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28.夜
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結婚して初めての夜――、私の頭はグワングワンしている。気持ち悪くはないけど、世界が回っている。
あのあと――、今度は前に行った酒場で仲間内と皆で飲んでいた。ミセル様とフレディー様は王宮へ戻ったものの、他のメンバーと特に仲のいい護衛仲間で私たちの結婚を肴にドンチャカしていた。
前世でのリア充っぽい人たちになった気分だわ……。
「ナタリー、すみません。せっかく結婚したのにどこにも行けず……」
「興味ないわ。ここにいたいから別にいいわ」
フレディーたちが王宮入りしてから日が浅い。使用人たちもバタバタしているし、あまり王宮を留守にしたくはない。
「任務とセットでなら観光もできなくはないですが」
血塗られた新婚旅行ね。
「後始末を人任せにするのも報告を後回しにするのも嫌」
「ですよねー……」
私よりも恋とか愛に憧れがあるのかしら。
私はあまり特別な何かはしたくない。今で十分幸せだ。楽しい思い出はあまり増やしたくない。失った時に辛い。……もうループはしないでしょうけど。
「イグニスは、私にこうしてほしいとかないの? そういえばいつも希望を叶えてもらうばかりな気がするわ」
「そうですね……ナタリーが嫌でなければですが、前の世界でのあなたのことが知りたいです」
「前の世界? 前話したような……あ!」
話したのは前のループの時だ。
「ナタリー……、もしかして前の私に話したんですか?」
こわ!
顔がこわ!
この人、前の自分には結構嫉妬するのよね。そういえば、もらったペンデュラムのデザインが前と違うのはなんでだろうとふと呟いたら「渡そうと思った時に気づいたんですよ。きっと前のループの時も渡したのだろうなと。今私があげたいと思ったということは前の私もあげたかったに違いないんです。で、絶対に違うものを選んでみせると意気込んで考えました」――と。
そうだった。色々話した気になっていたけど、前の彼にだ……。
「そうですよね。あなたは最初に私と手合わせをした日から同じ部屋で寝たがっていた。へー……、自分の思い出話までしたんですね、知らない私に。最後にキスするくらいですもんね」
だから怖いし。
そこに私の意志はなかったし。
「話してください。前の私に話したよりも詳細に。取るに足らないことも全て。全部です」
――私は結婚初夜、色っぽいことも何もなく、酔っ払いながら詰問されることになった。
♠
「……なるほど、やっと分かりましたよ。ミセル様に強い忠誠を誓っている理由が」
「え。なんで前世の話を聞いて、それが分かるのよ」
さっきまで寝たかったはずなのに、今はそんなに眠くない。だるいけど起きていられる。
「その話を聞いた前の私は、今のようにどうして貴族なのにそんなにミセル様に忠誠を誓えるのかなんて、聞かなかったでしょう」
「……そうね」
「理由が明らかだからですよ」
「それはなんでなのよ」
前世となんか関係があるわけ?
「他の護衛と同じですよ。親に売られるなりなんなりで誰にも必要とされなかった人たちが集まっています」
「……ええ」
「仲間の死をたくさん見て自分も魔に浸かり荒んでいる。そうして生き残った人間のごく一部がここへ辿り着き、ご主人様に初めて必要とされ、褒められる。唯一の拠り所になるんです」
「……ああ」
護衛は皆、妄信的だ。
そんなプロセスがあるからなのね。
「私にはそんな凄惨な過去はないわよ」
「前世でも自ら死を選んだのでしょう。その瞬間の記憶はないようですが、あなたは死のうと思う環境にあった」
一人では無理だったはず。
漠然とした「死にたい」が誘われて形になっただけで、ここの護衛のような酷い過去を持ち合わせてはいなかった。今思えば……とんだ甘ちゃんね。
「……でも、食うに困るわけでもなかったし、恵まれた環境で――」
「そしてこの世界で、あなたは何度も死んだ。自覚はなくとも、相当な精神的苦痛を受けていますよ。何度も何度も終わりの見えない死を迎える。普通なら発狂します」
「…………」
確かに発狂ものかもしれない。すごく辛かった。
「死を迎えるたびに、白い世界で私の知らない私からタロットカードのアドバイスをもらったんでしょう」
その話は前にした。
「……ええ。役に立たないアドバイスだったわ」
「それがわずかな支えになっていたかもしれません。自分以外に全てを知っている相手がいる、と」
「ああ……」
それはあったかもしれない。
死んだすぐあとに、反応はなくても文句を言える相手がいるのは……。
「でも、それだけでは足りない。あなたは、ループしてもいいと思える強い動機を求めていた。疲弊しきった精神が、何度死んでもいいと思える理由を求めていたんですよ」
