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本編
559 破壊と破壊の権化共
いつの間にか夜が明けて、水平線の向こうから朝日が顔を出していた。
そんな頃合い。
『我に槍を取らせた、それを誇りに思うが良いスライムの王よ!』
「槍持ちはどこまでも傲慢である。その性根、我が圧し折ろう!」
ついに槍を解放したポセイドンとグレイドキングになったキングさんの戦いが始まる。
それはお互い本気中の本気であることを指し示していた。
「つ、疲れた……」
「お疲れ様です。回復ポーションいりますか?」
「ありがとう。君、良い奴だな」
「いえいえ」
柄の部分が捩れ曲がり三俣の鋭利なポセイドンの槍。
その力を迂闊に使わないように制限がされていて、その解放は限られた者しかできないらしい。
「他に解放できる人って誰がいるんですか?」
「そうだなー、天海深塔のメランちゃんとかかなー」
「??」
「ああ、八大迷宮の一つだよ」
南東にずっと行った先に、陸地の中に囲まれた大きな海があるそうだ。
その中央に遥か深海へと伸びる塔が存在し、天海深塔と呼ばれる。
ダンジョンコアの名前は、憂鬱のメランコリー。
憤怒に、暴食に、傲慢に、怠惰に、憂鬱に。
なんか八大迷宮って二つ名持ちばっかりだよな。
後の三つはなんなのだろうか?
さて、そんなことは置いといて、ポセイドンとキングさんの戦いに集中だ。
『ヌハッ! 見ろこの力、凄いだろう、ヤバイだろう!』
ポセイドンが槍を掲げると、グググッと空間が軋む感覚がした。
そして一気に揺れが衝撃となって押し寄せてくる。
「あ、あんまり地震を起こして欲しくないんだが……聞いちゃいねえ……」
隣でシーモンクのため息。
どうやら槍を解放したポセイドンの力は、地震を起こすことだった。
「プルァァ! 槍の力で遥かに増幅させた振動? 我には届かんぞ!」
グレイトキングになったキングさんは、キッと睨みつけることによって相殺する。
「出た、睨み衝撃波」
「睨み衝撃波?」
「うちのキングさんは、グレイトキングになると攻撃全部から衝撃出るんですよ」
「なんだそれ、ヤバ過ぎないか?」
「そっちのポセイドンさんの地震もヤバイですよ……」
うん、結論どっちもヤバイ。
破壊と破壊の攻撃の応酬、その余波は海だからまだ良いけど……。
もし陸地だったら、周りがとんでもないことになっていただろう。
『純粋な破壊力か! 我の相手に相応しく仕上がったなスライムの王!』
「我と拮抗するとは、貴様こそなかなかやるではないか、海の支配者!」
『だが、これはどうかな? 直接破壊を叩き込んでやる!』
「プルッ!?」
ポセイドンが槍を掲げると、キングさんを中心に空間が歪んだ。
ズゥゥと何かが集約する様な音の後、ピシピシと軋む音がする。
『ヌハハハ! どうだ、直接地震を叩き込んでやったわ!』
「そんなもの効かぬぞプルァアアアアア!」
ダメージを負うが、すぐに無敵時間が到来して雄叫び全方位。
全てを蹴散らす破壊力がキングさんから巻き起こった。
観察していて思うのだが、キングさんの衝撃波って対象を指定できるのかな?
