装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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692 教祖との対話

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「……まだついて来てますぞ、付かず離れず、五日ほど」

「そっか」

 ピーちゃんの故郷を探して、五日ほどの時が経過した。
 未だ、故郷は見つからず。
 そして、俺たちの後をつけていた存在も、変わらずだ。

「無用な気配が多いから、ハイオークは姿を見せないのかもですぞ」

「面倒臭い奴らだな」

 夜、みんなを飛空船内で待機させたまま、俺は骨と二人で山にいた。
 このまま無視しておくには厄介だと思ったからである。
 どういった存在なのかはわからないが、道中ちらほら他の冒険者を見た。
 それはすでに死体だった。

 死体を食い漁る魔物たちを蹴散らして、少しだけ調べると判明する。
 同業による同業殺し。
 予測はしていたが、やはりバトルロワイヤルは始まっていたのだ。

「どうしますか?」

「簡単だよ」

 ──やられる前に、やる。

 相手は野盗でもなんでもない、冒険者。
 まだこっちが被害を被った訳ではないが、死ぬくらいなら殺す方がマシだ。

「今の俺、カルマ溜まってる?」

「バッチリです」

「そっかそっか。ちなみに一つ聞きたいんだけどさ」

「なんでしょう?」

「カルマが溜まり過ぎた人とかって、どうだったの?」

 俺は骨に対して、そんなことを尋ねていた。
 未だに信じた訳ではない。
 そんな漠然としたもの、ただ運が良かった悪かった。
 みたいな、結果論でしかないとは思っていた。

 でも、因果応報という言葉が存在するように。
 そして漠然としたものが見える存在がいるように。

 あるのだろう。
 人の業というものは、そこに、確かに。

「……色々ですよ」

 色々か。
 悲惨な命運を辿った人も、中にはいるんだろう。
 俺にもそんな結末が、待っているのかもしれん。

「トウジ様、全ての人が等しく原罪を背負って生きています」

「原罪、ね」

「故に、使命を背負うのです。故に、困難を受けるのです」

 日本では神頼みとか言うが、神が助けてくれるとは限らないこと然り。
 持って生まれた罪とともに、困難を乗り越えたものに愛は語られるそうだ。
 神とか、業とか、都合の良い人の解釈かもしれないけど。

 どこにあるかもわからない心を強く持つ上で、だ。
 よくわからない存在を創造するのは理解できる。

 それ象徴するように、俺はこうして夜に度々骨と会話をしていた。
 日本のことはそこまで話さないけど、彼女の言葉に触れるとその頃を思い出す。
 一つだけ言っておこう、別に白骨カルマ禊教に入信した訳ではないからな?

「トウジ様」

「ん?」

「あまり考え込むのは良くないことですよ」

 骨は言う。

「ここは貴方がいた日本ではない。信じるモノも、その頃のモノではないのです」

「まあね」

 もともと宗教的な価値観は希薄なタイプだが、社会性とでも言うのだろうか。
 道徳的な価値観で行けば、こんな山奥で誰かが誰かを殺したところで問題はない。
 それが立場ある人間だとすれば、繋がりのあるものからの私的な報復を受ける。

 それだけだ。
 わかっちゃいるんだが、今までは中々飲み込めない部分もあった。
 混乱の最中、薄れる命の価値で、ノリで、誤魔化していた。

「俺さ、どうでもいいことの決断って早い方だと思う」

「はい? いきなりなんですぞ?」

「でも、大切なことになればなるほど、その先が怖いんだよね」

 いろんな人がきっかけをくれたと言うけれど。
 単に、俺自身は自分が責任を背負いたくなかっただけだ。
 自分で見つけて、自分で解決して、俺は何もしてない。
 俺自身が、自分一人では何もできない底辺野郎だからな。

