【世界最強の炎魔法使い】~主人公に何度も負けてすべてを失うデブモブに転生したオレ、一途に愛するヒロインを救うために無双する~

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
47 / 53

047 Xデー

しおりを挟む
 その日は突然やってきた。

「きゃああああああああ!?」
「なんだあれは!?」
「ド、ドラゴン!?」

 学園の上空を旋回する巨大な影。ドラゴンだ。

「レオンハルト様、あれは……?」
「ドラゴンだね」

 心配そうに見上げるセリアに答える。オレはもちろん、これからなにが起こるのかゲームの知識で知っている。

 これからセリアにとって悲しい出来事が起こることも。

 オレはどうするのが正解なんだろう?

 オレは来るこの日をどう乗り越えるか考えていた。しかし、未だに答えが出ない。

 上空のドラゴンが、まるで探し物を見つけたかのように学園のグラウンド目掛けて降りてくる。

 グラウンドに降り立ったのは、赤い鱗の堂々とした大きな大きなドラゴンだ。

 しかし、よく見るとそのドラゴンは傷だらけだった。片目は潰され、古傷はもちろん、中にはまだ出血してる生々しい傷まである。

「グレンプニール様……」

 セリアが呆然としたように呟く。

 そう。このドラゴンこそルクレール王国の護り竜。火竜グレンプニールだ。体中の傷は、きっとルクレール王国を護るための戦いでできたものだろう。

 そんなボロボロのグレンプニールが、怪我を押してここに来た理由。

 それは――――。

「GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 オレにドラゴンの言葉はわからない。だが、ゲームではフリガナがふってあったから、彼がなにを言っているのか想像できる。

 きっとセリアの本当の名を叫んでいるのだろう。

「――――ッ!?」

 セリアが堪えきれなくなったように目を伏せる。

 そう。グレンプニールはセリアを助けに来たのだ。

「きゃあああああああああ!?」
「火竜グレンプニール!? 生徒たちを避難させるんだ!」
「ルクレール王国を滅ぼされた恨みを晴らすつもりか!?」
「とにかく逃げろ!」
「逃げるってどこへ!?」

 学園の生徒も教師たちも恐慌状態に陥っている。みんなの顔には焦りや恐怖が浮かび、まともな指示を出せる者もいない。混乱はますます広がっていく。

「こっちに来るぞ!?」

 その混乱を助長させるように、グレンプニールがこちらへと一歩踏み出す。

 しかし、その歩みは果たされることがなかった。

 まるで濁流のようなドラゴンブレスがグレンプニールを襲ったためだ。

「いったいなにが……?」
「あれを見ろ!」
「あれは!?」

 上空に光るライトブルーの翼。この国、ゲーゲンバウアーの守護竜、水竜ヴァッサーだ。おそらく、グレンプニールを察知して飛んできたのだろう。

 ヴァッサーを迎え撃つようにグレンプニールも翼を羽ばたかせて飛び上がっていく。

 そこから始まるのは、まるでこの世の終わりのようなドラゴン同士による戦闘だ。

 空には炎と濁流のドラゴンブレスが飛び交い、時折爪を交わしている。

「やれー! ヴァッサー様!」
「ヴァッサー様がんばれー!」
「ヴァッサー様万歳!」

 ヴァッサーの登場に平静を取り戻したのか、生徒たちが空を見上げてヴァッサーへの声援を送っていた。

「グレンプニール様……」

 ポツリと隣にいるセリアが祈るように手を組んで、空を見上げていた。

 セリアにとって、グレンプニールはイフリートと同じく希望そのものだ。

 きっとグレンプニールが自分もルクレール王国を救ってくれる。そう思っていても不思議じゃない。

 しかし、現実はいつだって非情だ。そんな希望の彼女がどんどんと傷付き、ついにはグラウンドに土煙を上げて墜落する。

「……ッ」

 セリアは、口を押えて必死に声を押し殺していた。

「あの火竜をいとも容易く……!」
「火竜ごときが水竜であるヴァッサー様に勝てるかよ! 属性の相克関係からみても明らかだ」
「さすがヴァッサー様!」
「ヴァッサー様万歳!」

 生徒や教師たちは口々にヴァッサーを褒め称えていた。一人の少女が涙を流しているのにも気付かずに。

 ヴァッサーが優雅に旋回し、グラウンドに降り立った。

 ゲームでは、この後ヴァッサーはグレンプニールに止めを刺す。

 セリアの希望はここで潰えることになるのだ。

 セリアはへたり込み、必死に声を押し殺して泣いていた。

 オレは、しゃがんで人差し指でセリアの目元の涙を拭いさる。

「レオンハルト様……?」

 セリアの涙に濡れた青い瞳が俺を見上げていた。

「見ていて、セリア。キミの希望はオレが必ず守る!」

 オレは気付けばそう口走っていた。

 オレは、どちらかといえばこのイベントは静観の構えだった。ここで変に目立ってもいいことなんてない。そんなことはわかっている。頭の冷静な部分が、オレに動くなと命じてくる。

 だが、そんなの知ったことか!

 セリアが泣いているんだぞ!?

 ここで立ち上がらなくてどうするんだ!

「レオンハルト様!?」

 オレは立ち上がると、セリアの声を背にグラウンドに向かって走っていく。

 待ってろよ、グレンプニール!

 必ずお前を助けてやる!

 そのためならオレは、ヴァッサーさえ墜としてみせよう!
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ
ファンタジー
普通の会社員だった佐藤隼人(さとうはやと)は、ある日突然異世界に招かれる。 異世界で勇者として10年間を旅して過ごしながら魔王との戦いに決着をつけた隼人。 役目を終えて、彼は異世界に旅立った直後の現代に戻ってきた。 隼人の意識では10年間という月日が流れていたが、こちらでは一瞬の出来事だった。 戻ってきたと実感した直後、彼の体に激痛が走る。 異世界での経験と成長が現代の体に統合される過程で、隼人は1ヶ月間寝込むことに。 まるで生まれ変わるかのような激しい体の変化が続き、思うように動けなくなった。 ようやく落ち着いた頃には無断欠勤により会社をクビになり、それを知った恋人から別れを告げられる。 それでも隼人は現代に戻ってきて、生きられることに感謝する。 次の仕事を見つけて、新しい生活を始めようと前向きになった矢先、とある人物が部屋を訪ねてくる。 その人物とは、異世界で戦友だった者の名を口にする女子高生だった。 「ハヤト様。私たちの世界を救ってくれて、本当にありがとう。今度は、私たちがあなたのことを幸せにします!」 ※カクヨムにも掲載中です。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

処理中です...