
「今だ嬢ちゃん!やっちまえ!!」
「はぁあアアアアアアア!!」
『五重』
驚愕の表情を見せるタークスに『御雷』の打撃を叩き込む白雪。
先程に掴んだ動きのコツ。それをフルに使った一撃はダイヤの強化時と同等の『五重』を放つことが出来た。
ただ…。
「…ッ!?」
「全く危ないなァ…可憐な君ィ……」
口から血を僅かにこぼしたが笑みを浮かべたタークス。有効打の様に見えたが、斃すまでに至っていないようである。
さらに多少のダメージ覚悟で肉体を緩衝材にされた事で拳を掴まれる。
「不快なあの男に何か入れ知恵をされたのか、先程に比べ天と地ほど見違えるほどの威力だ。だが……」
掴まれた手首を起点にふわりと浮かされた白雪。
だがその感覚も一瞬、次には全身に衝撃と激痛が走った。
「このタークスにはまだ無力!!醜く飛び回る蠅を叩き潰す邪魔をするな!!」
超高速で全身に打撃を叩き込まれたという事を理解した白雪。
多量の鉄球と一種に洗濯機に入れられたように全身をタコ殴りにされながらも何とか飛ばないように意識を思考にしがみつかせる。
「…………っ……ょ………」
糸が切れた人形の様に巨体から落ちかける白雪。だが何とか踏みとどまりタークスに打撃を叩き込みにかかる。
「このォ!?」
再び打撃を受けた白雪。しかし倒れる事無く拳を構え向かって行く。
3度、4度とそのようなやり取りを重ねていく。全てが同じという訳ではなく曲線的な動きやフェイントも加えられていき躱す場合もある。
「しつこいぞォ!?」
だが届かない。8度目の突貫、今度は巨体から吹き飛ばされた。
「嬢ちゃんッ!」
運動エネルギーを飛ばすダイヤ。エネルギーは弾力のあるクッションとして吹き飛んだ白雪を優しく受け止める。
瓦礫の山に叩きつける事だけは防ぐことが出来た。だが全身に広がっている青痣に出血、一部逆に曲がっている間接、ズタズタのボロ布の様な状態。どこをどう見ても無事な部分がない。
いっその事このまま戦闘不能になった方がまだ温情があるだろう。
「嬢ちゃ……」
自身もそう思ってしまったダイヤ。火をつけた自分を無責任だと罵倒しながら白雪に撤退を促すよう声をかけようとする。
その時、何かで誤作動が起こったのか通信機に音声が入る。
その声は白雪であった。
『今は……フェイント……が多すぎ…だ……もっと…直線的……に……』
意識も絶え絶えな状況。だがそう呟く白雪。拳を握り構えをとる。
その行動にその考えこそが失礼だとダイヤは己を恥じた。
「ッ!?……へへッ、そうだよなァ……そいつは流石に野暮だったなァ!!」
自分と白雪は共に賭けたのだ。だったら最後まで付き合ってもらう事が白雪しょうじょに対しての最大限の礼儀であろう。
「良いぜ嬢ちゃん!さらに上乗せレイズだァ!先が地獄でもどこだろうと一緒に行こうじゃあねぇか!!」
鎚を投擲し再び巨体内に潜もうとしたタークスを阻んだダイヤ。繋がっている足元が粉砕したことにより巨体と完全に分かたれた。
「ッ!?この醜い蠅がァア!!」
「へへッ、さんざんブンブン飛び回って悪かったなぁ!だが安心しな!コイツが最後だ!!」
『力を抜いて……抜いて……一気に……閃光の…様に……』
「あとはお前が斃れた後の亡骸の上で飛び回ってやるとするさ!!」

【演目】『正義への疑問符 ユビキタス・ヒーロー』

宙に浮かんだ鎚を同じく鎚で思いっきり叩いたダイヤ。「ゴィン」という音により演たれた【演目】は極小のワームホールを生み出し、瞬間移動を行わせる。
そしてダイヤと代わる形で現れたのは白雪であった。
『よっしゃ行ってやれ嬢ちゃん!』
「………稲妻の様にッッっ!!」

【演目】『雷槍らいそう 八重やえ

【演目】という形で完成した『御雷』。演たれた打撃は閃光と共にタークスの肉体に叩き込まれる。
「………………!!!?」
雷速の打撃を何とか耐え抜いたタークスの肉体。だが耐えたのは鋼鉄のような肉体のみであり、意識は遥か彼方へと消え去り、苦悶の声すらも雷の様な踏み込み音により掻き消える。
その音が第二戦の終了の号砲であった。

「……ふむ、終わったようですね」
「そうみたいね」
ドローンから送られてきた映像を見終えた大和達。
辛勝とは言え。勝利をしたという事にホッと安堵する。
「ダイヤは兎も角…あの白雪って娘スゴイわね…コツのとっかかりだけで、あんな土壇場で【演目】にまで技を昇華させるなんて…」
「うぃ!スゴかったです!あんな速度の拳を撃ち込めるなんて…」
「ふむ…逆に土壇場だったからでしょうね……逆境に置かれたからこそ、そこから生き残るためにこれまでの人生で得た全てを用いる。そして逆転の一手としてインスピレーションを生み出す……彼女の場合『御雷』の技術という核にダイヤや先の大和達の動き、そして試行様々なカギを用いてのあの【演目】だったのでしょう…」
「インスピレーションねぇ…確かうちのバカもアトラス戦の時に似たような事を言っていたわね…………って、アイツは?」
とそこで大和が静かすぎる事に違和感を持った晴菜。大和の方を見ると姿は無い。
とそこで隣に座っていた門司が代わりに答えた。
「大和か?兄弟なら…催したって言ってトイレに行ったぞ」
「何よ締まらないわね…」
マイペースな大和に溜息を吐いた晴菜。
門司はそれ以上は何も答えずに湯呑を啜った。

※来週より隔週での投稿といたします。次回は10/28となります。
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