平凡な男娼は厳つい軍人に恋をする

朏猫(ミカヅキネコ)

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番外編

その後 娼館の二人の主

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「ツバキが出て行って、十日経ったなぁ」
「そうだな」
「うまくやっていけてるかねぇ」
「どうだろうな」
「手紙が来るの、早かったなぁ」
「そうだな」
「っていうか手紙って! 少将、どれだけ過保護なの」
「……ヤナギ、うぜぇ」

 ジュッテンだって気にしているだろうに、うざいってなんだ。チラッとジュッテンのほうを見れば、三日前に届いたツバキからの手紙を仕舞ってある引き出しを見ている。
 ツバキがアララギ少将に身請けされてから七日後、ジュッテン宛に手紙が届いた。

『お元気ですか。僕はとても元気です。
お二人からいただいた碧玉は、アララギ少将の短刀と僕の首飾りになりました。
アララギ少将は、いつも一緒にいるみたいで嬉しい、と言っています。
僕の首飾りは、首輪みたいな見たことのない形のものですが、少将の故郷ではよく見られるものなんだそうです。上等な革だから肌触りがよくて、とても気に入りました。
本当は見せに行きたかったんですが、少将が一人での外出は危ないから駄目だと言うので、代わりにお手紙を送ります。
次は御用達のチョコレートを持って遊びに行きますので、楽しみにしていてください。
ツバキ』

 手紙を読んだジュッテンが「首輪だと……あの野郎」と、ドスの効いた声でアララギ少将を罵っていたのはおもしろかった。
 本当にジュッテンはツバキのことを大事にしている。人買いから買うときに思うところがあったのか、ずっと気にかけてきた。僕もツバキのことは弟分のように思っているけれど、それはジュッテンと似ているからだ。ま、純粋に慕ってくれる姿は可愛いと思うけれど。

 ツバキは五歳のとき、人買いに買われて田舎町から王都へやって来た。病気になった妹の薬のために、自ら人買いに売ってくれと父親に頼んだのだと言っていた。
 そのせいか、何かあっても家には帰れないと必要以上に身構えていて、高級娼館うちに来てからもありとあらゆることを辛抱しているように見えた。こういった職場によくある新人いびりにあっても我慢、本当は嫌なんだろうことがあっても口にも態度にも出さない。何を言われても押しつけられても黙々とやる、その姿がジュッテンの幼い頃と重なって見えた。
 ジュッテンと違ったのは、いつもニコニコしていたことだろうか。きっと笑顔でいることが幼いツバキにとっての処世術だったのだろう。それが僕には痛々しく見えて、やらなくなっていた男娼への手ほどきを引き受けてしまったくらいだ。

「ジュッテンが少将のことを嫌うのはかまわないけど、ツバキが少将のことを好きなのは忘れるなよ?」
「わかってる。だから余計に腹が立つ」
「なにそれ。まるで意地の悪い姑みたいなんだけど。もしかしてジュッテンってば、ツバキのお母さんなの? ってことは、お父さんは僕?」
「……ヤナギ、てめぇ」
「あ、また口が悪くなってる。駄目でしょ」

 高級娼館の主人になって随分経つと言うのに、いまだにジュッテンは口の悪さが抜けない。小さい頃、周囲から自分を守るために作った鎧のひとつが口の悪さで、それはもう娼館街のゴロツキ並みに達者だった。ドスが利いた声も本家に負けないくらい迫力がある。
 それに、誰もが二度見どころか五度見くらいしてしまうほどの美人なのに、滅多なことでは笑わない。それも小さい頃に身につけた鎧なんだろうけれど、ちょっと勿体ないなぁと思っている。

(……いや、あの笑顔は猛毒だから見せられないか)

