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霞んでいく記憶
霞んでいく記憶・・・その18
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「・・・」・・・愛奈は、夏樹が始めて見せる心模様に返す言葉が思い浮かばなかった。
「あたしが冷たい人じゃないと雪子は心配になるの・・・愛奈ちゃんには分かるわね?この意味が」
「もし、お母さんが死んだら、夏樹さんも・・・」
「雪子の願いとあたしの願いはコインの裏表なの。表側からは決して裏側が見えないの。そして、それは裏側も同じなのよ。決して、交わる事のない願い・・・でもね、想いは表も裏も同じなの。表も裏も同じ一個のコインなのだから、っていうか、雪子って、ちょっとひどいと思わない?一人残されたあたしは、みんなから非難の集中攻撃が待ってるのよ、ううん、集中砲火だわ、きっと・・・や~ね~もう」
夏樹の言葉に、スマホの向こうで、泣き笑いしている愛奈の声が聞こえてきた。
「愛奈ちゃんは、お母さんの事になると、視点が、ぼやけちゃうみたいね?」
「えっ・・・?」
「雪子が死んだら?あたしも後を追って?じゃないのよ」
「違うんですか?」
「どこぞのワンパターンなドラマでもあるまいし、雪子が、そんなに単純なわけがないでしょ?」
「え===っ?私は、てっきり・・・」
「雪子はね、生きる方を選んだの・・・。愛奈ちゃんに、この想いの意味が分かるかしら?」
「生きる方・・・?」
「そうよ。そして、今、雪子は迷ってるの・・・どっちで生きるかで」
「どっちで?それは夏樹さんと生きるか、それとも、私たちと生きるかで迷ってるという事ですか?」
「ふふっ、まあ、ゆっくり考えてみるといいわ。でも、こうして愛奈ちゃんとお話が出来るなんてほんと夢みたいよ」
「えっ・・・?ど・ど・どうしてですか」
「ふふっ。そこで、どもるなんて!やっぱりあたしの可愛い愛奈ちゃんなんだわん!」
「いえ・・・あの・・・」
「そうだわ!愛奈ちゃんに、秘密のちょっと未来を教えてあげるわね!」
「秘密のちょっと未来・・・?」
「そうよ。これはまだ誰にも言ってないの、もちろん雪子にもね」
「お母さんにも?」
「そう、いつになるか分からないけどね?もう一か所購入する予定なの」
「もう一か所?」
「ええ、でも、中古物件にするか、それとも土地だけ買って建物を建てるかは、まだ、未定なんだけどね」
「それって、家を買うんですか?」
「家というよりアトリエね。どうしても欲しいの」
「どうしてもって、今のところではダメなのですか?」
「そう、最後のピースがそろわないから」
「最後のピース?」
「それでね、そのアトリエの名前はずっと前から決まってるのよ!」
「えっ?・・・もう名前が決まってるっていうのは?」
「でね、そのアトリエの名前はね、奈津美のアトリエっていうのよ」
「奈津美のアトリエ・・・?あの・・・その、奈津美という名前も、もしかして?」
「あたしが付けたかった名前かもって?」
「はい・・・違うのですか?」
「ふふっ、奈津美って言う名前はね、あたしじゃなくて、雪子が付けたかった名前なのよ」
「お母さんが・・・?」
「そうなのよ。でも、これは誰にも言っちゃダメよ。愛奈ちゃんとあたしだけの秘密にしましょうね」
「はっ・・はい・・・」
会話の中で、愛奈が、何かを訊きたがっているのが分かる夏樹は、
自分の方から、それに話を戻してあげる。
「訊きたいんでしょ?どうして、あたしが冷たい人じゃないとダメなのかを?」
「はい・・・普通は、冷たい人なら、お母さんがどうなろうと知らないふりをするんじゃないかなって?でも、夏樹さんも知らないふりを・・・あれ?えっと、そうじゃなくて・・・あれれ?」
