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9 物思い
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スティアニーにとって初めての快楽は、養い親であり師でもあるジルネフィによって与えられた。それに満足したのか隣でスヤスヤと眠っている。
スティアニーの下肢を拭いしっかりと寝間着を着せたジルネフィは、体を横たえることなく考え事に耽っていた。穏やかに眠る寝顔を時々見ては、プレイオブカラーの瞳がくるりと色を変化させる。
(さっきの言葉は単なる親愛の情……なんて、さすがにそれはないか)
吐精後、スティアニーに口づけられ「好きです」と告げられた。人間に興味も関心もないジルネフィでも、あれが色恋に関する告白だということはわかる。それでも「まさか」と思い、こうしてあれこれ考えているのはスティアニーが人間だからだ。
人間の世界では親が養い子に手を出すことは嫌悪される。たとえ養い親が魔族であっても人間にとっては同じだろう。スティアニーが人間の世界に戻るかもしれないことを考えれば気持ちを受け入れるべきではない。そうした経験が人間の世界でどう影響するかジルネフィにはわからないからだ。「それは間違っているよ」と正してやるのが養い親の役目だということも想像できる。
(そもそも魔族と人間が色恋なんてあり得ない)
半分は人間由来ではあるものの、ジルネフィは体も中身も魔族そのものと言っていい。そんな魔族と関係を持った人間が人間の世界でどういう目に遭うのか、長く人間の魔術師たちを見てきたジルネフィはよく知っていた。
古くは悪魔憑きと呼ばれ忌み嫌われていた。魔と交わる者として火あぶりにされた者もいる。いまではそうしたことを目にすることはないが、どういうことになるかはわからない。
(スティが変わってしまうかもしれないことも心配だ)
人間にとって魔族との交わりは人間同士のものよりはるかに強烈だと聞く。もしスティアニーが魔族との情交に夢中になり、自分以外の魔族を求めるようになれば人間の世界よりもひどいことになるだろう。ジルネフィはそのことも危惧していた。
魔族は人間を“道具”としか見ない。そういう扱いをされれば、心の優しいスティアニーは壊れてしまうに違いない。ここまで育ててきた養い子が壊されるのはジルネフィにとって不本意だった。なにより自分以外の魔族がスティアニーに触れるかもしれないと考えるだけで魔力が揺らぎそうになる。
(……何を考えているんだ)
はたと気づき額に手を当てた。自分以外の魔族に触れさせたくないと考えたことに、ジルネフィは少しばかり動揺した。
たしかにスティアニーは養い子であり弟子でもあるが、元は気まぐれに拾っただけの人間の子だ。猫を拾ったときと何ら変わりはない。人間の世界を覗きながら見よう見まねで育ててはいるものの、だからといって人間自体に興味がわいたわけでもなかった。
(それなのに、ここまであれこれ考えてしまうとは)
もしかして人間であるはずの半分が何かを感じているのだろうか。そう思ったものの、すぐに自嘲するような冷たい笑みが浮かんだ。
たしかに母親は人間だったが、魔族と交わる時点で人間とは言えなくなっていた。父親は夜を統べる魔族で、気がつけば魔族の頂点に君臨している。人間を捨てた母親と魔族の王から作られた自分に人間らしいところがあるとは思えない。
(そもそもわたし自身、特異な魔族でもあるわけだし)
ジルネフィは多くの魔族から“異形の魔術師”と呼ばれている。そのことを思い出し、隣で眠るスティアニーを見た。
「スティ、きみは一体どうしたいんだい?」
囁く声は優しく、それでいてほんの少しの戸惑いが滲んでいた。スティアニーは人間と魔族の違いをよく理解している。理解しなければ魔術師の弟子にはなれない。そうしたことを理解しているうえで「好きだ」と告げたということだ。
(告げずにはいられないほど強く思っているということだろうか)
ふと、そこまで自分を思うスティアニーを人間の世界に戻すことができるだろうかとジルネフィは考えた。
(いまここで手放したとして、きみはどうなる?)