 ジュッテンが微笑むだけで、たぶん十人中八人はイッてしまうと思う。うん、そんな情けない思いをする被害者を増やすくらいなら、笑わなくていいか。

「何にしても、ツバキが幸せになれてよかったじゃないか」

 そう口にすれば、ジュッテンが小さくだけれどコクンと頷くのが見えた。まったく、素直じゃないんだから。ま、そんなところも可愛いんだけれど。

 それにしても、ツバキが思った以上に子どものまま・・・・・・だったのには参った。まさか、あれほどまでに感情が偏っていたとは……。昔からやたらと気持ちいいことが好きだと言っていて、それは男娼としてはいい感覚だからと問題にしなかった僕の落ち度だ。
 ツバキはおそらく、気持ちいいことが好きなんじゃない。気持ちいいことが好きじゃないといけない、そう思い込んで、実際そうなってしまったのだろう。男娼にならないとまた売られてしまう、そう思った結果でもある。
 加えて親の愛情が必要な幼い時期に愛情を与えられなかったせいで、歪な形で愛情を求めるようになってしまった。

(行為をすることでしか愛情を感じられないなんて、ジュッテンそのものじゃないか)

 ツバキは男娼になってすぐ、客から必要以上に触られるのを嫌がるようになった。自分からは客の逸物を咥えるのもためらわないのに、客にされるのを異常なくらい怖がる。
 人買いから買った子どもの中には、自分はいらない子どもだから、汚いものだからそういったことをされたくないと言う者もたしかにいる。だが、ツバキはちょっと違っていたように思う。

「だって、僕のほうが先に気持ちよくなったら、僕はもう必要いらないって思われるから」

 最初の客を取った翌日、ツバキはそんなことを口にした。どうしてそんな思考になったのかわからないが、こっちが心配になるくらい必要とされなくなることを怖がっていた。
 客を喜ばせるより先に自分が喜んでしまったら客に嫌われるかもしれない。嫌われたら指名されなくなって捨てられてしまうんじゃないか、そう思っていたのかもしれない。

(必要とされなくなったら自分の居場所がなくなるって思うのは、まぁわからんでもないか)

 子どものように怯えながら大人の快感を覚えてしまったツバキは、大人のいやらしさと子どもの純粋さを絶妙に織り交ぜたまま育ってしまった。体だけは人一倍大きく育ったのに中身と表情がほとんど子どものような不釣り合いな状態は、ちょっとばかり歪んだ性癖を持つ客なら大喜びしたに違いない。
 そんな客をツバキに会わせるなんてことは、ジュッテンが絶対に許さなかったけれど。

(しかし、この先どうなるかな)

 アララギ少将は、間違いなくツバキを大事に甘やかしてくれるだろう。それはツバキにとってもいいことだ。そうして心が満たされることを覚えれば、いずれ捨てられる恐怖も消えていく。
 しかし、満たされる喜びが常に表に出てしまう可能性もある。悪いことではないんだろうが、それが逆に危うい雰囲気になりかねない。それが嫌で、僕はジュッテンの口の悪さと愛嬌のなさが残るように気をつけているくらいだ。

(ま、どんな状況になってもあの少将なら大丈夫か)

 むしろ心配性が悪化して監禁なんてことにならなければいいけれど。

「……俺だって、少将のことを疑ったりはしてないぞ」

 ジュッテンがぼそっとつぶやいた。

「少将ならツバキのことを、十分甘やかしてくれる。ツバキも好きな人になら存分に甘えられる。……幼い頃からの満たされない飢えを抱えたままなのは、つらいからな」

 やけに実感がこもっているのは、自分自身もそうだったからだろう。こうしていまでも引きずっているというのは、精神的な飢えというのがそれだけ根深いということだ。
 人なら大なり小なりそんな部分を抱えているだろうが、ジュッテンもツバキも極端すぎる。
 ツバキは、自分が飢えていることに未だに気づいていないに違いない。ジュッテンは早くに気づいていたのに、その感情を受け入れられないでいた。人はどこかで折り合いをつけながら大人になるというのに、二人は本当に不器用すぎる。ま、だから目が離せないし、手を差し伸べたくなったんだけれども。

