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158 決意
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「わたくし、バウムガルテン領に行きますわ」
兵の国境への配備が始まり、邪神の復活が現実味を帯びてきた頃、夕食の席でカサンドラが唐突に言った。
「そうだね。バウムガルテンの要塞を確認しないといけないし、一度バウムガルテン領に行くのはありかもしれないね」
「ディー、そうではないの。わたくしは一人でバウムガルテン領に行くのです」
「一人で?」
なんでカサンドラは一人にこだわるんだ?
どうせなら皆で行ってもいいじゃないか。
「いいですか、ディー。邪神の復活の予言がなされてもう半月です。もしかしたら、明日にでも邪神が復活してもおかしくありません。だからこそ、わたくしは一人でバウムガルテン領に行くのです」
「それならなおさら皆で行った方がいいじゃないか。皆でバウムガルテン領を守ろう!」
「いいえ。それはできません」
「え?」
カサンドラは首をゆるゆると左右に振る。そして、決意の輝きを秘めた目でオレを見た。
「ディー、あなたたちは王国の、いいえ、この世界の命運を分ける決戦戦力です。あなたたちは王都に待機して、しかるべき時に動いてください」
世界の命運を分ける? それは主人公であるリーンハルトの役目だ。オレはただのモブだよ。
「オレはバウムガルテンを守りたいんだ」
オレの役目は、リーンハルトが邪神を倒すまでバウムガルテンを守ること。仲間を守り切ること。それ以外はなにもいらない。
「わかっています。ですから、わたくしがバウムガルテンを守ります。そんな心配そうな顔をしないでください。この中で一番用兵が上手いのはわたくしでしょう? 必ず、バウムガルテンを守り切ってみせますわ」
「だが……」
オレは知っている。邪神は東から来ることを。王国の最東端であるバウムガルテンはかなり危険だ。オレたちが力を合わせても、守り切れる確証がないほどだ。そんな所にカサンドラ一人を送るなんてできない。
「やっぱり、皆でバウムガルテンに行こう。皆で力を合わせれば……」
「それではダメなのです。ディー、あなたも貴族ならば領を犠牲にしてでも王国のために、世界のために、尽くしてください。バウムガルテン領は必ずわたくしが守りますわ。ですから、お願いいたします」
「ッ!?」
カサンドラが、オレに向かって頭を下げている。カサンドラにはなんの落ち度もないのに。こんなモブのオレを本気で世界を左右する戦力だと信じて。オレに自分の意思を曲げてでも世界のために人類のために尽くせと言っている。
オレは逃げていた。どうせ主人公であるリーンハルトがなんとかしてくれるだろうと、オレは逃げてばかりだった。
そのことを真正面から自覚せざるをえなかった。
そうだよな。リーンハルトたちも育ってきているけど、オレたちには負ける。リーンハルトなんてまだギフトが進化していないくらいだ。
そんな自分よりも弱い奴を当てにするべきじゃない。オレが、オレたちがやらなくてどうする!
「グッ!」
苦しい。世界を背負う覚悟がこんなに苦しいなんて。
「顔を上げてくれ、ドーラ。ドーラの言うことはわかった」
「ディー……」
「絶対にバウムガルテン領の奴らを守ってやってくれ。そして、ドーラ自身のことも守ってくれ。ただの土地なんかのために誰も犠牲になる必要はない。ダメなら無理せず素直に引いてくれ。土地なら後でも取り返せるからな。命を大事にしてくれ」
「かしこまりました」
「ドーラ……」
「クラウ……」
「寂しくなりますわね」
「お任せください。必ずわたくしたちの帰ってくるべき場所を守り切ってみますわ」
カサンドラとクラウディアは抱き合ってしばしの別れを惜しんでいた。
「くれぐれも無理だけはしないでくれ。すべてを放り出して逃げ出してもいい。オレはすべてを許そう」
「ディー……」
「ドーラお義姉さま、がんばって!」
「ん、がんば」
「はい!」
こうして、電撃的にカサンドラのバウムガルテン領行きが確定した。
オレは……。今までどこか甘えを持っていた。どうせリーンハルトが主人公なんだと子ども染みた嫉妬や、モブのオレにはなにをしてもどうにもならないと諦めていた。
だが、これからは違う。
オレはオレの持てるすべてを使って邪神を討ち取ってやる。
邪神を早く討伐できれば、その分バウムガルテン領に押し寄せるモンスターの大群も早く弱体化できる。
邪神が居るからモンスターが強くなるのだ。
どうすれば、どうすれば早く邪神を討伐することができる?
