プライベート・スペクタル

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第三話 終章

第五節

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「やったの!??」
「その言葉はフラグになるから辞めてエルマ。でもこれまでで一番よ!」
手応えを感じつつも警戒は解かない晴菜。相手は【星】すら超えた怪物。
ここまで大したダメージも無く上手く進んでいるが、その数瞬後には全てが台無しになる可能性すらあるのだ。
現にその晴菜の危惧した通り。
「……フ…フフフっ……まさかここまでの手傷を負わされるとは…」
粉みじんになっていた肉片が増殖結合し始め口が再生される。
だが晴菜は直ぐに炎の銃の弾丸を叩き込み身体を吹き飛ばした。
「喉も声帯も無いのにどうやって発音しているのよ。そのまま再生する度に磨り潰してやるわ、再生できなくなるまでね」
(おお、怖いですね…)
死角より飛んで来た腕のみの手刀も撃ち落としそう言った晴菜。
だが…。
「ぐッ!?」
突然足に感じる鋭い痛み。視線を向けると地面より突き出された結晶の棘が足を貫いたようであった。
(流石に真下からの予備動作も無しじゃあ……それにッ!)
幸い傷の方は軽く戦闘継続は可能。だが付け焼刃の弊害かトワの『呼吸』から外れる。
さらにこの被弾はトワに大きな情報を与えてしまった。
(……ほぅ、ならこれは?)
結晶で似せて形作られた無数のトワ。一斉に晴菜に襲い掛かる。
「この……ッ!!」

【演目】『爆炎 炎銃 ミニミトライユーズ ×Ⅱバイツー

炎の機関銃を両腕にそれぞれ展開し周囲にばら撒く様に斉射した晴菜。結晶体で出来たトワを片っ端から撃ち砕いて行く。
だがその瞬間に自分の速度が緩くなっていくことを知覚する。トワが時間停止を行った事を晴菜は理解した。
(…このタイミングで…ッ!!?)
時間の加速はないシンプルな時止め。加速等の併用していないが故に強力。不幸にもトワの『呼吸』に注視しすぎた故の間隙を突かれた晴菜にとっては効果絶大。指一つ動かすことが出来ない。
その間にも結晶体で出来た無数のトワは殺到する。
(大和みたいに強く動かせて解除する!?停止を認識出来ているから可能な筈!!)
そうしなければここで串刺しにされる。自らの炎もフル活用し晴菜は全身を激しく動かす。
そのおかげで一瞬だけ動くことが出来た。
しかし一瞬である。
数体を撃破した後、晴菜は再び動きを止めた。
(やば…ッ!?)
一斉に襲いかかる結晶体。腕部を刃に変えて跳びかかる。
「オラァ!!」
それを止めに入ったのは大和。彼も同じく結晶体と戦闘していたが、全滅させてこちらに来たようであった。
晴菜へと迫っていた結晶体を残さず撃破した大和。そこで時間停止が解けた。
「助かったわ!」
「おぅ、別に気にすんな」
晴菜の礼に事も無げに軽く応じる大和。
だが破壊した結晶体は直ぐに補充されてしまう。
あっという間に膨大な数の結晶体が2人を取り囲んだ。大和と晴菜は互いに背中合わせで相対する。
「キリがない再生までの時間稼ぎのつもりかしら?」
「それもありそうだが、単純にこっちを物量で圧殺するつもりじゃあないか?戦いは数だよってな、単純だけれどいい手だ!」
「言ってる場合!?」
「心配すんな、数を誇るなら俺達以外にいるだろ?」
「ッ!!?」
とそこで思い出した晴菜。そうだ今回の戦いは別動隊もいるのだ。
大和の言葉と共に光と影の塊が周囲を飲み込む。相反する2つの塊は丁度半数ずつ結晶体を屠った。
(呉成・大和と早乙女・晴菜とは違った力、これはもしや……ッ!)
『師匠ッ!?』
『大和さん』
『『どうですか!?』』
とそこ入った通信。声の主はエイプリルとミコ。
先の一手は別動隊として動いている彼女達からのものであった。