「ツバキは、もう大丈夫だよ。まぁ、少将が過保護すぎるのはどうかと思うけど、ツバキにはそのくらいが丁度いい。初めての恋煩いだったのにすぐにケロリとしたのは心配だけど、ま、大丈夫でしょ」

 ジュッテンがまたもや小さく頷いた。あぁもう、可愛いなぁ。普段はあれだけ口が悪いし突っ張っているというのに、子どもみたいに頷いて答えるとか、どれだけ可愛いんだ。
 周囲はジュッテンのことを“娼館街の女神”なんて呼んで、滅多にない美しすぎる姿ばかりに目がいくようだけれど、本当は子どもみたいに可愛いところがたくさんある。それを目にするたびに、僕の心は存分に満たされた。
 そう、僕は僕だけが知るジュッテンを暴くことで、子どもの頃からの飢えを思う存分満たしてきた。ジュッテンは、そんな僕に思う存分愛されることで満たされることを覚えた。
 うん、お互い十分に利益を得ている。

「さて、ツバキの心配はこのくらいにして、そろそろ僕は自分の幸せを感じたいんだけどな」
「…………そのえげつない顔、やめろ」
「ちょっと、どうしてまた口が悪くなるの」
「うるせぇ。そのいやらしい顔見てると、無性にムカつくんだよ」
「はぁ……。ま、そんな照れ屋なジュッテンも可愛いんだけどね」
「……!」
「あはは、顔、真っ赤」
「ヤナギ、てめェ……!」

 さらに口が悪くなりそうなのを止めるためにも、僕はきれいな形の唇を自分のそれで塞いだ。一度も紅なんて引いたことがないのに、ジュッテンの唇はいつでも紅く艶やかに熟れていて、未だに狙う輩がいるんだから油断できない。
 これで男娼になっていたらと思うと、恐ろしいことこのうえない。

「……うん、今日も美味しい」

 ペロリと唇を舐めて感想を言ったら、形のいい耳まで真っ赤になった。これはもう全身いただくしかないでしょ。もちろん最初からそのつもりだったけれど。
 ちょっと涙目で睨みつけてくるジュッテンの腰を抱いて、足取りも軽く奥の寝室に向かった。



 服を全部剥ぎ取って、あちこち舐め回して、息も絶え絶えにしたところで体を起こす。だらりと両手を広げ、白金の長い髪を散らかして、はくはくと荒く息をしている姿は文句なしに美しかった。
 そういえばジュッテンもツバキと同じで、最初から男にされることに抵抗がなかったのを思い出す。感度抜群なのも似ているし、そういう意味では本当に兄弟みたいだ。

 ジュッテンは、この娼館街でも一番古く一番格式高い最高級の娼館に君臨した娼婦の子どもだった。人気絶頂の娼婦だった母親は子育てなどするはずもなく、ジュッテンは生まれてすぐにこの娼館に預けられた。先代の主人は僕の母で、ジュッテンの母親とは姉妹の契りを交わしていたからか、なんでもないことのように引き取った。
 こうして僕には十歳離れた弟分ができた。
 ジュッテンの父親が誰かは知らないが、すこぶるいい男だったのだろう。母親と父親の美貌を完璧に受け継いだジュッテンは、生まれたときからこの娼館街で男娼として生きることを決められていた。
 だから、僕が手ほどきに名乗りを上げた。ほかの誰かがジュッテンの初めてを手にするのが許せなかったからだ。そう思うくらい、僕はジュッテンのことを可愛いと思っていた。乱暴な口調にいつも睨みつけるような顔をしているジュッテンが、じつは寂しがりやでひどく怯えているのを知っていたから、なおさら他人には任せられなかったというのも理由だった。

(仕事で初めてを奪っといてなんだけど、誰にも渡したくないって思っちゃったんだよなぁ)

