【世界最強の炎魔法使い】~主人公に何度も負けてすべてを失うデブモブに転生したオレ、一途に愛するヒロインを救うために無双する~

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
39 / 53

039 ユリアンとの決闘②

しおりを挟む
「約束の金貨二百枚だ。セリア嬢を賭けて決闘してもらうぞ」
「はぁ……」

 なんだかいい気分が台無しだ。せっかくセリアといい雰囲気でおいしく食事を食べていたのに……。この代償は高くつくぞ?

 だが、オレの想像以上にユリアンとエンゲルブレヒトの動きが早い。いかに伯爵家の嫡子だとしても、もう少し資金集めには時間がかかると思ったのだが……。

 どうやらあてが外れたらしい。

 約束通り金貨を持ってきた以上、決闘しなくてはならないのだが……。なんだかセリアを賭けの対象にしているので罪悪感がハンパない。

 セリアは心配そうにオレを見ているし……。

「大丈夫だよ、セリア。こいつらなんてすぐに片付けちゃうから」
「はい……」

 オレの言葉にムッとしたようにユリアンが一歩前に出た。

「それは俺のセリフだっての! この前は後れを取ったが、今度こそはそうはいかねえぞ!」
「また決闘ですの?」

 その時、こちらに近づいてくる人影が見えた。後ろに三人の女生徒を引き連れたアンネリーエだ。

 王族には専用の食堂があるので滅多に顔を出さないはずなのだが……。なんでこんな所にいるんだ?

「その決闘、わたくしが預かりました!」
「えー……?」

 こいつ、急に出てきてなにを言ってるんだ?

 だが、こんなのでもこの国のお姫様だ。お姫様が預かるとか言い出したら、オレたちは従うしかない。のだが……。

 まっ先に食って掛かりそうなユリアンが大人しくしているのはなんでだ?

 こいつなら地位とか関係なく文句を言いそうなものだが……。

「それではアンネリーエ殿下、この決闘どうするおつもりですか?」

 エンゲルブレヒトがアンネリーエに問うが、そこには必死なものが見えない。金貨二百枚もの大金を賭けた決闘に茶々を入れられたんだぞ? 普通は焦りそうなものだが……。

「ここでは皆さんにご迷惑がかかるでしょう? これからわたくしが指定する場所で決闘してもらいます」
「俺はそれでいいぜ!」

 アンネリーエとユリアンがオレを見てくる。決して逃がさないという構えだ。

「わかった。オレもそれでいい」
「では行きましょう。こちらですわ」

 アンネリーエに案内されたのは、グラウンドの中央だった。

 まぁ、魔法を使うかもしれないし、場所としてはいいだろう。だが……。

「また決闘か」
「エンゲルブレヒトは諦めるつもりはなさそうだな」
「デブもさっさと奴隷を開放すりゃいいのに……」
「勝てば金貨二百枚だぜ? 開放するわけがないさ」
「でも、あの方は火属性しか使えないのでしょう?」
「いつかの授業では驚かされましたが、あれはトリック。手品師としての腕前は良くても魔法使いとしてはどうかしら?」

 なんでクラスメイトたちが集められているのだろう?

 まるで、あらかじめ決闘が予定されていたことのように用意が周到だ。

 いや、まぁ、うん……。

 ここまでされれば、いくら鈍いオレだってこいつらがグルだってことはわかる。

 元々、アンネリーエはメインヒロインだしな。きっとユリアンに同調しているのだろう。もしかしたら、アンネリーエがユリアンと接点を持つためにオレとの決闘を利用しているのかもな。

 そんな憶測まで浮かんでしまうほどだ。

「ここでいいでしょう。審判はわたくしがしますわ」

 なんだろう。この姫様、もうノリノリである。ドヤ顔でそう宣言した。

「いいぜ! おい、デブ! 勝負だ!」
「はぁ……。いいだろう……」
「ほら、腰のものを抜けよ。それぐらい待ってやる」
「必要ない」

 オレは腰に二本の剣を差している。だが、ユリアン相手に使う必要もない。

「そうかよ。じゃあ、負けても文句言うなよ!」
「ああ……」
「よろしいですか? では……。始め!」
「ウォーターショット!」

 アンネリーエの開始の合図と共に、ユリアンが魔法を使う。

 『ウォーターショット』。威力が低いが、その発動スピードは早い水属性の魔法だ。

 まずはジャブ。そんなところだろう。

 だが――――。

 ジュウッ! ジュウッ! ジュウッ!

 ユリアンの『ウォーターショット』は、オレの体に届く前に消えた。

「な? はあ!? どうなってる!?」
「どういうことだ!?」
「なにが起こっているの!?」
「え? は? え?」
「嘘だろ……?」

 ユリアン、エンゲルブレヒトに続き、クラスメイトたちが驚きの声をあげるが、べつになにもおかしなことはない。

「知らないのか? 水は蒸発するんだよ?」
「ふざけるな! ウォーターボール!」
「ほう?」

 ユリアンが続けて魔法を放つ。まさか、この短期間で『ウォーターボール』を習得したのか? やるじゃないか。さすが、主人公。

 だが――――意味はない。

 ジュワッ!

「嘘、だろ……?」

 ユリアンの『ウォーターボール』も、オレの体に届く前に蒸発して消えた。

「くそっ! ウォーターボール! ストーンショット! シャドーボール!」

 ユリアンがヤケクソになったのか、次々と魔法を使う。だが、そのどれもがオレに届く前に威力を失った。

「はぁ……。はぁ……。はぁ……。くそっ!」

 しかし、それも長くは続かない。ユリアンは荒い息を上げて悪態をつく。おそらくもうMPが枯渇したのだろう。

 まぁ、主人公と言っても今はまだこの程度だな……。

 オレはそれを確認すると、ユリアンのズボンの尻部分に火を着けた。せっかくだから、ハート型に燃やしてやろう。頭にも着火してボンバーヘッドだ。

「あっつ、あっつい! 尻!? 頭も!?」

 本当ならオレだってユリアンの腕でも足でも燃やしてしまいたいところだが、こいつらにはゲーム通りに世界のために働いてもらわなくちゃいけない。

 面倒だが、殺すどころか、後に残るような傷さえも付けれない。だから余計にナメられるのだろう。くそっ。歯痒いなぁ……。

「触んじゃねえ! 触ると髪が崩れてハゲるんだよ!」

 次の日。頭をチリチリにしたユリアンの悲痛な叫びが教室に響いていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ
ファンタジー
普通の会社員だった佐藤隼人(さとうはやと)は、ある日突然異世界に招かれる。 異世界で勇者として10年間を旅して過ごしながら魔王との戦いに決着をつけた隼人。 役目を終えて、彼は異世界に旅立った直後の現代に戻ってきた。 隼人の意識では10年間という月日が流れていたが、こちらでは一瞬の出来事だった。 戻ってきたと実感した直後、彼の体に激痛が走る。 異世界での経験と成長が現代の体に統合される過程で、隼人は1ヶ月間寝込むことに。 まるで生まれ変わるかのような激しい体の変化が続き、思うように動けなくなった。 ようやく落ち着いた頃には無断欠勤により会社をクビになり、それを知った恋人から別れを告げられる。 それでも隼人は現代に戻ってきて、生きられることに感謝する。 次の仕事を見つけて、新しい生活を始めようと前向きになった矢先、とある人物が部屋を訪ねてくる。 その人物とは、異世界で戦友だった者の名を口にする女子高生だった。 「ハヤト様。私たちの世界を救ってくれて、本当にありがとう。今度は、私たちがあなたのことを幸せにします!」 ※カクヨムにも掲載中です。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

処理中です...