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傷つけたい
傷つけたい・・・その19
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裕子は、飲み終えたミルクティーの代わりに、2杯目はコーヒーを注文してみた。
雪子との電話会談は、口にした言葉に記憶がない雪子に何を訊いても無理だと思い、
どこにでもあるような普通の会話で、少しの時間を使うだけで通話が終わった。
でも、夏樹さんとの破局の原因が、雪子のお父さんだったなんて。初めて聞いたわ。
とはいっても、雪子本人から聞かされても、まだ、信じられないんだけど本当なのかしら?
二杯目のコーヒーに、とはいっても、一杯目はミルクティーなのだが、
とりあえず、テーブルに置かれたコーヒーに砂糖とミルクを入れているとスマホの着信音が鳴った。
あら?愛奈ちゃんからだわ。どうしたのかしら?
まさか・・・?と、思うほどではないのだが、
それでも、少しの不安を感じながら、裕子は通話ボタンを押した。
「もしもし、裕子おばさんですか?」
う~ん・・・。おばさんって言われると、急に、現実の世界に引き戻された感じがしてしまうわ。
「あら、愛奈ちゃん。どうしたの?」
「うん。ちょっと、裕子おばさんに訊きたい事があって電話してみたんですけど」
う~ん・・・。おばさんって、2度も言わなくてもいいと思うんだけど・・・。
この分だと、間違いなく3度目もあるわね。
「私に、訊きたい事・・・?何かしら、訊きたい事って?」
もしかして、雪子が行方不明だとか、なんて言わないわよね?
「あの・・・うちのお母さんのお友達って知ってます?」
「雪子の友達・・・?どうして?」
「もしかしたら、裕子おばさんは、お母さんのお友達とか知ってるのかなって?思ったんですけど」
「ええ。何人かは知ってるけど。でも、どうしたの、急に?」
「いえ、ちょっと気になったものですから」
愛奈ちゃんって、どこか雪子に雰囲気が似てる子なんだけど、
ちょっと、心配性なところがある子なのよね。
雪子の場合、物静かな大人しい感じで、どこか臆病なところはあるけど、心配性な性格じゃないし。
どちらかというと「どこ吹く風」みたいな、芸術家にありがちな自己中的な一面を持ってる子だから。
変なところで世間一般の常識が理解出来ないみたいな。雪子って、そんな感じなのよね。
でも、まあ。頭が良いところと、誰にでも優しいってところは、雪子によく似てるわね。
それと、可愛いところなんて、若い頃の雪子を見てるみたいだし。
女は父親に似るっていうけど、愛奈ちゃんが父親じゃなくて、雪子に似たのは本当に良かったって思ったわ。
かといって、父親があれだってわけじゃないけど。まあ、普通って感じ・・・という事で・・・。
「う~ん。でも、高校は、お互い違う高校だったから、雪子の高校の時の友達はよく知らないのよね」
「えっ・・・?そうだったんですか?私は、てっきり、高校も、お母さんと同じ高校だと思っていました」
「ふふっ。私はそんなに頭が良くなかったから。愛奈ちゃんのお母さんって、とっても頭が良かったのよ」
「でも、そう言ってくれるのは裕子おばさんだけですけど・・・」
「あら・・・。でも、ホントなのよ」
「でも、嬉しいものですね。お母さんの事を褒めてもらえると自分が褒められているみたいで」
「愛奈ちゃんは、お母さんの事が好きだったものね」
「はい。でも、過去形じゃなくて、今も、大好きですよ」
「そういえば、さっき、雪子の友達の事で、ちょっと気になる事があるとかって言ってたけど?」
「あっ・・・はい・・・」
「何か、あったの・・・?」
「いえ、別に何もないんですけど・・・」
何もない・・・?でも、気になる・・・?そして、ちょっと気になる・・・?
この場合の「ちょっと・・・」っていうのが、けっこう曲者なのよね・・・。
大きく気になる事があるなら、
それは、その、気になっている原因と正体が分かっているって事になるけど。
この「ちょっと・・」って言うのは、今も、愛奈ちゃんが言ってたように、
「なんでもない・・」でも、気になる、ちょっと・・・。ちょっとだけ・・・。
言い換えれば、雪子の何かに、愛奈ちゃんが「あれ・・・?」って、思ってしまうような、
まるで、スーパーでお買い物の最中に、幼い自分の子供の姿が見えなくなった時に、
母親が、あれ?どこに行ったのかしら?とかって、思うみたいな感じのちょっとした疑問・・・
疑問・・・疑問・・・ん?
ちょっと、待って?ちょっと、待ってよ・・・?。もしかして・・・。
「ねえ、愛奈ちゃん・・・?」
「はい・・・?」
「愛奈ちゃんは、今は、病院よね?」
「はい・・・。病院の待合室ですけど・・・あの・・・」
「それで・・・愛奈ちゃんのお母さんも病院にいるんでしょ?」
「いえ・・・それが1時間くらい前に、お友達に会いに行ってくるって言って出かけてしまいました」
それって・・・まさか、嘘でしょ・・・?