「何を言い出すかと思えば、それってイグニールさんのことですか?」

「……いや、違うけど」

「私には、そう聞こえますぞ~。据え膳食わぬは男の恥と言うじゃないですか」

「いや、だからさ、そう言うことじゃ……」

 昨今、そんなこと言われてもムードに飲まれた言い訳にしか過ぎんぞ。
 更に言えば、だ。

「本来の意味は出された飯が気に入らなくとも作った相手の気持ちを考えて平らげろってことだぞ」

「一呼吸で言い切りましたね。焦りすぎですぞ」

「ぐっ」

 シュバッと切り返されて言葉に詰まる。

「ともかく、人の気持ちなんてわかる訳ないですから、ぐちぐち悩んでても仕方ないですぞ」

 骨は続ける。

「殺しも同じで。痛かった辛かった苦しかった、それを考えるのはあくまでこっちの意見」

「意外とドライなんだな、その辺」

「何年この世界にいると思ってるんですぞ? もう慣れました、と言うべきでしょう」

「仮にも元聖女がそれでいいのか?」

「私たちが呼び出された頃は、戦争真っ只中でしたから、そんなことは言ってる場合ではございませんでした」

「そっか……」

「で、とりあえず関係性は今のままでイグニールさん、そしてジュノーさん、マイヤーさんを娶る感じでどうですぞ?」

「……は?」

 いきなりなんだこいつ。
 骨は急ににやけ出した。

「踏ん切りつかない気持ちがあるのなら、プラトニックな感じにしといて後々関係性を築いて行けば良いですぞ~?」

「うっせ」

「一夫一妻なんて常識すら、この世界にはないんですから、良いではないか~良いではないか~。ついでに骨も」

「すまんな、人外はNGで。ごっこ遊びまでなら許可する」

「振られてしまいましたぞ~、悲しいですぞ~!」

「心にもないことはあんまり言わない方がいいぞ……それこそカルマだ、カルマ」

 三十路のおっさんでも、コロッといっちゃうんだからね。
 パパ活という名前に変わって、若い女性とおっさんの関係が続くのと一緒だ。
 歳を重ねれば重ねるほど、若さというものに弱くなるのだよ、おっさんは。

「まあ、自分で都合つけるよ。その辺はな」

「本当ですぞ?」

「マジ、リアル、ガチ」

「三文詐欺師が並べる常套句みたいになってますぞ……」

 いや、いずれにせよとは思う。
 何かしらのアプローチはしたいと思っている。
 だが、俺に余裕がないのは確かなことだった。

 骨が言うように、悔いを残さないよう、結果を先に出す。
 なんてこともありかもしれないけど。
 線引きが曖昧になったら、曖昧なままで溺れてしまう。
 俺はきっとそうやって破滅に陥る気がするんだ。

「筋は通したい」

 純粋にそう思った。
 眠る勇者たちを見て、色々と考えることがあった。
 何故、この世界に来たのか。
 未だにそれはわからんが、来たことの証明はしておきたいのだ。

「これ終わらせて、過去の賢者に会って、ガキたちを元の世界に返して」

 ついでに骨の体も元に戻して。
 二度と召喚が行われない様に、その技術も消して。
 全部真っさらにしたら、良いんじゃないだろうか。

「あとは余生過ごして、楽しく人生を終える」

「ダンジョンと繋がりを得て、永遠に生き続けると言う選択肢もありますぞ」

「……お前がそれ言う? あんまり良いことないだろ、そうなっても」

「そうですね。カマかけですぞ」

 もしも、子供が生まれたら。
 親より先に子供が死ぬことなんて、あっちゃいけないだろう。
 長生きするのは、なんだ、孫の顔見るくらいがちょうど良い。

「さてと、長話もこの辺にしておくか」

「ですぞ」

 夜の闇に乗じて、ぞろぞろと敵が現れていた。
 同業だったら、俺たちが何かを得るまで待機するはず。
 だが、ここに来たと言うことは、また別の輩だ。

「露骨な敵対心を感じますぞ~」

「胸が痛まない分、良かったかもな」

 そんな訳で、俺はコレクトをチェンジさせてロイ様を召喚する。

「出番か。盟主よ」

「わかってると思うけど、生け捕りの後、尋問で」

「了解した。──王室諸君」






=====
少しずつ成長する
とうじさんじゅっさい

この話の結末で、きっちり前に進めそうかな。
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