プライベート・スペクタル

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第三話 終章

第一節

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「ババア、それに婆ちゃん!?」
「お婆様!」
「やっほ~大和ちゃんにエイプリルちゃん。婆ちゃんが来たわよぉ!」
「おい誰がババアだって?」
「あ、いや…何というかややこしくなると思ってよ、門司不在だしアンタも言われ慣れていると思って……それでどうしたんだ2人で来て?」
「ふん、こっちで得た情報を持っていくついでに悪童共の様子でも見に行こうと思ってね…舞園師とはその道中でたまたま鉢合わせたんだよ」
「やめて下さいなそんな呼び方は、貴方の様な大先輩に言われると恐縮いたしますわ」
「ご謙遜を、貴方は過去、我が国に十二分に務めを果たして頂いた。それだけで私が貴方を敬うに足る十二分の資質がありますよ…」
「またまたァ~」
謙遜する三笠。傍から見れば老婆が幼女に畏まっている奇妙な光景だが、黙っておくことにする。
脱線したので話を戻し大和はヒミコに尋ねる。
「それで情報って、トワのか?」
「あぁ、この状況でむしろそれ以外の事があるのかい」
指を鳴らすトワ。呼び出されたお供の者は手にしていたアタッシュケースの中の資料を手渡した。
「撤退したトワ・御法川の居場所についてある宛先からの情報が『フツノミタマうち』に送られてきてね……いや、ある宛先なんて言ったらダメだね、コレはきっと…」
「ああ、トワ本人からだ」
この短時間それもノーヒントで居場所を探るなんてどんな勢力でも無理がある。トワ本人からの招待状なのだと大和達は悟る。
「記された場所は欧州のとある活火山、そこで待つと書かれていたよ」
「アイツは去り際に最後の儀式と言っていた。つまるところそこが儀式の最後の場所なんだろうな」
火山なんてまんま星のエネルギーが噴き出る場所だろう。そこでトワは儀式を完遂させるに違いない。
「『恒威の儀』を完遂させようとする馬鹿なんて今の今までいなかった。【星】の先なんてどうなるかアタシですら想像がつかないさね。ただ一つ言える事は、完遂されたらトワを止めることが出来る者はこの世界に存在しなくなることだけは確かだろうさ」
完遂一歩手前で自分達を全員相手に優位に立ち回れていたのだ。おそらくヒミコの言う通りなのだろう。
興味は限りなく低いのに、またしても世界の命運とやらを握ってしまった事に皮肉を感じえない。
「…でもまぁ、アンタ等なら大丈夫だろうさ」
だがそんな状況でも特に心配することなくヒミコはそう言った。
「おいおいオイオイ…かなりハードな状況だぜ、えらい軽い感じじゃあねーの…突発的にボケたか?」
「ほざきな悪童。アタシだってアンタ等みたいなバラガキ集団に世界の命運ですら死んでも預けたくはないさ…」
「ヒドい言われようですね」
「だけどアンタ等はこれまでも同じような事を何とかしてきたんだ。だからこれぐらいアンタ等なら大丈夫ってことさ……」
「婆さん…アンタ死ぬのか?具体的には明後日ぐらいに」
「結構な反応だ糞餓鬼。アンタから死ぬかい?」
思わずそう言ってしまった大和に青スジを浮かべそう返したヒミコ。悪態有りとはいえこの愛国者がまさかここまで買うとは思ってもみなかった。
「『旧支配者』絡みに集団脱獄その他諸々…随分前からアンタ等バラガキ共を買っているんだよアタシは……だからこのどうしようもない一人の我が儘から始まったこの騒動…ちゃっちゃと終わらせてきな!」
「ああ任せなババァ」
笑みを浮かべた大和にヒミコは「フン」と鼻息を出した後、同じように笑みを浮かべた。

「はいは~い、だったら婆ちゃんの手も借りておきなさい」
とそこで三笠が声をあげた。
「とそう言えば、婆ちゃんは何で来たんだ?このタイミングだからただ遊びに来たわけじゃあないっていうのはわかるけれど…」
「察しが良くて助かるわ大和ちゃん。貴方が言った通り助けに来たのよぅ。佳境も佳境で強大な力を得た相手を見据えた貴方達のね」
「もしかしてお婆様も戦うというのですか!?駄目ですトワはとても強くて…」
「そんなことしないわエイプリルちゃん。見ての通りこんなおばあちゃんにはてに負えないし、それに横槍を入れるなんて無粋な真似して大和ちゃんにも嫌われたくないからねぇ」
「でしたら、助けとは…?」
「大和ちゃん達全員の強化。古の『恒威の儀』によって【星】の更に進んだトワに対抗できるまでのちょっとしたパワーアップのお手伝いよぉ!」


「ハァ…ハァ…ハァ……」
場面が切り替わり欧州のとある活火山。
誰もいない斜面をトワは荒い息を吐きながら昇っていた。
ふらふらと覚束ない足取りのトワ。先の大和との戦闘時に感じた身体の異変、そして不調は治まることが無く。むしろより一層激しくトワの身体を蝕んでいた。
「……ふぅ、少しぐらい僕を残していた方が良かったかもしれませんね…」
一人愚痴るトワ。寂しさや心細い不安を感じてなんてことでは決してない。ただ、不調ゆえに手足として動く駒が欲しかった。ただそれだけである。
だが、もう最早トワの周囲には誰も残っていない。そうなるかもしれないと頭の片隅には置いてはいたが、全くもってその通りになるのは少々意外である。
全世界が相手だが、直属の者達はトワ自身が目を付けた者達だったからだ。
「フ…フフ…どうでもよかったとはいえ、まさかここまで事が上手く運ばないとは……」
注目を逸らすためではあるが、仕掛けた戦いの内いくつかは勝利を得るものだと思っていた。土地を得ればそこを奪還しにくれば、さらなる時間稼ぎを行い儀式の完成もより容易にすることは可能な筈であった。
だが全敗である。僕である直下の幹部を送り込んでもどこも得ることは出来なかった。
主目的である儀式はキチンと進んでいるが、勝敗の如何なぞ結果は火を見るより明らかであった。
「ですが楽しくなって来ましたよ……っ!」
おそらく次は自分相手に『龍王』や『爆炎』と言った全員で仕掛けてくるに違いない。『鬼神』がいないのは残念であるが、現状の『創世神』の総力を現在絶賛絶不調の自分一人で迎え撃つ。
だが儀式の影響で刻一刻と【星】以上の何かに変貌している。羽化する為蛹を破る蝶のような、誕生の為に卵の殻を割るひな鳥のような…。
この身体の中で渦巻き続けている得体の知れない強大な力を心置きなく試すことが出来る事にトワは高揚感を隠すことが出来なかった。
(やはり、貴方達が敵で良かった…)

「ありがとう…本当にありがとう……」

ふと自然に大和達への感謝の言葉を口にしていたトワ。
いつの間にか目的の場所、火山の火口に到着していた。
「それを身体でも示さなくちゃあいけませんね…」
感謝を表す好敵手共との終焉なのだ。よりふさわしい場所にしなければならない。
自らの中に渦巻く力を振るい最後の舞台を整えるトワ。
そうして戦場が出来上がった。
「さあ来なさい…いつでも………」
出来に満足したトワ。
好敵手共を待つため自らの定位置である裸の玉座に腰掛けた。
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