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戻らない想い
戻らない想い・・・その1
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いつものように、ぬいぐるみたちに話しかけながらお部屋を掃除していると、
白っぽい軽自動車が、国道から夏樹の家の方に入ってくるのが見えた。
「あら・・・?見たことない車だけど誰かしらね?あんた知らない?」
あんた知らない?と訊かれても・・・
クマのぬいぐるみの立場としては、何とも答えようがないのではないだろうか?
「でも、もう6月だから衣替えの季節なのよね~。あんたたちは衣替えとかしないの?」
だから・・・しないの?と訊かれても、答えようがないのがぬいぐるみの立場ではないだろうか?
とはいえ、もしかしたら夏樹にはぬいぐるみの声が聞こえているのかもしれない。
もし、知らない人が見たら、普通にぬいぐるみたちと会話をしているように見えてしまうのだろう。
そんな錯覚をおこしたとしても不思議でないほどに、普通の会話が成り立っているのである。
「あら・・・?やっぱり、ここの家に来たみたいね?」
庭の広場・・・いや、この場合は駐車場が正解なのだろうが、どう見ても庭である。
その庭の広場に入ってきた軽自動車は、夏樹が止めている4WDのすぐ隣に止めた。
運転席側のドアが開いて一人の女性が降りてきた。
どうやら一人で来たらしいその女性は、年のころは40代後半くらいだろうか?
若作りをしているようには見えないのだが、着ている洋服は今年流行りらしく、白に何かの模様が入った長めのスカートに、白と青のボーダー柄のチュニックが初夏を感じさせている。
長めの髪を後ろで束ねているその女性が、縁側にいる夏樹に気がついたらしく軽く会釈をした。
んん・・・?見たことがない人みたいだけど誰かしら?
大体、あたしのところに来る人って決まってるし、知らない人が来ることなんて珍しいわね。
その女性は、縁側でタオル片手にお掃除をしている夏樹の方へ近づいてくると、また軽く会釈をした。
「こんにちは・・・」
「あら・・・こんにちは!」
「あの~・・・こちらが夏樹さんという方のお住まいでしょうか?」
「ええ・・・」
「それで・・・今日は夏樹さんは御在宅でしょうか?」
「ええ、いるわよ・・・」
「あの・・・夏樹さんを呼んで頂きたいんですけど・・・」
「それで、あなたはどちらさん・・・?」
「あっ、はい。直美といいます・・・」
「その直美さんは、何か、ご用かしら?」
「あっ、はい・・・。ちょっと夏樹さんにお話がありまして・・・」
「お話し・・・?何かの勧誘かしら?」
「いえ・・・そういうんじゃないんですけど・・・」
「ふ~ん・・・。それじゃ、どんなお話しなのかしら?」
「あの、もしかして、夏樹さんの・・・」
「ん・・・?あたし・・・?」
「はい、お知り合いか何かですか?」
「そう言うあんたはお知り合いなの・・・?」
「いえ・・・そういうわけではないんですけど・・・」
「あんた変わってるわね?お知り合いでもないのにここに来たの?」
「ええ・・・まあ・・・それで・・・あの・・・夏樹さんは、今、どちらに?」
「とりあえずそこに座っててくれる?何か、飲み物を持ってくるから」
「あっ、はい・・・」
縁側のすぐ前の方に、木のテーブルと椅子が2個ずつ向かい合わせに置いてある。
直美が、その片方の椅子に座っていると、
さっきの女性がコーヒーカップをのせた木目模様のトレーを持って縁側から出てきた。
その女性は、椅子に座っている直美の前にコーヒーカップを置くと、
反対側の方へもコーヒーカップを置いてからその女性も椅子に腰掛けた。
「あの・・・」
「あら・・・?コーヒーはお嫌いだったかしら?」
「いえ、あの・・・そうではなくて・・・」
「お砂糖とミルクは適当に入れてね」
「あっ、はい・・・それで・・・あの・・・」
「ん・・・?どうしたの・・・?」
「ですから、あの・・・さっきお尋ねしました夏樹さんは・・・?」
「あい・・・?んなの、あんたの目の前にいるじゃないのよ!」
「えっ・・・?」
夏樹の言葉に思わず驚いた直美は、目の前の椅子に腰掛けた女性の顔を覗き込むように見返していた。
白っぽい軽自動車が、国道から夏樹の家の方に入ってくるのが見えた。
「あら・・・?見たことない車だけど誰かしらね?あんた知らない?」
あんた知らない?と訊かれても・・・
クマのぬいぐるみの立場としては、何とも答えようがないのではないだろうか?
「でも、もう6月だから衣替えの季節なのよね~。あんたたちは衣替えとかしないの?」
だから・・・しないの?と訊かれても、答えようがないのがぬいぐるみの立場ではないだろうか?
とはいえ、もしかしたら夏樹にはぬいぐるみの声が聞こえているのかもしれない。
もし、知らない人が見たら、普通にぬいぐるみたちと会話をしているように見えてしまうのだろう。
そんな錯覚をおこしたとしても不思議でないほどに、普通の会話が成り立っているのである。
「あら・・・?やっぱり、ここの家に来たみたいね?」
庭の広場・・・いや、この場合は駐車場が正解なのだろうが、どう見ても庭である。
その庭の広場に入ってきた軽自動車は、夏樹が止めている4WDのすぐ隣に止めた。
運転席側のドアが開いて一人の女性が降りてきた。
どうやら一人で来たらしいその女性は、年のころは40代後半くらいだろうか?
若作りをしているようには見えないのだが、着ている洋服は今年流行りらしく、白に何かの模様が入った長めのスカートに、白と青のボーダー柄のチュニックが初夏を感じさせている。
長めの髪を後ろで束ねているその女性が、縁側にいる夏樹に気がついたらしく軽く会釈をした。
んん・・・?見たことがない人みたいだけど誰かしら?
大体、あたしのところに来る人って決まってるし、知らない人が来ることなんて珍しいわね。
その女性は、縁側でタオル片手にお掃除をしている夏樹の方へ近づいてくると、また軽く会釈をした。
「こんにちは・・・」
「あら・・・こんにちは!」
「あの~・・・こちらが夏樹さんという方のお住まいでしょうか?」
「ええ・・・」
「それで・・・今日は夏樹さんは御在宅でしょうか?」
「ええ、いるわよ・・・」
「あの・・・夏樹さんを呼んで頂きたいんですけど・・・」
「それで、あなたはどちらさん・・・?」
「あっ、はい。直美といいます・・・」
「その直美さんは、何か、ご用かしら?」
「あっ、はい・・・。ちょっと夏樹さんにお話がありまして・・・」
「お話し・・・?何かの勧誘かしら?」
「いえ・・・そういうんじゃないんですけど・・・」
「ふ~ん・・・。それじゃ、どんなお話しなのかしら?」
「あの、もしかして、夏樹さんの・・・」
「ん・・・?あたし・・・?」
「はい、お知り合いか何かですか?」
「そう言うあんたはお知り合いなの・・・?」
「いえ・・・そういうわけではないんですけど・・・」
「あんた変わってるわね?お知り合いでもないのにここに来たの?」
「ええ・・・まあ・・・それで・・・あの・・・夏樹さんは、今、どちらに?」
「とりあえずそこに座っててくれる?何か、飲み物を持ってくるから」
「あっ、はい・・・」
縁側のすぐ前の方に、木のテーブルと椅子が2個ずつ向かい合わせに置いてある。
直美が、その片方の椅子に座っていると、
さっきの女性がコーヒーカップをのせた木目模様のトレーを持って縁側から出てきた。
その女性は、椅子に座っている直美の前にコーヒーカップを置くと、
反対側の方へもコーヒーカップを置いてからその女性も椅子に腰掛けた。
「あの・・・」
「あら・・・?コーヒーはお嫌いだったかしら?」
「いえ、あの・・・そうではなくて・・・」
「お砂糖とミルクは適当に入れてね」
「あっ、はい・・・それで・・・あの・・・」
「ん・・・?どうしたの・・・?」
「ですから、あの・・・さっきお尋ねしました夏樹さんは・・・?」
「あい・・・?んなの、あんたの目の前にいるじゃないのよ!」
「えっ・・・?」
夏樹の言葉に思わず驚いた直美は、目の前の椅子に腰掛けた女性の顔を覗き込むように見返していた。
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