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求めない願い
求めない願い・・・その8
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「ちょっと、裕子おばさん。笑い事じゃないですよ!」
「あははっ。だって、そんな事を言ったって!」
昨夜の雪子との会話を裕子に話して聞かせているのだが、
裕子としては、話を聞けば聞く程、どうしても笑いがあふれ出てしまうのである。
昨日の夜から降り出した雨は、今日になっても降り続けている。
初めのうちは、雪子がよく行く喫茶店で会っていたのだが、
最近では、市街地の外回りを走るバイパス沿いにあるファミリーレストランで待ち合わせては、
雪子の話を裕子に話して聞かせてる愛奈なのである。
「でも、普通だったら驚くとか、それはちょっと・とかって、慌てたりするもんじゃないですか?」
「驚くって、メル友の事?」
「そうですよ!私が、お母さんのメル友とお話してみたいなって言ったら(いいわよ)って、ありえないですよ!」
「愛奈ちゃんは、雪子のメル友とお話をしたいよりも、雪子の動揺を見たかったのね?」
「もちろんです。そのために、あれから、あの手この手で鉄壁の要塞攻略を試しているんですから」
「愛奈ちゃんって、けっこう、あきらめない性格なのね」
「へへっ・・・。それよりも不思議なのが、お母さんが一度も怒らない事の方ですよ」
「一度も・・・?」
「そう、ただの一度も・・・私が何を言っても怒らないし、それどころか嫌な顔一つしないんですよ」
「そうね。確かに、雪子が怒ったところなんて、私も一度も見た事がなかったかもしれないわね」
「裕子おばさんも?」
「そうよ。雪子って、もともと大人しい性格だし、いつものんびりっていうか、おっとりっていうか、そんな感じだったから」
「でも、不思議なんですよね?」
「不思議って、何が?」
「お母さんとお父さんですよ」
「喧嘩とかしないから?」
「喧嘩はまずとしても、ちょっとした言い合いとかしてるのを一度も見た事がないんですよ。おかしいと思いません?」
「一度も・・・?」
「でもね、それはそれで、まあ~そんなもんかな?と思えば、それはそれでまあいいんですけどね」
「まだ、何かあるの?」
「確かに、お母さんはお父さんに逆らう事はないですよ。ないですけどね、でもね」
「でも・・・な~に?」
「お父さんに逆らわない大人しすぎるお母さんが、ここ半年くらい前あたりから、いきなりの行動をするようになったんですよね!」
いきなりの行動・・・?
半年ほど前あたりから・・・?
「半年くらい前っていうと、今年の春頃からって事?」
「う~ん、正確に言えば去年の大晦日が、理由なき反抗の始まりだと思うんです」
去年の大晦日・・・?
あちゃ~・・・もろに夏樹さんだわ!
「理由なき反抗・・・?」
「そっ!理由なき反抗なんです。でもね、そんなお母さんを見てると思うんです」
「思うって、何を?」
「お父さんも私や翔太も、初めから、お母さんの視界には入っていなかったんじゃないかなって?」
「どうして・・・?旦那さんはまずとしても、愛奈ちゃんや翔太君は雪子の実の子供なのよ」
「むふふ・・・」
「ん・・・?何・・・?」
「どうして、お父さんはまずとしてなのかなって?」
あっ・・・しまった。
というか、何?それじゃ、今までの会話はそれを引き出すための布石だったの?
確かに雪子の言う通りだわ、愛奈ちゃんを甘く見てはいけないって・・・。
いやいや参ったわ!正直、ここまでとは思わなかったわ・・・う~ん。失敗。
「私ね、思うんです。お母さんって、お父さんと知り合う前にどんな恋をしていたのかなって?」
「どうして、そう思うの?」
「だって、あのお母さんですよ?あんなに大人しくて優しくて物静かなお母さんですよ?」
「う~ん・・・まあ、確かに言われてみればそうかも」
「否定しないんですね?」
あっ・・・ダメだわ・・・。
私ったら、完全に愛奈ちゃんの術中にハマってるのかも・・・。
「いいんですよ別に、それはそれで・・・。結局、私も、それ以上は入り込めなかったんですから」
「入り込めなかった・・・?」
「はい。結局、私も、お母さんのメル友とお話が出来なかったんです」
「出来なかったって、雪子のメル友に断られたの?」
「いえ、そうじゃなくて、私に、その勇気がなかったんです」
「その勇気って、メル友と話す?」
「はい、そうなんです」
「どうして?」
「何となくですけど、私がお母さんのメル友とお話をしてしまったら、お母さんがいなくなってしまうような、そんな気がしたんです」
「そうだったの。それでメル友と話す事をあきらめたのね」
「でもですよ・・・?」
「でも・・・何?」
「まさか、お母さんの恋愛の相手が女性だったなんて、ホントに今でも信じられないんです」
はい・・・?
