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本編
669 知らないうちに、商会がでかくなっていた件・後
昼過ぎ頃、ポチを連れてアルバート商会に顔を出すことにした。
トガルからの輸入品をギリス国内の商会に卸す役割を持つこの店舗。
こそっと中を覗き込むと、みんなが忙しそうに動いていた。
荷物を持って、行ったり来たり。
来客は無いにしろ前とは比べものにならないほどの忙しなさだった。
「各種資材は向こうや、TAFの方!」
「はい、お嬢様!」
「そっちの魔石とポーションは特売価格やから、新規参入した商会の分!」
「はい、お嬢様!」
おー、久々に忙しそうに働くマイヤーの姿を見た。
家での気の抜けた姿とは、一変した印象である。
働く女性、って感じだ。
「マイヤー、きたぞ」
「トウジ、待っとったで」
商品リストが挟まれたバインダーを別の人に任せ、マイヤーが駆け寄って来る。
「忙しそうだけど、大丈夫なのか?」
「ええてええて、ほなリクールも呼びにいこか」
忙しそうな商会の中を抜けて、リクールのいる大倉庫へと向かった。
アルバート商会の店舗は、俺の知らぬ間に改築し大きくなっている。
「こんな倉庫とかあったっけ?」
「研究所に回す分の資材置き場も兼ねとるからね」
「なるほど、助かるよ。協力してくれて」
「ううん、うちも好きで協力しとるし、ええんよ」
それに、とマイヤーは続ける。
「もともと荷物の量は着々と増えとるから、これを機にガッツリ増やしたんよ」
ギリス国内でも、アルバート商会は着々と取引先を増やしている様だった。
C.Bファクトリーとの取引は他の商会に変わってしまったものの。
その代わりに俺が大量に物資を買い込み、余った資材の買い支えを行なっている。
俺個人としても使うし、ぶっちゃけこれからのことを考えたらいくらあっても足りん。
「いやぁ、敷地のデカさは商会のデカさやで、ほんま」
ニコニコと事業拡大のことを語るマイヤーを見て、ふと思った。
「酒飲んでる時のマイヤーはどうしようもないけどさ」
「それ言わんでや、酒がないともうあかん体になってしまったんや」
「でも、こうして働いてる時のマイヤーの方が、俺は好きだよ」
「え」
固まってしまったマイヤーに、言葉を続ける。
「なんつーか、楽しそうに目が輝いてるよね」
マイヤーの仕事をしている時の瞳を見ると、最初の頃を思い出すんだ。
デプリからトガルに来るまで、一緒に旅した道中のこと。
そして、トガルからギリスに来るまでの2度目の旅路のこと。
「学校が落ち着いたら、また旅しようよ、みんなで一緒に」
いつもストロング南蛮とギリスに留守番だったマイヤー。
やはり、みんな揃って遠出した方が楽しいと感じる。
美味しいものとか、物珍しいものとか、そう言う新発見や体験は全員で分けるものだ。
その時に、俺の出自も話そうとは思っている。
「馬車が飛空船になる感じやね?」
「荷馬車の住人じゃなくなるのは寂しく感じるけどね」
「アォン」
ポチも俺の言葉に合わせて頷く。
「シュバルツもネーロも、トガルに置いて来とるから、しゃーないで」
次はワシタカくんが彼らの代わりに船を引く、という寸法だ。
そんな話をしながら、奥にある大倉庫の中へと入る。
大倉庫の場所は、もはやアルバート商会があった通りとは別の通りに入り口があるレベル。
道と道の間を突き抜けた店舗、ギリスでもなかなか無いレベルの大きさだと思った。
「リクール! 一旦中止してもろていい?」
「お嬢様、どうかしたんですか?」
倉庫の中には、全身を真っ赤にさせて湯気を放出するリクールが一人作業している。
貨物を積んだ巨大な箱、コンテナを一人であっさり抱えて整理している様だった。
彼の近くには『燃料』と書かれた酒樽が三つ。
ああして酒を飲んで力を増し、普通だったら滑車とロープを用いて持ち上げる重たい荷物でも、一人で楽々行うことができるのだ。
「トウジ殿、ご調子はいかがですか?」
「いや、一緒に住んでるんだからそう言う挨拶はいいだろもう」
「すいません、ご来客多いもんですから癖になってる様でして」
「ほー、結構アルバート商会の手伝いも板について来たのか」
「ええ、重荷作業と並行して、執事の嗜みすらも勉強中ですね」
執事の嗜みか。
酒飲みながら仕事してても説得力ないな、とは思う。
しかしながら、リクールが力を発揮するためには酒が必要なのだ。
日本に住んでいた頃の価値観なんて関係ない。
「それで、どうなされたんです?」
「リクール、ちょっとトウジにTAFの事務所を見せようと思ってな?」
「おお、いよいよお披露目ですか!」
「せやねん、せやねん!」
TAFの事務所?
そういえば資材をTAFに、とか言ってたけど。
「新しくマイヤーが作った商会か?」
そう尋ねると、マイヤーは呆れた様な表情をして言う。
「何言うとん、研究所と一体型になった商会。つまりトウジとうちの商会やで」
「えっ、そんな名前だったの!?」
今までずっと着手しておきながら、ようやく名前を知る俺だった。
「TAFって、ちなみに何の略?」
C.Bファクトリーがカルロ・ブリンドの略なのは知ってる。
TAF……FはファクトリーのFなのかな?