「…………」
「ミセル様があなたを必要とするほど、あなたもミセル様を必要とする。ループが終わっても、それは変わらない」
「どうして……こんなにミセル様のために生きようって思うのかなとは自分でも不思議だったの」
「生きるためですよ。何度も迎えた死によって『この人のために何度も死ねる』という相手を必要としていたんです。誰かに大切にされた記憶が前世にあったのなら、今ほどではなかったでしょうけど」
「そう……」
忠誠ってなんだろう。理屈で説明されると、やけに陳腐に感じる。
「私には無理です。そんな相手にはなれません。あなたのご主人様ではありませんから。あなたはもう、自分の主を決めてしまった」
「……そうね。あの方のために生きる。それが絶対になっているわ」
でも……甘えたいのも抱きしめてほしいのも、イグニスだけだ。
「ねぇ、イグニスはどうして私のことが好きなの? そんなきっかけ、あったの?」
「ナタリーは、初日から私と同じ部屋で寝起きしたがっていました」
「ま、まぁ……」
「私と鍛錬を行っていたのも、少し刃を交えれば分かります」
「そうね」
「私は人と浅い関係しか築かないのに、麗しい侯爵令嬢様と明らかに何かあったと分かるんですよ、強い興味を持つに決まっています」
「えー……」
きっかけはそんなところなの。
「綺麗で可愛くて一生懸命なナタリーが私を上司と慕ってくれる。同じベッドで寝たいと思ってくれる。簡単に落ちますよ」
「……なにそれ」
「単純な男なんですよ、私は。だから猛烈に嫉妬している。あなたと恋を育んだ前の私に。何をどうやってあなたをそこまで取り込んだんですか。最初から出会いたかった、今のあなたに。全部見たかったです」
恋を育んだ……のかな。確かに、ときめいていた。正直、私にとっては同じ人だから混同しているけど、イグニスにとっては知らない自分なのよね。
「恋なんて初めてなんですよ。ゼロから始めたかったです。最初から好かれているなんて、嬉しいですけど腹が立ちます」
すねている。
……可愛い。
「私だって聞きたいわよ。どうしてキスしたのって。私のことが好きだったのって。いつからだったのよって聞きたいわよ」
「お互い様とは思えませんね。分からなくてもあなたは見ていたはずだ。ゼロからの私たちの関係が深まっていくのを」
「うーん……」
「で、あなたは私のどこが好きなんですか。きっかけはどうせ前の私ですよね」
「えー……」
まさか同じことを聞かれるとは。どうしよう。これってものが思い浮かばない。
どうして私はイグニスが好きなの?
ミセル様のことはなんとなく分かった。何度死んでも護りたい人が私には必要だった。
イグニスのことは?
「えっと、えっと……」
「今、前の私との思い出が頭の中を駆け巡ってません?」
「……嫉妬深いわね」
「結婚しましたから。遠慮はしません」
今まで遠慮していたの。
なんで好きなのかな。強いし、たまに可愛いし私のこと好いてくれるし……どれもパッとしない理由だ。きっかけ……きっかけ……きっかけとなるとやっぱり前のループの彼に……。
「もういいです。今のあなたは私の腕の中にある」
「あ、あのね。ちゃんと好きなのよ」
「分かりました」
「ほんと、ほんとなのよ」
「はいはい」
「拗ねないでよ」
結婚初夜だけど何もしない。
そんな日もあってもいいかなと思いながら、彼の腕の中でいつの間にか眠っていた。
「愛しています」
まどろみの中で、イグニスの声が聞こえた気がした。
あのあと――、今度は前に行った酒場で仲間内と皆で飲んでいた。ミセル様とフレディー様は王宮へ戻ったものの、他のメンバーと特に仲のいい護衛仲間で私たちの結婚を肴にドンチャカしていた。
前世でのリア充っぽい人たちになった気分だわ……。
「ナタリー、すみません。せっかく結婚したのにどこにも行けず……」
「興味ないわ。ここにいたいから別にいいわ」
フレディーたちが王宮入りしてから日が浅い。使用人たちもバタバタしているし、あまり王宮を留守にしたくはない。
「任務とセットでなら観光もできなくはないですが」
血塗られた新婚旅行ね。
「後始末を人任せにするのも報告を後回しにするのも嫌」
「ですよねー……」
私よりも恋とか愛に憧れがあるのかしら。
私はあまり特別な何かはしたくない。今で十分幸せだ。楽しい思い出はあまり増やしたくない。失った時に辛い。……もうループはしないでしょうけど。
「イグニスは、私にこうしてほしいとかないの? そういえばいつも希望を叶えてもらうばかりな気がするわ」
「そうですね……ナタリーが嫌でなければですが、前の世界でのあなたのことが知りたいです」
「前の世界? 前話したような……あ!」
話したのは前のループの時だ。
「ナタリー……、もしかして前の私に話したんですか?」
こわ!
顔がこわ!
