装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

613 とにかく良し。

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 豪炎の円陣と呼ばれるスキルは、中級の位置にある火属性魔法。
 相手に火傷の異常状態と自身の火属性ダメージを上昇させる。
 防御とバフの能力を兼ね備えたスキルなのだが、断じて攻撃スキルではない。
 もう一度言う、断じて攻撃スキルではない……はずだった。

 ゴゥゥゥゥゥウウウウ──!

 しかし、イグニールの用いたスキルはINT7万弱から放たれたもの。
 中級のスキルと言えども、そこまでINTがあったらやばい状況だった。

 豪炎が、一瞬にして鬼を包み込む。
 耐久力があろうがなかろうが関係なしに。
 即時回復しようがしまいが関係なしに。

 焼き尽くして、爆散だよおい……。
 衝撃波が軍師をぶっ飛ばし、鬼神石とやらを破壊した。

「うわぁ……」

 恐ろしい、と素直にそう思った。

「ふう、スッキリした」

 爆炎の中、イグニールは髪をかき上げて一息吐く。
 ストレス溜まってたのかな……?
 心配かけちゃったし、そうなんだろうな。

「イ、イグニールさん……お疲れ様です……」

「なんで敬語なのよ」

「いや、な、なんとなく」

 恐ろしいから、とは絶対に口にできない。

「と、とりあえず勇者たちもぶっ飛んでるから、回収に行かないと……」

「あっ、しまった巻き込んじゃったわね」

 しれっとそんなことを宣うイグニール。
 ……確信犯では?
 ま、まあ、深くは考えてないでおこう。

 たまたま巻き込んじゃっただけ。
 事故だ、事故。

「盟主よ。あれ程の豪炎、爆炎、食らってはひとたまりもない」

「……どうだろうな、ロイ様。とにかく見てみないとわからない」

 好きではないし、現状嫌いな部類だが、別に殺したいわけじゃない。
 高校生だぞ、高校生。
 それが力を手にして調子に乗ってるだけだから、大目に見ないと。
 しっかり元の世界に送り返すのが、一番平和的解決だろうさ。

 俺はみんなを引き連れて、ぶっ飛ばされた勇者たちを探しに行った。
 軍師の邸宅は、イグニールの炎と爆発にて、すでに更地。
 瓦礫の中に、勇者たちは四人揃ってしっかりと生存していた。

「……奇跡か?」

 ぶっ飛んだ屋根とか、割れた鬼神石、
 それがぽっかりと空洞になって彼らを守っていた。

「そう言えば、私たちを取り囲んでいた鬼が良い感じに盾になってましたぞ」

「マジで?」

 骨は端から彼らの様子を見ていたらしい。
 イグニールの豪炎と爆発。
 たまたま俺たちを囲っている鬼の中に耐性高い奴がいて。
 運良く炎を勇者の間にいて、盾となって炎を回避したとのこと。

「でもさ骨、その後の爆発はもろにくらっていたはずなんじゃ?」

 鬼は焼け死んで、それで盾になる奴なんて誰もいない。
 俺たち全員はイグニールの円陣の内部にいて誰も助けには入れない。
 なんで生きてるんだ、という今世紀最大の謎が出現していた。

「そうですけど、現に魂は残っておりますぞ~?」

「……まあ、深く考えないようにしておこう」

 勇者って、元々そう言うもんなんじゃないか。
 とんでもラッキーボーイ、それが勇者。
 ノーカルマなのも頷ける、そんな奴らなのだ。

「連れて帰るか」

「うむ、私が全員を背負うことにしよう」

 ロイ様がボンッと体を元の大きさに戻して勇者たちを担ぐ。
 担ぐと行っても、体にめり込ませるような形が正しい。
 衝撃の影響で、拘束していた鎖も千切れているし楽だった。

「連れて帰るってことは、クロイツに戻るのかしら?」

 イグニールの言葉に頷いておく。

「うん、飛空船に乗せれば早いだろ」

「でも推進機が破損してて、修理もまだかかると思うけど」

「ワシタカくんが引っ張ってくれるから、浮かべば大丈夫」

 とにかく、この状況に応じて野次馬がたくさん集ってくる。
 その前にさっさとずらがるの一番だ。

 この件に関して、アドラーに報告。
 そして魔国との話し合いを持ってして、時間を稼ぐ。
 魔国は危険過ぎて、迂闊に立ち寄ることはできない。
 そんな言い訳で、しばし平穏を取り戻す算段である。

 ポチの飯だって家でゆっくり食べたい。
 みんなと団欒を過ごしたい。
 そのための平和的解決策は、その外交問題だ。

 国家間のやり取りなんて、どうやったとしても時間がかかる。
 情報の伝達速度が遅いこの世界なら、3ヶ月くらいは自由だ。

「よし、みんな、聞くところによればクロイツはソーセージが有名らしい」

「急にどうしたのよ……」

 話をいきなり変えた俺に、イグニールが少し困惑する。

「いや、いっぱい買って帰って、家でバーベキューでもしようよ……みんなで」

「そうね。みんなでしましょ、バーベキュー」

 帰ったらホームパーティーの続きだ。
 魚はまだまだ大量にあったから、また調理してもらえば良い。
 なんだかお腹が空いてきた。
 空腹だ、空腹!
 みんなといると、落ち着くし、不安もすっかり消える。
 ありがたい存在だよ、ほんとに。

「ォン」

「え、なに? だっこ? はいはい」

 ポチが両手を上げて万歳し、抱っこをせがむので抱える。
 そうだ、ポチにも朗報があった。

「そうだポチ、ソーセージ用のミンチを作る魔導機器をクロイツで買ってあるぞ」

「アォン! ォン!」

 これで家でも自家製ソーセージをポチが作ってくれる。
 ……うむ、収穫はめちゃくちゃあった。
 こうして考えれば、再召喚されたこと、悪くないぞ。

 後ろを向くより、先を不安がるより。
 希望を抱いて前を向くのがやっぱり大事なんだね。
 この仲間たちは、俺の背中を押してくれて。
 前を向かせてくれる大事な大事な家族なのである。

「ねえ、ソーセージってなんだし? 甘いやつ?」

「おいしい奴」

「ならばよし!」

「おう。だからさっさと帰らなきゃな」

 俺のフードに収まるジュノーにそんな言葉を返して、この場を後にしようとした。
 その瞬間。

「貴様ら、妾が逃すと思うたか、思うたか……貴様ら!」

 瓦礫の中から、ボロボロになった軍師が立ち上がった。
 まーだ生きてんのか。
 本当にしぶとい奴だな、こいつ。
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