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消えていく未来
消えていく未来・・・その14
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深刻そうな表情でうつむき加減な京子をよそに、直美はバッグの中からスーパーで買って来た、
というより、いつも持ち歩いている直美専用の缶コーヒーを、もぞもぞと取り出していた。
「直美はいいわね?いつも楽天的でさ・・・」
「そうかな?」
「私も、見習いたいわ」
「そお?」
「私なんか全然だめ。すぐに自分の殻に閉じこもってしまって、一人で、あ~だこ~だって考えちゃうから」
「まま、とりあえずコーヒーさんでもいかがですかな?」
直美は、そう言ってニコニコしながら缶コーヒーを京子に手渡した。
「直美専用の38円缶コーヒーね!」
「そうそう、でもね、前まではちょっと恥ずかしかったのよね、この38円缶コーヒーが。なんか、自分は貧乏ですって言ってるみたいで、でも、夏樹さんがね、そんな私の事を好きよ!って言ってくれたのよ。もち女言葉でだけど!」
「あの人が・・・?」
あちゃー・・・また、言っちゃった・・・う~ん。
「そう・・・あの人が、そんな事を・・・」
「あれ?京子、怒んないの?」
「別に、怒らないわよ・・・。でも、やっぱり、怪我なんかしちゃったから少し弱気になってるのかも」
「よね!よね!いつもなら、出たな!悪代官。みたいに、夏樹さんをコンニャロメに言っちゃうもんね」
「うそ?私、そんなに言ってないわよ」
「まま、そういう事にしておきましょう!でも、大人しい京子っていうのもいいかもね」
直美の言葉に、笑顔で答えながら手に持っている缶コーヒーのふたを開ける京子。
知らない人が見れば、どこでも見かける何気ない京子の仕草のはず・・・なのだが、
直美にはそうは映らなかった。
それどころか、京子の笑顔に思わずゾクッとするような冷たいものを感じてしまった自分に
直美は、少し戸惑いを感じてしまうのである。
「ねえ、直美・・・」
「えっ・・・何?」
「ちょっと頼まれてもらってもいいかな?」
いい・・・じゃなくて、いいかな?
直美は、さっきからの京子の言葉の語尾がちょっと気になっていた。
「頼まれてって、何?」
「もしね、もし、この先、省吾が、あの人に会いたいって言った時は、直美が省吾をあの人に会わせてあげて欲しいの」
「私が・・・?」
「それから、亜晃も、省吾があの人に会ったと聞けば、自分も会いたいと思うと思うから、その時も、あの人に亜晃を会わせてあげて欲しいの」
「それは別にいいけど・・・京子はどうするの?」
「私?・・・私は、もう離婚した身だから、この先、あの人に会う事はないわ」
「それでいいの?今はまだ夏樹さんは雪子さんと会っていないからだけど、もし夏樹さんが雪子さんと会ってしまったら、夏樹さんにはもう会えなくなっちゃうんだよ?」
「私って、いったい何だったのかな?」
笑みとも微笑みともとれない・・・。
かといって、寂しいとも、悲しいともとれない表情でふたを開けた缶コーヒーを口にする京子。
「何だったのかな?って、どうしたの、急に?」
「別に急にってわけじゃないけど・・・ただね、何となく、そんな風に考えてしまうのよね」
「夏樹さんの事?」
「そういうわけじゃないんだけど、そのうち省吾も亜晃もあの人のところに行ってしまうんだな~って考えるとね」
「でも、別に、京子の家を出て夏樹さんと一緒に暮らすわけでもないんだし、京子が気に病むような事でもないと思うけどな」
「それだけならね・・・」
「まだ他に何かあるの?」
「う~ん・・・まあ~あると言えばあるような、私には関係ないと言えば関係ないような・・・」
「それって、もしかして、雪子さんの事?」
「まあね、あの人が雪子さんと恋人になって、そして別れて、それがまた恋人になるんだな~って思うと、私っていったい何だったんだろうって。私が過ごしてきたあの人との時間って、いったい何の意味があったんだろうって。そんな風に考えていると、な~んかね、私って何のために生まれてきたんだろう?って考えちゃって」
「ちょっと考えすぎだよ、京子?」
「それに、省吾も亜晃も私から離れて行ってしまう、みんな、私から離れて行ってしまうとか考えちゃて」
「何、言ってるのよ、京子には、ちゃんと、私という親友がいるじゃないのよ?」
「ねえ直美?もし、今、あの人に、私と、雪子さんのどっちを選ぶ?って訊いたら、あの人は何て答えるかしら?」
「えっ・・それは・・・」
