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143 指輪
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「Gurururururururururururururu……」
王都のバウムガルテン屋敷。その地下室で日課のヒュドラの毒腺回収を終わらせて、オレは呪いのアイテムが山のように収められた部屋にやってきた。
さすがにこれだけ呪われたアイテムを集めると圧巻だな。うっすらと瘴気が漂っているほどだ。
「さて、始めるか」
オレは転がっていた呪われたナイフを手に取った。これから呪われたアイテムたちを解呪していくつもりだ。
頭打ちだと思っていたギフトが大聖者に進化したからね。またギフトを育てることができる。それによってどんな力が得られるか楽しみだ。
黙々と呪われたアイテムの解呪をしていると、指輪を見つけた。無論呪われてしまった指輪だ。
「そういえば、この国では婚約指輪とか結婚指輪の風習はないな」
そう。この国には婚約時や結婚時に指輪を贈る風習はない。ゲームでもそうだったのだが、主人公が最終的に攻略したヒロインに指輪を贈ったことで指輪を贈る風習が生まれることになる。
まだ油断はできないが、このままだとリーンハルトはビアンカを攻略するだろう。主人公がヒロインに指輪を贈るのは最終決戦である邪神との戦闘の前だ。
その後、世界を救った英雄を称えて結婚指輪を贈る風習が生まれる。
たぶんオレもコルネリアたちに結婚指輪を贈ることになるだろう。
「でもそうすると、ドーラやクラウが結婚指輪無しというのはかわいそうだな……。まぁ、主人公のイベントを待ってる必要も無いか。ドーラにはすぐに指輪を贈るとして、クラウにも結婚した時に指輪を贈ろう」
流行に乗り遅れるなんて上級貴族には許されないからな。それなら最初から乗っておこう。
オレは手に持った指輪を見る。
指輪は安っぽい作り銀製だった。さすがにこれは贈れない。というか、さすがに極めて優れたものでもない限り新品を贈るのが礼儀だろう。
「だが、オレは女性向けの装飾品を売ってる店など知らないぞ? まぁ、ベンノに訊けば間違いはないか。とはいえ、家に呼び寄せてはドーラに指輪を贈ることがバレてしまう。オレが店に行くかな」
貴族というのは普通は商人を家に呼び寄せるものらしいが、今回はサプライズで渡したい。
「でも、ドーラに指輪を贈ったらリアやリリーも欲しがるよなぁ。ぬいぐるみでも贈るか? それとも指輪以外の装飾品の方がいいのだろうか?」
コルネリアやリリーの食の好みはわかるのだが、装飾品の好みはまったくわからない。かといって、いつもぬいぐるみというのもワンパターンだ。
「指輪以外の装飾品……。首飾りにしよう。前に見たドレスの姿は首元が少し寂しかったからな」
皆、気に入ってくれるといいが……。
「善は急げだ。クラウス!」
「はい、旦那様」
「ベンノを呼んでくれ。今日の午後には会いたい」
「かしこまりました」
ベンノが来るまでは、呪われたアイテムの解呪でもしているか。
オレは手に持っていた呪われた指輪を一瞬で解呪すると、次のアイテムへと手を伸ばした。
◇
ベンノはしばらく会わないうちに養鶏場を本格スタートさせて卵の安定供給に成功すると、マヨネーズで得た財力を背景に胡椒の入手経路まで整えてみせた。
そして売り出したのはタルタルソースとサンドウィッチ用の卵ソースだ。まったりとした豪華な味わいというのが貴族や資産家たちに受けて、どちらも飛ぶように売れているらしい。
それでいてまだマヨネーズの製法の独占を守っているあたり、ベンノはやり手だな。おかげでオレへ払われる利益の一割も増加の一途をたどっている。ベンノはオレに恩を感じているのか、金の他にもいろいろなものを贈ってくれることがある。
まぁ、マヨネーズの製法を他には漏らさないでね。ということだろう。
そんな王都でも一気にトップクラスの商人になったベンノにおすすめの装飾品店を聞き出し、実際に店まで行って、店員の話を聞きながら、オレはカサンドラやコルネリア、リリーへの贈り物を選んだ。
「ドーラ、ちょっと話があるんだ」
「なんでしょうか?」
「ここではちょっと……寝室に行こうか」
オレは屋敷に帰ると、カサンドラを二人の寝室に呼び出した。
「どうしたのですか、ディー? まさか、また我慢ができなくなったんじゃ……」
「違うって。今日はドーラに受け取ってほしいものがあるんだ」
「受け取ってほしいもの?」
オレはビロードで装飾された小さな箱を取り出す。
「これを受け取ってほしい」
「まあ! 指輪! でも、どうしていきなり指輪を?」
「あーっと……。その、だいぶ時間が経ってしまったけど、古い風習で、結婚時に指輪を贈り合うことがあるって聞いたんだ。だから……」
「それでわたくしに指輪を……。嬉しいですわ!」
「おっと」
カサンドラの方から抱き付いて来るなんて珍しいな。よほどうれしかったのかな?
