転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

春風悠里

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6.食堂

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 あれから、隊員部屋へ戻るとルリアンとベル子がすごく仲よしになっていた。

 リュークが「互いに今まで友達がいなかったことが判明した結果、こうなった」と彼女たちを指さした。

 ほわわ~んとするルリアンに、ベル子が「友達……」と言いながらルリアンの腕をぎゅっとしていたので「ほら、ラビッツも」と俺が促すと二人が期待の眼差しで彼女を見て――、「分かったわよ、友達よ!」と言いながらラビッツも二人の腕をぎゅっとして輪になっていた。

 とりあえず青春だ。友情が深まってよかった。いかにもなギャルゲーの光景に転生者であるラビッツまで馴染んでいるのは不思議だ……と思いながらも、俺も馴染んでいる気がするしな。

 おバカキャラで助かった。多少おかしなことを言っても、引かれないだろう。

 さて、今日は入学式の翌日。土曜日だ。秘密基地には自由参加で集合することになっている。お休みだからな。今は食堂で朝食を食べている最中だ。寮生活は自由を満喫できるのがいい。

「あいひんふっへ、いいおあ」
「飲み込んでからしゃべれ。お前、王子だろ」

 リュークになら通じると思ったのに。
 
「バイキングっていいよな」
「そうか? お前、王宮でいいものを食べていただろう?」
「残すくらい出てくるの、好きじゃないんだよ。マナーを守るのも疲れる。ガツガツ食いてー」
「だからお前、王子だろ」
「好きで王子やってないんだよ」
「まぁ、俺ならごめんだな」
「だろ? 責任重いし注目は浴びるし、いいことなんてラビッツと婚約できたことくらいだ」

 そう……責任が重い。実は、表向きには分からないように俺には黒子がどこかに常についている。俺の命を守る護衛だ。それだけが任務だから特に何をしてくるものでもないが、実は呼べば来る。つまり、もし仮にラビッツとデートをしても、どこかに黒子がいて見られている。

 ……黒くはないけど。

「お前、そんなにラビッツのことが好きだったか?」

 ゲームの中ではたまに「ラビッツぅ~、婚約者だろう!?」とかおどけていたけど、惚れていたわけではない。よく知っている可愛い子と婚約できてラッキー、くらいだ。幼馴染として大事には思っていて、リュークとラビッツが結ばれるルートでは普通にかっこつけて祝福していた。

「リュークだって好きだろ?」
「まぁ、そりゃ幼馴染だしな。そういう意味じゃないって分かってんだろ?」

 入学式の日――つまり昨日、あれだけ叫んじゃったしな。

 視線の先では、ラビッツが知り合いの貴族たちに軽く挨拶をしながら、ルリアンとベル子と一緒に席についたところだ。オリヴィアは、やはり取り巻きに囲まれて優雅に食事をしている。

「ああ。俺はいつかラビッツと結婚したい」

 ツンデレは最高だ。彼女も転生者だと知ってはいるが、あのノリがたまらない。昨日はデレの片鱗を垣間見て、少し興奮してしまった。

「ただ、あいつに好きな男ができたら婚約の解消も覚悟しないといけないんだろうな。ラビッツには好きな男と結ばれてほしい。だから、どうにかして俺がその好きな男にならないとな」

 俺と同じように前世の記憶があるなら、好きでもない相手との結婚には大きな抵抗があるはずだ。

 それに……ゲームのラビッツは不憫萌えの要素もあった。リュークが好きでそれを隠しているから、リュークが他の女の子と結ばれるルートでは俺の婚約者として切ない乙女心を押し殺し、「おめでとう」と祝う側になるのだ。

 幸せになってほしいんだよ!
 ラビッツには!

 じっと見つめていると、視線に気づいたのか三人がこちらを向いた。ルリアンがいち早く小さく手を振ってくれる。ラビッツと目が合ったのが嬉しくて、俺はとっさに投げキッスを飛ばした。当然のように扇子ではたき落とす仕草をされる。

「あー……ま、応援するよ」

 俺の一連の動きに呆れながら、リュークも小さく彼女たちに手をあげた。

 あれ。
 これ、もうリュークとラビッツが結ばれるルートは消えたんじゃないか? 応援されちゃったぞ?

「そ、そうだな。よろしく」
「なんでお前、そんな変な顔をしてるんだよ」
「ははは、俺はいつも変な顔じゃないか」
「それもそうだな」
「変じゃねーよ!? イケメンだよ!?」
「自分で言ったんじゃねーか……」

 リュークの方が、クールな雰囲気でイケメン度は高いけどな。

 料理に意識を戻す。ハムエッグトーストが美味い。ベーコンが美味い。パスタも美味い。スープも美味い。先のことを考えるより、今はご飯が美味い世界に転生できたことを喜ぼう。お腹がいっぱいになって満たされてきた。

「あー、飯の美味い世界でよかった」
「ずいぶん壮大な感想だな!?」

 しばらくは平和な学園生活が続きそうだ。この先に色々あることは分かっているが、卒業後の王子としての生活を考えると気が滅入る。

 今も、毎日のように王家から届けられる書類に目を通してサインをしている。父のサインだけで事足りるものの、将来のために「こういった手続きがある」と理解させておく、という教育の一環らしい。俺のサインは確認欄に必要で、承認という意味ではない。

 この半年間、努力、努力、努力のど根性で生きてきた。卒業してからも、きっとそうだろう。

「まぁでも、プータローと王子なら、職が保証されている王子の方がマシか」
「比べる対象がおかしいだろう。というか、飯の話からなんで急に職の話になるんだ」
「ずっと飯を食い続けられる身でありたいなと思ってさ」
「王子が何を言ってるんだ……」

 歳の離れた弟がポコポコ二人もいるし、何かとんでもないことをやらかしたら国王陛下にはならないかもしれないけどな。

 そんなお偉いさんにはなりたくないし、円満に王位継承権を弟に譲ることができれば、多少は肩の荷が下りるものの……さすがにそれは無理だろう。ど根性で生きていく覚悟は、もう決めた。

 たまにチラチラとラビッツと視線が合うなーと思いながら、朝食を終えた。


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