「あははっ!いいのよ。ちょっと、ややこしいものね」
「はあ・・・」・・・ため息の中で、愛奈は少し恥ずかしそうに笑った。
「あたしが冷たい人じゃないと雪子は心配になるの・・・愛奈ちゃんには分かるわね?この意味が」
「もし、お母さんが死んだら、夏樹さんも・・・」
「雪子の願いとあたしの願いはコインの裏表なの。表側からは決して裏側が見えないの。そして、それは裏側も同じなのよ。決して、交わる事のない願い・・・でもね、想いは表も裏も同じなの。表も裏も同じ一個のコインなのだから、っていうか、雪子って、ちょっとひどいと思わない?一人残されたあたしは、みんなから非難の集中攻撃が待ってるのよ、ううん、集中砲火だわ、きっと・・・や~ね~もう」
夏樹の言葉に、スマホの向こうで、泣き笑いしている愛奈の声が聞こえてきた。
「愛奈ちゃんは、お母さんの事になると、視点が、ぼやけちゃうみたいね?」
「えっ・・・?」
「雪子が死んだら?あたしも後を追って?じゃないのよ」
「違うんですか?」
「どこぞのワンパターンなドラマでもあるまいし、雪子が、そんなに単純なわけがないでしょ?」
「え===っ?私は、てっきり・・・」
「雪子はね、生きる方を選んだの・・・。愛奈ちゃんに、この想いの意味が分かるかしら?」
「生きる方・・・?」
「そうよ。そして、今、雪子は迷ってるの・・・どっちで生きるかで」
「どっちで?それは夏樹さんと生きるか、それとも、私たちと生きるかで迷ってるという事ですか?」
「ふふっ、まあ、ゆっくり考えてみるといいわ。でも、こうして愛奈ちゃんとお話が出来るなんてほんと夢みたいよ」
「えっ・・・?ど・ど・どうしてですか」
「ふふっ。そこで、どもるなんて!やっぱりあたしの可愛い愛奈ちゃんなんだわん!」
「いえ・・・あの・・・」
「そうだわ!愛奈ちゃんに、秘密のちょっと未来を教えてあげるわね!」
「秘密のちょっと未来・・・?」
「そうよ。これはまだ誰にも言ってないの、もちろん雪子にもね」
「お母さんにも?」
「そう、いつになるか分からないけどね?もう一か所購入する予定なの」
「もう一か所?」
「ええ、でも、中古物件にするか、それとも土地だけ買って建物を建てるかは、まだ、未定なんだけどね」
「それって、家を買うんですか?」
「家というよりアトリエね。どうしても欲しいの」
「どうしてもって、今のところではダメなのですか?」
「そう、最後のピースがそろわないから」
「最後のピース?」
「それでね、そのアトリエの名前はずっと前から決まってるのよ!」
「えっ?・・・もう名前が決まってるっていうのは?」
「でね、そのアトリエの名前はね、奈津美のアトリエっていうのよ」
「奈津美のアトリエ・・・?あの・・・その、奈津美という名前も、もしかして?」
「あたしが付けたかった名前かもって?」
「はい・・・違うのですか?」
「ふふっ、奈津美って言う名前はね、あたしじゃなくて、雪子が付けたかった名前なのよ」
「お母さんが・・・?」
「そうなのよ。でも、これは誰にも言っちゃダメよ。愛奈ちゃんとあたしだけの秘密にしましょうね」
「はっ・・はい・・・」
会話の中で、愛奈が、何かを訊きたがっているのが分かる夏樹は、
自分の方から、それに話を戻してあげる。
「訊きたいんでしょ?どうして、あたしが冷たい人じゃないとダメなのかを?」
「はい・・・普通は、冷たい人なら、お母さんがどうなろうと知らないふりをするんじゃないかなって?でも、夏樹さんも知らないふりを・・・あれ?えっと、そうじゃなくて・・・あれれ?」
「あははっ!いいのよ。ちょっと、ややこしいものね」
「はあ・・・」・・・ため息の中で、愛奈は少し恥ずかしそうに笑った。
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