【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
117 / 124

117 ブランディーヌ

しおりを挟む
「アベルッ!?」

 エレオノールに向けて大剣を振りかぶっていたブランディーヌ。オレはブランディーヌの大剣を振り下ろさせるわけにはいかないと、ブランディーヌに躍りかかる。

 ブランディーヌはクルリと器用に大剣を回してオレの剣戟を防ぐと、憎悪の表情でオレを睨みつけてきた。

「くそッ! よくもクロードとセドリックを! 絶対に許さんぞッ!」

 いつもの似非お嬢様言葉はどこに行ったのか、歯を剥き出しにして憤怒の表情を浮かべるブランディーヌ。顔を真っ赤にして、なんだかサルみたいだ。

 だが、その剣技のレベルは、断じてサルではありえない。オレを力任せに弾き飛ばすと、追撃の大剣が迫る。

 クソッ! 大剣を小枝みたいに振り回しやがって! この筋肉ゴリラめッ!

 オレは辛うじて迫りくる漆黒の大剣に剣を合わせる。剣の柄と刃先を両手で掴み、全力で自分の身を守った。

 ガギギィィイイインッ!

 けたたましい金属音が響き渡り、オレはまるで後方に引っ張られるようにぶっ飛ばされた。

「アベルさん!?」

 なんとか転ぶことなく両足で着地したオレに、ブランディーヌが躍りかかってくる。イノシシかよ。大剣を頭の後ろにまで振りかぶった振り下ろし。さすがに剣で受けるには荷が重い。

「エル! お前はジゼルたちの援護を!」
「は、はいっ!」

 オレは短く指示を出すと、サイドステップを踏み回避を試みた。しかし……。

「キェェェェェッ!」

 まるでサルのような猿叫を上げて大剣を振り下ろすブランディーヌ。いつもの似非お嬢様みたいな態度などどこにもない。それだけブランディーヌの奴が本気だということだ。

「ッ!?」

 サイドステップで避けているのに、ブランディーヌの大剣が、まるでオレに吸い付くように寄ってくる。このままではマズイ……ッ!

「ぜああああああああああッ!」

 オレは地面に着いた右足を軸に、体を前方斜め上方向に回転させる。丁度、ブランディーヌの大剣を“極光の担い手”で撃ち返そうとする形だ。

「ああああああああああああッ!」

 無理な挙動に右脚、腰が悲鳴を上げるのを無視し、オレは“極光の担い手”を降り来る漆黒の大剣へとぶつける。

 ガギィンッ!!

 両の剣がぶつかり合い。けたたましい金属音を打ち鳴らした。

 だが、質量のまるで違う大剣と片手剣だ。振り下ろした加速度も相まって、ブランディーヌの大剣を止めきることができない。

 ピシッ! パリィィイイインッ!

 まるでガラスが割れたような澄んだ音を響く。その瞬間、急に右手が軽くなり、右腕を振り抜けた。オレの愛剣である片手剣の宝具“極光の担い手”が砕かれたのだ。

 まさか、ブランディーヌの一撃で砕かれるとは……ッ!

 しかし、“極光の担い手”は最後の仕事を果たした。“極光の担い手”とぶつかることで、ブランディーヌの大剣は軌道を変えたのだ。それにより、オレはブランディーヌの一撃を躱すことができた。

 ズガァアアンッ!

 ブランディーヌの大剣が空を切り、けたたましい音を立てて地面にぶち当たる。

 もうもうと土煙が上がり、地面には薄っすらとクレーターのようなものができていた。なんて威力だよ。

 オレは右足一本で大きくバックステップを踏み、ブランディーヌから距離を取る。

 そんなオレを嘲笑うように、ブランディーヌがゆっくりと体を起こした。武器を失くした間抜けを嗤っているのだろう。

「いひひっ! かっこよく助太刀とはいかなかったようね! あんたは気が済むまで嬲り殺してやるわ! クロードとセドリックの仇よ!」

 クロードは既に死んでいるが、セドリックはまだギリギリ生きてるんだがなぁ。

「こりゃ驚いたな。お前に仲間を思いやる心なんてあったのかよ?」
「これまで大切に育ててきた駒ですもの。高くつくわよ?」
「仲間を駒扱いか……」

 育てたのはブランディーヌではなくオレなのだが。まぁ、そのへんはブランディーヌのおめでたい頭で自分の都合のいいように曲解されているのだろう。今更、現実を教えてやる義理も無いか。

「クロードとセドリックには、まだ使い道があったのに。もったいないことするわね。でも、いいわ。ようやく目障りだったお前を殺すことができるんですもの。さっそく甚振ってあげるわ。許しを請うなら今の内よ?」
「一思いに殺さないのか?」
「あんたには、金を出してもらわないとね。金を出したら殺してあげるわ。ふふふははっ! あんたはいつまで保つかしらねぇ?」

 ブランディーヌの中では、オレが剣を失った段階で、もはや勝敗は決しているのだろう。すがすがしいまでにナメ腐ってやがる。

 まぁ、オレの剣術はブランディーヌには及ばないし、剣を持っていてもナメられていたかもな。

「お前はいつから自分の勝利は動かないと錯覚してやがるんだ?」
「ガハハハ! あんた、自分の弱さを自覚してなかったの? あのバカみたいな威力のクロスボウが無いあんたなんて、まったく、これっぽっちも脅威じゃないのよ! そして、クロスボウをクロードに使った今、あんたにはなにもできないの!」
「果たしてそうかな?」

 オレは、折れた“極光の担い手”を補うように深淵の収納空間を展開する。実戦では初めてだが、たぶんいけるだろう。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...