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第二十五話『バーチャル空間での味』

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「そう、それはね、人は目で味を感じるからなんだ!!」
と、僕が口にした。VRでなぜ味を感じるのか、サラが不思議に思ったからだ。ただ、僕の説明に、みんなは大きなはてなマークを浮かべていた。

「え、それはどういうことですか??現実で食べた時、味は感じますよね。甘いとか、辛いとか、しょっぱいとか」
奈緒子は普段の生活を思い出し、確認した。最近食べたものを思い出しているのだろう。頭の回転が早いな、と感じる。

「もちろん味は感じるんだけど、最近の心理学の研究だと、一緒に食べている人とか、照明とか、一口の大きさとか、盛り付けとかが味に影響していることがわかっているんだよね」
「あー!!たしかに、そうかもしれません、オシャレなお店でお食事すると、やっぱり美味しくなります、おしゃれなカフェとかも!」
と、環境や情報により、味が変わるという僕の説明を、普段の生活を思い返し、過去の体験を思い出し理解を進める奈緒子。そんなに、オシャレなカフェっておいしいのかな、と行ったことがなかったので思った。

「もっと極端な例をだすと、たとえば、美味しいとされる『チーズの匂い』と『足の裏の匂い』計測すると同じ匂いらしいんだ」
「えーっ!!」
「そうなんですか!?」
と、大きく驚くサラ。口元を手で隠し、驚きを隠しながら訊ねる奈緒子。何かの記事で匂いの指数がほぼ同じというデータを見たことがある。つまり、目を閉じてしまうと、違いを判別することが出来ない、ということだ。

「そう、つまり、やっぱり僕らは視覚情報から美味しさを感じてる部分が大きいんだ、足を舐めて美味しいと感じないよね」
と、手を広げるジェスチャーをして、極端な例を説明した。

「そんな人はいません!!」
「うえー!!!!」
即答する奈緒子。
想像して、やめて!っとピシピシ叩いてくる、サラ。

「ごめんごめん」
僕は、サラのピシピシパンチを押し戻し続ける。

「という感じで、情報が重要なんだ。これはどこどこで作られてて安心できます、とか、綺麗に盛りつけられているとか、そういうことで、同じにおいや、味でも、おいしく感じたり、感じなかったりするんだ。」
情報と味の関係性についての説明を続ける僕。

「あと、そもそも、お菓子とかがそうだよ、フレーバーっていうのを最後にかけて、匂いや味を作っているんだけど。匂いの元って数パターンしかなくて、それの組み合わせと、形や色で、僕らは味を感じているんだ。」
「え!?そうなんですね!?そういわれてみれば・・・・・・」
と、いろんなお菓子を想像する奈緒子。女子はお菓子が好きな人が多いから、こっちの方が、分かりやすかったかも。

「ジュンさん、なんでも知ってるんですね」と奈緒子が言う。

「『ラスト・オンライン』が楽しみ過ぎて、バイトしてる間に沢山調べちゃったんだよね」と笑った。
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