 一度目の手ほどきが終わったあと、僕は主人に「ジュッテンを僕に譲ってほしい」と言った。そのせいで主人だった母にはこっぴどく叱られて、ちょっとだけ命の危機を感じるくらいには折檻もされたけれど、最後まで僕は折れなかった。
 絶対に折れないと悟った母は、何を考えたのか主人の椅子を僕に譲って隠居してしまった。

 娼館の主人なんてやりたくなかった僕は、せっせとジュッテンを仕込んで主人に仕立て上げた。主人になれば客を取る必要はないし、なによりずっと一緒にいられる。
 そんな理由もあって丁寧に丁寧にいろんなことを教えた結果、そりゃもうどこに出しても恥ずかしくないくらい立派な娼館の主人になった。……うん、見た目も度胸も満点だけれど、愛嬌だけはまったく育たなかったな。いや、狙ってそうしたんだけれど、ここまでになるとは想定外だった。
 それなのに、気がついたらジュッテンは娼館街で一番の人気者になっていた。客を取らない主人だっていうのに指名されまくるし、あのときは本当に頭を抱えてしまった。隠居した母から「おまえが丹念に可愛がりすぎるからだろう。おまえ、思ったより馬鹿だったんだね」と呆れられたのが忘れられない。
 それに、いまだにジュッテンと一晩過ごしたいと望む客が多いというのは、娼館街でも有名な話だ。

「高級娼館の主人が一番人気が高いって、どういうことなんだかねぇ」
「……ッ、ちょ、待て、」
「うん、待たないから」
「やめ、ヤナギ、いや、だ……ッ」

 急に暴れ出したのは、僕がジュッテンの蕾に顔を近づけているからだ。
 ツバキもだけれど、ジュッテンも自分が奉仕されるのをすごく嫌がる。恥ずかしいというのもあるんだろうが、与えられることがなかった子どもは大きくなっても与えられることに怯えるからだろう。
 ほんと、いつになったら慣れるんだか。いや、こうして涙目で嫌がる姿もそそられるから、このままでもいいか。

「ヤナギ、やめ……や、やぁ、ぁあ……ッ」

 嫌がるジュッテンを押さえつけて、もうヒクついている蕾をベロリと舐め上げた。ジュッテンの蕾は縁がふっくらとしていて、くすんだ紅色がいやらしくて、なにより窄まりが縦になっているのがたまらない。
 蕾を使う男娼は、使いすぎるとこうして窄まりが縦に歪んでしまうが、それは人気者という証拠でもあった。だから抱かれる側の男娼は、こうした形状を喜ぶことはあっても恥ずかしがることはない。
 でもジュッテンは、僕以外に抱かれたことがない。つまり、僕との行為だけでここまで育ったということになる。

(……たまらないな)

 思わず蕾の中に挿し込んだ舌を乱暴に動かして、グチグチと弄ってしまった。それはジュッテンがとても嫌がる行為で、チラッと視線を上げたら本気で泣きそうな顔になっていた。
 嫌なのに気持ちはよくて、声が出ないように両手で必死に口を覆っている。そうしながらもほとんど泣いている碧眼はしっかりと僕のほうを見ていて、その妙にチグハグな状況がものすごくエロい。エロすぎて、僕の逸物から少しばかり精液がこぼれてしまった。

(本当に、ジュッテンが男娼にならなくてよかった)

 男娼になっていたら、男も女も大勢が人生を狂わされていたことだろう。僕だって十分狂わされていると思うけれど、同じくらい僕もジュッテンの人生を狂わせているからおあいこだ。

「相変わらず、口でされるのが苦手だねぇ」
「……ッ、口で、て、……おまえのそれは、口淫じゃ、ないだろ……ッ」
「僕を受け入れるココを可愛がるんだから、口淫の一種じゃない?」
「ちがうッ! 屁理屈を、言うな! そ、れに、……汚い、から、」
「汚くなんてない。ジュッテンはどこもかしこもきれいで、とても甘いよ」

