13 / 32
13.同じ部屋で2
しおりを挟む
そうして、私は最初から一定水準の強さがあったのも大きく、あっという間にミセル様の護衛として上の方へと駆け上がった。チームとして動くことも多く、そのリーダーである主任という役職ももらった。実力も前のループの時と比べて、桁違いに上がっている。
「――報告は以上です」
ミセル様の私室や執務室で話すことも前以上に増えた。もちろん、イグニスも控えて立っている。
「ああ、ありがとう」
「それでは失礼いたします」
「ああ、待ってよ。ナタリー」
「はい。なんでしょう」
「最近、母上のお体の調子が悪いらしいんだ」
「……そうですか」
「もしかしたら、近々ご静養されるかもしれない」
こんな会話は前のループではしていない。つまり……彼が王妃に対して何かをするかもしれないということだ。……私のために。
王立学園への視察日も迫っている。
「分かりました」
「君は前回、イグニスと同じ部屋で寝起きしていたと言っていたね」
「はい。殺気を察知する訓練のために」
「今は一人だ」
「……はい」
「寂しくはない?」
ミセル様の意図が分からない。
もしかして……!
「正直なところ、寂しいです」
「それなら、これからは僕と寝起きしようか」
「……へ?」
ミセル様と寝起き???
誰が?
私が?
なんで?
イグニスとじゃないの?
「お言葉ですが、ミセル様。私は反対です」
イグニスが珍しく反論してくれるようだ。
「よくない噂が貴族の間に飛び交います。ただのメイドなら、ミセル様がご結婚された時に金を握らせて暇をとらせることもできるでしょう。子をなしたあとにもう一度愛人として呼び寄せてもいい」
跡継ぎは大事だ。基本的に愛人をもうけるにしても男児が産まれてからにするのは暗黙のマナーだ。
「しかし、ナタリーは侯爵令嬢だ。どちらの利にもなりません」
「でも、ナタリーは護衛だよ。僕のメイドだ」
「ですが――」
「決めるのは彼女だ」
今ので分かった。
私は護衛だ。もし他の護衛メイドにミセル様が手を出そうとして、断る者はいない。一番近くで守れるからだ。ご主人様を守るためなら、いかなる手段を用いてでも喜んで守ろうとするのが護衛。そーゆーものだ。
ミセル様は王妃様に何かをしようとしている。私のためだ。前回のループまで何もなかったのだから、100%私のためだ。
でも――、それは計画するだけでミセル様の身を危なくする。就寝中に殺される可能性だってある。天井裏に護衛がいて廊下にも衛兵がいるとはいえ、裏切らないとは限らない。侯爵家に住んでいて何度も殺された私だからこそ、身に沁みて分かっている。
「私を信用してくださるということですか」
王妃に何かをするかわりに、私を護衛として夜も側におこうとしている。
私に暗殺される可能性はゼロだと認識もしてくれているということだ。何度もループしているなんて嘘をついて近づこうとしているという線だって、可能性としては考えたこともあるはずだ。
色気のある理由で寝るわけじゃない。護衛として側にいろと言われている。
信用できる人物として。
ミセル様をいざとなったら守れるほどの実力をもっている護衛として。
「これまで、君が話した未来は全て現実になっているよね」
前のループで私がこなした任務も、全て話したものね。
「僕は、メイドの中で一番君を信用している」
ああ……。
今日のために私は生きてきた。そんな気さえする。この人のために仕えるんだという忠誠心が今まで以上にぞくぞくと私を支配して根を張っていく。
私は必要とされている。
私は信用されている。
応えなければ、その信頼に。
「寝起きを共にさせてください、ミセル様」
「ああ、そうしよう」
珍しくイグニスが眉をひそめている。
ミセル様にその気がないことくらい分かっているでしょうけど……部下の私に、ミセル様の愛人になったという噂が立つ心配をしてくれているのね。
まだ、侯爵令嬢という目でも見ているだろうから。
でも、私のために危険を冒そうとしている彼を放ってはおけない。一番近くで守りたい。
「では、今夜からおいで。ナタリー」
「承知いたしました」
不服そうなイグニスを横目で見ながら部屋を出た。
♠
「おいで、ナタリー」
もう婚約者ではないからこそ、まるで恋人のように振る舞う。そういう皮肉っぽいことが大好きな王子様だ。
手を広げるミセル様の隣に腰かける。
「では遠慮なく」
「綺麗な髪だね。燃えるような赤だ、すごく素敵だよ」
「ありがとうございます」
恋人のように髪に触れ、彼が耳元でそっと囁いた。
「イグニスの希望で、可能な限り天井裏の警備はあいつが担当することになったよ。任務で抜けることもたまにはあるけどね」
「あ……りがとうございます」
「自然死に見せかける毒薬も手に入れた。しばらく僕から離れるな。父上の了解を得る算段もついている」
そういうことか……。
