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本編
691 里探しと、追うもの
しおりを挟む一先ず、情報などを仕入れるために、ピーちゃんの故郷を目指すことになった。
上空に浮かぶ飛空船は、人の社会から離れた場所で暮らす者には異物である。
余計な敵愾心を煽らないように、かなり離れた位置に戻って山を登ることにした。
「下がっちゃった分、他の冒険者も周りにいそうね」
「うん、一応同業の存在には気をつけよう」
イグニールの言葉に頷きながら返答する。
子をさらう、そんなエピソードがピーちゃんにはあった。
できる限り、ハイオークの里がある場所は悟られないようにする。
そのために、ポチの鼻を頼りにしながら道無き道をゆくのだ。
しかし、すでに上からの景色は見ている。
ハイオークやエルフから情報を得られれば、絶対的に有利だ。
「ピーちゃん、疲れたらいつでも抱っこするからな?」
「ぷっ!」
そうやって言うのだが、本人は気丈に振る舞いつつ頑張って歩いていた。
まだ低レベルなので、俺の強い装備を身につけることはできない。
だが、装備の基本性能がなくとも今の俺は【神匠】。
色々な保険をピーちゃんに持たせることは可能だ。
天使のスクロールで全体的なステータスを大きく盛ってやり。
腕輪もHP1で堪える代物で、装備自体にはHP回復ガン盛り。
見た目をポチとお揃いの服にして来ている姿。
それはそれは可愛いもんだった。
子は宝だ、とピーちゃんの姿を見ていてずっとそう思っていた。
育てる側、そして周りがしっかり見て置かないといけない。
ライデンをいじめていた奴らに最初は情けをかけていたのも、それが理由である。
だからこそ、離れ離れは良くないし、親がいるなら親の側がいい。
俺は親孝行も何もできなかったんだ、他の子にはして欲しい。
万が一にも、道端で子さらい紛いな奴に出会ったら、容赦無く消す。
「……アォン」
「人の匂いがこの先からするってさ」
「了解。ポチ、できるだけいないルートで頼む」
「ォン」
蛇行するように山を登って行く。
全員抱えて俺が跳ぶ。
ハイジャンプおじさんの妙技、ここに極まれり。
「ピーちゃんは、何か思い出せる景色とかある?」
「ぷ?」
「さらわれる前の風景とかさ、そう言うのだけど」
「ぷぅ~……」
額に手を当てて必死に思い出そうと言うピーちゃん。
だが、ダメだったと悲しい表情をする。
「良いんだよピーちゃん。思い出せなくてもね」
「トウジ、鼻血吹いて」
なに、鼻血が出ていたとな?
これしきのことで鼻血が出るなんて、俺、どうなった。
だいぶ、もふもふプニプニの虜になってしまっている。
くそー、頑張ろうって気丈に振舞わなくても良いのに。
抱っこするのに。つーか抱っこさせろお!
「あ、あとトウジ様、もう一つ」
「どうした、骨?」
後ろを眺めていた骨が、言う。
「それなりにカルマが溜まった奴らが私たちの後をついて来ているみたいですぞ」
「……それは悪い奴って意味でいいの?」
「その受け取り方で十分ですが、それだとトウジ様は極悪人ってことになりますぞ」
「別に良い人を自称してる訳でもないから、なんだって良いよ俺は」
一番近い人間が、俺を良い奴だと思ってくれればそれで良い。
理解してくれればそれで良い。
人間、自分の感情に従って人を決めつけるのが好きだからね。
そう思われるのなんて、ネトゲ廃人してたら慣れてるよ。
「ともかく、目立った後だからつけてくる気持ちもわからんでもない」
「蹴散らしますか?」
「いや、無視してさっさと先に進む。俺たちのスピードには誰もついてこれない」
たとえ3枠上限でグリフィーがいなくとも、クイックを使えばみんな速くなる。
ピーちゃん歩くスピードでも、普通の冒険者の行動速度の倍なのだ。
ちなみに召喚枠だが、上空待機がジュニア。
大まかな方角を決めるのが、コレクト。
先に人間の痕跡とかそう言うのがないか見るのがポチ。
骨にも、その特殊な目を使って色々と周りに目を向けてもらっている。
余裕だな。
夜は飛空船に戻って寝るから、寝首をかかれる心配もない。
「よし、行くぞ」
前後左右を警戒しつつ、俺たちはさらに山を登った。
もし後ろから追ってくる奴らが、ピーちゃんを見た後の冒険者とかだった場合。
山の養分になってもらう。
俺たちの後について来て、浄水を奪うつもりの冒険者であっても、埋める。
容赦はない。
自分が死ぬくらいなら、と思えば、心から人としての重要な何かが薄れて行く。
そんな気がした。
明確な殺意というものはないけれど。
こういう気分になるのは、この世界にだいぶ慣れて来たからだろうか。
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