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花のように8
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華を辞める日、クリュスは朝一番で館の主人であるスキアに呼び出された。華としての主人ではなくなるが、裏方として働くクリュスの新たな主人という立場でもある。「何かあったのだろうか」と思いながら部屋の扉を叩くと「お入り」と機嫌がよさそうな声が聞こえて来た。
(問題が起きたようではないけれど……)
それなら一体どういう用件で呼ばれたのだろうか。若干不安に思いながら扉を開けると、そこには意外な人物がいた。
「……ディニ様」
半月振りに見るディニは少し大人びたように見えた。思わず見惚れていたことに気づき、慌てて視線を外す。
「何を突っ立っているんだい。さぁ、入ってそこにお座り」
促されるままソファに腰を下ろす。その間もクリュスの意識はディニに吸い寄せられていた。それを悟られないように、ひたすら視線を向けないようにする。
「さて、クリュスは本日のこのときをもって華ではなくなった。今日は一日休んで、明日からはこの館の裏方として働くことになっている。……そうだったんだけど、ちょっと事情が変わってね、それで来てもらったというわけだ」
「どういうことですか?」
「あぁ、別に面倒ごとが起きたわけじゃないよ。何、ちょいと奉公先が変わるだけさ」
スキアの返事に嫌な予感がした。
「おまえは明日からディニ様のところに行くことになった」
「え……?」
「奉公先がディニ様になったんだよ」
「そ……れはできません!」
慌てて声を上げた。そんなことがあってよいはずがない。
「わたしは華折りを受け入れていません! そもそも、わたしはもう華ではありません。華折りを受けなくてはいけない理由もないはずです!」
「これは華折りじゃない。単に奉公先がこの館ではなくディニ様のところに変わったってだけの話だ」
「だから、そんな話は……!」
「さっきおまえが言ったとおり、おまえはもう華じゃない。ここで働く予定の働き手というだけだ。ここで働くのは他に奉公先がなかった昨日までの話で、行き先が見つかればそこに行く。ただそれだけの話さ」
「そんな……」
これまで華を辞めた者がすぐさま華街の外で働くことになったという話は聞いたことがなかった。
長年華として勤めてきた者は外の世界を知らない。たとえ外に奉公先があったとしても周囲に馴染むのは難しいだろう。だからこそ、華街には華を辞めた者が働ける場所がいくつも存在するのだ。
「おまえが危惧していることはわかる。だけどね、これまでも華を辞めてから外で働く華がいなかったわけじゃない。今回のように外の奉公先に引き取られた元華たちもいる。もちろん、その場合もあたしらがちゃんと見極めて許可を出すんだから心配おしでないよ」
「でも、わたしは……」
なおも食い下がるクリュスに「そんなに俺のところに来るのが嫌なのか?」とディニが口を挟んだ。視線を向けるとむすっとしたような、それでいて悲しんでいるような複雑な表情を浮かべている。
「この子は昔から頑固な子でね、どうにもこんな具合なのさ」
スキアがため息をつきながらそう答えた。そうしてディニを見ながら「それでも引き取りたいって気持ちは変わらないんだね?」と尋ねる。
「はい。俺はこの人と、クリュスと一緒にいたいんです。その気持ちは華折りの話をしたときから変わっていません」
「それなら問題ないさね。それにこれは華折りじゃあない。華だった兎族の奉公先をどうするかって話だ。華折りのような大仰な手続きも必要ないし、何ならいますぐ引き取ってもらってもかまわないよ」
「スキア……!」
慌てるクリュスに赤く縦長の目が優しく微笑んだ。
「クリュス、もう自分を誤魔化すのはおよし。おまえだって落ち着ける居場所をずっと探していたんじゃないかい?」
「……でも、わたしは……」
「それにね、アフィーテが幸せになっちゃいけないなんて決まり事はないんだ。そりゃあ兎族の間にはいろいろあるかもしれないが、狼族は違うかもしれない。なんたって、長のご子息がアフィーテを花嫁に迎えたくらいだ。おまえにだって幸せな未来があってもおかしくないと思うがねぇ」
「……」
「おまえはこれまで十分がんばってきた。幼い頃から嫌な思いをしてきたことも知っている。だからこそ、その分も幸せになっていいとあたしは思ってる」
「スキア……」
館に引き取られたとき、スキアにはここに来ることになった経緯を話してある。すべてではないものの、両親のことや伯父のこと、二度と故郷に戻れないことも話した。
(……スキアはわたしの気持ちに気づいているに違いない)
だからこそディニの話を進めてくれたのだろう。
スキアは華たちの心の内をよく知っていた。不安も期待もすぐさま読み取り声をかけてくれる。だから華たちはこの場所で華らしく生きていくことができた。それまでどんなにつらい人生だったとしても、華として客の前に出る頃には前を向くことができる。その手助けをしてくれるのがスキアだった。
「それにあたしが選んだ雄だ。ディニ様なら間違いなくおまえを幸せにしてくれる。おまえよりずっと年寄りのあたしが経験則で言うんだから安心おし」
「……年寄りなんて、スキアは昔もいまも変わらず美しいじゃないですか」
「おや、世辞でも嬉しいことを言ってくれるね。ま、あたしから見ればおまえのほうこそ美しいと思うんだがねぇ。それで本当の笑顔があれば最高さ」
スキアの言葉に一瞬だけクリュスの目尻が下がった。わずかに潤む目をごまかすようにパチパチと瞬きをする。
「俺もクリュスの笑顔をずっと見たいと思ってた。あのとき少しだけ見たあの笑顔をまた見たいんだ。だからこそ、俺と一緒に来てほしい。俺は絶対にクリュスを笑顔にする。絶対に幸せにするから」
「さすがはあたしが見立てた雄だ。そのくらいの気持ちがなきゃ、このクリュスの相手は無理さね」
おかしそうに、それでいて嬉しそうに笑うスキアの手がクリュスの頭を撫でた。その感触に、クリュスは華街に来たばかりのことを思い出した。
館に引き取られたばかりの頃、クリュスは兎族たちにされた行為を頻繁に思い出していた。館に漂う雰囲気が忌まわしい記憶を呼び起こしてしまったのだろう。そのせいで段々と食が細くなり表情もなくなっていった。
そのたびに香りのよいハーブティーや焼き菓子、果汁の多い果物を用意してくれたのがスキアだった。会話がなくても一緒に食事をし、たとえ一口しか食べなくても「よく食べた」と頭を撫でてくれる。どうしようもなくなっていたクリュスの心と体をほぐし、生きる力を再び与えてくれたのは間違いなくスキアだった。
「スキア」
頭を撫でる手が「もう我慢しなくていいんだよ」と言っているように感じられる。
「おまえはね、昔あたしが初めて会ったアフィーテにそっくりなんだ。だからかねぇ、どうにも気になって仕方がないのさ」
「……そのアフィーテは、どうなったんですか?」
「あまりに美しい華は早くに散ってしまうものさね。だからこそ、おまえには散る前に幸せになってほしいんだよ」
「……わたしは……」
「ほら、ディニ様がお待ちだ。おまえだって本心ではディニ様のそばにいたいんだろう?」
やっぱり気づかれていたのだとクリュスは悟った。必死に隠していた気持ちもスキアの前では呆気なく暴かれてしまう。これまでもそうやって暴いて導いてくれたからこそ、自分のいまがあることもクリュスはよくわかっていた。
「ありがとうございます、スキア。そしてお世話になりました」
クリュスは思いを込めて頭を下げた。雇い主であり育ての親のようでもあったスキアがいたからこそ、自分はこうして生きることができたのだと改めて実感する。
「何だか娘を嫁に出す気分だねぇ」
スキアの言葉にクリュスの顔が柔らかくなった。もう一度「ありがとうございます」と告げ、次にディニを見る。どこか緊張しながらも、しっかりと自分を見つめてくるオレンジ色の目に胸が熱くなった。
「ディニ様、どうぞよろしくお願いします」
クリュスの言葉にディニの顔がパァッと明るくなった。まるで子どものように喜ぶ幼さの中にもどこか誇らしげな大人の表情が感じられる。魅力的なその様子にクリュスの体がふわりと熱を帯びた。
(わたしは、こんなにも若く美しい狼族に迎えられるのだ)
幸せに感じながらも、決してそれだけではないだろうこともわかっていた。
名家の狼族は何人もの花嫁をそばに置くと聞いている。とくに子ができない場合はすぐに新しい花嫁を迎えるという話は華街でも有名だった。
(そのときはすぐに来る。それでもわたしはきっと静かに見守ることができる)
慕う相手が別の兎族をそばに置く姿は見たくない。でも、そうすることがディニのためになるのなら耐えられる。いまならそれができると思えた。