拾ったときから何度も見てきた悲しそうな顔が脳裏をよぎる。「捨てないで、嫌いにならないで」と訴える菫色の瞳はいまでも忘れていない。あのときの表情を思い出すと、持ち合わせていないはずの良心のようなものが疼きそうになる。
(きみはいまも一人になるのが怖いのだろうね)
だから今回のこともなかなか言えなかった。体がおかしいのはジルネフィへの強い思いのせいだとわかっていて、言えば嫌われるか捨てられると思ったに違いない。
スティアニーが抱く気持ちが本当に色恋なのか、ジルネフィにはわからない。寂寥を勘違いしているだけかもしれない。
(スティのほうはそうだとして、わたしのほうはどうだろう)
ジルネフィは改めて自分の気持ちを考えた。考え始めてすぐに眉が寄る。「気まぐれで拾った養い子で弟子」という言葉は浮かぶものの、どうも違和感が拭えない。
(……だから迷うのか)
スティアニーをこのまま手元に置いてよいのか迷っていた。同時に手放すことも躊躇している。縋るように見つめる菫色の瞳を思い浮かべると、その孤独をこの手で癒やしてやりたいと思ってしまう。
(やれやれ。一つのことをこんなに考えるのは久しぶりだな)
ため息をついたジルネフィは、掛布を持ち上げて体を横たえた。そのまましばらくスティアニーの寝顔を堪能し、そっと抱き寄せる。「この小さな温もりをわたしは手放せるだろうか」と考えながら、ゆっくり瞼を閉じた。
結論が出ないまま、その後もジルネフィはいつもどおりの日々を送った。スティアニーも変わりなく過ごしているが、時々切なそうな気配を漂わせている。ジルネフィもそのことに気づいていたが、何と声をかけるべきか考えあぐねていた。
(このままじゃよくないな)
何よりスティアニーが寝不足気味なのが気になった。今度は好きだと言ったもののどう思われたか気になってうまく眠れないのだろう。
それでもスティアニーはこれまでどおりジルネフィの隣で眠った。寝間着のどこかをギュッと握り締め、離れたくないと訴えるようにほんの少し身を寄せながら眠りに就く。そんなスティアニーをジルネフィは拒絶することなく腕に抱きしめた。
(なぜ抱きしめてしまうのだろう)
スティアニーの気持ちと同じように自分の行動もわからない。スティアニーの不眠の原因が「好きだ」と告げたことだとわかっているなら返事をすればいいだけだというのに、できないままでいる。
(養い親を好きになってはいけないと言うだけなのに)
伝えるべき内容はわかっている。それなのに、いざ口にしようとすると喉に何かがつっかえるような感覚になった。どうしてそうなるのか原因がわからない。
もっとも訳がわからないのは、そのときに体の奥で魔力が渦を巻くように蠢くことだった。これまでそんな経験をしたことは一度もない。もし自分を害するような存在が目の前にいるなら話は別だが、相手はスティアニーだ。それなのに凶暴なほどの魔力が暴れ出そうとするかのように蠢く。
ジルネフィは久しぶりにたっぷりと悩んだ。スティアニーのことよりも自分の不可解な状態に首をひねり眉を寄せる。こんな状態ではスティアニーに何か影響を与えてしまうかもしれないと思うものの、最近ではスティアニーの顔を思い浮かべるだけで魔力が蠢きジルネフィを苛つかせた。
(苛つくなんてどのくらい振りの感覚だろう)
ジルネフィに近づこうとする魔族は多いが、魔力の強いジルネフィを害することができる魔族はそう多くない。体の関係を持った魔族に言い寄られたことはあるものの、それでもジルネフィが苛つくことはなかった。
それなのにスティアニーのことを思い浮かべるだけで魔力が蠢き苛つくような感覚になる。それならいっそ人間の世界に戻してしまおうかと考えたとき、バチンという音とともに薬品棚の瓶が一つ弾け飛んだ。続けてパリンパリンといくつもの瓶が割れる。
(物理的な影響まで与えるとは……)
思わずため息が漏れた。こんなことは初めてで、なぜ魔力を制御できないのかわからないことに再び苛立つ。