邪神討伐のカギである聖剣は現在オレたちが二本。リーンハルトたちが二本持っているはずだ。
邪神に止めを刺すのが聖剣でないといけない以上、聖剣の有無は絶対だ。
ということは、邪神を討伐できるパーティは『レギンレイヴ』と『霹靂《へきれき》』しかないことになる。責任重大だな。
本当はそれとなくリーンハルトたちを助けるムーブをしようと思っていたのだが、こうなったら表に出ざるを得ないな。
リーンハルトには悪いが、リーンハルトよりも先に邪神を倒してしまおう。
兵の国境への配備が始まり、邪神の復活が現実味を帯びてきた頃、夕食の席でカサンドラが唐突に言った。
「そうだね。バウムガルテンの要塞を確認しないといけないし、一度バウムガルテン領に行くのはありかもしれないね」
「ディー、そうではないの。わたくしは一人でバウムガルテン領に行くのです」
「一人で?」
なんでカサンドラは一人にこだわるんだ?
どうせなら皆で行ってもいいじゃないか。
「いいですか、ディー。邪神の復活の予言がなされてもう半月です。もしかしたら、明日にでも邪神が復活してもおかしくありません。だからこそ、わたくしは一人でバウムガルテン領に行くのです」
「それならなおさら皆で行った方がいいじゃないか。皆でバウムガルテン領を守ろう!」
「いいえ。それはできません」
「え?」
カサンドラは首をゆるゆると左右に振る。そして、決意の輝きを秘めた目でオレを見た。
「ディー、あなたたちは王国の、いいえ、この世界の命運を分ける決戦戦力です。あなたたちは王都に待機して、しかるべき時に動いてください」
世界の命運を分ける? それは主人公であるリーンハルトの役目だ。オレはただのモブだよ。
「オレはバウムガルテンを守りたいんだ」
オレの役目は、リーンハルトが邪神を倒すまでバウムガルテンを守ること。仲間を守り切ること。それ以外はなにもいらない。
「わかっています。ですから、わたくしがバウムガルテンを守ります。そんな心配そうな顔をしないでください。この中で一番用兵が上手いのはわたくしでしょう? 必ず、バウムガルテンを守り切ってみせますわ」
「だが……」
オレは知っている。邪神は東から来ることを。王国の最東端であるバウムガルテンはかなり危険だ。オレたちが力を合わせても、守り切れる確証がないほどだ。そんな所にカサンドラ一人を送るなんてできない。
「やっぱり、皆でバウムガルテンに行こう。皆で力を合わせれば……」
「それではダメなのです。ディー、あなたも貴族ならば領を犠牲にしてでも王国のために、世界のために、尽くしてください。バウムガルテン領は必ずわたくしが守りますわ。ですから、お願いいたします」
「ッ!?」
カサンドラが、オレに向かって頭を下げている。カサンドラにはなんの落ち度もないのに。こんなモブのオレを本気で世界を左右する戦力だと信じて。オレに自分の意思を曲げてでも世界のために人類のために尽くせと言っている。
オレは逃げていた。どうせ主人公であるリーンハルトがなんとかしてくれるだろうと、オレは逃げてばかりだった。
そのことを真正面から自覚せざるをえなかった。
そうだよな。リーンハルトたちも育ってきているけど、オレたちには負ける。リーンハルトなんてまだギフトが進化していないくらいだ。
そんな自分よりも弱い奴を当てにするべきじゃない。オレが、オレたちがやらなくてどうする!
「グッ!」
苦しい。世界を背負う覚悟がこんなに苦しいなんて。
「顔を上げてくれ、ドーラ。ドーラの言うことはわかった」
「ディー……」
「絶対にバウムガルテン領の奴らを守ってやってくれ。そして、ドーラ自身のことも守ってくれ。ただの土地なんかのために誰も犠牲になる必要はない。ダメなら無理せず素直に引いてくれ。土地なら後でも取り返せるからな。命を大事にしてくれ」
「かしこまりました」
「ドーラ……」
「クラウ……」
「寂しくなりますわね」
「お任せください。必ずわたくしたちの帰ってくるべき場所を守り切ってみますわ」
カサンドラとクラウディアは抱き合ってしばしの別れを惜しんでいた。
「くれぐれも無理だけはしないでくれ。すべてを放り出して逃げ出してもいい。オレはすべてを許そう」
「ディー……」
「ドーラお義姉さま、がんばって!」
「ん、がんば」
「はい!」
こうして、電撃的にカサンドラのバウムガルテン領行きが確定した。
オレは……。今までどこか甘えを持っていた。どうせリーンハルトが主人公なんだと子ども染みた嫉妬や、モブのオレにはなにをしてもどうにもならないと諦めていた。
だが、これからは違う。
オレはオレの持てるすべてを使って邪神を討ち取ってやる。
邪神を早く討伐できれば、その分バウムガルテン領に押し寄せるモンスターの大群も早く弱体化できる。
邪神が居るからモンスターが強くなるのだ。
どうすれば、どうすれば早く邪神を討伐することができる?
邪神討伐のカギである聖剣は現在オレたちが二本。リーンハルトたちが二本持っているはずだ。
邪神に止めを刺すのが聖剣でないといけない以上、聖剣の有無は絶対だ。
ということは、邪神を討伐できるパーティは『レギンレイヴ』と『霹靂《へきれき》』しかないことになる。責任重大だな。
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