18 / 53
018 ブルーゴブリン
しおりを挟む
「せあ!」
オレの右の短剣の突きがゴブリンの喉に突き刺さる。
ゴブリンはビクンッと体を震わせると、そのままボフンッと白い煙となって消えた。
「セリアは……」
振り返ると、セリアの魔法が命中して、ゴブリンが白い煙となって消えるところだった。どうやら一人でもゴブリンを倒せたみたいだね。
ダンジョンの第二階層からは、たまに二体のモンスターが同時に襲って来る時がある。その場合はオレとセリアで一体ずつ相手にしていた。もちろん、セリアにモンスターが近づかないように配慮しつつだ。
ゲームの時は隊列を設定すれば、自然と前衛が後衛を守ってくれた。
でも、現実ではそうもいかない。
今みたいにオレを無視してセリアに向かうモンスターもいるし、後衛を守ると一口に言っても、実際にやってみるととても難しい。
後衛もヘイト管理とか難しい要素はあると思うけど、前衛もいろいろたいへんだ。
他の冒険者たちはどうやってるんだろう?
今度、ドミニクやオイゲンに訊いてみるか。あの二人は元冒険者と言っていたからな。
「おつかれさま、セリア」
「おつかれさまです、レオン様」
「うん!」
ダンジョンだと二人っきりだからか、セリアがレオン様と呼んでくれる。これも嬉しい点だ。
現状、オレとセリアの仲は良好そのものだ。だが、ゲームでのセリアは主人公くんに心を奪われた。油断はできない。
なんだか学園に行くのが怖くなってきたなぁ……。
「あら?」
セリアが不思議そうな顔をしていた。
「どうしたの?」
「あのゴブリンですけど……。あんな色でしたでしょうか?」
「え?」
それはオレたちから十メートル先のT字路から姿を現した。その背丈は普通のゴブリンを変わらない。だが、その肌の色が微妙に違う。緑ではなく青色なのだ。そして、他のゴブリンとは違って棍棒ではなく、濡れたように輝く片手剣を持っている。
「ブルーゴブリン……!」
「GEGYA?」
オレの呟きと、ブルーゴブリンがオレたちに気が付くのは同時だった。
「GEGYAGYA!」
ブルーゴブリンがオレたち目掛けて駆けてくる。
速い!?
「セリアは魔法を!」
「はい!」
オレはブルーゴブリンを迎え撃つように両手の短剣を構えた。
だが、ブルーゴブリンはオレを避けるように僅かに左へとその進路を変える。
こいつ、セリアを狙うつもりか!?
オレはブルーゴブリンの進路を塞ぐように移動すると、次の瞬間にブルーゴブリンは右へと舵を切った。
フェイント!? モンスターが!?
「せあ!」
このままではブルーゴブリンに抜かれてしまう。オレはブルーゴブリンに飛び付くように右の短剣を振るう。
だが、ブルーゴブリンは再度その進路を変える。剣を持ってオレへ向けて突っ込んできた。
またフェイント!? こいつの狙いはセリアじゃなくて、最初からオレだったのか!?
キンッ!
なんとか左の短剣でブルーゴブリンの剣を弾く。
しかし、ブルーゴブリンには第二の武器があった。その口に生えた牙だ。
ブルーゴブリンの牙がオレの腕に噛み付こうとして――――ッ!
「ブレイズショット!」
「GYA!?」
セリアの『ブレイズショット』に吹き飛ばされるブルーゴブリン。その牙はガキンッと空を抉っていた。
助かった……。
だが、ブルーゴブリンはセリアの『ブレイズショット』を受けても白い煙となって消えることはなかった。
そりゃそうだ。ブルーゴブリンは、この第二階層のレアポップモンスターなのだから。
レアポップモンスターは、その階層で出る他のモンスターよりも一段も二段も強い。さすがに第二階層のモンスターとはいえ、初級魔法一発で倒れるようなことはないようだ。
「レオン様、大丈夫ですか!?」
「助かったよ。次はこうはいかない」
オレは気を取り直すような気分で両手の短剣を構えてブルーゴブリンに対峙した。
ブルーゴブリンはたしかに『ブレイズショット』では倒れなかった。だがその傷は軽くないようで、左腕が消失していた。ブルーゴブリンの肩口からは、血の代わりに白い煙がモクモクとたなびいていた。
だが、そのどこを見ているのかわからない黄金の目は死んでいない。
普通、この状況なら自分の不利を覚って逃走しても不思議じゃない。だが、ブルーゴブリンは逃げなかった。腰だめに剣を構えて、セリアに目掛けて駆けていく。
セリアの魔法を脅威として認めたのだろう。
オレはセリアを守るようにブルーゴブリンの前に立ちはだかる。
その瞬間、ブルーゴブリンはオレを嫌がるようにその進路を僅かに変えた。
「それはさっき見たぞ?」
今度はブルーゴブリンの動きに惑わされず、オレは前に出る。
先ほどは、まさかモンスターがフェイントを使うとは思わず後れを取ったが、使ってくるとわかれば対処はできる。
ブルーゴブリンはオレの態勢を崩そうとフェイント仕掛けるが、オレは乗らない。
「GEGYA!」
「せや!」
そして、ついにブルーゴブリンとオレが交差する。
飛んだのはブルーゴブリンの頭だった。
オレの右の短剣の突きがゴブリンの喉に突き刺さる。
ゴブリンはビクンッと体を震わせると、そのままボフンッと白い煙となって消えた。
「セリアは……」
振り返ると、セリアの魔法が命中して、ゴブリンが白い煙となって消えるところだった。どうやら一人でもゴブリンを倒せたみたいだね。
ダンジョンの第二階層からは、たまに二体のモンスターが同時に襲って来る時がある。その場合はオレとセリアで一体ずつ相手にしていた。もちろん、セリアにモンスターが近づかないように配慮しつつだ。
ゲームの時は隊列を設定すれば、自然と前衛が後衛を守ってくれた。
でも、現実ではそうもいかない。
今みたいにオレを無視してセリアに向かうモンスターもいるし、後衛を守ると一口に言っても、実際にやってみるととても難しい。
後衛もヘイト管理とか難しい要素はあると思うけど、前衛もいろいろたいへんだ。
他の冒険者たちはどうやってるんだろう?