この人、前の自分には結構嫉妬するのよね。そういえば、もらったペンデュラムのデザインが前と違うのはなんでだろうとふと呟いたら「渡そうと思った時に気づいたんですよ。きっと前のループの時も渡したのだろうなと。今私があげたいと思ったということは前の私もあげたかったに違いないんです。で、絶対に違うものを選んでみせると意気込んで考えました」――と。
そうだった。色々話した気になっていたけど、前の彼にだ……。
「そうですよね。あなたは最初に私と手合わせをした日から同じ部屋で寝たがっていた。へー……、自分の思い出話までしたんですね、知らない私に。最後にキスするくらいですもんね」
だから怖いし。
そこに私の意志はなかったし。
「話してください。前の私に話したよりも詳細に。取るに足らないことも全て。全部です」
――私は結婚初夜、色っぽいことも何もなく、酔っ払いながら詰問されることになった。
♠
「……なるほど、やっと分かりましたよ。ミセル様に強い忠誠を誓っている理由が」
「え。なんで前世の話を聞いて、それが分かるのよ」
さっきまで寝たかったはずなのに、今はそんなに眠くない。だるいけど起きていられる。
「その話を聞いた前の私は、今のようにどうして貴族なのにそんなにミセル様に忠誠を誓えるのかなんて、聞かなかったでしょう」
「……そうね」
「理由が明らかだからですよ」
「それはなんでなのよ」
前世となんか関係があるわけ?
「他の護衛と同じですよ。親に売られるなりなんなりで誰にも必要とされなかった人たちが集まっています」
「……ええ」
「仲間の死をたくさん見て自分も魔に浸かり荒んでいる。そうして生き残った人間のごく一部がここへ辿り着き、ご主人様に初めて必要とされ、褒められる。唯一の拠り所になるんです」
「……ああ」
護衛は皆、妄信的だ。
そんなプロセスがあるからなのね。
「私にはそんな凄惨な過去はないわよ」
「前世でも自ら死を選んだのでしょう。その瞬間の記憶はないようですが、あなたは死のうと思う環境にあった」
一人では無理だったはず。
漠然とした「死にたい」が誘われて形になっただけで、ここの護衛のような酷い過去を持ち合わせてはいなかった。今思えば……とんだ甘ちゃんね。
「……でも、食うに困るわけでもなかったし、恵まれた環境で――」
「そしてこの世界で、あなたは何度も死んだ。自覚はなくとも、相当な精神的苦痛を受けていますよ。何度も何度も終わりの見えない死を迎える。普通なら発狂します」
「…………」
確かに発狂ものかもしれない。すごく辛かった。
「死を迎えるたびに、白い世界で私の知らない私からタロットカードのアドバイスをもらったんでしょう」
その話は前にした。
「……ええ。役に立たないアドバイスだったわ」
「それがわずかな支えになっていたかもしれません。自分以外に全てを知っている相手がいる、と」
「ああ……」
それはあったかもしれない。
死んだすぐあとに、反応はなくても文句を言える相手がいるのは……。
「でも、それだけでは足りない。あなたは、ループしてもいいと思える強い動機を求めていた。疲弊しきった精神が、何度死んでもいいと思える理由を求めていたんですよ」
「…………」
「ミセル様があなたを必要とするほど、あなたもミセル様を必要とする。ループが終わっても、それは変わらない」
「どうして……こんなにミセル様のために生きようって思うのかなとは自分でも不思議だったの」
「生きるためですよ。何度も迎えた死によって『この人のために何度も死ねる』という相手を必要としていたんです。誰かに大切にされた記憶が前世にあったのなら、今ほどではなかったでしょうけど」
「そう……」
忠誠ってなんだろう。理屈で説明されると、やけに陳腐に感じる。
「私には無理です。そんな相手にはなれません。あなたのご主人様ではありませんから。あなたはもう、自分の主を決めてしまった」
「……そうね。あの方のために生きる。それが絶対になっているわ」
でも……甘えたいのも抱きしめてほしいのも、イグニスだけだ。
「ねぇ、イグニスはどうして私のことが好きなの? そんなきっかけ、あったの?」
「ナタリーは、初日から私と同じ部屋で寝起きしたがっていました」
「ま、まぁ……」
「私と鍛錬を行っていたのも、少し刃を交えれば分かります」
「そうね」
「私は人と浅い関係しか築かないのに、麗しい侯爵令嬢様と明らかに何かあったと分かるんですよ、強い興味を持つに決まっています」
「えー……」
きっかけはそんなところなの。
「綺麗で可愛くて一生懸命なナタリーが私を上司と慕ってくれる。同じベッドで寝たいと思ってくれる。簡単に落ちますよ」
「……なにそれ」
「単純な男なんですよ、私は。だから猛烈に嫉妬している。あなたと恋を育んだ前の私に。何をどうやってあなたをそこまで取り込んだんですか。最初から出会いたかった、今のあなたに。全部見たかったです」
恋を育んだ……のかな。確かに、ときめいていた。正直、私にとっては同じ人だから混同しているけど、イグニスにとっては知らない自分なのよね。
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すねている。
……可愛い。
「私だって聞きたいわよ。どうしてキスしたのって。私のことが好きだったのって。いつからだったのよって聞きたいわよ」
「お互い様とは思えませんね。分からなくてもあなたは見ていたはずだ。ゼロからの私たちの関係が深まっていくのを」
「うーん……」
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「あ、あのね。ちゃんと好きなのよ」
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「はいはい」
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