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004 初狩り
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「行くぞ、アベル!」
「はい、父上!」
「二人とも気を付けてくださいね」
数日後の早朝。母上に見送られて、父上と共に家を出た。今日、オレは狩りデビューするのだ。
今から体がガチガチになるほど緊張している。これから実際にモンスターと戦うのかと思うと、この機会を待っていたという気持ちと、いっそのこと逃げてしまおうかという気持ちが押し寄せてくる。
「今日はよろしく頼むぞ」
「へい! 任せてくだせえ!」
「んだんだ!」
父上の言葉に、狩人の格好をした男二人が自信満々に答える。
「オラたちが付いてるんで、坊ちゃんも安心してください」
「ああ。よろしく」
村で二人の狩人と落ち合い、そのまま歩いて近くの森へと向かう。なにげに家のある村から出るのは初めてかもしれない。
そのまま狩人、父上、オレ、狩人の順に森の中に入る。森の中はある程度まで整備されていたが、その奥は鬱蒼とした原生林が広がっていた。地面には腐葉土が層になって積み上がっていて、たいへん歩きにくい。歩いているだけで息が上がってきた。
だが、二人の狩人や父上は息が上がった様子がない。体格や体力が違うといえばそれまでだが、ちょっと悔しい。走り込みの本数を増やそう。
「いました! ホーンラビットです!」
「よし! 行け、アベル!」
「え?」
父上にドンッと背中を押されて前に出ると、二メートルほど前方にツノの生えた小柄な茶色いウサギがいた。ホーンラビットだ。ホーンラビットもオレに気が付いたようだ。
「はい?」
しかし、ホーンラビットは逃げるどころか、オレに向かって跳んできた。ウサギみたいな小動物って普通逃げるんじゃないの!?
急に実戦の機会が巡ってきて、オレはもう半ばパニックだ。とりえず向かってくるホーンラビットに盾を構える。
その途端、ガツンッと左手に衝撃が走り、後ろに転びそうになった。ホーンラビットは小柄だけど、その全体重を乗せたタックルは予想以上に強力だ。
慌てて足を踏ん張って、後ろに倒れないようにする。
「いいぞ、アベル! やれ!」
「はい!」
父上の声に突き動かされる形で、盾の前に転がっていたホーンラビットに右手の剣を振り下ろす。
剣はホーンラビットの頭蓋を叩き割り、ホーンラビットはビクビクと体を震わせた後、動かなくなった。
早い鼓動に合わせて、ホーンラビットの頭から血がドクドクと流れ出す。薄暗い森の中でも鮮明に映える紅。それを見ただけでオレの鼓動もうるさいくらい跳ね上がった。
オレは最強になると誓った身だ。
しかし、前世でも今世でもオレは動物を自らの手で殺したことがなかった。最強になるためにはたくさんのモンスターを殺し、経験値を得なければいけないのに、そこから目を逸らし続けていた。
生暖かい鉄の臭いが鼻をくすぐる。オレが命を奪ったのだということを教えてくれる。
正直、あまり気持ちのいいものじゃない。でも、これも慣れていかないとな。
「いいぞ、アベル! よくやった!」
「はい……」
父上が、首がガクガクするくらい強くオレの頭を撫でた。それだけで沈みかけた気持ちが上向きになった。父上は偉大だ。
「さあ、アベル。ナイフで首を落とすんだ。それが仕留めた者の責任である」
「はい……!」
オレはまだ温かいホーンラビットの体を掴むと、十歳のお祝いに貰った大ぶりなナイフでホーンラビットの首を落とす。弛緩したホーンラビットの首の肉はぐにゅぐにゅと柔らかかったが、新品のナイフは綺麗にホーンラビットの首を刎ねた。
ホーンラビットの頸動脈から血がドクドクと溢れ出す。生々しい光景に目を背けたくなったが、背けない。これはオレの背負うべきものだ。
そうして、ホーンラビットの首を刎ねると、首を下にして狩人の持った棒に結んで血抜きする。後で解体するらしい。
「血の臭いに釣られてオオカミが来るかもしれん。アベル、十分に注意しろよ」
「はい!」
オオカミと聞いて、オレはもうドキドキだった。だって、ゲームではオオカミはホーンラビットよりも強かった。今のオレに倒せるだろうか?
ビクビクしながらも、オレたちは森をさらに奥に進む。その間にさらに二匹のホーンラビットと戦闘し、勝利した。
「勝った……」
目の前に転がるホーンラビットの死体を見下ろしながら呟く。
「アベル、体は熱いか?」
「ん? はい」
緊張からか、それとも達成感からか、オレの体は汗が出るほど熱くなっていた。
「ホーンラビットの存在の力を得たのだ。いい調子だな」
「存在の力?」
なんだそれ? ゲームではそんな単語出てこなかったぞ?