 にっこり微笑みながらそう答えたら、思ったとおりジュッテンの肌は真っ赤になった。うんうん、いい食べ頃だ。

「それじゃあ、いただきます」
「だから、おまえは変態だとッ……な、ちょ、なにして、」
「今日はナカでたくさんイッてほしいから、前はお休みね」
「馬鹿かてめぇはッ! 紐、ほど…………ひあぁぁぁぁッ!」
「……くっ、うわ、ちょっと、これはやばい、かも」

 ジュッテンのきれいな色合いの性器を赤い紐でキュッと縛ってから、僕はいきり勃った自分の逸物を一気に突き挿れた。
 受け入れ慣れてすっかり僕の形になったソコは、内臓というよりもほとんど女の膣だ。ズブズブと侵入する僕を喜んで受け入れるどころか、早く奥まで来てほしいと言わんばかりに蠢いている。それは舌先で舐められながら同時に口内でしゃぶられているような恍惚とした感触を僕にもたらして、思わず爆発しそうになった。
 男娼の手ほどきに慣れている僕でさえこうして毎回危ないのだから、ジュッテンのナカはあまりにも魅力的すぎる。

「ひ……や……やめ、……っ」
「嫌? やめてほしいの? ……気持ちよくない?」

 こんなときでさえジュッテンは素直じゃない。昔からこうだけれど、自尊心を守るために反射的に出てしまうのだろう。ま、それが崩れ落ちる瞬間っていうのもたまらないから、いいんだけれどね。

 ジュッテンの目を見たら、碧眼が淫欲に濡れ始めていた。もうそろそろかな。

「ほら、ジュッテン、やめてほしい?」
「……やめ、……」
「うん? やめる?」

 ジュッテンの瞳がユラユラ揺れている。碧玉みたいで、とてもきれいだ。

「やめてほしい?」
「…………やめ、ないで、」

 素面では絶対に聞けない細い声だった。
 あと一歩で崩れるはず。いや、半歩かな。そう思うだけでゾクゾクとした興奮が高まる。

「じゃあ、気持ちいい?」
「…………きもち、いい」

 ジュッテンのきれいな顔がとろりと蕩けて、淫靡なものに変わった。

(完全に堕ちたな)

 その顔を見た瞬間、僕の中の嗜虐心が一気に熱く満たされた。ジュッテンのほうも素直に感じ始めるからか、後ろがさらに熱くなる。蕾でギュッと締めつけるくせにナカはトロトロで、逸物が溶けてしまいそうなくらいだ。
 うっとりしたきれいな顔を見ながら、腰をゆっくりと揺する。前立腺を先端でグリグリといじってから、もう少し奥まで挿れた。ジュッテンが好きな一番奥にたどり着く前に、今度はゆっくりと引き抜く。
 ナカ全体をじっくり味わうように腰をゆったりと動かし続けると、ジュッテンがむずがるように腰をねじり始めた。早く、もっと奥に、そんないやらしい声が聞こえてきそうな仕草がたまらない。

「ジュッテン、どうした? 気持ちよくない?」
「きもち、いい、の……、もっと、おくに、ちょ、だい……」

 幼さが見え隠れする声色に、僕の逸物がグン! と反応してしまった。
 ツバキの歪な精神状態もある種の性癖を刺激するのだろうが、ジュッテンのそれはほとんど凶器だ。女神のように美しい姿に淫猥な表情、それに幼さの残る物言いに興奮しない男はいない。興奮どころか人格が変わりかねないと思う。
 やばい、そろそろ出そうだ。ジュッテンと寝るようになってから、僕は絶対に早くなった。不本意だけれど。

