愛して欲しいと言えたなら

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心の時間

心の時間・・・その20

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雪子の家の窓から見える、Xmasから2日ほど降り続いていた雪が積もっていた庭も、
今日は、冬にしては珍しく暖かかったので、1日でほとんど消えてしまっていた。

「雪子、今年も正月は実家で過ごそうと思うんだけどいいかな?」

「どうしたんですか?いつもはそんなことを訊かないのに?」

「いや、なんか最近メールとかしてるみたいだし、誰か新しく友達とか出来たのかな?って思ってさ」

「ご存知だったんですか?」

「いや、別に、雪子のパソコンを覗いて見たわけじゃないよ」

「ええ。実は、裕子に紹介されてメル友になった人がいるんです」

「裕子さんに・・・?」

「ええ。面白い女の人だからメル友になってみない?って、誘われたんです」

「女の人・・・?」

「ええ、そうですよ」

祐一は、雪子が最近になって毎晩のようにメールのやり取りをするようになったのを、
少し気になっていたので、何気なく、それとは悟られないように訊いたつもりだったのだが。
ふいに、「女の人?」と訊き返してしまったのが少しまずかったかなと思ったらしく、
テーブルの上に置いてある新聞を開いて読むふりをするのだった。

とはいえ、気にならないといえば、それは嘘になる。
最近になってメールをするようになった妻である雪子を見ていると、
メールをするようになってから、急に明るくなったというか、毎日ソワソワしているというか。

かといって、別に、今までの雪子が暗かったというわけではない。
いつもの彼女と、別にどこも変わった様子はないのだが・・・。
それでも、なんとなくというか、どことなくというか・・・少し違うように感じていた。

そのため、もしかしたら、今流行りの出会い系か何かで男のメル友でも出来たのでは?
と、考えてなどないとは否定が出来ない、そんな思いがあったからだろうか?
別に今、訊かなくてもいいようなことなのに、何の気なしに訊いてしまったのかもしれない。
祐一は、自分が雪子のことを疑っていたと思わなかっただろうか?と、少し心配になっていた。

「そういえば、雪子は今年も実家に帰らなくてもいいのかい?」

「ええ、大丈夫ですよ」

「そうか。それなら、30日から会社の方は休みになるから31日に出かけようか?」

「あっ、はい。分かりました」

「子供たちは今年も家で留守番してるつもりかな?」

「たぶん、そうだと思います」

「そうか。まぁ~、いつまでも子供ってわけでもないから仕方ないか?」

そう言うと、祐一は、またテーブルの上の新聞を読み始めた。

「それじゃ、私は、そろそろ寝ますね」

「今夜は、メル友とはメールとかはしないのかい?」

「ええ、毎晩ですと寝不足になってしまいますので」

雪子は、そう言ってリビングをあとにした。
2階に上がって寝室のベッドに横になると、スマホのメールを開いてみた。

「ふふっ。裕子からメールがきてる」

そう言えば、裕子は、お正月には実家に帰るって言ってたんだっけ?

「ふーちゃんと私が結婚してたら・・・?」・・・ふふっ。
そしたら、ふーちゃんは何て言うのかな?きっと、ふーちゃんのことだから、
何をおいても、ちゃんと実家に帰らなきゃダメだって言うんだろうな?

そう言えば、ふーちゃん、いつも言ってたっけ?
毎日ちゃんと簡単でもいいから化粧はしないとダメだって・・・。
裕子はふーちゃんともう一度・・・。とかって言ってたけど。

私は、全然、そんな気にはならないけどな~。
ただ、懐かしいな~って、思うくらいかな~?
今となっては、みんな楽しい思い出・・・。私は、そんな風にしか思えないけどな~。

そんなことを思いながら、雪子は裕子からのメールを開いてみた。
「ねぇ、雪子。私さ、お正月に実家に帰った時に、あの人に会ってみようかなって思うんだけどいいかな?」
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