プライベート・スペクタル

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第三話 終章

第四節

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「パぷンッッ!!?」
顔をひしゃげさせ勢い良く吹き飛ぶトワ。解除された時間の加速による反動も加わり思いっきり転がる。
「今の技術……アレはいったい?」
立ち上がりたった今の晴菜の反撃について思考を始める。
その数合前まで直感と幸運で奇跡的に躱せていたに過ぎない状況から、正確に迎撃した今。
アレが何らかの技術であることは間違いなかった。
(先の呉成・大和との戦いで彼が魅せた『後の先』。アレに近しいですが、アレは触覚等の自らの感覚を頼りにしてのカウンター。言うなれば自動的に近しきものの筈…)
それに対してはトワ自身も攻撃のタイミングのずらしで対策は出来る。
またあれ自体は大和という体術に長けたモノだから可能な芸当だ。
しかしこれは無意識の『後の先』よりも正確な精密性。方向性は同じはずだが根本的に異なっていた。
『晴菜、今のは…』
「ええ、上手くいったわ」
睦美の言葉にそう返した晴菜。
トワの想定通りコレは異能でも何もないれっきとした技術。
三笠が考案した対トワ用のレベルアップの真相である。
会得した過去を晴菜は少々思い返す。


「うんうん。これぐらいの場所で良いわね」
三笠からの提案の後。大和達は【領域】に作り上げられた鍛錬場に集められていた。
「婆ちゃんよぅ「トワに対抗できるまでのレベルアップのお手伝い!」っていうのは良いけれど…一体何を教える気なんだ?俺達の体術を教えるにしてもちょいと時間が足りなくないか?」
「そんな事はしないわよぅ大和ちゃん。私達の体術を今から教えたところで大した成長にならないわ」
「まぁ正しい意味での付け焼刃だわなァ」
「言い得て妙ね大和ちゃん。そう付け焼刃、だけれどこの技術はある程度の技量の者が修めればこの状況を打開できることを可能とする秘策となる付け焼刃よ!」
「そのような技術があるのですかお婆様!」
「うふふ良い反応ねエイプリルちゃん。ど深夜の通販番組みを感じるわぁ」
「そういうの今は良いです三笠さん」
「まあ、相手や状況故の水増しの対抗策、実力に下駄を履く様なモノね……百聞は一見に如かず、早速実演するわ、大和ちゃんはお相手お願い!!」
「?」
疑問を浮かべつつも大和は三笠の言われた通りに距離を取る。
「大和ちゃん。『龍式雷龍』というのだっけ?今からその強化形態を用いて、どのタイミングでも良いから一撃。私に仕掛けてきなさい」
「「「!!?」」」
三笠の言葉に思わず驚愕する一同。
さらに驚くことに…。
「お婆様、どうして目隠しを……ッ!?」
何と三笠は懐より帯を一つ取り出し目に巻いたのだった。
「おいおい、何やっているんだ婆ちゃん?」
「まあまあ気にしなさんな…それよりも貴方はどうやって私に一撃入れるかを考えなさい」
「いやそうは言っても……」
「さあバッチ来い…よ!」
「だったら…行くぜ!」
大和も躊躇したが、師であるが故にそれが酔狂でも冗談でもないと理解する。
決心し拳を固め構えた。

【演目】『龍桜 龍式雷龍 誅魔豪拳 疾雷』

【演目】を演った大和。『龍式雷龍』を行い踏み込む。
稲妻の様な轟音を発し文字通りの雷速で接近する大和。強化された得意技の『春雷』を撃ち込もうとする。
だが結果は三笠にその拳が叩き込まれる事無く宙を舞っていた。
「ッ!?ッツ!!?」
まるで木の葉が強風を受ける様にいなされた大和。明後日の方向に吹き飛ばされる。
「まだまだァ!?」
受け身を取ったと同時に三笠へと追撃する大和。同じく雷速での連撃を叩き込む。
だがその打撃は三笠に一つも掠ることが出来ない。
そのまま手首を掴まれ大和は地面へと叩きつけられた。
「みんな見えたかしら?コレが覚えるべき付け焼刃『間合い』と『呼吸』よ!」

