装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
368 / 650
本編

669 知らないうちに、商会がでかくなっていた件・後

しおりを挟む
 昼過ぎ頃、ポチを連れてアルバート商会に顔を出すことにした。
 トガルからの輸入品をギリス国内の商会に卸す役割を持つこの店舗。
 こそっと中を覗き込むと、みんなが忙しそうに動いていた。

 荷物を持って、行ったり来たり。
 来客は無いにしろ前とは比べものにならないほどの忙しなさだった。

「各種資材は向こうや、TAFの方!」

「はい、お嬢様!」

「そっちの魔石とポーションは特売価格やから、新規参入した商会の分!」

「はい、お嬢様!」

 おー、久々に忙しそうに働くマイヤーの姿を見た。
 家での気の抜けた姿とは、一変した印象である。
 働く女性、って感じだ。

「マイヤー、きたぞ」

「トウジ、待っとったで」

 商品リストが挟まれたバインダーを別の人に任せ、マイヤーが駆け寄って来る。

「忙しそうだけど、大丈夫なのか?」

「ええてええて、ほなリクールも呼びにいこか」

 忙しそうな商会の中を抜けて、リクールのいる大倉庫へと向かった。
 アルバート商会の店舗は、俺の知らぬ間に改築し大きくなっている。

「こんな倉庫とかあったっけ?」

「研究所に回す分の資材置き場も兼ねとるからね」

「なるほど、助かるよ。協力してくれて」

「ううん、うちも好きで協力しとるし、ええんよ」

 それに、とマイヤーは続ける。

「もともと荷物の量は着々と増えとるから、これを機にガッツリ増やしたんよ」

 ギリス国内でも、アルバート商会は着々と取引先を増やしている様だった。
 C.Bファクトリーとの取引は他の商会に変わってしまったものの。
 その代わりに俺が大量に物資を買い込み、余った資材の買い支えを行なっている。
 俺個人としても使うし、ぶっちゃけこれからのことを考えたらいくらあっても足りん。

「いやぁ、敷地のデカさは商会のデカさやで、ほんま」

 ニコニコと事業拡大のことを語るマイヤーを見て、ふと思った。

「酒飲んでる時のマイヤーはどうしようもないけどさ」

「それ言わんでや、酒がないともうあかん体になってしまったんや」

「でも、こうして働いてる時のマイヤーの方が、俺は好きだよ」

「え」

 固まってしまったマイヤーに、言葉を続ける。

「なんつーか、楽しそうに目が輝いてるよね」

 マイヤーの仕事をしている時の瞳を見ると、最初の頃を思い出すんだ。
 デプリからトガルに来るまで、一緒に旅した道中のこと。
 そして、トガルからギリスに来るまでの2度目の旅路のこと。

「学校が落ち着いたら、また旅しようよ、みんなで一緒に」

 いつもストロング南蛮とギリスに留守番だったマイヤー。
 やはり、みんな揃って遠出した方が楽しいと感じる。
 美味しいものとか、物珍しいものとか、そう言う新発見や体験は全員で分けるものだ。
 その時に、俺の出自も話そうとは思っている。

「馬車が飛空船になる感じやね?」

「荷馬車の住人じゃなくなるのは寂しく感じるけどね」

「アォン」

 ポチも俺の言葉に合わせて頷く。

「シュバルツもネーロも、トガルに置いて来とるから、しゃーないで」

 次はワシタカくんが彼らの代わりに船を引く、という寸法だ。
 そんな話をしながら、奥にある大倉庫の中へと入る。
 大倉庫の場所は、もはやアルバート商会があった通りとは別の通りに入り口があるレベル。
 道と道の間を突き抜けた店舗、ギリスでもなかなか無いレベルの大きさだと思った。

「リクール! 一旦中止してもろていい?」

「お嬢様、どうかしたんですか?」

 倉庫の中には、全身を真っ赤にさせて湯気を放出するリクールが一人作業している。
 貨物を積んだ巨大な箱、コンテナを一人であっさり抱えて整理している様だった。
 彼の近くには『燃料』と書かれた酒樽が三つ。
 ああして酒を飲んで力を増し、普通だったら滑車とロープを用いて持ち上げる重たい荷物でも、一人で楽々行うことができるのだ。

「トウジ殿、ご調子はいかがですか?」

「いや、一緒に住んでるんだからそう言う挨拶はいいだろもう」

「すいません、ご来客多いもんですから癖になってる様でして」

「ほー、結構アルバート商会の手伝いも板について来たのか」

「ええ、重荷作業と並行して、執事の嗜みすらも勉強中ですね」

 執事の嗜みか。
 酒飲みながら仕事してても説得力ないな、とは思う。
 しかしながら、リクールが力を発揮するためには酒が必要なのだ。
 日本に住んでいた頃の価値観なんて関係ない。

「それで、どうなされたんです?」

「リクール、ちょっとトウジにTAFの事務所を見せようと思ってな?」

「おお、いよいよお披露目ですか!」

「せやねん、せやねん!」

 TAFの事務所?
 そういえば資材をTAFに、とか言ってたけど。

「新しくマイヤーが作った商会か?」

 そう尋ねると、マイヤーは呆れた様な表情をして言う。

「何言うとん、研究所と一体型になった商会。つまりトウジとうちの商会やで」

「えっ、そんな名前だったの!?」

 今までずっと着手しておきながら、ようやく名前を知る俺だった。

「TAFって、ちなみに何の略?」

 C.Bファクトリーがカルロ・ブリンドの略なのは知ってる。
 TAF……FはファクトリーのFなのかな?

「トウジ・アキノ・ファクトリー」

「えっ」
しおりを挟む
感想 9,839

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。