「お師さま、大きな音がしましたけど大丈夫ですか? ……って、これは……」
瓶が割れる音に気づいたスティアニーが作業部屋にやって来た。床や棚に散らばったガラス片に目を見開き、「手で触ったら怪我しますよ」と言いながらホウキとちりとりを取り出す。
「何か難しい調合ですか? あっ、あっちにも飛んでますね。片付けは僕がしますからお師さまは休んでいてください」
ジルネフィが何か言う前に手際よくスティアニーが片付けを始める。体を動かすたびに一つに結んだストロベリーブロンドが揺れ、菫色の瞳はガラス片を探すようにあちこちを見ていた。
日常会話は少しぎこちなくなったものの、弟子としては相変わらず優秀だ。こうした二人きりの日々を十年以上送ってきた。もしスティアニーを人間の世界に返せばこうした日常はなくなる。瓶を割ってもそれだけで、そこから何かが生まれることもない。
(あぁ、そうか)
ジルネフィは、自分がこうした日常を手放したくないと思っていることにようやく気がついた。顔を合わせて食事をし、何かあれば話をして笑い合う。予想外のことも起きるが、それを面倒だと思ったことはない。
(いや、拾ったときは少し面倒だった)
それがいつの間にか思わなくなっていた。それどころか人間であるスティアニーのことをいつも気にかけている。この先どうしたいのか見守り、邪魔をしないようにとまで考えた。
(スティを人間の世界に返すなんてできるはずがない)
スティが目の前からいなくなると考えただけで魔力が蠢いた。クルクルと色を変えるプレイオブカラーの瞳が黄金色に変わる。そうしてわずかに赤みを帯び、ゆっくりと元の色に戻った。
(手放したくないならそうすればいい)
魔族は自分の欲望に忠実に生きる。これまでジルネフィも魔族らしく生きてきた。相手が養い子でも弟子でも思うままにすればいい。
(それにスティのほうからわたしを求めてきたのだし)
ジルネフィはようやく結論を出し、その日の夜実行に移すことにした。
スティアニーの下肢を拭いしっかりと寝間着を着せたジルネフィは、体を横たえることなく考え事に耽っていた。穏やかに眠る寝顔を時々見ては、プレイオブカラーの瞳がくるりと色を変化させる。
(さっきの言葉は単なる親愛の情……なんて、さすがにそれはないか)
吐精後、スティアニーに口づけられ「好きです」と告げられた。人間に興味も関心もないジルネフィでも、あれが色恋に関する告白だということはわかる。それでも「まさか」と思い、こうしてあれこれ考えているのはスティアニーが人間だからだ。
人間の世界では親が養い子に手を出すことは嫌悪される。たとえ養い親が魔族であっても人間にとっては同じだろう。スティアニーが人間の世界に戻るかもしれないことを考えれば気持ちを受け入れるべきではない。そうした経験が人間の世界でどう影響するかジルネフィにはわからないからだ。「それは間違っているよ」と正してやるのが養い親の役目だということも想像できる。
(そもそも魔族と人間が色恋なんてあり得ない)
半分は人間由来ではあるものの、ジルネフィは体も中身も魔族そのものと言っていい。そんな魔族と関係を持った人間が人間の世界でどういう目に遭うのか、長く人間の魔術師たちを見てきたジルネフィはよく知っていた。
古くは悪魔憑きと呼ばれ忌み嫌われていた。魔と交わる者として火あぶりにされた者もいる。いまではそうしたことを目にすることはないが、どういうことになるかはわからない。
(スティが変わってしまうかもしれないことも心配だ)
人間にとって魔族との交わりは人間同士のものよりはるかに強烈だと聞く。もしスティアニーが魔族との情交に夢中になり、自分以外の魔族を求めるようになれば人間の世界よりもひどいことになるだろう。ジルネフィはそのことも危惧していた。
