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本編
668 知らないうちに、商会がでかくなっていた件・前
しおりを挟むパーティーネームの申請に向かってから、俺は平和な日々を過ごしていた。
先日、ミニメイド服を着て冒険者ギルドへ赴いたおかげで、妙な噂が立つ。
トウジアキノは、ゴーレムにメイド服を着させるほどのマニアである。
さらに、最近は自分自身もミニスカのメイド服を嗜んでいると、そんなところだ。
…………。
おいおいおいおい、ちょっとまてと。
ミニスカメイド服を身につけて外出したのなんて、三日くらい前だぞ。
人がいない時間帯を見計らって颯爽と行動に移したはず。
なのに、なんで周りの冒険者、ではなく近所の人の視線が痛いんだ。
近所ってのがミソだな。
日本人としては、それが一番心に来る訳で。
「はあ……まあ、罰ゲームだから仕方がないか」
それに、なんだ……。
リアル女装は初めてで、良い経験となった。
なんと言うか……。
少しだけ爽快感を感じたのである。
スカートが風ではためくだけで、男の俺でも恥ずかしくなりました。
こう言う感覚なのね、女の子って。
「トウジちゃんトウジちゃん」
リビングにて、ミニスカから出た俺の素足を駆け巡った風の感覚。
それを思い返しながらお茶を飲んでいると、マイヤーの声がした。
「その言い方はやめてくれ」
「あー、こないだのトウジはめっちゃ可愛かったなあ~」
「……」
なんだか可愛かったとか言われると、急にバカバカしくなってきた。
うん、やっぱり男がスカートを履いてもただキモいだけだな。
「そう気分悪うせんと、楽しかったんやからさあ!」
「まあ、確かにそうだけど」
楽しくなかったと言えば、嘘になる。
いじられるのも含めて、あとあと楽しい思い出なのさ。
リア充はそうやって脳内で変換していくのさ。
「で、なに?」
名前を呼ばれた理由を尋ねる。
「なんや、何か用事がないと名前呼んじゃダメなん?」
「いや別にそんなことはないけど」
まさかマイヤーが名前を呼んでみたかっただけとか。
単純にそんなことはないはずだと思っただけである。
「トウジトウジトウジトウジトウジ」
「……怖っ」
これ見よがしに名前を呼ぶマイヤー。
なんと言うか、可愛げのかけらもなかった。
マクラスの名を連呼するジュノー並みにやばいぞ。
あと、あのメンヘラレズ研究員の女もな。
「そんなガチで引いた様な顔せんでや……」
「おふざけにしても、それはちょっとヤバいぞ」
「冗談やって。本当は用あるよ」
……あるじゃん!
俺の予想は間違ってなかった。
マイヤーはコーヒーを飲みながら、話を続ける。
「今日暇?」
「特に用事はないけど」
「せやったら、こっちに顔を出してくれへん?」
「いいけど、どうしたの?」
こっちと言えば、ギリスに本陣を構える商会関連のことである。
エリナから依頼の連絡が来るまで、しばらくギリスでの生活だ。
再びこちらに着手といきましょう。
「見せたいものがあるねん」
「見せたいもの?」
「トウジ、いっつも遠出ばっかりで、こっちのことよくわかっとらんやろ?」
「そうだね。でも、飛空船がどこまで進んでるかは把握してるよ」
「飛空船だけじゃなくて、その他に色々とやっとったことがあったやろ?」
「まあね」
「それを今日まとめて説明するから、昼ごろにアルバート商会に顔を出してや」
「アルバート商会? 研究所じゃないの?」
「まっ、それは着てからのお楽しみやで! にしし」
「わかった」
それだけ言うと、マイヤーはコーヒーを一気飲みしてそのまま出かけてしまった。
アルバート商会での仕事が朝からあるのだろう。
働き者だなあ……俺もマイヤーを見習ってもっと働くべきだと思った。
頑張る姿を見てると、こっちも頑張れる。
今日も遅くまで装備製作やポーション製作しよっと、うふふ。
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