「モンスターを倒すと、モンスターの持っていた存在の力を手に入れることができるのだ。存在の力を手に入れると、それだけ強くなれる」
「なるほど……。経験値みたいなもの、ですか?」
「けいけんち? なんだそれは? 存在の力は存在の力だぞ?」
どうやらこの世界では経験値は通じないらしい。その代わりにあるのが、存在の力という概念のようだ。集めると、強くなるというのも経験値と共通している。
それから、この世界にはレベルという考え方が無いこともわかった。自分のステータスが見れないからね。仕方ないね。
だが、オレだけはレベルの概念を知っている。これは大きなリードかもしれない。
「はい、父上!」
「二人とも気を付けてくださいね」
数日後の早朝。母上に見送られて、父上と共に家を出た。今日、オレは狩りデビューするのだ。
今から体がガチガチになるほど緊張している。これから実際にモンスターと戦うのかと思うと、この機会を待っていたという気持ちと、いっそのこと逃げてしまおうかという気持ちが押し寄せてくる。
「今日はよろしく頼むぞ」
「へい! 任せてくだせえ!」
「んだんだ!」
父上の言葉に、狩人の格好をした男二人が自信満々に答える。
「オラたちが付いてるんで、坊ちゃんも安心してください」
「ああ。よろしく」
村で二人の狩人と落ち合い、そのまま歩いて近くの森へと向かう。なにげに家のある村から出るのは初めてかもしれない。
そのまま狩人、父上、オレ、狩人の順に森の中に入る。森の中はある程度まで整備されていたが、その奥は鬱蒼とした原生林が広がっていた。地面には腐葉土が層になって積み上がっていて、たいへん歩きにくい。歩いているだけで息が上がってきた。
だが、二人の狩人や父上は息が上がった様子がない。体格や体力が違うといえばそれまでだが、ちょっと悔しい。走り込みの本数を増やそう。
「いました! ホーンラビットです!」
「よし! 行け、アベル!」
「え?」
父上にドンッと背中を押されて前に出ると、二メートルほど前方にツノの生えた小柄な茶色いウサギがいた。ホーンラビットだ。ホーンラビットもオレに気が付いたようだ。
「はい?」
しかし、ホーンラビットは逃げるどころか、オレに向かって跳んできた。ウサギみたいな小動物って普通逃げるんじゃないの!?
急に実戦の機会が巡ってきて、オレはもう半ばパニックだ。とりえず向かってくるホーンラビットに盾を構える。
その途端、ガツンッと左手に衝撃が走り、後ろに転びそうになった。ホーンラビットは小柄だけど、その全体重を乗せたタックルは予想以上に強力だ。
慌てて足を踏ん張って、後ろに倒れないようにする。
「いいぞ、アベル! やれ!」
「はい!」
父上の声に突き動かされる形で、盾の前に転がっていたホーンラビットに右手の剣を振り下ろす。
剣はホーンラビットの頭蓋を叩き割り、ホーンラビットはビクビクと体を震わせた後、動かなくなった。
早い鼓動に合わせて、ホーンラビットの頭から血がドクドクと流れ出す。薄暗い森の中でも鮮明に映える紅。それを見ただけでオレの鼓動もうるさいくらい跳ね上がった。
オレは最強になると誓った身だ。
しかし、前世でも今世でもオレは動物を自らの手で殺したことがなかった。最強になるためにはたくさんのモンスターを殺し、経験値を得なければいけないのに、そこから目を逸らし続けていた。
生暖かい鉄の臭いが鼻をくすぐる。オレが命を奪ったのだということを教えてくれる。
正直、あまり気持ちのいいものじゃない。でも、これも慣れていかないとな。
「いいぞ、アベル! よくやった!」
「はい……」
父上が、首がガクガクするくらい強くオレの頭を撫でた。それだけで沈みかけた気持ちが上向きになった。父上は偉大だ。
「さあ、アベル。ナイフで首を落とすんだ。それが仕留めた者の責任である」
「はい……!」
オレはまだ温かいホーンラビットの体を掴むと、十歳のお祝いに貰った大ぶりなナイフでホーンラビットの首を落とす。弛緩したホーンラビットの首の肉はぐにゅぐにゅと柔らかかったが、新品のナイフは綺麗にホーンラビットの首を刎ねた。
ホーンラビットの頸動脈から血がドクドクと溢れ出す。生々しい光景に目を背けたくなったが、背けない。これはオレの背負うべきものだ。
そうして、ホーンラビットの首を刎ねると、首を下にして狩人の持った棒に結んで血抜きする。後で解体するらしい。
「血の臭いに釣られてオオカミが来るかもしれん。アベル、十分に注意しろよ」
「はい!」
オオカミと聞いて、オレはもうドキドキだった。だって、ゲームではオオカミはホーンラビットよりも強かった。今のオレに倒せるだろうか?
ビクビクしながらも、オレたちは森をさらに奥に進む。その間にさらに二匹のホーンラビットと戦闘し、勝利した。
「勝った……」
目の前に転がるホーンラビットの死体を見下ろしながら呟く。
「アベル、体は熱いか?」
「ん? はい」
緊張からか、それとも達成感からか、オレの体は汗が出るほど熱くなっていた。
「ホーンラビットの存在の力を得たのだ。いい調子だな」
「存在の力?」
なんだそれ? ゲームではそんな単語出てこなかったぞ?
「モンスターを倒すと、モンスターの持っていた存在の力を手に入れることができるのだ。存在の力を手に入れると、それだけ強くなれる」
「なるほど……。経験値みたいなもの、ですか?」
「けいけんち? なんだそれは? 存在の力は存在の力だぞ?」
どうやらこの世界では経験値は通じないらしい。その代わりにあるのが、存在の力という概念のようだ。集めると、強くなるというのも経験値と共通している。
それから、この世界にはレベルという考え方が無いこともわかった。自分のステータスが見れないからね。仕方ないね。
だが、オレだけはレベルの概念を知っている。これは大きなリードかもしれない。
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