魔族は人間を“道具”としか見ない。そういう扱いをされれば、心の優しいスティアニーは壊れてしまうに違いない。ここまで育ててきた養い子が壊されるのはジルネフィにとって不本意だった。なにより自分以外の魔族がスティアニーに触れるかもしれないと考えるだけで魔力が揺らぎそうになる。
(……何を考えているんだ)
はたと気づき額に手を当てた。自分以外の魔族に触れさせたくないと考えたことに、ジルネフィは少しばかり動揺した。
たしかにスティアニーは養い子であり弟子でもあるが、元は気まぐれに拾っただけの人間の子だ。猫を拾ったときと何ら変わりはない。人間の世界を覗きながら見よう見まねで育ててはいるものの、だからといって人間自体に興味がわいたわけでもなかった。
(それなのに、ここまであれこれ考えてしまうとは)
もしかして人間であるはずの半分が何かを感じているのだろうか。そう思ったものの、すぐに自嘲するような冷たい笑みが浮かんだ。
たしかに母親は人間だったが、魔族と交わる時点で人間とは言えなくなっていた。父親は夜を統べる魔族で、気がつけば魔族の頂点に君臨している。人間を捨てた母親と魔族の王から作られた自分に人間らしいところがあるとは思えない。
(そもそもわたし自身、特異な魔族でもあるわけだし)
ジルネフィは多くの魔族から“異形の魔術師”と呼ばれている。そのことを思い出し、隣で眠るスティアニーを見た。
「スティ、きみは一体どうしたいんだい?」
囁く声は優しく、それでいてほんの少しの戸惑いが滲んでいた。スティアニーは人間と魔族の違いをよく理解している。理解しなければ魔術師の弟子にはなれない。そうしたことを理解しているうえで「好きだ」と告げたということだ。
(告げずにはいられないほど強く思っているということだろうか)
ふと、そこまで自分を思うスティアニーを人間の世界に戻すことができるだろうかとジルネフィは考えた。
(いまここで手放したとして、きみはどうなる?)
拾ったときから何度も見てきた悲しそうな顔が脳裏をよぎる。「捨てないで、嫌いにならないで」と訴える菫色の瞳はいまでも忘れていない。あのときの表情を思い出すと、持ち合わせていないはずの良心のようなものが疼きそうになる。
(きみはいまも一人になるのが怖いのだろうね)
だから今回のこともなかなか言えなかった。体がおかしいのはジルネフィへの強い思いのせいだとわかっていて、言えば嫌われるか捨てられると思ったに違いない。
スティアニーが抱く気持ちが本当に色恋なのか、ジルネフィにはわからない。寂寥を勘違いしているだけかもしれない。
(スティのほうはそうだとして、わたしのほうはどうだろう)
ジルネフィは改めて自分の気持ちを考えた。考え始めてすぐに眉が寄る。「気まぐれで拾った養い子で弟子」という言葉は浮かぶものの、どうも違和感が拭えない。
(……だから迷うのか)
スティアニーをこのまま手元に置いてよいのか迷っていた。同時に手放すことも躊躇している。縋るように見つめる菫色の瞳を思い浮かべると、その孤独をこの手で癒やしてやりたいと思ってしまう。
(やれやれ。一つのことをこんなに考えるのは久しぶりだな)
ため息をついたジルネフィは、掛布を持ち上げて体を横たえた。そのまましばらくスティアニーの寝顔を堪能し、そっと抱き寄せる。「この小さな温もりをわたしは手放せるだろうか」と考えながら、ゆっくり瞼を閉じた。
結論が出ないまま、その後もジルネフィはいつもどおりの日々を送った。スティアニーも変わりなく過ごしているが、時々切なそうな気配を漂わせている。ジルネフィもそのことに気づいていたが、何と声をかけるべきか考えあぐねていた。
(このままじゃよくないな)
何よりスティアニーが寝不足気味なのが気になった。今度は好きだと言ったもののどう思われたか気になってうまく眠れないのだろう。
それでもスティアニーはこれまでどおりジルネフィの隣で眠った。寝間着のどこかをギュッと握り締め、離れたくないと訴えるようにほんの少し身を寄せながら眠りに就く。そんなスティアニーをジルネフィは拒絶することなく腕に抱きしめた。