「ですが、贈り合うならわたくしもディーに贈らないといけませんね」
「いや、いいよ。オレはドーラへの愛の誓いでお贈りたくなっただけだし」
「うふ。いいえ、わたくしもお贈りしますわ。ディーへの愛の誓いを」
ちなみに……。
「あら? 指輪がぶかぶかですわ」
「あー……」
実は店員さんに奥さんの指のサイズを聞かれて困ったんだよなぁ。平均的なものにしてもらったけど、カサンドラには大きかったらしい。カサンドラの手は長いのに細いからね。
「直してもらおうか……」
「そうですね。その時にディーへの指輪もお贈りいたしますね」
王都のバウムガルテン屋敷。その地下室で日課のヒュドラの毒腺回収を終わらせて、オレは呪いのアイテムが山のように収められた部屋にやってきた。
さすがにこれだけ呪われたアイテムを集めると圧巻だな。うっすらと瘴気が漂っているほどだ。
「さて、始めるか」
オレは転がっていた呪われたナイフを手に取った。これから呪われたアイテムたちを解呪していくつもりだ。
頭打ちだと思っていたギフトが大聖者に進化したからね。またギフトを育てることができる。それによってどんな力が得られるか楽しみだ。
黙々と呪われたアイテムの解呪をしていると、指輪を見つけた。無論呪われてしまった指輪だ。
「そういえば、この国では婚約指輪とか結婚指輪の風習はないな」
そう。この国には婚約時や結婚時に指輪を贈る風習はない。ゲームでもそうだったのだが、主人公が最終的に攻略したヒロインに指輪を贈ったことで指輪を贈る風習が生まれることになる。
まだ油断はできないが、このままだとリーンハルトはビアンカを攻略するだろう。主人公がヒロインに指輪を贈るのは最終決戦である邪神との戦闘の前だ。
その後、世界を救った英雄を称えて結婚指輪を贈る風習が生まれる。
たぶんオレもコルネリアたちに結婚指輪を贈ることになるだろう。
「でもそうすると、ドーラやクラウが結婚指輪無しというのはかわいそうだな……。まぁ、主人公のイベントを待ってる必要も無いか。ドーラにはすぐに指輪を贈るとして、クラウにも結婚した時に指輪を贈ろう」
流行に乗り遅れるなんて上級貴族には許されないからな。それなら最初から乗っておこう。
オレは手に持った指輪を見る。
指輪は安っぽい作り銀製だった。さすがにこれは贈れない。というか、さすがに極めて優れたものでもない限り新品を贈るのが礼儀だろう。
「だが、オレは女性向けの装飾品を売ってる店など知らないぞ? まぁ、ベンノに訊けば間違いはないか。とはいえ、家に呼び寄せてはドーラに指輪を贈ることがバレてしまう。オレが店に行くかな」
貴族というのは普通は商人を家に呼び寄せるものらしいが、今回はサプライズで渡したい。
「でも、ドーラに指輪を贈ったらリアやリリーも欲しがるよなぁ。ぬいぐるみでも贈るか? それとも指輪以外の装飾品の方がいいのだろうか?」
コルネリアやリリーの食の好みはわかるのだが、装飾品の好みはまったくわからない。かといって、いつもぬいぐるみというのもワンパターンだ。
「指輪以外の装飾品……。首飾りにしよう。前に見たドレスの姿は首元が少し寂しかったからな」
皆、気に入ってくれるといいが……。
「善は急げだ。クラウス!」
「はい、旦那様」
「ベンノを呼んでくれ。今日の午後には会いたい」
「かしこまりました」
ベンノが来るまでは、呪われたアイテムの解呪でもしているか。
オレは手に持っていた呪われた指輪を一瞬で解呪すると、次のアイテムへと手を伸ばした。
◇
ベンノはしばらく会わないうちに養鶏場を本格スタートさせて卵の安定供給に成功すると、マヨネーズで得た財力を背景に胡椒の入手経路まで整えてみせた。
そして売り出したのはタルタルソースとサンドウィッチ用の卵ソースだ。まったりとした豪華な味わいというのが貴族や資産家たちに受けて、どちらも飛ぶように売れているらしい。
それでいてまだマヨネーズの製法の独占を守っているあたり、ベンノはやり手だな。おかげでオレへ払われる利益の一割も増加の一途をたどっている。ベンノはオレに恩を感じているのか、金の他にもいろいろなものを贈ってくれることがある。
まぁ、マヨネーズの製法を他には漏らさないでね。ということだろう。
そんな王都でも一気にトップクラスの商人になったベンノにおすすめの装飾品店を聞き出し、実際に店まで行って、店員の話を聞きながら、オレはカサンドラやコルネリア、リリーへの贈り物を選んだ。
「ドーラ、ちょっと話があるんだ」
「なんでしょうか?」
「ここではちょっと……寝室に行こうか」
オレは屋敷に帰ると、カサンドラを二人の寝室に呼び出した。
「どうしたのですか、ディー? まさか、また我慢ができなくなったんじゃ……」
「違うって。今日はドーラに受け取ってほしいものがあるんだ」
「受け取ってほしいもの?」
オレはビロードで装飾された小さな箱を取り出す。
「これを受け取ってほしい」
「まあ! 指輪! でも、どうしていきなり指輪を?」
「あーっと……。その、だいぶ時間が経ってしまったけど、古い風習で、結婚時に指輪を贈り合うことがあるって聞いたんだ。だから……」
「それでわたくしに指輪を……。嬉しいですわ!」
「おっと」
カサンドラの方から抱き付いて来るなんて珍しいな。よほどうれしかったのかな?
「ですが、贈り合うならわたくしもディーに贈らないといけませんね」
「いや、いいよ。オレはドーラへの愛の誓いでお贈りたくなっただけだし」
「うふ。いいえ、わたくしもお贈りしますわ。ディーへの愛の誓いを」
ちなみに……。
「あら? 指輪がぶかぶかですわ」
「あー……」
実は店員さんに奥さんの指のサイズを聞かれて困ったんだよなぁ。平均的なものにしてもらったけど、カサンドラには大きかったらしい。カサンドラの手は長いのに細いからね。
「直してもらおうか……」
「そうですね。その時にディーへの指輪もお贈りいたしますね」
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