雪子との電話会談は、口にした言葉に記憶がない雪子に何を訊いても無理だと思い、
どこにでもあるような普通の会話で、少しの時間を使うだけで通話が終わった。
でも、夏樹さんとの破局の原因が、雪子のお父さんだったなんて。初めて聞いたわ。
とはいっても、雪子本人から聞かされても、まだ、信じられないんだけど本当なのかしら?
二杯目のコーヒーに、とはいっても、一杯目はミルクティーなのだが、
とりあえず、テーブルに置かれたコーヒーに砂糖とミルクを入れているとスマホの着信音が鳴った。
あら?愛奈ちゃんからだわ。どうしたのかしら?
まさか・・・?と、思うほどではないのだが、
それでも、少しの不安を感じながら、裕子は通話ボタンを押した。
「もしもし、裕子おばさんですか?」
う~ん・・・。おばさんって言われると、急に、現実の世界に引き戻された感じがしてしまうわ。
「あら、愛奈ちゃん。どうしたの?」
「うん。ちょっと、裕子おばさんに訊きたい事があって電話してみたんですけど」
う~ん・・・。おばさんって、2度も言わなくてもいいと思うんだけど・・・。
この分だと、間違いなく3度目もあるわね。
「私に、訊きたい事・・・?何かしら、訊きたい事って?」
もしかして、雪子が行方不明だとか、なんて言わないわよね?
「あの・・・うちのお母さんのお友達って知ってます?」
「雪子の友達・・・?どうして?」
「もしかしたら、裕子おばさんは、お母さんのお友達とか知ってるのかなって?思ったんですけど」
「ええ。何人かは知ってるけど。でも、どうしたの、急に?」
「いえ、ちょっと気になったものですから」
愛奈ちゃんって、どこか雪子に雰囲気が似てる子なんだけど、
ちょっと、心配性なところがある子なのよね。
雪子の場合、物静かな大人しい感じで、どこか臆病なところはあるけど、心配性な性格じゃないし。
どちらかというと「どこ吹く風」みたいな、芸術家にありがちな自己中的な一面を持ってる子だから。
変なところで世間一般の常識が理解出来ないみたいな。雪子って、そんな感じなのよね。
でも、まあ。頭が良いところと、誰にでも優しいってところは、雪子によく似てるわね。
それと、可愛いところなんて、若い頃の雪子を見てるみたいだし。
女は父親に似るっていうけど、愛奈ちゃんが父親じゃなくて、雪子に似たのは本当に良かったって思ったわ。
かといって、父親があれだってわけじゃないけど。まあ、普通って感じ・・・という事で・・・。
「う~ん。でも、高校は、お互い違う高校だったから、雪子の高校の時の友達はよく知らないのよね」
「えっ・・・?そうだったんですか?私は、てっきり、高校も、お母さんと同じ高校だと思っていました」
「ふふっ。私はそんなに頭が良くなかったから。愛奈ちゃんのお母さんって、とっても頭が良かったのよ」
「でも、そう言ってくれるのは裕子おばさんだけですけど・・・」
「あら・・・。でも、ホントなのよ」
「でも、嬉しいものですね。お母さんの事を褒めてもらえると自分が褒められているみたいで」
「愛奈ちゃんは、お母さんの事が好きだったものね」
「はい。でも、過去形じゃなくて、今も、大好きですよ」
「そういえば、さっき、雪子の友達の事で、ちょっと気になる事があるとかって言ってたけど?」
「あっ・・・はい・・・」
「何か、あったの・・・?」
「いえ、別に何もないんですけど・・・」
何もない・・・?でも、気になる・・・?そして、ちょっと気になる・・・?
この場合の「ちょっと・・・」っていうのが、けっこう曲者なのよね・・・。
大きく気になる事があるなら、
それは、その、気になっている原因と正体が分かっているって事になるけど。
この「ちょっと・・」って言うのは、今も、愛奈ちゃんが言ってたように、
「なんでもない・・」でも、気になる、ちょっと・・・。ちょっとだけ・・・。
言い換えれば、雪子の何かに、愛奈ちゃんが「あれ・・・?」って、思ってしまうような、
まるで、スーパーでお買い物の最中に、幼い自分の子供の姿が見えなくなった時に、
母親が、あれ?どこに行ったのかしら?とかって、思うみたいな感じのちょっとした疑問・・・
疑問・・・疑問・・・ん?
ちょっと、待って?ちょっと、待ってよ・・・?。もしかして・・・。
「ねえ、愛奈ちゃん・・・?」
「はい・・・?」
「愛奈ちゃんは、今は、病院よね?」
「はい・・・。病院の待合室ですけど・・・あの・・・」
「それで・・・愛奈ちゃんのお母さんも病院にいるんでしょ?」
「いえ・・・それが1時間くらい前に、お友達に会いに行ってくるって言って出かけてしまいました」
それって・・・まさか、嘘でしょ・・・?
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