「トウジ・アキノ・ファクトリー」
「えっ」
トガルからの輸入品をギリス国内の商会に卸す役割を持つこの店舗。
こそっと中を覗き込むと、みんなが忙しそうに動いていた。
荷物を持って、行ったり来たり。
来客は無いにしろ前とは比べものにならないほどの忙しなさだった。
「各種資材は向こうや、TAFの方!」
「はい、お嬢様!」
「そっちの魔石とポーションは特売価格やから、新規参入した商会の分!」
「はい、お嬢様!」
おー、久々に忙しそうに働くマイヤーの姿を見た。
家での気の抜けた姿とは、一変した印象である。
働く女性、って感じだ。
「マイヤー、きたぞ」
「トウジ、待っとったで」
商品リストが挟まれたバインダーを別の人に任せ、マイヤーが駆け寄って来る。
「忙しそうだけど、大丈夫なのか?」
「ええてええて、ほなリクールも呼びにいこか」
忙しそうな商会の中を抜けて、リクールのいる大倉庫へと向かった。
アルバート商会の店舗は、俺の知らぬ間に改築し大きくなっている。
「こんな倉庫とかあったっけ?」
「研究所に回す分の資材置き場も兼ねとるからね」
「なるほど、助かるよ。協力してくれて」
「ううん、うちも好きで協力しとるし、ええんよ」
それに、とマイヤーは続ける。
「もともと荷物の量は着々と増えとるから、これを機にガッツリ増やしたんよ」
ギリス国内でも、アルバート商会は着々と取引先を増やしている様だった。
C.Bファクトリーとの取引は他の商会に変わってしまったものの。
その代わりに俺が大量に物資を買い込み、余った資材の買い支えを行なっている。
俺個人としても使うし、ぶっちゃけこれからのことを考えたらいくらあっても足りん。
「いやぁ、敷地のデカさは商会のデカさやで、ほんま」
ニコニコと事業拡大のことを語るマイヤーを見て、ふと思った。
「酒飲んでる時のマイヤーはどうしようもないけどさ」
「それ言わんでや、酒がないともうあかん体になってしまったんや」
「でも、こうして働いてる時のマイヤーの方が、俺は好きだよ」
「え」
固まってしまったマイヤーに、言葉を続ける。
「なんつーか、楽しそうに目が輝いてるよね」
マイヤーの仕事をしている時の瞳を見ると、最初の頃を思い出すんだ。
デプリからトガルに来るまで、一緒に旅した道中のこと。
そして、トガルからギリスに来るまでの2度目の旅路のこと。
「学校が落ち着いたら、また旅しようよ、みんなで一緒に」
いつもストロング南蛮とギリスに留守番だったマイヤー。
やはり、みんな揃って遠出した方が楽しいと感じる。
美味しいものとか、物珍しいものとか、そう言う新発見や体験は全員で分けるものだ。
その時に、俺の出自も話そうとは思っている。
「馬車が飛空船になる感じやね?」
「荷馬車の住人じゃなくなるのは寂しく感じるけどね」
「アォン」
ポチも俺の言葉に合わせて頷く。
「シュバルツもネーロも、トガルに置いて来とるから、しゃーないで」
次はワシタカくんが彼らの代わりに船を引く、という寸法だ。
そんな話をしながら、奥にある大倉庫の中へと入る。
大倉庫の場所は、もはやアルバート商会があった通りとは別の通りに入り口があるレベル。
道と道の間を突き抜けた店舗、ギリスでもなかなか無いレベルの大きさだと思った。
「リクール! 一旦中止してもろていい?」
「お嬢様、どうかしたんですか?」
倉庫の中には、全身を真っ赤にさせて湯気を放出するリクールが一人作業している。
貨物を積んだ巨大な箱、コンテナを一人であっさり抱えて整理している様だった。
彼の近くには『燃料』と書かれた酒樽が三つ。
ああして酒を飲んで力を増し、普通だったら滑車とロープを用いて持ち上げる重たい荷物でも、一人で楽々行うことができるのだ。
「トウジ殿、ご調子はいかがですか?」
「いや、一緒に住んでるんだからそう言う挨拶はいいだろもう」
「すいません、ご来客多いもんですから癖になってる様でして」
「ほー、結構アルバート商会の手伝いも板について来たのか」
「ええ、重荷作業と並行して、執事の嗜みすらも勉強中ですね」
執事の嗜みか。
酒飲みながら仕事してても説得力ないな、とは思う。
しかしながら、リクールが力を発揮するためには酒が必要なのだ。
日本に住んでいた頃の価値観なんて関係ない。
「それで、どうなされたんです?」
「リクール、ちょっとトウジにTAFの事務所を見せようと思ってな?」
「おお、いよいよお披露目ですか!」
「せやねん、せやねん!」
TAFの事務所?
そういえば資材をTAFに、とか言ってたけど。
「新しくマイヤーが作った商会か?」
そう尋ねると、マイヤーは呆れた様な表情をして言う。
「何言うとん、研究所と一体型になった商会。つまりトウジとうちの商会やで」
「えっ、そんな名前だったの!?」
今までずっと着手しておきながら、ようやく名前を知る俺だった。
「TAFって、ちなみに何の略?」
C.Bファクトリーがカルロ・ブリンドの略なのは知ってる。
TAF……FはファクトリーのFなのかな?
「トウジ・アキノ・ファクトリー」
「えっ」
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