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聖女が白い竜を信頼する理由(3)

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 ダニエルとの茶会とは異なり、リラックスした表情でにこにこと笑う聖女は、実年齢よりもぐっと幼く見える。敷布の上にしっぽをぱたぱたと叩きつけながら、ルウルウがぼやいた。

「まったく、損なひとですよ、あなたは。他のかたにも、わたしに話すのと同じように接すれば、あなたの良さが伝わるのに」
「別にいいもん。私の良さは、ルウルウだけが知っていたらいいんだもん。どうせ素を出したところで、弱みにしかならないもん」
「……キャシー、この甘えん坊っぷり。あなた、お茶会の後からひとりで勝手に部屋で飲んでましたね! この時間だけでも結構な酒量だったのに、一体どれだけ飲んだんです!」
「えへへへ、せっかく聖女特典の異次元収納があるんだから使わないともったいないでしょ。昼間から飲むお酒ってさ、夜に飲むお酒と違って背徳感があっていいよね。ものすごくダメ人間って感じがする!」
「もう、何を言ってるんですか」
「ルウルウ大好き~」

 ちゅっちゅっと頬に口づけを落とされて、なんとも言えない表情をした白い竜は、ぱたりと力なくしっぽを落とした。

「わたしだって、あなたが嫌う王族たちのようにひとに言えない秘密を抱えているかもしれませんよ」
「大丈夫、ルウルウの秘密ならなんでも受け入れちゃう!」
「……本当になんでも受け入れてくれるんですか」
「いける、いける! さあ、なんならここで話して楽になっちゃいなさい。今日は夜通しおしゃべりよ。パジャマパーティーのガールズトークに終わりなどないのだ」
「……はあ、ガールズトークですか」

 遠い目をしたルウルウにウザ絡みしながら、キャシーはご機嫌で盃を掲げる。

「もう、ルウルウったらテンション低い~。なんなら、マムシ酒みたいにルウルウ酒やる? ルウルウの浸かったお酒なら、私、いくらでも飲めるな~」
「完全に発想がオヤジじゃないですか。もう、寝てくださいよ」
「やだあ、ルウルウと一緒にお風呂入るう。酔い覚ましにお風呂に入るう」
「今入ったら滑って頭打って死にますよ。明日入ってください」
「ルウルウ、一緒に寝ようよ~」
「すでに一緒に寝る気満々で抱き枕にしているじゃないですか」
「ルウルウ大好き~。愛してる~」
「……キャシー、わたしもですよ」

 翌日、猛烈な頭痛と吐き気で目を覚ましたキャシーは、相棒の白い竜が枕元に置いていたコップの水(*大陸一酸っぱい果実の濃厚絞り汁入り)を飲み干し、悶絶することになる。
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