【世界最強の炎魔法使い】~主人公に何度も負けてすべてを失うデブモブに転生したオレ、一途に愛するヒロインを救うために無双する~

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
23 / 53

023 第五階層

しおりを挟む
「せや!」
「ファイアボール!」

 オレのポイズンソードがゴブリンの首を刎ね、セリアの『ファイアボール』がスライムを焼き尽くす。

 ダンジョンの第五階層。オレたちは順調にダンジョンを攻略していた。

「おつかれさま、セリア」
「レオン様もおつかれさまです」
「魔力はどう?」
「大丈夫です。まだ余裕があります」

 やっぱりMPブースト装備がいい仕事をしているのか、セリアのMPにも余裕がある。MPの最大値が増えれば、時間で回復するMPの量も増えるからね。いい感じだ。

 モンスターの強さ的にもオレたちの脅威となるモンスターもいない。オレたちならもっと奥に潜れるはずだ。

 ダンジョンの奥に潜れば、それだけ敵は強くなるが、見返りも大きい。ドロップアイテムや宝箱から発見されるアイテムなどのグレードが上がっていく。

 現に冒険者は、ダンジョンのより深くに潜ってアイテムを持ち帰ることを至上としているしね。

 中にはそこいらの貴族以上に裕福な暮らしをしている冒険者もいるようだ。

 オレは大きく減らされたとはいえ、一応まだ歳費を貰えている。だが、家族に見放されたから、それもこの先どうなるかはわからない。自分で稼げるようになった方がいい。

 そんなわけで自分とセリアの強化とお金稼ぎを兼ねてダンジョンの奥を目指しているのだが、そんなオレたちには越えなければならない試練がある。

 それが五階層ごとにあるボス部屋だ。

「ここがボスいるお部屋なんですね……」

 大きな両開きの扉を前にセリアが震えた声で呟く。体も小刻みに震え、その顔は真剣そのものだ。どうやらかなり緊張しているらしい。

 まぁ、セリアにとって初めてのボス戦だし、仕方がないかもね。

 セリアの肩に手を置くと、ビクリッと体が跳ねたのがわかった。

「セリア、そんなに心配しないで。ボスはホブゴブリン三体だけだよ。ちょっと普通のゴブリンとは見た目が違うから驚くかもしれないけど、それでも三体だけだ。心配いらないよ。オレがいる」
「レオン様……。はい!」

 セリアの体から力が抜けていくのがわかる。少しは安心してくれたみたいだ。

「じゃあ、行こうか」
「はい……!」

 オレはボス部屋の扉をバーンと勢いよく開ける。

 敵はホブゴブリン三体。オレは両腰の剣を抜くと、駆け出した。

「セリア! 作戦通りに!」
「はい! ファイアランス!」

 オレの横を通り過ぎるようにセリアの放った『ファイアランス』が追い抜き、一番右のホブゴブリンの腹に突き刺さる。

 ドーンッ!!!

 その瞬間、『ファイアランス』が爆発してホブゴブリンが木っ端微塵に吹き飛んだ。まずは一体。

 残った二体のホブゴブリンは仲間の惨状には目もくれずに駆け出す。その行く先はセリアだ。

 そして、それに立ちはだかるのがオレである。

「燃えろ」

 オレの呟きに応じるように左のホブゴブリンが火炎に包まれて崩れ去っていく。これで残ったホブゴブリンは棍棒を持った中央の一体のみ。

 こいつは剣技で倒そう。

 ホブゴブリンは横を走っていた仲間がいきなり燃え上がったというのに動揺した様子がない。

 ダンジョンのモンスターって何なんだろうな?

 倒せば煙となって消えてしまうから純粋な生物じゃないのだろう。

 そして、その心の動きも読めない。

 普通、仲間がいきなり燃え上がったら動揺するだろ?

 そのありようは、まるでそうプログラムされたから動いているロボットみたいだ。

 まぁ、モンスターが何者でも倒すんだけどさ。

 そんなことを思いながらオレはホブゴブリンの棍棒の振り下ろしを左へのサイドステップで避ける。

「双爪双牙!」

 そして、両腕の剣でホブゴブリンを斬り付け、ホブゴブリンに両剣を突き立てる。

 双剣スキル『双爪』と『双牙』のコンボだ。

 ホブゴブリンに突き立てた剣を捻ることでダメージを拡大させると、ホブゴブリンがビクッと体を震わせ、白い煙となって消えていく。これで三体。戦闘終了だ。

「ふぅ……」
「レオン様! ご無事ですか?」
「うん。大丈夫だよ」
「よかったです……。ホブゴブリンの棍棒が振り下ろされた時はもうダメかと……」

 セリアは安心したようにホッと息を吐いた。

 オレとして余裕を持って避けたつもりだったんだけど、セリアには危なそうに見えたようだ。

 たしかに、後衛は前衛の戦闘を見守るしかない場面というのはどうしてもある。当たれば大怪我確定な攻撃を避ける場面は、見ている側にすればハラハラするかもしれない。

「オレは大丈夫だよ、セリア。もし攻撃が当たってもポーションもあるし、大丈夫さ」
「そうかもしれませんけど……でも……。やっぱり心配です」
「ごめんね。こればかりは慣れてもらうしかないよ。それより見て、宝箱だ! 開けてみようよ」

 オレとセリアは大きな宝箱の前に立つ。

「セリア、開けてみて」
「はい……!」

 セリアが大きな宝箱を開けると、中には豪華な装飾の付いた立派な槍が入っていた。

「グングンニールかぁ……」

 大して強くない。聖槍グングニールのニセモノである。槍だし、これは売却だな。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~

ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」 魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。 本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。 ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。 スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...