(なぜ抱きしめてしまうのだろう)
スティアニーの気持ちと同じように自分の行動もわからない。スティアニーの不眠の原因が「好きだ」と告げたことだとわかっているなら返事をすればいいだけだというのに、できないままでいる。
(養い親を好きになってはいけないと言うだけなのに)
伝えるべき内容はわかっている。それなのに、いざ口にしようとすると喉に何かがつっかえるような感覚になった。どうしてそうなるのか原因がわからない。
もっとも訳がわからないのは、そのときに体の奥で魔力が渦を巻くように蠢くことだった。これまでそんな経験をしたことは一度もない。もし自分を害するような存在が目の前にいるなら話は別だが、相手はスティアニーだ。それなのに凶暴なほどの魔力が暴れ出そうとするかのように蠢く。
ジルネフィは久しぶりにたっぷりと悩んだ。スティアニーのことよりも自分の不可解な状態に首をひねり眉を寄せる。こんな状態ではスティアニーに何か影響を与えてしまうかもしれないと思うものの、最近ではスティアニーの顔を思い浮かべるだけで魔力が蠢きジルネフィを苛つかせた。
(苛つくなんてどのくらい振りの感覚だろう)
ジルネフィに近づこうとする魔族は多いが、魔力の強いジルネフィを害することができる魔族はそう多くない。体の関係を持った魔族に言い寄られたことはあるものの、それでもジルネフィが苛つくことはなかった。
それなのにスティアニーのことを思い浮かべるだけで魔力が蠢き苛つくような感覚になる。それならいっそ人間の世界に戻してしまおうかと考えたとき、バチンという音とともに薬品棚の瓶が一つ弾け飛んだ。続けてパリンパリンといくつもの瓶が割れる。
(物理的な影響まで与えるとは……)
思わずため息が漏れた。こんなことは初めてで、なぜ魔力を制御できないのかわからないことに再び苛立つ。
「お師さま、大きな音がしましたけど大丈夫ですか? ……って、これは……」
瓶が割れる音に気づいたスティアニーが作業部屋にやって来た。床や棚に散らばったガラス片に目を見開き、「手で触ったら怪我しますよ」と言いながらホウキとちりとりを取り出す。
「何か難しい調合ですか? あっ、あっちにも飛んでますね。片付けは僕がしますからお師さまは休んでいてください」
ジルネフィが何か言う前に手際よくスティアニーが片付けを始める。体を動かすたびに一つに結んだストロベリーブロンドが揺れ、菫色の瞳はガラス片を探すようにあちこちを見ていた。
日常会話は少しぎこちなくなったものの、弟子としては相変わらず優秀だ。こうした二人きりの日々を十年以上送ってきた。もしスティアニーを人間の世界に返せばこうした日常はなくなる。瓶を割ってもそれだけで、そこから何かが生まれることもない。
(あぁ、そうか)
ジルネフィは、自分がこうした日常を手放したくないと思っていることにようやく気がついた。顔を合わせて食事をし、何かあれば話をして笑い合う。予想外のことも起きるが、それを面倒だと思ったことはない。
(いや、拾ったときは少し面倒だった)
それがいつの間にか思わなくなっていた。それどころか人間であるスティアニーのことをいつも気にかけている。この先どうしたいのか見守り、邪魔をしないようにとまで考えた。
(スティを人間の世界に返すなんてできるはずがない)
スティが目の前からいなくなると考えただけで魔力が蠢いた。クルクルと色を変えるプレイオブカラーの瞳が黄金色に変わる。そうしてわずかに赤みを帯び、ゆっくりと元の色に戻った。
(手放したくないならそうすればいい)
魔族は自分の欲望に忠実に生きる。これまでジルネフィも魔族らしく生きてきた。相手が養い子でも弟子でも思うままにすればいい。
(それにスティのほうからわたしを求めてきたのだし)
ジルネフィはようやく結論を出し、その日の夜実行に移すことにした。
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