ミセル様の護衛は精鋭が集まっている。貴族とはレベルが違う。私は彼を守る。そして、彼の側にいれば私もまたより安全になる。
ミセル様のご両親の仲はよくない。お父様には愛人がいる。そのあたりを利用して画策したのかもしれない。
私のために。
私が殺されないために。
私の言葉だけを信じて。
護るつもりだったのに……私はミセル様に守られていたんだ。守りたいと思ってもらえたんだ。
「わ、たし……」
「どうしたの、涙ぐんで」
「ループするのは辛かったんです。繰り返すのは辛かった」
「うん」
彼のためなら――。
「でも、ミセル様のためなら何度でも死ねます。私ならやり直しがきく。いくらでも盾にしてください。どれだけでも死にます。何百回死んでも、私はあなたの盾になります」
「君は可愛いな。すごく可愛いよ」
彼が私を抱きしめた。
温かい。
「冷たくなるなよ、これは命令だ」
死ぬなよって意味ね。
死なないでと思ってもらえる。
「はい。ご命令とあらば」
「ああ、頼んだよ」
彼の手はやさしい。
愛情を感じる。
やらしさは感じない。
可哀想な人だ。
この人が信用できる相手は、きっとものすごく少ない。私と同じだ。
「それじゃ、寝よう。ついでに僕の思い出話でも聞いてくれ」
「はい。私のご主人様」
絶対に切れない絆が、ミセル様との間にある。この人と婚約だなんてやっぱり薄ら寒い。破棄してもらって正解だった。
恋なんてあやふやなものなんて、私たちの間には介在させたくない。
「――報告は以上です」
ミセル様の私室や執務室で話すことも前以上に増えた。もちろん、イグニスも控えて立っている。
「ああ、ありがとう」
「それでは失礼いたします」
「ああ、待ってよ。ナタリー」
「はい。なんでしょう」
「最近、母上のお体の調子が悪いらしいんだ」
「……そうですか」
「もしかしたら、近々ご静養されるかもしれない」
こんな会話は前のループではしていない。つまり……彼が王妃に対して何かをするかもしれないということだ。……私のために。
王立学園への視察日も迫っている。
「分かりました」
「君は前回、イグニスと同じ部屋で寝起きしていたと言っていたね」
「はい。殺気を察知する訓練のために」
「今は一人だ」
「……はい」
「寂しくはない?」
ミセル様の意図が分からない。
もしかして……!
「正直なところ、寂しいです」
「それなら、これからは僕と寝起きしようか」
「……へ?」
ミセル様と寝起き???
誰が?
私が?
なんで?
イグニスとじゃないの?
「お言葉ですが、ミセル様。私は反対です」
イグニスが珍しく反論してくれるようだ。
「よくない噂が貴族の間に飛び交います。ただのメイドなら、ミセル様がご結婚された時に金を握らせて暇をとらせることもできるでしょう。子をなしたあとにもう一度愛人として呼び寄せてもいい」
跡継ぎは大事だ。基本的に愛人をもうけるにしても男児が産まれてからにするのは暗黙のマナーだ。
「しかし、ナタリーは侯爵令嬢だ。どちらの利にもなりません」
「でも、ナタリーは護衛だよ。僕のメイドだ」
「ですが――」
「決めるのは彼女だ」
今ので分かった。
私は護衛だ。もし他の護衛メイドにミセル様が手を出そうとして、断る者はいない。一番近くで守れるからだ。ご主人様を守るためなら、いかなる手段を用いてでも喜んで守ろうとするのが護衛。そーゆーものだ。
ミセル様は王妃様に何かをしようとしている。私のためだ。前回のループまで何もなかったのだから、100%私のためだ。
でも――、それは計画するだけでミセル様の身を危なくする。就寝中に殺される可能性だってある。天井裏に護衛がいて廊下にも衛兵がいるとはいえ、裏切らないとは限らない。侯爵家に住んでいて何度も殺された私だからこそ、身に沁みて分かっている。
「私を信用してくださるということですか」
王妃に何かをするかわりに、私を護衛として夜も側におこうとしている。
私に暗殺される可能性はゼロだと認識もしてくれているということだ。何度もループしているなんて嘘をついて近づこうとしているという線だって、可能性としては考えたこともあるはずだ。
色気のある理由で寝るわけじゃない。護衛として側にいろと言われている。
信用できる人物として。
ミセル様をいざとなったら守れるほどの実力をもっている護衛として。
「これまで、君が話した未来は全て現実になっているよね」
前のループで私がこなした任務も、全て話したものね。
「僕は、メイドの中で一番君を信用している」
ああ……。
今日のために私は生きてきた。そんな気さえする。この人のために仕えるんだという忠誠心が今まで以上にぞくぞくと私を支配して根を張っていく。
私は必要とされている。
私は信用されている。
応えなければ、その信頼に。
「寝起きを共にさせてください、ミセル様」
「ああ、そうしよう」
