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118 対ブランディーヌ
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オレの右手に握られた片手剣“極光の担い手”。折れたはずのその刀身が、まるで深淵の闇のようなもので復活を遂げていた。光すら反射しない漆黒。たしかにそこにあるはずなのに、遠近感が狂いそうになるほどの黒の刀身。
その正体は、収納空間だ。ただ、収納空間を剣の形に展開しているだけ。触ってもまったく影響がない。物理的な干渉能力を一切持たない。ただの影だ。
これこそが、オレの新たな秘策である。
「ふんっ! なにをするかと思えば、今更ただのコケ脅しかよ。それはあんたのギフトの穴だろう? そんなので、いったいなにができるって?」
ブランディーヌは、オレの展開した収納空間を見て、せせら笑う。ブランディーヌの中は、オレのギフトの新たな能力を知らないからな。大して警戒もせずに、自分の優勢を全く疑っていない。
まぁ、ぶっちゃけ、オレは今すぐにでもブランディーヌを始末することが可能だ。それこそ、“ショット”で眉間を射抜くのも容易だろう。だが、オレは敢えてそうしない。
ブランディーヌは、腐ってもレベル6ダンジョンを攻略した冒険者だ。パーティを導くリーダーとしての能力は低いが、その戦闘能力は高い。そんな奴を相手に命の奪い合いだ。これ以上の訓練は無いだろう。
クロエたち『五花の夢』は、これから挑戦するダンジョンのレベルがどんどん上がっていくだろう。その中で、クロエたちだけではなく、オレも成長しなくちゃならねぇ。
オレの弱点は、近接戦闘だ。今のオレの剣の腕では、レベル4ダンジョンが限界だろう。オレは自分の限界を超える必要がある。
今までのオレは、戦闘系のギフトが無いからと諦めていた。だが、それではダメなのだ。クロエたちと一緒にオレも成長していかなくちゃならない。
そのための一歩が、ブランディーヌとの戦闘だ。彼我の実力差は歴然。かといって、全力で収納のギフトの力を使えば訓練にもならない。悩ましいな。
「ふんっ! だんまりかい。あんたの策ごと喰い千切ってやるよぉ!」
なにも答えないオレに業を煮やしたのか、ブランディーヌがその大剣を振り上げて突撃してくる。体格のいい筋肉モリモリの奴が突っ込んでくるなんて、それだけで恐怖を感じさせるな。
「らぁあ!」
気迫と共に、ブランディーヌ大剣がオレ目掛けて振り下ろされる。オレは、ブランディーヌの剣筋を確認すると、右後方へとステップを踏む。
ぶおんとブランディーヌの大剣が耳のすぐ横を通り、押し退けられた空気が風となってオレに叩きつけられる。すごい風圧だ。
オレは、紙一重で大剣を躱すことに成功した。このままブランディーヌの懐に飛び込みたいところだが、それは許されない。
「だあぁああッ!」
ブランディーヌの叫びと共に、たった今躱したはずの大剣がまた襲ってくる。ブランディーヌが、その有り余る筋力で大剣を静止させ、再度振るったのだ。
左から迫る地面と水平に振るわれた漆黒の大剣。下手に退けば、腹を斬り裂かれることになる厄介な太刀筋だ。
「くっ!」
オレは退くのではなく、敢えて前へと進む。身を投げ出すようなヘッドスライディングだ。
大剣の風圧を感じると共に、後頭部の髪の先がチリチリと焼けつくような感覚が走る。危ねぇ……。もう少しでも遅れていたら、頭がカチ割られるところだった。
オレは前方に跳び込んだ勢いそのままに跳ね起きる。ブランディーヌとの距離は半歩ほど。完全に片手剣の、オレの距離だ。ついにブランディーヌの懐に入った。
目の前には、目がチカチカしそうなピンクの鎧。ガッチリと守りが固められた一分の隙も無い厚い装甲。昔、オレが考案した戦法だ。懐に飛び込まれたとしても、硬い鎧で攻撃を防ぎ、返す大剣で敵を叩き潰す作戦。
あの時はいい戦法を考えたものだと嬉しかったものだが、まさか時代を越えてオレの前に立ちふさがるとはな。昔のオレを張り倒したいくらいだ。
しかし――――。
オレに装甲の厚さや硬さなど関係がない。
オレはブランディーヌの右わき腹から左肩へと折れた“極光の担い手”を走らせる。まるで手ごたえなく、スッと通る剣の形をした漆黒の収納空間。
「だらしゃあッ!」
ブランディーヌが、また筋力に物を言わせて大剣を振ろうとする。懐に飛び込んできたオレを叩き潰さんとする必殺の一撃だ。
しかし、オレはその場に佇んでいた。オレの胸に去来するのは、小さな虚しさだった。きっと、この虚しさが情というものなのだろう。
「じゃあな、ブランディーヌ。お前は本当に手のかかる奴だった」
「死ねぇええええええええええ!」
漆黒の大剣を高く振り上げるブランディーヌに背を向けて歩き出す。もっと感情が動くかと思っていたが、そうでもなかったな。
「ァ……? あ、が……ッ!?」