「ああバッチリだぜ2人とも、助かった!」
そう返す大和。
今回の戦い、トワの時間操作へ対応が難しい者達は別動隊という形で動いている。
後方よりの支援として、何とか前線メンバーの手助けは出来ないものかと睦美と共に考案したのが、別の場所から【演目】や攻撃のみを行うという方法であった。
『無限回廊』やチェルシーの『どこにもいない/いる』を用いてエイプリルの影やミコの攻撃を戦場に配達し火力面での大和達を支援する。
遠隔地からのため、狙いの制度は大雑把で時間操作の間隙を縫う形でしか行えないが、敵の攻撃に晒されることもそれによる前線メンバーの足を引っ張ることも基本無い。
今回の総力戦のような場でしか使えない限定的なものだが効果は絶大であった。
(後方からの支援ですか)
トワも気づいたようである。今度は一人となっているエルマを狙う。結晶体の集団を創り上げ、さらに結晶で出来た矢の弾幕を張る。
躱す密度もない攻撃。だがエルマに当たることはない。
チェルシーの『どこにもいない/いる』で別の場所に回避したからだ。
回避した場所は大和達の元である。
「よっす」
「お疲れ手筈はどうだ?」
「上々だよ大和くん。じょーじょー♡」
そう言って手元を見せたエルマ。手にはテレビのリモコンのようなものが一つ。
チャンネルを変える様に先程の場所に向けボタンを一つ押す。
すると巨大な虫かごのようなモノが結晶体を捕らえた。
(ッ!?)
予期せぬ手に軽く困惑したトワ。虫かごを何とか破壊しようとするも中々壊れない。
すると虫かごの中央に置かれていた物体を覆っていたヴェールが剥がれ落ちた。
中から現れたのはハートのような形をしたヘタを持つ金属製の超巨大なナス…のようなモノ。
人間大ほどでパッと見ではよくわからないかもしれない。
だがこの威圧感と根源的に感じる恐怖がその正体を否が応でも理解させる。
(ちょ、ッッ!?正気ですか!??活火山の真上ですよッ!!?)
正体を知り珍しく狼狽するトワ。
そんな事はお構いなしにエルマはリモコンの電源ボタンを押した。
「どーんッ♡」
瞬間、視界を消し去るようなまばゆい閃光と全てを溶かす膨大な熱。
想像を超えた破壊の爆風は瞬時に辺り一面を飲み込む。

【演目】『WITCHCODE:CHAOS HAPPY NUKE FATGIRL』

何とエルマは核攻撃をしたのであった。
【星】ですら太刀打ち出来ない破滅級の威力。結晶で創り上げられた戦場は瞬く間に塵と化しこの世の終わりの光景を創り上げる。
やがて爆風と破壊が過ぎ去った後、大和達が現れる。
「コイツはひでぇな…」
その悍ましい惨状を見て呟く大和。
全員が射程圏内にいたのだが、チェルシーの『どこにもいない/いる』で爆破の瞬間のみ転移したため無傷であった。
「奥の手を聞いた時にゃあピンと来ていなかったが、こんなモノとは…エグイ体験だぜ」
「まあ核攻撃って言ったけれど、放射線やらが無い実際のそれとは非なるモノなんだけれどね。使えば必ずこっちも巻き込まれるから今回みたいなウルトラCが無ければ決して切る事が出来ない切れない切り札ぞよ♪」
胸を張り自信満々にそう言ったエルマ。切れないとは言っているが切ったらこのヤバさ、門司が快復した後「もう二度と使うな」と釘を刺してもらおうと大和は思った。
『ふむ、エルマの【演目】の処遇は置いておくとして、これは勝負ありでは?』
様子を見ている睦美が呟く。
あの超々破壊力を間近で直撃したのだ。再生中とはいえ、舞台ごと消し去る威力に普通なら細胞一つ残らないだろう。
そう期待はしたが、相手は普通ではなく……。
「いやどうも、そうはいかないみたいだぜ」
巻き上げられた土埃の先に気配を感じた大和。土埃の向こうに人影が一つ現れコチラに近づいてくる。
大和たち以外だとすれば当然トワであった。
どのような手を使ったのか、無事どころか身体の再生すら完了している。
だが全身は傷だらけであり、胴体部や左右の手足には大きな傷跡が見えている。
それに先程と何処か雰囲気も違っていた。
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