(わたしは、こんなわたしを求めてくれたディニ様の役に立ちたい)
キュッと唇を引き締めたクリュスは、深々と頭を下げながら再び「よろしくお願いします」と口にした。その顔は美しくも凛々しく、玲瓏の華と呼ばれた頃の姿を彷彿とさせるものだった。
(問題が起きたようではないけれど……)
それなら一体どういう用件で呼ばれたのだろうか。若干不安に思いながら扉を開けると、そこには意外な人物がいた。
「……ディニ様」
半月振りに見るディニは少し大人びたように見えた。思わず見惚れていたことに気づき、慌てて視線を外す。
「何を突っ立っているんだい。さぁ、入ってそこにお座り」
促されるままソファに腰を下ろす。その間もクリュスの意識はディニに吸い寄せられていた。それを悟られないように、ひたすら視線を向けないようにする。
「さて、クリュスは本日のこのときをもって華ではなくなった。今日は一日休んで、明日からはこの館の裏方として働くことになっている。……そうだったんだけど、ちょっと事情が変わってね、それで来てもらったというわけだ」
「どういうことですか?」
「あぁ、別に面倒ごとが起きたわけじゃないよ。何、ちょいと奉公先が変わるだけさ」
スキアの返事に嫌な予感がした。
「おまえは明日からディニ様のところに行くことになった」
「え……?」
「奉公先がディニ様になったんだよ」
「そ……れはできません!」
慌てて声を上げた。そんなことがあってよいはずがない。
「わたしは華折りを受け入れていません! そもそも、わたしはもう華ではありません。華折りを受けなくてはいけない理由もないはずです!」
「これは華折りじゃない。単に奉公先がこの館ではなくディニ様のところに変わったってだけの話だ」
「だから、そんな話は……!」
「さっきおまえが言ったとおり、おまえはもう華じゃない。ここで働く予定の働き手というだけだ。ここで働くのは他に奉公先がなかった昨日までの話で、行き先が見つかればそこに行く。ただそれだけの話さ」
「そんな……」
これまで華を辞めた者がすぐさま華街の外で働くことになったという話は聞いたことがなかった。
長年華として勤めてきた者は外の世界を知らない。たとえ外に奉公先があったとしても周囲に馴染むのは難しいだろう。だからこそ、華街には華を辞めた者が働ける場所がいくつも存在するのだ。
「おまえが危惧していることはわかる。だけどね、これまでも華を辞めてから外で働く華がいなかったわけじゃない。今回のように外の奉公先に引き取られた元華たちもいる。もちろん、その場合もあたしらがちゃんと見極めて許可を出すんだから心配おしでないよ」
「でも、わたしは……」
なおも食い下がるクリュスに「そんなに俺のところに来るのが嫌なのか?」とディニが口を挟んだ。視線を向けるとむすっとしたような、それでいて悲しんでいるような複雑な表情を浮かべている。
「この子は昔から頑固な子でね、どうにもこんな具合なのさ」
スキアがため息をつきながらそう答えた。そうしてディニを見ながら「それでも引き取りたいって気持ちは変わらないんだね?」と尋ねる。
「はい。俺はこの人と、クリュスと一緒にいたいんです。その気持ちは華折りの話をしたときから変わっていません」
「それなら問題ないさね。それにこれは華折りじゃあない。華だった兎族の奉公先をどうするかって話だ。華折りのような大仰な手続きも必要ないし、何ならいますぐ引き取ってもらってもかまわないよ」
「スキア……!」
慌てるクリュスに赤く縦長の目が優しく微笑んだ。
「クリュス、もう自分を誤魔化すのはおよし。おまえだって落ち着ける居場所をずっと探していたんじゃないかい?」
「……でも、わたしは……」
「それにね、アフィーテが幸せになっちゃいけないなんて決まり事はないんだ。そりゃあ兎族の間にはいろいろあるかもしれないが、狼族は違うかもしれない。なんたって、長のご子息がアフィーテを花嫁に迎えたくらいだ。おまえにだって幸せな未来があってもおかしくないと思うがねぇ」
「……」
「おまえはこれまで十分がんばってきた。幼い頃から嫌な思いをしてきたことも知っている。だからこそ、その分も幸せになっていいとあたしは思ってる」
「スキア……」
館に引き取られたとき、スキアにはここに来ることになった経緯を話してある。すべてではないものの、両親のことや伯父のこと、二度と故郷に戻れないことも話した。
