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求めない願い
求めない願い・・・その15
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この辺りも、そろそろ紅葉の季節、例年よりも今年は少し遅い紅葉らしく、
森の中の動物園を包む紅葉も、緑の景色の中に包まれていた。
駐車場から見える景色を眺めていた京子が、動物園の出入り口にある受付の方へ視線を移すと、
見覚えのある人影が、京子の方に向かって手を振っている。
「どうしているの?」・・・と、少し驚きながら、京子はその人影の方へ歩いて行く。
「どうしているの?」・・・と、今度は言葉を声にする京子。
「やっぱり、来たのね!」
「だから、どうして、直美がここにいるの?」
動物園の入り口で京子に手を振っていたのは直美だった。・・・しかも、大きくである。
京子としては、こういう時の直美の仕草が少し恥ずかしく感じてしまうのだが、
直美にとっては、ごく普通の仕草であり、周りを気にしないところは今も昔も変わっていないらしい。
「とりあえず入ろうよ!」
「ええ・・まあ・・・いいけど・・・」
二人は受付でチケットを購入して園内へと入っていく。
「私ね、動物園は初めてなの」
「そうなの?」
「ここにあるのは知ってたんだけどね」
「そういえば直美って、動物とか好きだったの?」
「私の場合は、好きの前に怖いがきちゃうのよね!」
「でも、猫とかなら大丈夫なんでしょ?」
「う~ん・・・猫がギリギリセーフってとこかな?」
「それじゃ、犬は?」
「犬は怖いからダメ!」
「うそ?ホントに?今まで全然気がつかなかったわ」
「だって、話した事ないもん!」
「でも、いつも、うちの猫と遊んでたじゃない?」
「だから、猫まではセーフなのよ」
ここの動物園は、よその動物園にいるようなトラやライオンなどの大きな動物ではなく、
ウサギや、ヤギなどのような、大人しい動物たちしかいない動物園なので、
園内の遊歩道を、徒歩で歩きながらの散歩がてらといった感じである。
遊歩道をしばらく歩いていると、園内のちょうど真ん中あたりに小さなレストランが見えてきた。
直美は(せっかく来たんだから寄ってみようよ!)と、京子を誘ってレストランに入った。
中に入ると、窓際の方に何組かのテーブルと椅子が窓に沿って並んでいるくらいで、
どちらかというとレストランというよりも、お土産売り場といった感じである。
今の季節、というより、今日が今年最後の営業日、しかも平日という事もあってか、
店内には数人のお客さんがいるくらいで、二人が席に着くテーブルに迷う心配もなかった。
窓際の好きな席に座って、京子はコーヒーを、直美はココアを注文した。
「ふふっ、ほんと、直美って、ココアが好きね?」
「ふ~ん・・・子供みたいって言いたいんでしょ?」
「そんな事ないわよ。それより、どうして直美がここにいるの?」
京子は、自分が来るより先に動物園に来ていた直美がよほど不思議らしい。
直美は、京子の疑問を聞き流すようにバッグを開けて、中から何かを取り出て京子の前に置いた。
「これって・・・」
「可愛いね・・・」
「じゃなくて・・・どうして、これを直美が持ってるの?」
直美は、またまた京子の疑問には答えないで、今度はバッグの中からスマホを取り出すと、
何も言わずに、そっと、京子の前に置いた。
京子は、直美が置いたスマホの画面を見つめたまま、何も言わず呆れたように、ため息ひとつ。
京子が座るテーブルの上には、車内に吊るす可愛いヒコーキの飾り物。
そして、スマホの画面には・・・「30分の遅刻だ」・・・の、文字が映し出されていた。
森の中の動物園を包む紅葉も、緑の景色の中に包まれていた。
駐車場から見える景色を眺めていた京子が、動物園の出入り口にある受付の方へ視線を移すと、
見覚えのある人影が、京子の方に向かって手を振っている。
「どうしているの?」・・・と、少し驚きながら、京子はその人影の方へ歩いて行く。
「どうしているの?」・・・と、今度は言葉を声にする京子。
「やっぱり、来たのね!」
「だから、どうして、直美がここにいるの?」
動物園の入り口で京子に手を振っていたのは直美だった。・・・しかも、大きくである。
京子としては、こういう時の直美の仕草が少し恥ずかしく感じてしまうのだが、
直美にとっては、ごく普通の仕草であり、周りを気にしないところは今も昔も変わっていないらしい。
「とりあえず入ろうよ!」
「ええ・・まあ・・・いいけど・・・」
二人は受付でチケットを購入して園内へと入っていく。
「私ね、動物園は初めてなの」
「そうなの?」
「ここにあるのは知ってたんだけどね」
「そういえば直美って、動物とか好きだったの?」
「私の場合は、好きの前に怖いがきちゃうのよね!」
「でも、猫とかなら大丈夫なんでしょ?」
「う~ん・・・猫がギリギリセーフってとこかな?」
「それじゃ、犬は?」
「犬は怖いからダメ!」
「うそ?ホントに?今まで全然気がつかなかったわ」
「だって、話した事ないもん!」
「でも、いつも、うちの猫と遊んでたじゃない?」
「だから、猫まではセーフなのよ」
ここの動物園は、よその動物園にいるようなトラやライオンなどの大きな動物ではなく、
ウサギや、ヤギなどのような、大人しい動物たちしかいない動物園なので、
園内の遊歩道を、徒歩で歩きながらの散歩がてらといった感じである。
遊歩道をしばらく歩いていると、園内のちょうど真ん中あたりに小さなレストランが見えてきた。
直美は(せっかく来たんだから寄ってみようよ!)と、京子を誘ってレストランに入った。
中に入ると、窓際の方に何組かのテーブルと椅子が窓に沿って並んでいるくらいで、
どちらかというとレストランというよりも、お土産売り場といった感じである。
今の季節、というより、今日が今年最後の営業日、しかも平日という事もあってか、
店内には数人のお客さんがいるくらいで、二人が席に着くテーブルに迷う心配もなかった。
窓際の好きな席に座って、京子はコーヒーを、直美はココアを注文した。
「ふふっ、ほんと、直美って、ココアが好きね?」
「ふ~ん・・・子供みたいって言いたいんでしょ?」
「そんな事ないわよ。それより、どうして直美がここにいるの?」
京子は、自分が来るより先に動物園に来ていた直美がよほど不思議らしい。
直美は、京子の疑問を聞き流すようにバッグを開けて、中から何かを取り出て京子の前に置いた。
「これって・・・」
「可愛いね・・・」
「じゃなくて・・・どうして、これを直美が持ってるの?」
直美は、またまた京子の疑問には答えないで、今度はバッグの中からスマホを取り出すと、
何も言わずに、そっと、京子の前に置いた。
京子は、直美が置いたスマホの画面を見つめたまま、何も言わず呆れたように、ため息ひとつ。
京子が座るテーブルの上には、車内に吊るす可愛いヒコーキの飾り物。
そして、スマホの画面には・・・「30分の遅刻だ」・・・の、文字が映し出されていた。
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