「きっと、あの人は、迷う事なく雪子さんって答えるのかしら?」
突然の京子の言葉に、直美は、夏樹と話していたあの日の夏樹の言葉を思い出してしまった。
というより、いつも持ち歩いている直美専用の缶コーヒーを、もぞもぞと取り出していた。
「直美はいいわね?いつも楽天的でさ・・・」
「そうかな?」
「私も、見習いたいわ」
「そお?」
「私なんか全然だめ。すぐに自分の殻に閉じこもってしまって、一人で、あ~だこ~だって考えちゃうから」
「まま、とりあえずコーヒーさんでもいかがですかな?」
直美は、そう言ってニコニコしながら缶コーヒーを京子に手渡した。
「直美専用の38円缶コーヒーね!」
「そうそう、でもね、前まではちょっと恥ずかしかったのよね、この38円缶コーヒーが。なんか、自分は貧乏ですって言ってるみたいで、でも、夏樹さんがね、そんな私の事を好きよ!って言ってくれたのよ。もち女言葉でだけど!」
「あの人が・・・?」
あちゃー・・・また、言っちゃった・・・う~ん。
「そう・・・あの人が、そんな事を・・・」
「あれ?京子、怒んないの?」
「別に、怒らないわよ・・・。でも、やっぱり、怪我なんかしちゃったから少し弱気になってるのかも」
「よね!よね!いつもなら、出たな!悪代官。みたいに、夏樹さんをコンニャロメに言っちゃうもんね」
「うそ?私、そんなに言ってないわよ」
「まま、そういう事にしておきましょう!でも、大人しい京子っていうのもいいかもね」
直美の言葉に、笑顔で答えながら手に持っている缶コーヒーのふたを開ける京子。
知らない人が見れば、どこでも見かける何気ない京子の仕草のはず・・・なのだが、
直美にはそうは映らなかった。
それどころか、京子の笑顔に思わずゾクッとするような冷たいものを感じてしまった自分に
直美は、少し戸惑いを感じてしまうのである。
「ねえ、直美・・・」
「えっ・・・何?」
「ちょっと頼まれてもらってもいいかな?」
いい・・・じゃなくて、いいかな?
直美は、さっきからの京子の言葉の語尾がちょっと気になっていた。
「頼まれてって、何?」
「もしね、もし、この先、省吾が、あの人に会いたいって言った時は、直美が省吾をあの人に会わせてあげて欲しいの」
「私が・・・?」
「それから、亜晃も、省吾があの人に会ったと聞けば、自分も会いたいと思うと思うから、その時も、あの人に亜晃を会わせてあげて欲しいの」
「それは別にいいけど・・・京子はどうするの?」
「私?・・・私は、もう離婚した身だから、この先、あの人に会う事はないわ」
「それでいいの?今はまだ夏樹さんは雪子さんと会っていないからだけど、もし夏樹さんが雪子さんと会ってしまったら、夏樹さんにはもう会えなくなっちゃうんだよ?」
「私って、いったい何だったのかな?」
笑みとも微笑みともとれない・・・。
かといって、寂しいとも、悲しいともとれない表情でふたを開けた缶コーヒーを口にする京子。
「何だったのかな?って、どうしたの、急に?」
「別に急にってわけじゃないけど・・・ただね、何となく、そんな風に考えてしまうのよね」
「夏樹さんの事?」
「そういうわけじゃないんだけど、そのうち省吾も亜晃もあの人のところに行ってしまうんだな~って考えるとね」
「でも、別に、京子の家を出て夏樹さんと一緒に暮らすわけでもないんだし、京子が気に病むような事でもないと思うけどな」
「それだけならね・・・」
「まだ他に何かあるの?」
「う~ん・・・まあ~あると言えばあるような、私には関係ないと言えば関係ないような・・・」
「それって、もしかして、雪子さんの事?」
「まあね、あの人が雪子さんと恋人になって、そして別れて、それがまた恋人になるんだな~って思うと、私っていったい何だったんだろうって。私が過ごしてきたあの人との時間って、いったい何の意味があったんだろうって。そんな風に考えていると、な~んかね、私って何のために生まれてきたんだろう?って考えちゃって」
「ちょっと考えすぎだよ、京子?」
「それに、省吾も亜晃も私から離れて行ってしまう、みんな、私から離れて行ってしまうとか考えちゃて」
「何、言ってるのよ、京子には、ちゃんと、私という親友がいるじゃないのよ?」
「ねえ直美?もし、今、あの人に、私と、雪子さんのどっちを選ぶ?って訊いたら、あの人は何て答えるかしら?」
「えっ・・それは・・・」
「きっと、あの人は、迷う事なく雪子さんって答えるのかしら?」
突然の京子の言葉に、直美は、夏樹と話していたあの日の夏樹の言葉を思い出してしまった。
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