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本編
489 トントン中毒
「軍と魔導機器メーカーの繋がりって知ってます?」
「知らないですけど、まあ察しはつきます」
大方、世に出回ってる魔導機器は軍事目的で作られた物を降ろしているに過ぎない。
どの世界でもそれは常というか、国家単位で主導しているならばそりゃそうだろう。
「その規模を小さくした物……と捉えてくれれば当てはまります」
「なるほど」
「研究開発をより応用も利くような実践的な物に、らしいですよ?」
そのための受け皿として、新たに冒険者としての学科がスタートされる。
要するに学生に玩具を作らせ、それを学生が実際に使用するってことだ。
「学費の補助もあったり、こっちとしては旨味もあるんですけど……」
少し悲しい表情をしたエリナは、書類をトントンしながら言う。
「学生に武器を作らせ、それを学生に使わせるって……なんか嫌な感じしません?」
「そうですね」
ごっこ遊びにしては度が過ぎているんじゃないかとは、俺も思った。
しかしながら、それもまた時代の流れなんじゃないかと。
人類は魔物を倒して、世界を広げていくその先に繁栄の二文字がある。
「なんか大陸の国ではちょっとバチバチし出してるし……」
トントントントントントン。
「……不安に思っちゃいますよねえ?」
トントントントントントン。
「あの……そのトントンやめてもらっていいですかね」
「あっすいません、癖なんです」
書類トントンが癖とか、書類整理のエキスパートか。
まあいいや、癖なんて人間誰でも持ってるから。
俺はついついダメだとわかってても強化しちゃう癖。
「まあ、別に作るものって武器だけに限った話じゃないでしょう?」
「はい、おっしゃる通りです」
トント──、
「うぐっ」
「苦しそうにするならトントンどうぞ……」
「はいっ! ありがとうございます!」
トントン中毒というものが、この世界には存在するようだ。
エリナはトントンしながら呆れる俺とポチに言う。
「どのメーカーも規格化されつつあるバッテリーとか、それを用いた簡単な魔導機器から作るんじゃないですかねって話を聞いてます。冒険者ってそういうお手軽なものを求めてますし?」
「なるほど」
少し面倒な展開だな、と思った。
メーカーにももちろん腐敗とか色々な闇が存在するのだけど。
俺の知る中でバッテリーを用いた魔導機器がまさに闇。
うーむ、学生の領分にまで入ってくるともなれば……。
そりゃ、如何ともしがたい状況だった。
いつこの話が決まったのか、とかそういう話は置いといて。
信仰装備計画の一部であれば、駆逐しておくべきなんじゃないか。
「ちなみに、依頼を受けるのは良いですけど。先生なんてしたこともないですよ」
「あっ、それは把握してるんで大丈夫です」
「大丈夫とは?」
「まだまだ試験的な導入口を出ないですからね、課外授業っていう立ち位置になります」
「なるほど」
「いきなりだとみんなビックリしちゃいますし、こういうのができるよって体験体感してもらうことが先にやるべきことだと、ギルド上層部は思っております」
そんなもんかね?
体験させるっつっても、体験するのは既存の生徒。
冒険者生え抜きのために集めましたってスタンスではない。
「報酬は1ヶ月で2000万ケテルです」
「たっかっ!」
正直不安なんだけど、報酬の話を聞いて不安は晴れた。
しかし1ヶ月2000万って、やばいな。
「なんか怪しい……」
「私もビックリです! でもギルド提携先のC.Bファクトリーからお金が出てるらしいですよ!」
「へー」
あいつらが関わってるとか。
臭い、臭いぞこれ!
「魔導機器の最大手であるC.Bファクトリーからだったら、かなり信頼にも厚いですね! それに、この話にはお国の貴族も推奨して欲しいとか何故か絡んできたり、想像してるより大きいんですよ」
「話はわかりましたけど、なんで俺なんですか?」
「うーん、伝えられてる情報だと、一番まともにやってくれそうだったから……ですかね! どの依頼も基本ミスることはないですし、報告書等にもトウジさんって他のパーティーメンバーとのやり取りでできるだけ和を取り持とうとする人柄が書かれてますから、一番適任で一番問題ないと判断されたそうです!」
「な、なるほど……」
まともか、と言われて、はいまともですとは言い返せない野郎だけどな。
誰だよ俺を良い人だって報告書に書いた奴!
「それに、一度救ったソレイル側からの信頼もありますし、学院内に知り合いもいるじゃないですか?」
「まあ……」
「聞くところによると、どこでこの話を耳にしたのかわかりませんが、一人の生徒が強くトウジさんを希望したそうです」
ライデンか!
ライデンだな!
あいつめ!
「それに、今の時期はオススメですよ! ソレイル、今年の宿泊学習は、今話題のダンジョンリゾートに行くそうで、そこへの同行もトウジさんはゲストとして認められています!」
「ダンジョンリゾート?」
「はい、極彩諸島の島の一部を使って作られたリゾートがあって、そこに行くんですって! いいなあ……! 年中泳げる海とか、日差しとか、一年中真夏を体験できる不思議な島って聞いてます! いいなあ! 私も行きたいです! 特別入島許可証とかを発行してもらわないと、入れないんですよそこ~!」
「はあ……」
「まあ気楽に行っちゃってくださいよ! 別にお堅い授業をしろとか、そういう話ではなく。本音は学業生活の中に、冒険者という職業を当てはめても良いのか、それを確認していただくお仕事なのですから」
金にならないことはあまりしたくないギルドも。
向こうから勝手にお金が出ているのならば、手数料ぶち抜いて他に流す。
そういうことだった。
あまり体が拘束されるのは好きじゃないが、それなりに自由も許されている。
アクセスも早いし、依頼は近場で済ませて飛空船の着手に力を入れようと思ったいた。
そんな俺には、あながち悪くはない話なのかもしれない、臭いけど。
「まあ、とりあえずお受けします」
「やったっ! そう行っていただけで嬉しいです! これで私も話題のリゾートにある冒険者ギルドに担当受付やトウジさんの補佐的な役割でいけますよ~! やったー!」
「それが本音っすか……」
「アォン……」
ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びを表現するエリナに、さらに呆れる。
「ある意味そうですね! この話を聞いて、トウジさんなら絶対いけると踏んでました! それで推しました! 実は海で遊んだことってないので、すごく楽しみです! うふふ!」
職権乱用なんじゃないのかと思うけど……まあ良いか。
一度みんなで揃って遊ぼうかと思っていたのだ。
俺が行くならみんなどうせ楽しそうな場所にはついてくる。
そのリゾートとやらを楽しみにして頑張ろうか。
「そのリゾートって、島の名前とかあるんですか?」
「不思議な不思議なダンジョンリゾート、オデッセイだった気がします」
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