今度、ドミニクやオイゲンに訊いてみるか。あの二人は元冒険者と言っていたからな。
「おつかれさま、セリア」
「おつかれさまです、レオン様」
「うん!」
ダンジョンだと二人っきりだからか、セリアがレオン様と呼んでくれる。これも嬉しい点だ。
現状、オレとセリアの仲は良好そのものだ。だが、ゲームでのセリアは主人公くんに心を奪われた。油断はできない。
なんだか学園に行くのが怖くなってきたなぁ……。
「あら?」
セリアが不思議そうな顔をしていた。
「どうしたの?」
「あのゴブリンですけど……。あんな色でしたでしょうか?」
「え?」
それはオレたちから十メートル先のT字路から姿を現した。その背丈は普通のゴブリンを変わらない。だが、その肌の色が微妙に違う。緑ではなく青色なのだ。そして、他のゴブリンとは違って棍棒ではなく、濡れたように輝く片手剣を持っている。
「ブルーゴブリン……!」
「GEGYA?」
オレの呟きと、ブルーゴブリンがオレたちに気が付くのは同時だった。
「GEGYAGYA!」
ブルーゴブリンがオレたち目掛けて駆けてくる。
速い!?
「セリアは魔法を!」
「はい!」
オレはブルーゴブリンを迎え撃つように両手の短剣を構えた。
だが、ブルーゴブリンはオレを避けるように僅かに左へとその進路を変える。
こいつ、セリアを狙うつもりか!?
オレはブルーゴブリンの進路を塞ぐように移動すると、次の瞬間にブルーゴブリンは右へと舵を切った。
フェイント!? モンスターが!?
「せあ!」
このままではブルーゴブリンに抜かれてしまう。オレはブルーゴブリンに飛び付くように右の短剣を振るう。
だが、ブルーゴブリンは再度その進路を変える。剣を持ってオレへ向けて突っ込んできた。
またフェイント!? こいつの狙いはセリアじゃなくて、最初からオレだったのか!?
キンッ!
なんとか左の短剣でブルーゴブリンの剣を弾く。
しかし、ブルーゴブリンには第二の武器があった。その口に生えた牙だ。
ブルーゴブリンの牙がオレの腕に噛み付こうとして――――ッ!
「ブレイズショット!」
「GYA!?」
セリアの『ブレイズショット』に吹き飛ばされるブルーゴブリン。その牙はガキンッと空を抉っていた。
助かった……。
だが、ブルーゴブリンはセリアの『ブレイズショット』を受けても白い煙となって消えることはなかった。
そりゃそうだ。ブルーゴブリンは、この第二階層のレアポップモンスターなのだから。
レアポップモンスターは、その階層で出る他のモンスターよりも一段も二段も強い。さすがに第二階層のモンスターとはいえ、初級魔法一発で倒れるようなことはないようだ。
「レオン様、大丈夫ですか!?」
「助かったよ。次はこうはいかない」
オレは気を取り直すような気分で両手の短剣を構えてブルーゴブリンに対峙した。
ブルーゴブリンはたしかに『ブレイズショット』では倒れなかった。だがその傷は軽くないようで、左腕が消失していた。ブルーゴブリンの肩口からは、血の代わりに白い煙がモクモクとたなびいていた。
だが、そのどこを見ているのかわからない黄金の目は死んでいない。
普通、この状況なら自分の不利を覚って逃走しても不思議じゃない。だが、ブルーゴブリンは逃げなかった。腰だめに剣を構えて、セリアに目掛けて駆けていく。
セリアの魔法を脅威として認めたのだろう。
オレはセリアを守るようにブルーゴブリンの前に立ちはだかる。
その瞬間、ブルーゴブリンはオレを嫌がるようにその進路を僅かに変えた。
「それはさっき見たぞ?」
今度はブルーゴブリンの動きに惑わされず、オレは前に出る。
先ほどは、まさかモンスターがフェイントを使うとは思わず後れを取ったが、使ってくるとわかれば対処はできる。
ブルーゴブリンはオレの態勢を崩そうとフェイント仕掛けるが、オレは乗らない。
「GEGYA!」
「せや!」
そして、ついにブルーゴブリンとオレが交差する。
飛んだのはブルーゴブリンの頭だった。
77
あなたにおすすめの小説
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~
ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」
魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。
本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。
ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。
スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる