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036 魔法の授業
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「約束の金貨二百枚だ。受け取れ」
「ああ」
目の前にドンッと重い音を立てて大き目な革袋が置かれた。エンゲルブレヒトが用意した金貨二百枚だ。前回の決闘の報酬だね。まったく、ボロい商売だぜ!
だが、こちらは嫌でもセリアを賭けてるんだ。これくらい貰っても割に合わないと思っている。もう決闘なんてしたくないのが本音だ。
「では、約束は果たした」
「首洗って待ってろよ」
だが、すぐにでも再戦を要求してくるだろうと思っていたエンゲルブレヒトとユリアンはそのまま下がっていった。
やはり、いくらエンゲルブレヒトでも用意できる資金には限りがあるということだろう。これで決闘の回数はゲーム通りより大幅に減るに違いない。
ふと視線を感じて見ると、アンネリーエがオレを睨むように見ていた。そして、何事かを呟くとオレから視線を外す。
お姫様も決闘には反対らしいね。安心してほしい。ゲームの時よりも減るはずだから。
その後はユリアンに惚れこんでオレのことなんて忘れるだろう。
オレは今回、悪役モブではなく、ただのモブとしてそのままフェードアウトしたいところだが……。ラスボスである邪神を滅ぼすためにはイフリートの炎が必要なんだよなぁ……。
イフリートの力を開放したことによってレオンハルトは蒸発してしまう。
邪神を滅ぼすんだ。生半可な力ではダメだったのだろう。おそらく全力でイフリートの力を使ったはずだ。そして、オレはその力に耐えきれない。
「うーむ……」
邪神を滅ぼすのは絶対だ。だが、オレだって死にたくはない。
イフリートの全力にも耐えるにはどうすればいいんだろう?
「やはり強さか……?」
イフリートの全力にも耐えられる肉体を手に入れる。そのために考えられるのは、まずレベルアップだ。レベルアップによって肉体の強度を高める。
「王都にもダンジョンがあったらよかったのに……」
そしたら学園に通いながらもレベルアップができたのに。
ままならないものだなぁ……。
◇
「えー、今回は、皆さんの魔法の実力を見せてもらいます」
魔法の授業中。オレたちはグラウンドの片隅に集まっていた。
「これから、あの的に向かって皆さんは魔法を使ってもらいます。使える属性魔法はすべて使ってください。魔法の連続攻撃です。どの順番で魔法を使うのか、どの魔法を使うのか、皆さん考えておいてくださいね」
先生が的と言ったのは、かなり豪華な鎧だった。それこそ、王族が着ていてもおかしくはないほど豪華さだ。なんでこんな豪華な鎧が的なんだ?
「先生、ずいぶん立派な鎧ですが、壊してしまってもいいんですか?」
オレと同じ疑問を抱いたエンゲルブレヒトが先生に質問する。
それを聞いた先生はニッコリと意地の悪い笑みをみせた。
「あの鎧は、幾重にも魔法防御が施されたアダマンタイトの鎧です。何代も前の王に絶対に魔法に負けない鎧を作れと命じられらた当時の職人が作ったと言われています。魔法に対して絶対と言ってもいい防御力を誇っていますよ。まぁ、重すぎて誰も身に着けることができず、今はこうして学生たちの的になっていますが……。壊すどころか、小さな傷を付けられただけでも超一流の魔法使いと認められるような代物ですよ」
なんというか、すごくアホらしい話だった。アダマンタイトと言えば、その硬さは有名だが、同時に非常に重い金属なのだ。
それで鎧を作ったなんて……。きっと当時の職人から王へのバカなことを言うなという皮肉を込めたメッセージだろう。
だが、なぜか生徒たちはみんなやる気に満ちた顔をしていた。
自分の魔法で壊してやろう。または、傷を付けてやろうと考えているのだろう。
みんな超一流の魔法使いの称号が欲しいのだ。
「では親の爵位が下の順から……ユリアンくんからいこうか」
「はい!」
ユリアンはゆっくりと深呼吸すると、右手を鎧に向けた。そして――――。
「ウォーターショット! サンダーショット! ストーンショット! …………」
八つの属性すべての初級魔法を放った。
まぁ、まだユリアンはレベル1の状態だ。使える魔法も初級魔法だけだろう。
まだまだだね。
だが、オレの予想以上にみんなが驚いた声をあげる。
「すごい……。本当にすべての属性が使えるのか……!」
「これは驚いた……」
「平民だろ? なんですべての属性が使えるんだ!?」
「それだけ精霊に愛されているということか……」
あぁ、みんなユリアンが本当にすべての属性魔法が使えることに驚いているのか。
噂では聞いていただろうけど、実際に目にするとやっぱり違うのだろう。
この世界は、どれだけ多くの属性を操れるかで価値が決まる。
「ちくしょう! 傷一つ付かねえ!?」
ユリアンは鎧に傷も付けれなかったことを悔しがっているが、その価値をクラスメイトや先生の前で証明してみせたのだ。
これを機にユリアンは、どこか距離を置いていたクラスメイトたちと交流を持つことができるようになるのだ。
「ああ」
目の前にドンッと重い音を立てて大き目な革袋が置かれた。エンゲルブレヒトが用意した金貨二百枚だ。前回の決闘の報酬だね。まったく、ボロい商売だぜ!
だが、こちらは嫌でもセリアを賭けてるんだ。これくらい貰っても割に合わないと思っている。もう決闘なんてしたくないのが本音だ。
「では、約束は果たした」
「首洗って待ってろよ」
だが、すぐにでも再戦を要求してくるだろうと思っていたエンゲルブレヒトとユリアンはそのまま下がっていった。
やはり、いくらエンゲルブレヒトでも用意できる資金には限りがあるということだろう。これで決闘の回数はゲーム通りより大幅に減るに違いない。
ふと視線を感じて見ると、アンネリーエがオレを睨むように見ていた。そして、何事かを呟くとオレから視線を外す。
お姫様も決闘には反対らしいね。安心してほしい。ゲームの時よりも減るはずだから。
その後はユリアンに惚れこんでオレのことなんて忘れるだろう。
オレは今回、悪役モブではなく、ただのモブとしてそのままフェードアウトしたいところだが……。ラスボスである邪神を滅ぼすためにはイフリートの炎が必要なんだよなぁ……。
イフリートの力を開放したことによってレオンハルトは蒸発してしまう。
邪神を滅ぼすんだ。生半可な力ではダメだったのだろう。おそらく全力でイフリートの力を使ったはずだ。そして、オレはその力に耐えきれない。
「うーむ……」
邪神を滅ぼすのは絶対だ。だが、オレだって死にたくはない。
イフリートの全力にも耐えるにはどうすればいいんだろう?
「やはり強さか……?」
イフリートの全力にも耐えられる肉体を手に入れる。そのために考えられるのは、まずレベルアップだ。レベルアップによって肉体の強度を高める。
「王都にもダンジョンがあったらよかったのに……」
そしたら学園に通いながらもレベルアップができたのに。
ままならないものだなぁ……。
◇
「えー、今回は、皆さんの魔法の実力を見せてもらいます」
魔法の授業中。オレたちはグラウンドの片隅に集まっていた。
「これから、あの的に向かって皆さんは魔法を使ってもらいます。使える属性魔法はすべて使ってください。魔法の連続攻撃です。どの順番で魔法を使うのか、どの魔法を使うのか、皆さん考えておいてくださいね」
先生が的と言ったのは、かなり豪華な鎧だった。それこそ、王族が着ていてもおかしくはないほど豪華さだ。なんでこんな豪華な鎧が的なんだ?
「先生、ずいぶん立派な鎧ですが、壊してしまってもいいんですか?」
オレと同じ疑問を抱いたエンゲルブレヒトが先生に質問する。
それを聞いた先生はニッコリと意地の悪い笑みをみせた。
「あの鎧は、幾重にも魔法防御が施されたアダマンタイトの鎧です。何代も前の王に絶対に魔法に負けない鎧を作れと命じられらた当時の職人が作ったと言われています。魔法に対して絶対と言ってもいい防御力を誇っていますよ。まぁ、重すぎて誰も身に着けることができず、今はこうして学生たちの的になっていますが……。壊すどころか、小さな傷を付けられただけでも超一流の魔法使いと認められるような代物ですよ」
なんというか、すごくアホらしい話だった。アダマンタイトと言えば、その硬さは有名だが、同時に非常に重い金属なのだ。
それで鎧を作ったなんて……。きっと当時の職人から王へのバカなことを言うなという皮肉を込めたメッセージだろう。
だが、なぜか生徒たちはみんなやる気に満ちた顔をしていた。
自分の魔法で壊してやろう。または、傷を付けてやろうと考えているのだろう。
みんな超一流の魔法使いの称号が欲しいのだ。
「では親の爵位が下の順から……ユリアンくんからいこうか」
「はい!」
ユリアンはゆっくりと深呼吸すると、右手を鎧に向けた。そして――――。
「ウォーターショット! サンダーショット! ストーンショット! …………」
八つの属性すべての初級魔法を放った。
まぁ、まだユリアンはレベル1の状態だ。使える魔法も初級魔法だけだろう。
まだまだだね。
だが、オレの予想以上にみんなが驚いた声をあげる。
「すごい……。本当にすべての属性が使えるのか……!」
「これは驚いた……」
「平民だろ? なんですべての属性が使えるんだ!?」
「それだけ精霊に愛されているということか……」
あぁ、みんなユリアンが本当にすべての属性魔法が使えることに驚いているのか。
噂では聞いていただろうけど、実際に目にするとやっぱり違うのだろう。
この世界は、どれだけ多くの属性を操れるかで価値が決まる。
「ちくしょう! 傷一つ付かねえ!?」
ユリアンは鎧に傷も付けれなかったことを悔しがっているが、その価値をクラスメイトや先生の前で証明してみせたのだ。
これを機にユリアンは、どこか距離を置いていたクラスメイトたちと交流を持つことができるようになるのだ。
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