「ヤナ……、おくが、いぃの……おく、ちょ、だい……」

 腰を小さく揺らしながら強請るとか、本当にどうしてくれよう。……いや、そう躾けたのは僕だった。

「おく、ちょぅ、だい……」
「よしよし、わかったから、ちょっと待って」

 枕をつかんでジュッテンの腰の下に突っ込む。僕の逸物が挿入はいったままだったからか「ぁン!」なんて悩ましい声がして、うっかり出そうになった。
 枕のぶんだけ上がった腰をガッシリとつかんで、ガツンと逸物を突っ込んだ。途中でブツッと狭いところを通って、一番奥の壁に先端がぶつかって止まる。その瞬間、ジュッテンの腰がブルリと震えて、縛っている性器から先走りがトピュッと吹き出すのが見えた。

「ひぁッ、あン……! ァア……きもち、い……」
「ッはぁ、ほんと、やばいくらい、だ」

 男のナカにも子宮口に似た感触の部分がある。もっとも、奥深くにあるからソコを突き抜けられるほど逸物が長くなければ届かない。でも、ソコに届けば突っ込んだ側はものすごく気持ちがいい。突っ込まれる側も信じられないくらい気持ちがよくなるから、受ける側の男娼の手ほどきをするときは、ソコを貫いて最高の快感を覚えさせる。
 ツバキにはそこまでしなかったけれど、やっていたらもっと早くに壊れていたかもしれないなぁと思う。無意識にそう感じたから、当時の僕は本能的に避けたのだ。

 突き抜けた先のてっぺんまでつつけば、どんな男も確実に堕ちる。堕ちて、突っ込まれたいと思うようになる。
 そうなるように手ほどきをするのが僕の仕事だったわけだけれど、ジュッテンは一発目から乱れまくって、そりゃあもう大変だった。そもそも奥じゃなくてもビクビクするほど感じるわ、すぐにナカだけでイクようになるわ、なにより僕に縋って悦がる姿は壮絶なくらい色っぽくて、結果的に僕のほうが堕ちてしまった。

「まぁ、墜とされて、万々歳、だけどね……ッ」
「ぁあ……ンッ! きもち、きもちい、ぃ……は、ぁ、ぁ、いく、いきそ、ぁ、ァッ、アァッ、イク、イッちゃ、イッちゃう、の……ッ」
「ん、いいよ、ほら、……イッて、」
「ぁ――ァ、アァッ! イク――――ッ」

 思い切り奥に突っ込んで、そのままギュウッとジュッテンを抱きしめた。ブルブル震えながら絶頂を迎えるジュッテンの姿はいやらしいのにどこか神秘的で、射精が止まらなくなる。そのままグッと腰を押しつけて、最奥よりもっと奥まで届くように思う存分吐き出した。
 しばらく吐精感を満喫してから、ジュッテンの腰の下に入れた枕を引きずり出す。逸物を突っ込んだまま、ジュッテンの右側が下になるように体を倒して、真っ白できれいな左足を肩に担いだ。そのままガツガツと奥を犯しながらジュッテンの性器を見たら、真っ赤な紐の色が濃くなっている。ということは、先走りが止まらなくなっているのだろう。
 本当ならせき止められる痛みがあるはずなのに、ナカでの快感が上回っているらしいジュッテンからは、痛みを訴えられたことはほとんどない。もし縛っていなかったら、いまごろ潮を吹きまくって大変だったはずだ。

「ほん、と……、淫乱って、いいよ、な……ッ」

 ついでに僕は絶倫だし。
 自分の口元がニヤッと緩んだのがわかった。よし、今夜はもう少し可愛がってやろう。
 ジュッテンの体をさらにひっくり返し、後ろからガンガンに攻める。もう力が入らないらしく、腰だけ高く上げていやらしい嬌声を上げ続けるジュッテンの前に手を回し、グッショリ濡れた紐をシュルッとほどいた。途端に組み敷いた体が何度も跳ねて、ナカが恐ろしいくらい締まる。あまりの具合に、またもや思い切り射精してしまった。
 そのあとも硬いままの逸物で散々ナカを堪能しきった僕は、翌朝、美しすぎる般若のようなジュッテンに思い切り殴られた。それはまぁ、仕方がないかもしれない。
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