愛奈ちゃんともあろう者が、どうして、そこを疑わないわけ?
「あははっ。だって、そんな事を言ったって!」
昨夜の雪子との会話を裕子に話して聞かせているのだが、
裕子としては、話を聞けば聞く程、どうしても笑いがあふれ出てしまうのである。
昨日の夜から降り出した雨は、今日になっても降り続けている。
初めのうちは、雪子がよく行く喫茶店で会っていたのだが、
最近では、市街地の外回りを走るバイパス沿いにあるファミリーレストランで待ち合わせては、
雪子の話を裕子に話して聞かせてる愛奈なのである。
「でも、普通だったら驚くとか、それはちょっと・とかって、慌てたりするもんじゃないですか?」
「驚くって、メル友の事?」
「そうですよ!私が、お母さんのメル友とお話してみたいなって言ったら(いいわよ)って、ありえないですよ!」
「愛奈ちゃんは、雪子のメル友とお話をしたいよりも、雪子の動揺を見たかったのね?」
「もちろんです。そのために、あれから、あの手この手で鉄壁の要塞攻略を試しているんですから」
「愛奈ちゃんって、けっこう、あきらめない性格なのね」
「へへっ・・・。それよりも不思議なのが、お母さんが一度も怒らない事の方ですよ」
「一度も・・・?」
「そう、ただの一度も・・・私が何を言っても怒らないし、それどころか嫌な顔一つしないんですよ」
「そうね。確かに、雪子が怒ったところなんて、私も一度も見た事がなかったかもしれないわね」
「裕子おばさんも?」
「そうよ。雪子って、もともと大人しい性格だし、いつものんびりっていうか、おっとりっていうか、そんな感じだったから」
「でも、不思議なんですよね?」
「不思議って、何が?」
「お母さんとお父さんですよ」
「喧嘩とかしないから?」
「喧嘩はまずとしても、ちょっとした言い合いとかしてるのを一度も見た事がないんですよ。おかしいと思いません?」
「一度も・・・?」
「でもね、それはそれで、まあ~そんなもんかな?と思えば、それはそれでまあいいんですけどね」
「まだ、何かあるの?」
「確かに、お母さんはお父さんに逆らう事はないですよ。ないですけどね、でもね」
「でも・・・な~に?」
「お父さんに逆らわない大人しすぎるお母さんが、ここ半年くらい前あたりから、いきなりの行動をするようになったんですよね!」
いきなりの行動・・・?
半年ほど前あたりから・・・?
「半年くらい前っていうと、今年の春頃からって事?」
「う~ん、正確に言えば去年の大晦日が、理由なき反抗の始まりだと思うんです」
去年の大晦日・・・?
あちゃ~・・・もろに夏樹さんだわ!
「理由なき反抗・・・?」
「そっ!理由なき反抗なんです。でもね、そんなお母さんを見てると思うんです」
「思うって、何を?」
「お父さんも私や翔太も、初めから、お母さんの視界には入っていなかったんじゃないかなって?」
「どうして・・・?旦那さんはまずとしても、愛奈ちゃんや翔太君は雪子の実の子供なのよ」
「むふふ・・・」
「ん・・・?何・・・?」
「どうして、お父さんはまずとしてなのかなって?」
あっ・・・しまった。
というか、何?それじゃ、今までの会話はそれを引き出すための布石だったの?
確かに雪子の言う通りだわ、愛奈ちゃんを甘く見てはいけないって・・・。
いやいや参ったわ!正直、ここまでとは思わなかったわ・・・う~ん。失敗。
「私ね、思うんです。お母さんって、お父さんと知り合う前にどんな恋をしていたのかなって?」
「どうして、そう思うの?」
「だって、あのお母さんですよ?あんなに大人しくて優しくて物静かなお母さんですよ?」
「う~ん・・・まあ、確かに言われてみればそうかも」
「否定しないんですね?」
あっ・・・ダメだわ・・・。
私ったら、完全に愛奈ちゃんの術中にハマってるのかも・・・。
「いいんですよ別に、それはそれで・・・。結局、私も、それ以上は入り込めなかったんですから」
「入り込めなかった・・・?」
「はい。結局、私も、お母さんのメル友とお話が出来なかったんです」
「出来なかったって、雪子のメル友に断られたの?」
「いえ、そうじゃなくて、私に、その勇気がなかったんです」
「その勇気って、メル友と話す?」
「はい、そうなんです」
「どうして?」
「何となくですけど、私がお母さんのメル友とお話をしてしまったら、お母さんがいなくなってしまうような、そんな気がしたんです」
「そうだったの。それでメル友と話す事をあきらめたのね」
「でもですよ・・・?」
「でも・・・何?」
「まさか、お母さんの恋愛の相手が女性だったなんて、ホントに今でも信じられないんです」
はい・・・?
愛奈ちゃんともあろう者が、どうして、そこを疑わないわけ?
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