(……スキアはわたしの気持ちに気づいているに違いない)
だからこそディニの話を進めてくれたのだろう。
スキアは華たちの心の内をよく知っていた。不安も期待もすぐさま読み取り声をかけてくれる。だから華たちはこの場所で華らしく生きていくことができた。それまでどんなにつらい人生だったとしても、華として客の前に出る頃には前を向くことができる。その手助けをしてくれるのがスキアだった。
「それにあたしが選んだ雄だ。ディニ様なら間違いなくおまえを幸せにしてくれる。おまえよりずっと年寄りのあたしが経験則で言うんだから安心おし」
「……年寄りなんて、スキアは昔もいまも変わらず美しいじゃないですか」
「おや、世辞でも嬉しいことを言ってくれるね。ま、あたしから見ればおまえのほうこそ美しいと思うんだがねぇ。それで本当の笑顔があれば最高さ」
スキアの言葉に一瞬だけクリュスの目尻が下がった。わずかに潤む目をごまかすようにパチパチと瞬きをする。
「俺もクリュスの笑顔をずっと見たいと思ってた。あのとき少しだけ見たあの笑顔をまた見たいんだ。だからこそ、俺と一緒に来てほしい。俺は絶対にクリュスを笑顔にする。絶対に幸せにするから」
「さすがはあたしが見立てた雄だ。そのくらいの気持ちがなきゃ、このクリュスの相手は無理さね」
おかしそうに、それでいて嬉しそうに笑うスキアの手がクリュスの頭を撫でた。その感触に、クリュスは華街に来たばかりのことを思い出した。
館に引き取られたばかりの頃、クリュスは兎族たちにされた行為を頻繁に思い出していた。館に漂う雰囲気が忌まわしい記憶を呼び起こしてしまったのだろう。そのせいで段々と食が細くなり表情もなくなっていった。
そのたびに香りのよいハーブティーや焼き菓子、果汁の多い果物を用意してくれたのがスキアだった。会話がなくても一緒に食事をし、たとえ一口しか食べなくても「よく食べた」と頭を撫でてくれる。どうしようもなくなっていたクリュスの心と体をほぐし、生きる力を再び与えてくれたのは間違いなくスキアだった。
「スキア」
頭を撫でる手が「もう我慢しなくていいんだよ」と言っているように感じられる。
「おまえはね、昔あたしが初めて会ったアフィーテにそっくりなんだ。だからかねぇ、どうにも気になって仕方がないのさ」
「……そのアフィーテは、どうなったんですか?」
「あまりに美しい華は早くに散ってしまうものさね。だからこそ、おまえには散る前に幸せになってほしいんだよ」
「……わたしは……」
「ほら、ディニ様がお待ちだ。おまえだって本心ではディニ様のそばにいたいんだろう?」
やっぱり気づかれていたのだとクリュスは悟った。必死に隠していた気持ちもスキアの前では呆気なく暴かれてしまう。これまでもそうやって暴いて導いてくれたからこそ、自分のいまがあることもクリュスはよくわかっていた。
「ありがとうございます、スキア。そしてお世話になりました」
クリュスは思いを込めて頭を下げた。雇い主であり育ての親のようでもあったスキアがいたからこそ、自分はこうして生きることができたのだと改めて実感する。
「何だか娘を嫁に出す気分だねぇ」
スキアの言葉にクリュスの顔が柔らかくなった。もう一度「ありがとうございます」と告げ、次にディニを見る。どこか緊張しながらも、しっかりと自分を見つめてくるオレンジ色の目に胸が熱くなった。
「ディニ様、どうぞよろしくお願いします」
クリュスの言葉にディニの顔がパァッと明るくなった。まるで子どものように喜ぶ幼さの中にもどこか誇らしげな大人の表情が感じられる。魅力的なその様子にクリュスの体がふわりと熱を帯びた。
(わたしは、こんなにも若く美しい狼族に迎えられるのだ)
幸せに感じながらも、決してそれだけではないだろうこともわかっていた。
名家の狼族は何人もの花嫁をそばに置くと聞いている。とくに子ができない場合はすぐに新しい花嫁を迎えるという話は華街でも有名だった。
(そのときはすぐに来る。それでもわたしはきっと静かに見守ることができる)
慕う相手が別の兎族をそばに置く姿は見たくない。でも、そうすることがディニのためになるのなら耐えられる。いまならそれができると思えた。
(わたしは、こんなわたしを求めてくれたディニ様の役に立ちたい)
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