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本編
845 勝てない、じゃない、勝つ
「──我にはこの二つしか必要ない」
魔力を力への変換、そして力を魔力を除いた全ステータスへの上乗せ。
MPをSTRへ、STRをMPを除く全てのステータスへ。
「マジかよ」
単一ステータスを大幅に引き上げるスキル。
単一ステータスを全ステ上乗せするスキル。
シナジーは抜群、普通に強過ぎてやばい。
床を叩き割った理由も、理にかなっている。
資源と魔力がダンジョン構築には欠かせない要素だからな。
おそらく。
現状このダンジョンの最上階部分は誰も到達していない。
ぶち抜いた階層は、10階層以上。
ドロップアイテムが周りにしこたま落ちていることから想像できる。
中に住まわせていた魔物もそのままこいつの魔力になったのだろう。
「主よ、交代の時間だ」
「うむ、私ら以外はワシタカを呼び避難させておいた方がいいだろう」
「……わかった」
キングさんとロイ様の意見に頷き、彼らの後ろに一歩下がる。
ここから先、俺にはとてもじゃないがついていけない。
イグニールのような火力スキルもなければ、他のみんなみたいに特殊な能力もない。
あるのは強化した装備によって、過剰なまでに引き上げられた耐久力とアイテム類。
少し後ろに下がって相手の邪魔、味方のサポートをするのがいいだろう。
……どう、サポートすりゃいいんだ?
憤怒の時はラブに教えてもらったミントがあったし、相手も我を忘れていた。
だが、今回はない。
シンプルイズベストな能力は、煽り耐性皆無くらいしか弱点がない。
ダンジョンを壊して中のリソースを回収したりと、頭も回っている。
単純な能力に、マジで付け入る隙とか勝算が思いつかないな……。
「ロイ、万が一があれば嫁に出てきてもらうぞ」
「心得た、王の中の王よ。その時は私が時間を稼ぐ」
アローガンスを見据えて、キングさんとロイ様がそんな会話をする。
キングさんの戦い方は、真っ向勝負オンリー。
ならキングさん進化、からの小人の秘薬ペナルティで巨大化だ。
よし、これでいこう。
俺は、仲間を信じて一緒に戦うのだ。
「……貴様ら、まだ我に対抗しようと思っているのか?」
プランを決めて、行動に移そうとした時である。
ジッと俺を見ていたアローガンスが言った。
「この状況を前にしても、勝つ気でいるのは良き」
当たり前だろ。
最初にも言ったが、こんなところで油を売ってる場合じゃないんだから。
待たせてる人がいるんだ、邪魔するなら跳ね除けるのみ。
「だが、滑稽。貴様らはどうあがいたところで我には勝てん」
「傲慢よ」
その言葉を聞いて、キングさんが一歩前に出る。
「戦う前から決めつけるのは、愚の骨頂。傲慢ではあっても、愚か者ではないはずだ」
「ふむ、逃げる時間をくれてやったのに逃げずに立ち向かうのが愚かである」
もっとも、とアローガンスは言う。
「逃げようものなら追いかけて叩き潰すだけである」
さらに続ける。
「今貴様らにあるのは愚かに立ち向かって死ぬか、賢く逃げ回って死ぬか……」
そのどちらか、である。と奴は言葉を締めた。
「我が主に固く誓ったことは、我らの勝利。ただそれだけだ」
「キングさん……」
「故に勝つ。戦って勝つ。戦う前から決めつけるような愚か者には決して負けん」
キングさんの言葉を聞いていると、なんだか勇気が湧いてくる。
すげぇよ、キングさん。
諦めるのは、全部を出し切ってからだもんな。
海にマイヤーを探しにいって泣きながら帰ってきた自分が恥ずかしい。
「よし、サポートは任せてくれキングさん!」
「主よ、信じている」
俺も、みんなも、キングさんの勝利を固く信じている。
やるぞ!
「良いだろう、だがこの状態の我に拮抗する者は──」
「ッ」
声が聞こえた、その瞬間。
目の前からアローガンスが消えた。
「我の認めた者のみ、である」
後ろ、すぐ耳元で声が聞こえた。
……音が遅れている。
盛りに盛りまくったAGI値によって、動きは超音速へと昇華されていた。
そこそこステータス盛った俺でもそんなに早くないってのに。
こいつは今、いったいどれだけのステータスを持っているのか。
背筋が凍りつくような瞬間だった。
反射用にゴクソツを出す隙はない。
斥力を持って距離を取る暇もない。
それだけの速さである。
「いかんな、プルァ!」
「盟主よ、下がれ!」
すぐにキングさんとロイ様が介入すべく動く。
しかし。
「真っ向勝負のしばき合いは、貴様が一発多かったである」
遅い、届かない。
「これで五分である」
最初に俺が殴りつけた箇所を、そっくりそのまま真似るように。
本領を発揮したアローガンスからの一撃。
「──ッ」
回避──、できるわけもなく。
俺の視界は暗転した。
◇
「……う、……い、痛ぇ……ここどこだ……海? いや、水? お湯?」
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