ジュルリと粘着質な音が響いた後、まるで破れた水袋を地面に叩きつけたような湿った音が聞こえてきた。ブランディーヌが倒れたのだろう。
俺がやったことは単純だ。折れてしまった“極光の担い手”を補うように展開した収納空間。それでブランディーヌの体を“カット”しただけだ。
収納空間は、オレの自由自在に展開できるが、収納空間の高速での移動をオレは苦手としていた。
収納空間を、ある地点に高速移動させる。言葉にすればこれだけだが、これがなかなか難しい。直線に動かすのは楽だが、複雑な軌道を描くとなると、それだけ難易度が上がる。
そこで思い付いたのが、手の先に収納空間を展開する方法だ。
この方法ならば、手に持った収納空間を動かすイメージだけで繊細な動きが可能になる。
実戦では初めての運用だったが、上手くいってよかったな。
その正体は、収納空間だ。ただ、収納空間を剣の形に展開しているだけ。触ってもまったく影響がない。物理的な干渉能力を一切持たない。ただの影だ。
これこそが、オレの新たな秘策である。
「ふんっ! なにをするかと思えば、今更ただのコケ脅しかよ。それはあんたのギフトの穴だろう? そんなので、いったいなにができるって?」
ブランディーヌは、オレの展開した収納空間を見て、せせら笑う。ブランディーヌの中は、オレのギフトの新たな能力を知らないからな。大して警戒もせずに、自分の優勢を全く疑っていない。
まぁ、ぶっちゃけ、オレは今すぐにでもブランディーヌを始末することが可能だ。それこそ、“ショット”で眉間を射抜くのも容易だろう。だが、オレは敢えてそうしない。
ブランディーヌは、腐ってもレベル6ダンジョンを攻略した冒険者だ。パーティを導くリーダーとしての能力は低いが、その戦闘能力は高い。そんな奴を相手に命の奪い合いだ。これ以上の訓練は無いだろう。
クロエたち『五花の夢』は、これから挑戦するダンジョンのレベルがどんどん上がっていくだろう。その中で、クロエたちだけではなく、オレも成長しなくちゃならねぇ。
オレの弱点は、近接戦闘だ。今のオレの剣の腕では、レベル4ダンジョンが限界だろう。オレは自分の限界を超える必要がある。
今までのオレは、戦闘系のギフトが無いからと諦めていた。だが、それではダメなのだ。クロエたちと一緒にオレも成長していかなくちゃならない。
そのための一歩が、ブランディーヌとの戦闘だ。彼我の実力差は歴然。かといって、全力で収納のギフトの力を使えば訓練にもならない。悩ましいな。
「ふんっ! だんまりかい。あんたの策ごと喰い千切ってやるよぉ!」
なにも答えないオレに業を煮やしたのか、ブランディーヌがその大剣を振り上げて突撃してくる。体格のいい筋肉モリモリの奴が突っ込んでくるなんて、それだけで恐怖を感じさせるな。
「らぁあ!」
気迫と共に、ブランディーヌ大剣がオレ目掛けて振り下ろされる。オレは、ブランディーヌの剣筋を確認すると、右後方へとステップを踏む。
ぶおんとブランディーヌの大剣が耳のすぐ横を通り、押し退けられた空気が風となってオレに叩きつけられる。すごい風圧だ。
オレは、紙一重で大剣を躱すことに成功した。このままブランディーヌの懐に飛び込みたいところだが、それは許されない。
「だあぁああッ!」
ブランディーヌの叫びと共に、たった今躱したはずの大剣がまた襲ってくる。ブランディーヌが、その有り余る筋力で大剣を静止させ、再度振るったのだ。
左から迫る地面と水平に振るわれた漆黒の大剣。下手に退けば、腹を斬り裂かれることになる厄介な太刀筋だ。
「くっ!」
オレは退くのではなく、敢えて前へと進む。身を投げ出すようなヘッドスライディングだ。
大剣の風圧を感じると共に、後頭部の髪の先がチリチリと焼けつくような感覚が走る。危ねぇ……。もう少しでも遅れていたら、頭がカチ割られるところだった。
オレは前方に跳び込んだ勢いそのままに跳ね起きる。ブランディーヌとの距離は半歩ほど。完全に片手剣の、オレの距離だ。ついにブランディーヌの懐に入った。
目の前には、目がチカチカしそうなピンクの鎧。ガッチリと守りが固められた一分の隙も無い厚い装甲。昔、オレが考案した戦法だ。懐に飛び込まれたとしても、硬い鎧で攻撃を防ぎ、返す大剣で敵を叩き潰す作戦。
あの時はいい戦法を考えたものだと嬉しかったものだが、まさか時代を越えてオレの前に立ちふさがるとはな。昔のオレを張り倒したいくらいだ。
しかし――――。
オレに装甲の厚さや硬さなど関係がない。
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「だらしゃあッ!」
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しかし、オレはその場に佇んでいた。オレの胸に去来するのは、小さな虚しさだった。きっと、この虚しさが情というものなのだろう。
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