戦闘には必ず距離というモノがある。例外を除いて拳より拳銃の方が射程距離は長くより遠くに影響を与えることが出来る。
それは当然のことであくまで感覚の一つであるが、こと武術や技術においてその距離とは自分の技を思い通りに打てる空間の様なモノと呼べばよい。
「門司君の様な剣術、その中での居合なんかはわかりやすいわね…刀を振るい一斬で切り捨てることが容易く出来る必殺の空間。速度や緩急等の変化もあるけれど、武術家の試合然り獣の狩り然り、どの様な闘いもこの間合いのやり取りが第一段階ともいえるわ」
「その言うなれば自らの攻撃の射程距離を把握して、迎撃を叩き込めってことですか?でもそれはこの馬……大和が先にやっていましたよね?確か『後の先』という形で……」
「ええそれは映像で見させてもらったわ、流石大和ちゃん。感覚のみで糸口を即席で編み出すその対応力はお師匠様として鼻が高いわ」
「(テレテレ…)」
「でもそれだけでは不完全。そこで合わせるもう一つの要素が『呼吸』よ」
「?…息を吸ったり吐いたりってことです?」
「ピュアピュアな反応可愛いわよエイプリルちゃん。けど違うわ、『呼吸』とはすなわちタイミング。動作のリズムといった方が正しいわね」
戦闘や闘争に限らず、スポーツ等のみならず日常生活においてもリズムやタイミングというモノは切り離すことが出来ない。個性の様に各々異なるこの感覚は機械でもなければ逃れることの出来ない支配的なモノである。
「だからこそ、自他含めその手綱を握ることは大きなアドバンテージを生むわ…例えば」
瞬間、高速で大和の背後を取った三笠。
彼女から目を離したわけではないのにその挙動を全員が感知することが出来なかった。
「このように全員の意識の隙間、意識外から攻めることも逆に致命傷となりうる相手の攻撃も感じることが出来るわ。牽制や誘いも一切惑わされることなく攻撃の出だし前からね」
命の危機から躱す直感もこれらの類型に近い。自分の感覚そして相手の感覚を理解し同期することで対応することだと三笠は言った。

「昨今では『チート』なんて恐れられる無体な能力があるみたいね、でもたかが『チート』と恐れられる能力風情が、何十何百何千年と代々継がれ編み出された人々の技法と魂に勝てるわけない…婆ちゃんはそう思っているわよ」


(ありがとうございます。三笠さん)
そう締めくくり教鞭をとってくれた三笠に内心礼を言った晴菜。
だがこの『呼吸』言うは易し実行は難しのかなり特殊な芸当である。完璧な習熟には膨大な時間が必要。だがそれはこれまでの実戦経験での勘とトワの身に特化する事で何とか実現する。
(そういう意味で付け焼刃。対トワ用特化技術と成ったわけよ!)
「ちィ!」
舌打ちをし、時間の加速から高速で動くトワ。目で追う事が出来ないほどの高速である。
だが晴菜には見えていた。動き出しと方向に合わせ纏う『炎装』を用いた加速で対応する。
容易にトワの背後を取っていた。
「なッ!!?」
「ぶっ飛べ」

【演目】『爆炎 炎爆 ヘルグローリーIイグニス

【演目】をゼロ距離で叩き込む晴菜。耳をつんざく爆裂音が鳴り響き、炎はトワの全身を飲み込んだ。
「…ぅ…チ……わ…ッ………」
炎から脱したトワ。だが四肢の全てが消し飛んでおり胴体や頭部も所々炭化している。
即座に復元に入ろうとするトワ。だが……。
「それはさっきの出対策済みよッ!」
それは読めていた。叫び指を鳴らした晴菜。すると残ったトワの身体が歪に膨れ上がる。
先程の攻撃の際、晴菜が埋め込んでおいた超小型の爆弾である。
再びの爆裂音。瞬くような閃光を発しトワの肉体は跡形もなく吹き飛んだ。
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