目に見えないものも、全てを衝撃波で蹴散らしている気がする。
俺の邪竜スキルの引力とか斥力みたいに、対象を選択して狙い撃ちしているのかも。
『やるではないか! 貴様は他にも能力を隠し持っているな?』
「ふん、感づいたか」
『教えろ! 先ほどから二発に一発が何と無く手応えがない!』
「戯けが、自分で考えろ! プルァアアアア!」
今度はキングさんが攻勢に打って出る。
相変わらず肉弾戦での特攻だが、無敵時間がある分、有利なのだ。
一撃受けても、その間にとんでも衝撃力を持った拳を叩き込む。
さらにビリーの特殊能力によってボスクラスには威力が倍。
『ヌウッ! まだまだ! 我を舐めるな!』
そんな応酬を受けても倒れずにしばき合いの横線をするポセイドン。
タフだ。
さすがは海の支配者と呼ばれる巨人である。
「これ、いつ終わるんだよ……」
「ほんとそっすね……」
「ォォォ……」
「ォォォ……」
シーモンクのため息が移ったしまったのか、ワルプとビリーもため息を吐いていた。
どっちも「ォォォ……」で何を思っているのかわからない。
でも恐らく、俺やシーモンクと一緒で早く終わってくれ、と思っているのだろう。
ワルプもビリーも共に伝説クラスのような強さを持つ。
しかし、それが赤子に感じてしまうほど。
ポセイドンとキングさんは、一線を画す存在だった。
ちなみに、今ならワルプの異常状態ハメコンボが通用すると思う。
だが、それをしたらキングさんから大目玉を食らってしまうのだ。
ワルプもそこは理解しているようで、できるだけ目立たないようにしている。
ほんと、こいつって見た目と違って気遣いなタイプだよな。
海のドロップアイテムとか、拾ってくれたりするし。
あ、そうだ。
なんか戦いに応じて周りにドロップアイテムが散乱している。
どうやら何も知らない魔物が巻き込まれているらしい。
たまたま近場にいた魔物にとっては良い迷惑だよな、これ。
「腹減ったなあ……」
「あ、飯ならあるんで朝飯にしますか?」
「良いのか? 飯の面倒まで見てもらって」
「まあ、まだまだ続きそうですからね」
大荒れに荒れる戦いを前にして、ワルプの大きな頭の上にテーブルを置く。
インベントリからポチの作り置きしていた料理を出すと器に盛っていった。
もはや本当にただの物見遊山になっている。
しかし、見ておけと言われたからね、こっちは。
どうやって見とくかは、こっちの采配でいいんだから、飯くらい食わせろ。
「なんだこの料理! すげーうめえ!」
「でしょ? うちの従魔のポチが作ったんですよ。牛丼です」
「ほうほう、この味は昔食ったことがある懐かしさを感じる」
ん?
それはパインのおっさんの料理を味わったことがあるってことかな?
シーモンクは南東の方から来たと言うが、おっさんも行ってたか。
相変わらずフットワークが軽い人だよな、なんて牛丼をつつきながら思った。
「この味を求めて陸地に足を伸ばしてたんだよ」
「おー、それがこっちに来た理由なんですね」
「そうそう。海じゃ暖かい飯なんて無理だし、暇だし、つまらんからなあ」
「色々と悩みがあるんですね。海って自由そうなのに」
「そんなことないぞ、自由すぎるのも周りにおっかないの多くて苦痛だ」
シーモンクは牛丼をお代わりし、かき込みながら言葉を続ける。
「陸地には俺の知らない物がたくさんあって、そっちの方が遥かに自由だ」
「ほうほう」
「海賊は陸地から海に自由を求めて出て来たようだが、それは夢まぼろしに惑わされて逃げて来ただけに思える。完結していて発展がないからな、海の暮らしなんて。いろんな新しい物が次々と生まれてくる陸地はまさに未来の象徴。ずっと海で暮らしてきた俺たちからすれば、しっかり存在する理想郷さ。うまい飯もあるし」
「その意見には同意です」
海を自由だと思うのは、何もないからだ、と思った。
人は社会というしがらみに囚われ生きる。
そこから何もない場所に自由を求めるのもわかる。
しかし、本当に何もない場所は、それはそれで苦痛。
文明というものがあって、暮らしが楽になって。
そっちの方がみんな自由に生きているよな、と感じるものだ。
「よくいますよね、都会が嫌だから自由を求めて田舎に行く人」
「だな、でもそれって逃れてるだけて結局変わらんのよ」
「ですね、だったら何も持たず裸で山に入るくらいすりゃいいのに」
そうしたら、いかに社会というものが必要かわかるだろう。
その中でどう生きるか、それが自由というもんなのだ。
自由にし過ぎて、底辺を生きていた俺がいうのだから間違いない。
しがらみはあれど、そこでどう生きるかによって変わってくるね。
『……ふう、ふう……やるではないかスライムの王』
「貴様もな。我の衝撃を体で受けきるとは、流石だ」
『とりあえず、飯にするぞ。さっきから戦いも見ずにそこで飯を食っとるやつらが許せんのだ』
「同感だ。我らがこんなに熱い戦いを繰り広げているのに、この不届きものめらが」
やべ、飯食って話し込んでたらやべえの二人に因縁つけられた。
「えっと……じゃ、飯にします……?」
『うむ! その牛丼、我にもよこせ! 戦いはまだまだ続くのだからな!』
「しっかり栄養を取り我と戦え。次で最後の一撃を食らわせてやる」
……戦いはまだまだ続くっぽいです。
早く終われ!
感想 9,840
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