即オチしても恋はしない

朏猫(ミカヅキネコ)

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11 結局、攻められる

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「ひ、んっ」

 広いベッドの上、背面座位で串刺しにされたまま、また硬い手のひらで下腹を撫でられた。たったそれだけのことなのに皮膚から内側に向かってビリビリとした雷撃のような痺れが走り、ペニスから勝手に液体がこぼれ出る。
 とっくの前に精液は出なくなり、色が薄く粘度のないものがピュク、と力なく吹き出る様子が滲んだ視界に映った。

「もう精液はあまり出ませんね」
「お、まえの、せい……、ひゃぅっ」
「それなのに、こうして触れればお漏らししてくれるなんて、かわいいなぁ」
「かわいく、なんて、な……ぃっ!」

 臍の周りをクルクルと撫でていた指先からまたビリビリとしたものを感じ、それが腹の中を貫いた。
 わけのわからない刺激のせいで、ビリビリを感じるたびに体の内側が痙攣するように動いて逞しいものを締めつけてしまう。ただでさえ太くて長いのだから、それを締めつければ当然俺自身も苦しくなる。それなのに苦痛以外のものも感じてしまい、筋肉なんてまったくついていない俺の腹はビクビクと震えっ放しだった。

「恋人になって初めてのセックスなんですから、素直になればいいのに」
「う、るさぃ」
「そんなハイネさんも、かわいくて好きですけど」
「……っ」

 耳元で「好き」と言われて、首筋がゾクゾクした。

「ね、ハイネさんは?」
「……っ」
「こういう俺も、実は好きでしょ?」
「っ、」

 十年以上も恋なんてしないと思っていたから、急に「好きか」と訊かれて「好きだ」とは言えなかった。というか、セックスはしてもベッドの上でそういうことを言う機会がなかったから、妙に気恥ずかしくて言葉が出ない。

「あ、もしかして照れてます?」
「……ば、か……っ」

 掠れるような声で「ばか」と言った俺の声は、ニゲルの耳にしっかり届いたらしい。「照れてるのもかわいい」と言って、手のひら全体で下腹をゆっくり撫で始める。
 無意識にまたあの痺れがくるのかと体をこわばらせたが、ただ硬い手のひらがゆっくりと肌の上を動いただけでホッとした。

「ハイネさんって、体毛薄いですよね」
「……な、に」
「手足の毛なんてほとんどないし、夜になっても髭、生えてないじゃないですか」
「体質、だろ、」
「そっか。だからここの毛も薄いんだ」
「……!」
「金色だからかよけいに薄く見えて、なんだか子どもに悪戯してる気分になるっていうか」
「お、まえは、」
「そんな体も好きですけど」

 薄い陰毛を撫でながら、何を言っているんだ。こいつを手慣れていないかも、なんて思っていた過去の俺に「それは大間違いだ」と教えてやりたい。

(っていうか、絶対にヤり慣れてるだろ……!)

 まだ陰毛を撫でている右手を掴み、動きを封じる。すると今度は左手で胸を撫で始めた。

「乳首、あんまりいじってなかったみたいですけど、ぷっくりしてエロいですよね」
「んっ」
「触ればすぐに大きくなるから、感度はいいんじゃないかな」
「なに、言って、」
「乳首も開発しましょうって、言ったじゃないですか」
「ひっ」

 摘まれていた左の乳首にビリビリとした痺れを感じて驚いた。痛いようなむず痒いような痺れに悲鳴のような声が漏れる。

「うん、感度良好だ」
「なに、を……っ」
「そのうち乳首だけでイけるようになりましょうね」
「ふざけ、んっ!」
「ふざけてませんよ? 俺が乳首を触っただけでイくなんて、かわいいじゃないですか」
「なに、ぃ……っ!」
「ほら、どんどん勃起していく」

 摘まれたと思ったらビリビリし、指先でグリグリ押されたと思ったらまたビリビリする。いじられるのとビリビリをくり返され、左の乳首だけ異様に熱くなってきた。ニゲルの指が離れても、空気に触れているだけでチクチク感じるほど敏感になっている。

「まぁ乳首は少しずつでいいかな」

 掴んでいた俺の手が緩み、下腹に添えているような状態になっていたニゲルの手がペニスの根本をスルリと撫でた。

「ひっ」

 かすかにだがビリビリとした痺れを感じて首をすくめた。漏れ出た声は間違いなく悲鳴だ。男にとって急所であるペニスにわけのわからない刺激を感じれば、快感よりも恐怖を感じるのは当然だろう。

「あぁ、チンコは後回しにしましょうか。ちょっと刺激が強いだろうし」
「さっきから、なにして、……っ」
「うわ、やっぱりギチギチですね」

 ペニスからさらに奥に移動した指にアナルの縁を撫でられ、息を飲んだ。フニフニと縁を揉まれるからか、そこがキュウッと締まる。

「ここ、完璧な縦割れになるくらい、いっぱいシましょうね」
「……っ。おまえ、ほんと、俺をどうし、たい、ん、……!」
「だから、俺だけにしか感じなくしたいんですって」
「……っ、……っ!」
「う……ッ。これ、諸刃の剣なんですけど、……ッ。あー、やばい、すぐ、イッちゃいそう」
「……~~っ!」
「ぅわっ、ちょっ、動かな、……ッ! あぁもう、ちょっと出ちゃったじゃ、ないですか」

 指先が目一杯広がっている縁を撫でている……そう思った次の瞬間、あのビリビリした得体の知れない痺れがそこを貫いた。
 あまりの衝撃に声も出ないまま、アナルと尻たぶが勝手にビクビクと震えた。ニゲルに乗ったままの腰がガクガクと前後に揺れ、摩擦と痺れという強烈な刺激がアナルから腹の奥へと広がる。
 アナルの縁に触れていた指はいつの間にか睾丸をフニフニと揺らしていて、そこでもビリビリとした刺激を感じた。すでに溜まっていたものも吐き出し切り、それでも気持ちよくて迫り上がっていた睾丸がビリビリを感じるたびにビクッビクッと跳ねるように震えた。

 もう、わけがわからなかった。ビリビリした痺れで敏感な下半身の至るところを刺激された。これまでにないくらい大きくなっているペニスに腹の中を蹂躙され、あちこちがドロドロになった。
 ここまでくると、もはや気持ちいいのかどうかさえわからない。外側からも内側からも刺激され続け、俺の体は馬鹿になったように震えることしかできなくなった。

「あー、ほんとかわいいなぁ」
「ひ、ひ、ぁ、ぁう、」
「やっぱり体の相性もバッチリですね」
「ひゃぅっ。も、やめて、もぅ、やめ、」
「ハイネさんが即オチしてくれてよかったです。じゃなきゃ、奥の手を使いまくってヤバい状態にするところでした」
「やめ、もぅ、やぁ!」
「泣いてる顔もかわいいなぁ。あぁ、もうチンコからはお漏らしも出ませんね。じゃあ、今夜はこのくらいでやめておきますか」
「や、あ! イく、イッちゃう、イく、からぁ!」
「もうあの人のところに行ったら駄目ですよ? でないと、またお仕置きですからね?」
「やらぁ! イく、イくぅ!」
「あー、ほんっと、かわいいなぁ」
「イく、イく、イッ……――!!」

 ドクンと、恐ろしいくらい心臓が強く鳴った。直後、頭に一気に血が上り、目の前がチカチカする。体はニゲルの逞しい肩に頭を乗せるように不自然なまでに反り返り、それでも開いた口からは悲鳴が出ることもなく、ただ犬のようにハッハッと息をすることしかできなかった。
 そんな俺の曝け出された喉を撫でる感触に、体がぶるりと震える。

「ハイネさん、美人な姿もかわいい中身もエロい体も、愛してます」

 キーンと耳鳴りがする鼓膜に聞こえてきた声に、体が小さくぶるりと震えた。


++++


 スッと開いた目に映ったのは、見たことのある天井だった。そういえば前にもこんなふうに目が覚めたことがあったな……と思ったところで、ハッとして起きあがろうと腕に力を入れる。

「~~……っ」

 頭を少し持ち上げたところで、すぐに枕に逆戻りしてしまった。

「まだ早朝ですから、寝てて大丈夫ですよ」
「…………ニゲ、」

 名前を呼ぼうとして、声が異常に掠れていることに気がついた。

「水、飲みますよね」

 返事をする前に、水の入ったコップを持ったニゲルがベッドに腰掛ける。コップを受け取ろうとした右手はなぜかニゲルの大きな左手に握られ、そのままベッドに縫いつけられた。
 どういうことだと思っていると、朝っぱらでも整っている顔がゆっくりと近づいてきた。そのままキスをされ、少し開いた唇からぬるい水が舌を伝って注ぎ込まれる。
 そうして何度か口移しで水を飲まされた俺は、喉の渇きを癒してくれたことへの感謝よりもこんな状態にした男への腹立たしさに、うまく力が入らない目でキッと睨んだ。

「泣き腫らした目で睨んでも、色っぽいだけですよ?」
「……っ」
「それから、昨夜のはお仕置きですからね」
「……」
「だから、睨んでも色っぽいでだけですって」
「……ぉし、き、って、」

 まだ少し掠れてはいるものの、しゃべることはできそうだ。それでも喉が詰まって言葉が途切れてしまう。するとまたもやニゲルに口移しで水を飲まされ、ようやく潤いを取り戻した喉からなんとか「お仕置きって、」と声を出した。

「色気を振りまきながらあの人のところに行ったことへのお仕置きです」
「……意味が、わからないんだけど」
「俺、思ってたよりも嫉妬深かったみたいなんです。これまでなら、まぁはらわたは煮えくり返ってましたけど、恋人じゃないあなたを縛りつけることはできなかった。でももう恋人ですから、これからは遠慮しません」

 そう言ってにこりと笑う顔は相変わらず童顔に見えるが、言っている内容はまったくかわいくない。

「だからって、起き上がれないほどするか……?」
「それは謝ります。途中からちょっとタガが外れてしまったみたいで」
「……」
「だってハイネさんがあんなにかわいく泣いてくれるから、ちょっと手元が狂ったというか加減を間違えたというか」
「それって、奥の手に関係してるんだよな?」

 俺の指摘が当たったからか、灰青色の目がスッと逸らされた。

「奥の手って、なに?」
「あー……」
「俺にも言えないこと?」
「そんなことはありませんけど」
「じゃあ話して」
「ええとですね、」

 珍しく口籠っているニゲルの腕を掴む。
 っていうか、どうして下着姿なんだ。先に起きていたなら服くらい着ればいいのに、つい逞しい上半身に目が向いてしまうじゃないか。……そうじゃなくて、奥の手が何なのか聞き出さなくては。

「説明、してくれるよね?」

 灰青色の目をジッと見つめながらそう言えば、観念したようにニゲルがため息をついた。





「……は?」
「ですから、雷撃をごく小さくしたものを使ったんです」
「……ちょっと待って。ライゲキって、ええと、雷の魔術、ってこと?」

 何でもないことのように頷いて答えるニゲルに、思わずぽかんとしてしまった。

 最初は聞き間違えかと思った。それもそうだろう。剣士であるニゲルが魔術を使うなんてあり得ないからだ。しかも雷撃なんて、黒手袋の魔術士でも使い手はほとんどいない。

 黒手袋の魔術士が扱う魔術は火、水、地、風のエレメンツによるもので、そこに雷は存在しない。これは魔術士を目指す人が最初に学ぶことで、白手袋を目指していた俺でも知っていることだ。
 雷を生み出すには水と風のエレメンツを組み合わせる必要があり、複数のエレメンツを同時に使える魔術士は多くなく貴重な存在だった。それなのに、まさか剣士であるニゲルがそんな高等な魔術を扱えるなんて……。

「どういうことだ……」

 そんな特異な冒険者がいれば噂になっているはず。少なくともギルドでは把握しているだろうし、それなら俺の耳にも入っているはずだ。
 しかし、ニゲルという名に聞き覚えはなかった。世界中にわずかしかいないプラチナランクの冒険者並に珍しい存在だから、名前だけでなく容姿や功績まで知れ渡っていてもおかしくないというのにだ。

(容姿……、うん……?)

 そういえば、五年ほど前にギルドマスターから珍しい冒険者の話を聞いたことがあった。
 ランクは高くないもののやけに腕が立つらしく、魔獣相手に返り血を浴びることなく討伐したことから「魔術でも使えるんじゃないか」と噂されていた剣士。話の出どころはパーティを組んだ魔術士だったようで、一時期はこのサウザンドルインズでも話題に上っていたのを覚えている。
 その後、噂話を聞くことはなくなり真相はわからないままだったが、黒手袋の代わりのように全身真っ黒で魔術を使うらしいということから“黒手の剣士”と呼ばれて……って、まさか。

「まさか、おまえが“黒手の剣士”?」
「懐かしい呼び名ですね」
「は? え? 本当に?」
「以前、そんなふうに呼ばれていた時期もありました」
「いや、え? ってことは、本当に魔術が使えるってこと?」
「使えるのは水と風だけですけど。でも単体だと弱くて、もっぱら雷専門ですね」

 シルバーランクの剣士で、魔術士でも珍しい雷が使えたとは……。度々感じていた雷撃のような痺れは、俺の勘違いじゃなかったということだ。

「……驚いた……」

 ベッドに寝転んだまま、呆けたように傍らに座るニゲルを見つめた。
 二十四歳でシルバーランクというだけでも相当なのに、魔術まで使えたとは。それなら危険な夜の討伐も難なくこなせるはずだ。

(あぁ、だから夜狼ナイトウルフの討伐で返り血を浴びていなかったのか)

 雷撃を使えば、返り血なんて浴びることもなく魔獣は炭と化すだろう。複数の雷を操れるなら、夜狼ナイトウルフの群れであっても一撃に近い。
 もちろん剣の腕も確かだからシルバーランクの剣士なのだろうし、いや、両方使えるならとっくにゴールドにランクアップしていてもおかしくない。それに剣と魔術の両方が使えるなんて、冒険者の憧れじゃないか。しかも使えるのは貴重な雷の魔術だ。

(…………いや、ちょっと待て)

「……おまえ、まさか貴重な雷の魔術を、セックスに使ってたってことか……?」
「まぁ、そうですね。なので奥の手だって言ったんです。でも、気持ちよかったでしょう?」

 にこりと笑って近づいてきた顔を、右手で思い切りはたいた。残念ながら力が入らなかったせいで大したダメージにはならなかっただろうが、目を丸くした顔を見たら、少しだけ気が晴れた。
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