珍しくイグニスが眉をひそめている。
ミセル様にその気がないことくらい分かっているでしょうけど……部下の私に、ミセル様の愛人になったという噂が立つ心配をしてくれているのね。
まだ、侯爵令嬢という目でも見ているだろうから。
でも、私のために危険を冒そうとしている彼を放ってはおけない。一番近くで守りたい。
「では、今夜からおいで。ナタリー」
「承知いたしました」
不服そうなイグニスを横目で見ながら部屋を出た。
♠
「おいで、ナタリー」
もう婚約者ではないからこそ、まるで恋人のように振る舞う。そういう皮肉っぽいことが大好きな王子様だ。
手を広げるミセル様の隣に腰かける。
「では遠慮なく」
「綺麗な髪だね。燃えるような赤だ、すごく素敵だよ」
「ありがとうございます」
恋人のように髪に触れ、彼が耳元でそっと囁いた。
「イグニスの希望で、可能な限り天井裏の警備はあいつが担当することになったよ。任務で抜けることもたまにはあるけどね」
「あ……りがとうございます」
「自然死に見せかける毒薬も手に入れた。しばらく僕から離れるな。父上の了解を得る算段もついている」
そういうことか……。
ミセル様の護衛は精鋭が集まっている。貴族とはレベルが違う。私は彼を守る。そして、彼の側にいれば私もまたより安全になる。
ミセル様のご両親の仲はよくない。お父様には愛人がいる。そのあたりを利用して画策したのかもしれない。
私のために。
私が殺されないために。
私の言葉だけを信じて。
護るつもりだったのに……私はミセル様に守られていたんだ。守りたいと思ってもらえたんだ。
「わ、たし……」
「どうしたの、涙ぐんで」
「ループするのは辛かったんです。繰り返すのは辛かった」
「うん」
彼のためなら――。
「でも、ミセル様のためなら何度でも死ねます。私ならやり直しがきく。いくらでも盾にしてください。どれだけでも死にます。何百回死んでも、私はあなたの盾になります」
「君は可愛いな。すごく可愛いよ」
彼が私を抱きしめた。
温かい。
「冷たくなるなよ、これは命令だ」
死ぬなよって意味ね。
死なないでと思ってもらえる。
「はい。ご命令とあらば」
「ああ、頼んだよ」
彼の手はやさしい。
愛情を感じる。
やらしさは感じない。
可哀想な人だ。
この人が信用できる相手は、きっとものすごく少ない。私と同じだ。
「それじゃ、寝よう。ついでに僕の思い出話でも聞いてくれ」
「はい。私のご主人様」
絶対に切れない絆が、ミセル様との間にある。この人と婚約だなんてやっぱり薄ら寒い。破棄してもらって正解だった。
恋なんてあやふやなものなんて、私たちの間には介在させたくない。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢はおねぇ執事の溺愛に気付かない
As-me.com
恋愛
完結しました。
自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと気付いたセリィナは悪役令嬢の悲惨なエンディングを思い出し、絶望して人間不信に陥った。
そんな中で、家族すらも信じられなくなっていたセリィナが唯一信じられるのは専属執事のライルだけだった。
ゲームには存在しないはずのライルは“おねぇ”だけど優しくて強くて……いつしかセリィナの特別な人になるのだった。
そしてセリィナは、いつしかライルに振り向いて欲しいと想いを募らせるようになるのだが……。
周りから見れば一目瞭然でも、セリィナだけが気付かないのである。
※こちらは「悪役令嬢とおねぇ執事」のリメイク版になります。基本の話はほとんど同じですが、所々変える予定です。
こちらが完結したら前の作品は消すかもしれませんのでご注意下さい。
ゆっくり亀更新です。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?
ぽんぽこ狸
恋愛
仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。
彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。
その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。
混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!
原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!
ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。
完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる