麗しの魔術師は養い子の弟子を花嫁に迎える

朏猫(ミカヅキネコ)

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8 手ほどき

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 スティアニーの剥き出しになった下肢が、わずかに差し込む月光に照らされている。といっても、この明るさでは人間であるスティアニーの目にはほとんど見えていないだろう。ジルネフィにはしっかり見えているが、あえて伝えることはしない。
 髪の毛と同じストロベリーブロンドの淡い茂みの中から、雪のような白い屹立が震えるように勃ち上がっていた。皮は被っておらず、ほとんど見えている先端は綺麗な色をしている。

(一度も使ったことがないという感じだな)

 本当に自慰のやり方を知らなかったらしい。もしくは怖くてできなかったのだろうか。「それなら優しくしないと」と思いながら、包み込むように右手で触れる。

「んっ」

 握っただけでスティアニーが甘い息を漏らした。それを聞いただけでジルネフィの体がじわりと熱くなる。

(変だな)

 こうした行為はジルネフィにとって息をするのと変わらない。性別を問わず交わっていたときにはもっと濃密なこともやっていた。それなのに、初心なスティアニーの屹立に触れているというだけで心臓がやけに忙しなくなる。

「お、師さま、」
「あぁ、うん、緊張しなくていいからね」

 膝の間で胸にもたれかかるように座っているスティアニーよりも、背後から下肢を覗き込んでいるジルネフィのほうがぎこちない。それを払拭するかのように屹立を包み込んだ手を上下に動かした。

「っ」
「大丈夫、痛くないからね」

 ストロベリーブロンドの隙間から覗く耳はすでに真っ赤になっていた。やや俯き加減なのは、自分のそこがどうなっているのか気になって仕方がないからだろう。声を噛み殺すような吐息と、時々ビクッと震える背中にジルネフィの右手がますます熱心に動く。

「んっ」
「こうやて擦ると気持ちいいだろう?」
「ん、」
「最初は優しくこうやって動かして……」

 そう言いながら皮を引っ張りすぎないように優しく上下に擦った。しばらくするとヌチュ、クチュと濡れた音がし始める。

「こうして先端が濡れてきたら、それを手で伸ばすように動かすんだ」
「ん……!」

 少し高い声が上がったかと思うと、続けて荒い吐息が漏れた。

「痛くない?」
「ん……っ、は、い……っ」

 返事とともにスティアニーの顎が上がる。細めた菫色の瞳がほんのり濡れているのは、初めて感じる強い刺激に自然と涙があふれるからだろう。
 そんな初心な様子に再び心臓が忙しなくなるのを感じながら、ジルネフィは刺激を与え続けている下肢をじっと観察した。すっぽりと手に収まっている屹立は健気な様子で、先端からはつぷつぷと露が滲んでいる。それが滴り落ち、ジルネフィの手を少しずつ濡らしていく。

「ぁ、ぁ、ぁ……っ」

 濡れて滑らかになった動きにスティアニーが声を上げた。それが恥ずかしいのかすぐさま唇を噛み、声を殺そうとする。

(それはそれで悪くはないけど)

 できれば声を出してほしい。これまで一度も発したことがないだろう甘い声を最初に聞くのは自分でありたい。そう思ったジルネフィは右手を少しだけ早く動かした。

「あ……!」

 小柄な体がビクンと跳ねた。敷布を握り締めている細い指に力が入る。その様子にジルネフィは知らず知らずのうちに目を細めていた。

(そういえば、こうしたことも随分とご無沙汰だったな)

 スティアニーを拾ってからというもの誰かと肌を重ねることがなかった。魔族を招き入れたせいで養い子に何かあってはいけないと珍しく自重した。魔族に会うのも必要最小限に留め、家にやって来るのは信用できる依頼人だけにした。
「ということは、十三年していないということか」と自分の禁欲に少し驚きながら、屹立を包み込む右手の親指で先端をクリクリと擦る。

「ひっ」
「うん、愛らしくていい鳴き声だ」

 ヌチュヌチュと上下に擦りながら、親指で先端をくすぐるようにいじる。スティアニーは先端が弱いのか、途端に「あっ、ぁっ」と甘い声を上げ始めた。

「声を出すほうがずっと気持ちいいだろう?」

 スティアニーが頭をふるふると横に振った。否定しているのではなく強い刺激がつらいのだろう。それでも快楽へと導くジルネフィの手を邪魔しようとはしない。

「そう、とても上手に感じているね。そのままわたしの手を感じて」

 手の動きをさらに早めると、スティアニーの腰がグンと宙を突き上げるように跳ね上がった。

「ひっ、ひぁ……!」

 顔を真っ赤にしたスティアニーが、菫色の目を閉じて何かに耐えるように震え出した。敷布を掴む手も開きっぱなしの両足も小刻みに震えている。

「気持ちがいいね? そう、そのまま快楽に身を委ねるんだ」
「んっ、でも、ひぅっ」
「大丈夫だよ。さぁ、もっと気持ちよくなろう」
「お、師さ……っ、だ、め……っ」

 先端をクリクリと擦りながら、握る手に少し力を加えてクチュクチュと擦り上げた。途端に細腰がビクビクと跳ね、先端からピュルッと勢いよく白濁を噴き出した。両足の爪先はグッと丸まり、指は敷布を掻くように掴んでいる。それでも快感が散らせないのか、後頭部をグリグリとジルネフィの肩に擦りつけるように頭を振った。

「ぁ……ぁ……」

 吐精の余韻なのか、スティアニーが華奢な体を震わせながら甘い声を上げた。かすかに開いている菫色の瞳は潤み、開いた唇の奥で赤い舌先がちろちろと動いている。ジルネフィは初めて見る養い子の艶めかしい姿に口をほころばせた。

「スティ」

 囁きかける声にスティアニーの瞳がゆらりと反応する。快感に肌を赤く染めながら顔を上げ、潤んだ瞳でジルネフィを見つめた。

(魔族とは違う、それに猫とも違う愛らしさだ)

 気がつけば顔を近づけていた。少し汗ばんだ額に口づけ、まだ少し震えている屹立から右手を離す。そうして下肢を綺麗にしてやろうと腕を動かしたとき「ジルさま」という小さな声が聞こえた。
 どうしたのだろうと視線を向けると、上半身を捩ったスティアニーがグンと顔を近づけた。そのまま押しつけるように唇を触れ合わせる。

(……え?)

 思わず動きを止めてしまった。パチパチと瞬きをしている間にスティアニーの顔が離れていく。

「ジルさま……好きです」

 予想もしていなかったスティアニーの告白に、ジルネフィはただただ目を瞬かせた。
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